Microsoft Windows
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市場占有と問題
市場シェア
Windowsはパーソナルコンピュータ市場では、1990年代後半よりデファクトスタンダードの地位を得た。このため対応するコンピュータ(メーカー)、周辺機器、アプリケーションも多く、またユーザー数、操作方法の情報なども多い。Windowsが普及した背景には、マイクロソフト自身は一部の周辺機器を除いてハードウェアを製造せず多数のハードウェアメーカーへのOEM供給路線を続けたこと、ライバルのMacintoshやOS/2の必要とするハードウェアが当時は高価だったこと、オフィスソフトであるMicrosoft Office(Office自体はMacintoshでも動作する)や専用のマルチメディアAPIであるDirectXで作成されたゲームプログラムが市場に広く受け入れられ、キラーアプリケーションとなったこと、20世紀末期から21世紀にかけてのダウンサイジングの潮流に乗ったこと、ネットワーク機能やPOSIXサブシステムなどの極めて少数のコンポーネントを除き、完全な独自設計となっており、Windows製品以外との互換性や移植性が低く、他のプラットフォームへの移行が非常に困難であることなどが挙げられる。
近年はモバイル端末の進化により若い世代はあまり個人でパーソナルコンピュータを使用しなくなっており[42]、それらを含めたシェアに関しては比較的厳しい状況にある[43]。
独占の問題
Windowsはマイクロソフトによる独自仕様のソフトウェア製品(プロプライエタリソフトウェア)であり、その製品構成や販売手法をめぐり2009年時点でもいくつかの国で独占禁止法訴訟が起きている。独占の影響を回避するため、官公庁などの公的機関でLinuxなどオープンソースソフトウェアのOSの採用の動き[44]や、オープンフォーマットなどWindows専用のオフィスソフトに縛られないファイルフォーマットの採用の動きがあり、またOSの役割を低下させるクラウドコンピューティングなどの動きもある。上記のようなマイクロソフトによる独占状態の影響もあり、フリーソフトウェア財団は「自由なソフトウェア」というテーマを掲げ、たびたび「脱Windowsキャンペーン」を行っている。
OS市場の独占によるマイクロソフトの強靭な企業体力や統一された操作性が功を奏し、従業員教育にかかるコストが低下したことや、同一系統のプラットフォーム間におけるアプリケーションの互換性がある程度確保されていることに加え、サービス水準合意 (SLA) を締結すれば、競合他社より高品質なサポートを受けることが出来るため、金融機関[注 4]などのインフラ系企業などを中心に独占状態による悪影響よりも良い影響のほうが大きいと考える者が多い。前述のメリットを活かし、さまざまな社会インフラの運用にも幅広く利用されているだけでなく、冒頭でも述べた通り、マイクロソフトによるほぼ完全な独自設計であることから他のOSとの互換性や移植性が非常に低く、非常に有用かつ代用が効かないアプリケーションや周辺機器を数多く抱える製品でもあるため、政財界からは電力会社や公共交通機関などのインフラ産業と同等の扱いを受けることも珍しくない。日本を含むいくつかの国や地域では、独占禁止法の適用除外の対象と見做され、政府機関との随意契約を締結するケースすら存在する[45][46][47]。また、日本や韓国など、いくつかの国や地域ではマイクロソフトとクライアントOSおよびウェブブラウザに関するSLA契約を独占的に締結しているだけでなく、Windows APIを用いた専用のクライアントソフトやActiveXコントロールを用いている場合がある関係上、WindowsとInternet Explorerを用いて電子政府サービスに接続することを利用者に対し推奨ないしは義務付けているため、Windowsマシンを持っていないユーザーは、街頭に設置されている専用の端末を用いてサービスを利用しなければならない。 日本においては他社のOSやブラウザからのアクセスが原因で電子政府システムに障害が発生した場合には、民事および刑事上の責任を負う可能性がある[要出典]。日本国内の金融機関も、マイクロソフトと、OSやブラウザに関するSLAを独占的に締結している事業者が多く、指定以外のOSやブラウザのバグによる重大事故への対策の観点から、macOS、Linux、スマートフォンなどからサービスを利用する行為を禁じている事例が少なくない。
このような中、さらに問題が発生した。fossBytesに2016年8月6日(米国時間)に掲載された記事「Linux Users Claim That Windows 10 Anniversary Update Deletes Dual-boot Partitions」によるとWindows 10がLinux環境を削除する恐れがあり、Linuxユーザーからも独占状態に対する批判が高まっている。
注釈
- ^ かつては非公式のパッケージ管理システムであったが、Windows 10よりマイクロソフト公式となりOSに組み込まれた。
- ^ とは言ってもまだ様々な側面で整備され切っておらず、USBやWi-Fiもなく、端子の規格、ドライバのインストール、インターネット接続設定など覚えることは多く、周辺機器の相性問題も多発した。パソコン通信やインターネットでフリーソフト配布は行われていたが、当時としてはダウンロードという行為自体が専門的過ぎたため、一般人にとって、ソフトウェアの入手方法は店頭販売の雑誌やパッケージに頼るしかなかった。
- ^ Windows 3.xでもグラフィックボードとドライバ次第ではハイカラーやフルカラーも利用できたが、不安定になりやすいという問題があった。ハイカラーやフルカラーではプログラムマネージャの登録アイコンもそれだけ多色のデータとして扱うことになるため、アイコンをたくさん登録したプログラムマネージャは16ビット(メモリ64KB)のリソース制限に抵触しやすくなり、トラブルの元となった。
- ^ WindowsやIEのバグに起因するシステムトラブルが原因で取引金額に狂いが生じたり、残高データが滅失するなどの金銭的損害が発生した場合であっても、適切なSLA契約を締結していれば、マイクロソフトの企業体力により納得できる金額の補償を受けられる可能性があるため。
出典
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- ^ MCA・マイクロソフト認定アソシエイト - プロメトリック - ウェイバックマシン(2014年6月26日アーカイブ分)
固有名詞の分類
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