CTOL機での使用 (STOBAR方式)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/01 06:39 UTC 版)
「スキージャンプ (航空)」の記事における「CTOL機での使用 (STOBAR方式)」の解説
「アドミラル・クズネツォフ」のスキージャンプから発進するSu-33 パタクセント・リバー海軍航空基地のスキージャンプから発進するF-14A ソビエト連邦海軍が1977年から黒海沿岸のサーキ飛行場に建造した艦上機科学試験シミュレータ(ニートカ(ロシア語版))には、カタパルトやアレスティング・ギアとともに、勾配8度および14度のスキージャンプ台が設置されていた。当初、1143型航空巡洋艦(キエフ級)に続く重航空巡洋艦(TAvKR)では、ニートカで開発されたカタパルトとアレスティング・ギアを導入したCATOBAR方式が採用される計画だったが、政府・軍上層部にはヘリ空母への支持が根強かったために、結局、実際に建造された「アドミラル・クズネツォフ」ではカタパルトの導入は棄却され、代わりにスキージャンプ台を採用するように変更された。 これによって、CTOL方式の艦上機をスキージャンプで発艦させ、着艦時にはアレスティング・ワイヤーで停止させるというSTOBAR方式が開発された。その準同型艦である「ヴァリャーグ」でもこの方式が踏襲されたほか、同艦を「遼寧」として就役させた中国人民解放軍海軍では、国産化した「山東」でも同様の方式を採用した。またインド海軍も、キエフ級の準同型艦である「バクー」を「ヴィクラマーディティヤ」として再就役させる際にはSTOBAR方式に対応して改装し、国産の「ヴィクラント」でも同様の方式を採用した。 またアメリカ海軍でも、蒸気カタパルトの運用が困難な小型空母を想定して、スキージャンプの研究に着手した。パタクセント・リバー海軍航空基地にスキージャンプ台を設置して、1980年10月にT-2Cを用いてデモンストレーションを行った後、F-14AやF/A-18A、S-3Aを用いた発進実験が行われた。このスキージャンプ台は長さ112.1フィート (34.2 m)で、勾配角は3度・6度・9度とされた。実験は成功を収め、例えばF/A-18Aであれば滑走距離を50パーセント以上短縮して、総重量32,800ポンド (14,900 kg)の状態でも滑走距離385フィート (117 m)で離陸できるとの結果が得られた。 ただしSTOBAR方式では、発艦のためにCATOBAR方式よりも長い滑走レーンを必要とし、航空機の運用効率が低くなり、最大離陸重量も制約される。このため、STOBAR方式は、CATOBAR方式の導入を志向する海軍にとっての過渡的な存在とも評されている。例えば中国人民解放軍海軍が「遼寧」でJ-15を運用した経験では、対空任務では短い滑走レーン(105メートル長)を使用して、甲板上合成風速0ノットの状態であれば、離陸重量27トン(燃料75パーセント、PL-8短距離空対空ミサイル4発およびPL-12中距離空対空ミサイル4発搭載)で発艦可能とされる。もし甲板風速10ノットとなれば離陸重量は28.5トンに増加し、搭載可能な兵装はPL-8 4発とPL-12 8発となる。また対地攻撃任務では長い滑走レーン(195メートル長)が使用され、甲板風速15ノットの状態で、燃料95パーセントで6トンの弾薬を搭載できる。
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