公益法人 公益性の認定

公益法人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/15 03:00 UTC 版)

公益性の認定

従来の公益法人との違い

新制度においては、従来の主務官庁制による許可制とは異なり、新たに公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律に基づき公益法人の所管が内閣総理大臣又は都道府県知事に振り分けられる。実際の審査と監督の権限は、民間人合議制機関が有し、国では内閣府公益認定等委員会がこれに当たる。都道府県における合議制機関の名称はさまざまである[8]。振り分けの基準は、2つ以上の都道府県(海外を含む。)において公益目的事業を行う旨を定款で定めているか事務所を設置している、政令で定められる国の事務または事業と密接な関連を有する公益目的事業を行うのいずれかの場合は、内閣総理大臣の所管となる[9]

公益法人認定法は公益法人の公益目的事業の定義を、学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表23種の事業各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものとしている[10]

認定の条件はいくつかあり、主たる目的とするこれらの公益目的事業の費用の比率を50%以上とし、その事業を行うに必要な経理的基礎および技術能力を持つこと、理事社員から雇用される者に至るすべての関係者に特別の利益を与えないことなどがある[11]。 なお、公益目的事業については、公益法人認定法第5条第6号及び第14条の定め(公益目的事業の収入)から、「赤字事業でなければ認定されない」という誤解があるが、必ず(経常収益)-(経常費用)がマイナスでなければならないということはなく、赤字事業でなければ認定されないという認識は誤りである[12]

税制に関しては、従前の公益法人は単純な収益事業課税のもとにあったが、新制度における公益法人は収益事業課税であるものの、公益目的事業として認定された事業は収益事業から除外される[13]。法人内部でのいわゆるみなし寄附についても、従前は上限が(税法上の)収益事業の利益の20%までであったが、新公益法人については(認定法上の)収益事業等(公益目的事業でない事業の意)に分類される(税法上の)収益事業の利益の100%まで可能となった。また、寄附者についても、従前の公益法人のうち特定公益増進法人に認定されたものは約900しかなかったが、新制度においては公益認定を受けたものはすべて自動的に特定公益増進法人となるため、すべての公益法人についてその公益目的事業に対して寄附を行う個人所得税に関し控除が受けられ、法人法人税に関し一般の寄附金とは別枠で損金の額に算入することができる[14]

公益法人の活動の状況、行政がとった措置などや調査とその分析結果をデータベースとして整備し、国民にインターネットその他のe-Japanなどと呼ばれる高度情報通信ネットワークを通じて迅速に情報を提供するに必要な措置を講ずるものとする[15]

公益法人とその他の一般社団法人・一般財団法人の違い

公益法人(公益社団法人および公益財団法人)とその他の一般社団法人・一般財団法人の違いにはつぎのような事が挙げられる。

準則主義に従い登記により法人格を取得した一般社団法人または一般財団法人のうち、公益目的事業の費用の比率が全体の50%以上である等の認定要件を満たした法人が認定申請すれば、所管の国や都道府県の民間人合議制機関の答申を経て行政庁により認定され公益社団法人または公益財団法人となることができる。公益法人(公益社団法人・公益財団法人)となっても一般法人(一般社団法人・一般財団法人)に係わる法令遵守が変わるものではなく、法人格としては一般社団法人・一般財団法人であり、一般社団・財団法人法の他に公益法人認定法に従うこととなる。公益法人に移行する法人がある一方、公益認定を受けず一般社団法人・一般財団法人に移行するものを通常の一般社団法人・一般財団法人ということがある[16]

通常の一般社団法人・一般財団法人のうち、法人税法上の「非営利型法人」の要件を満たす法人は収益事業課税、それ以外の法人は全所得課税であるのに対して、公益法人は収益事業課税で、なおかつ外形的に収益事業に該当していても公益目的事業として認定されたものは収益事業から除外され非課税となる。寄附者については、公益法人が公益目的事業に対して受けた寄附については、寄附を行った個人や法人には税制上の優遇措置(「従来の公益法人との違い」の項参照)が講じられる[17][18]。また、「みなし寄附金」と呼ばれる、その公益法人内部で「収益事業等」の利益の100%まで非課税の公益目的事業へ寄附をする処理ができる。これに対して、通常の一般社団法人や一般財団法人には「みなし寄附」は認められず、また寄附を行う個人や法人への税制優遇措置もない[19]。金融資産の配当や利子等については、公益社団法人・公益財団法人には所得税道府県民税利子割の源泉徴収はない(ただし公社債の利子については、所定の申告書を取扱金融機関へ提出した場合に限り非課税となる。所得税法11条3項、租税特別措置法第3条の3第6項を参照)が、通常の一般社団法人・一般財団法人については、非営利型の場合もそれ以外の場合も源泉徴収の対象となる。


  1. ^ a b 河上正二『民法総則講義』日本評論社、132頁。ISBN 978-4535515963 
  2. ^ 星野英一『民法概論 I 改訂版』良書普及会、123頁。ISBN 978-4656300110 
  3. ^ たとえば竹内昭夫松尾浩也塩野宏ほか編著『新法律学辞典第3版』有斐閣、1989年(平成元年)、389頁。
  4. ^ (財)公益法人協会編『公益法人用語辞典』(財)公益法人協会、2002年(平成14年)、243頁
  5. ^ 公益法人information
  6. ^ これらの特別法にとっての根拠法及び一般法は、制度改革以前は改正前民法33条・34条民法第三十三・三十四条 (PDF, 34.1 KB) - 民法(明治二十九年法律第八十九号)(抄)、
    第三十三条 法人ハ本法其他ノ法律ノ規定ニ依ルニ非サレハ成立スルコトヲ得ス
    第三十四条 祭祀、宗教、慈善、学術、技芸其他公益ニ関スル社団又ハ財団ニシテ営利ヲ目的トセサルモノハ主務官庁ノ許可ヲ得テ之ヲ法人ト為スコトヲ得(行政改革推進本部事務局)(PDFファイル)閲覧日:2010年(平成22年)1月8日、改革以後は民法33条「法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。2  学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。」。
  7. ^ 前掲『新法律学辞典第3版』389頁、金子宏・新堂幸司・平井宜夫ほか編著『法律学小辞典第4版補訂版』有斐閣、2008年(平成20年)、331頁
  8. ^ 認定法 第32、33、50条
  9. ^ 認定法 2,3条
  10. ^ 認定法 第2条第4号
  11. ^ 認定法 第5条
  12. ^ 2010年4月28日付「委員会だより(その3)」(内閣府公益認定等委員会) (PDF, 34.1 KB) 10頁 - 11頁
  13. ^ 法人税法施行令第5条第2項
  14. ^ 所得税法78条及び所得税法施行令217条、法人税法第37条及び法人税法施行令第77条
  15. ^ 認定法 第57条
  16. ^ 整備法 第45条ほか
  17. ^ 認定法 58条
  18. ^ 公益法人などに対する課税に関する資料財務省
  19. ^ みなし寄附金(公益法人協会)


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