CTRON
読み方:シートロン
CTRONとは、情報通信ネットワークの交換処理、通信処理、情報処理といった作業に適用できるOSのインタフェースのことである。TRONのサブプロジェクトのひとつである。インタフェース仕様の検討、ソフトウェアポータビリティ評価実験、リアルタイム性の評価実験などが行われている。
CTRON
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/24 07:46 UTC 版)
CTRON(シートロン、Communication and Central TRON)は、オペレーティングシステムの仕様体系で、坂村健教授(東京大学)によって開始されたTRONプロジェクトのサブプロジェクトのひとつ。
- ^ インターフェース 1989年3月号, p. 305.
- 1 CTRONとは
- 2 CTRONの概要
CTRON
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 00:21 UTC 版)
「TRONプロジェクト」の記事における「CTRON」の解説
「Communication and Central TRON」の略。メインフレーム向け(現在で言うサーバーに相当する)のTRON OSで、日本電信電話公社(電電公社、現在のNTT)の主導で、1985年にプロジェクトを開始した。電電公社の電話交換機での使用を前提とし、同時にCTRON上で動くアプリケーションも制作された。 当時の電電公社では、電電公社に近しい国内メーカー(いわゆる「電電ファミリー」)と共同開発した情報機DIPS(Dendenkosha Information Processing System)と交換機DEX(Dendenkosha Electronic eXchange)が稼働していたが、石野福弥(当時は日本電電公社電気通信研究所複合交換研究室長、後に早稲田大学教授)らによって、情報処理用メインフレームと電話交換機用メインフレームの2つを統合した「INSコンピュータ」を作るという「INSコンピュータ計画」が1985年に電電公社横須賀電気通信研究所においてスタートしたことが背景にある。「INSコンピュータ計画」においては、「電電公社による独自ハードを策定する」という当初の目的は早々に破棄され、ハードの設計は各々の協力会社に任せ、共通OSの採用によってDIPSとDEXの間におけるソフトウェアの共通性を高めることとなり、そのためのOSとしてTRONが選ばれた。その結果、電電公社の主導で、TRONに通信処理用のAPIを搭載したCTRON仕様を策定することとなり、1986年よりDIPSとDEXの双方で実装に向けた開発が行われた。 CTRONの開発に当たっては、OSを下位の「基本OSインタフェース」と上位の「拡張OSインタフェース」に分離し、基本OSインタフェースでプロセッサの違いを吸収するとともに、上位の拡張OSインターフェースでソフトウェアの流通性を確保するという方針が取られた。基本OSインタフェースは1986年に完成し、拡張OSインタフェースは1986年から1988年にかけて公開され、異なるプロセッサ間における移植実験が行われた。CTRONインタフェース仕様は1988年に公開され、仕様の変更や改定などを経て、1993年にはCTRON仕様の集大成として『新版 原典CTRON大系』が出版された。 当時の電電公社で使用されるハードウェアは、電電公社が独自に策定した「電電公社仕様」ともいえる特殊なハードウェアが指定されており、「電電ファミリー」と呼ばれる電電公社に近しい電機メーカーとのハードウェア共同開発体制を取ることにより、電電ファミリー各社の技術向上に寄与すると同時に、電電公社仕様に追随できない外資系メーカーを事実上締め出すことに成功していた(ただし、1機あたり数百億の開発費によって電電公社に莫大な赤字をもたらし、電電公社がNTTとして分割・民営化される遠因ともなった)。そのため、米国より「機器納入の自由化」への圧力がかけられていたが、CTRONプロジェクトでは「CTRONが稼働する限りアーキテクチャは問わない」というオープンな仕様となり、さらに機器納入元としてNEC、富士通、沖電気、日立製作所という「電電ファミリー」4社に加え、海外メーカーとして米AT&Tと加ノーテル(ノーザンテレコムジャパン株式会社)を加えることで外圧を乗り切った。1990年4月にはNTTにノーテル製の中継局用交換機が納入されたが、海外メーカー製の交換機を導入するのは電電公社/NTTにとって初めての事であった(TRONプロジェクトの主要な協力メーカーはほとんど日本企業だが、CTRONプロジェクトにおいては外資のノーザンテレコムジャパンも主要な協力企業の一つである)。 電電公社によるCTRONプロジェクトは成功し、1990年頃よりNTT社内において、DEXのOSである「DEX-OS」とDIPSのOSである「DIPS-OS」が、CTRON準拠の「IROS(Interface for Realtime Operating System)」に切り替わった。さらに、1996年には改D70型交換機の後継として、NTTと日本電気・富士通・日立製作所・沖電気・東芝・ノーテルの共同開発による、NS10A形ATM交換機にCTRONベースのソフトウェアを採用した「新ノードシステム」が完成した。また、NTTの交換機としての使用に耐える信頼性が評価され、1990年には全国銀行データ通信システム(全銀システム)の中継コンピューター(全銀RC)にもNTTのDIPS-CTRONが採用された。 電電公社によるCTRONプロジェクトにおいては、各社の独自OSからCTRON仕様OSに変えることで従来のアプリが使用できなくなるため、乗り気ではない企業も存在したが、沖電気がプロジェクト発足当初から積極的で、結果としてNTTへの大量納入に成功している。商用のシステムとしても、沖電気では1990年発売のOKI iOX100でCTRONのサブセットを採用し、1992年に自社独自OSのAPOLLOSを廃止し、1996年発売のOKI iOX200シリーズではCTRONが全面採用された。1990年代には日本の電話交換機のほとんどがCTRONベースのシステムとなり、同時に海外にも輸出され、1990年代後半から2000年代前半にかけてのPHSやISDN(N-ISDN)などの高速通信サービスを支えた。 CTRONが電電公社/NTTグループおよびNTTグループに機器を納入しているメーカーの製品以外のハードで使われた例はあまりなく、もはや1990年代においてはメインフレームのダウンサイジングの流れが大きく、ちょうどインターネットの普及に伴ってUNIXサーバーが一世を風靡した時代であり、同時期のほとんどの会社はUNIXサーバーを用意して顧客に提供した。電電公社仕様コンピュータ・DIPSプロジェクトも、1992年には開発を終了した(2002年に全てのDIPSの稼働が終了)。ただし、市販の汎用のサーバー機にCTRONを載せることも可能(と言うより、NTTに納入される機器はCTRONが稼働することが必須要件となるので、世界有数の通信コングロマリットであるNTTグループに機器を納入するために、たとえ外資系メーカーであっても汎用のUNIXサーバーにCTRONを移植するメリットがある)で、NTT社内では元々UNIX系のOSを搭載しているTANDEMのサーバー機Integrity(MIPS系のアーキテクチャ)にCTRONを移植させて、社内VANとして使っていた。 そのNTTでも、2010年代より電話交換機の廃止とIP網への移行に伴って、「新ノードシステム」の撤去が始まっている。NTTでは、2015年までにD70型より以前の交換機は撤去され、全て「新ノードシステム」に巻き取られたが、2025年には「新ノードシステム」の維持限界がやってくると想定されており、2024年から2025年にかけて全て廃止される予定。電電公社/NTTとともにCTRONプロジェクトを推進した坂村は、TRONプロジェクト30周年におけるNTTドコモ社長との対談において、情報・通信処理に特化したCTRONを採用した電話交換機の時代から、インターネット時代における「汎用のもので代われるというIP化」という時代の流れを振り返っている。
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