エネルギー エネルギーの概要

エネルギー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/03 04:45 UTC 版)

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概説

現在用いられているようなエネルギーという概念が確立したのは19世紀後半のことであるが[5]、概念の確固たる成立はともかくとして、「エネルギー」という用語は、19世紀のはじめ、トマス・ヤングが1807年に著書『自然哲学講義』(: A Course of Lectures on Natural Philosophy) の中で、従来使われていた「力」を意味するラテン語 vis の代わりとして提案された[4]

「エネルギー」の語源となったギリシア語ἐνέργεια (ギリシア語ラテン翻字: energeia) は、ἐνεργός(ギリシア語ラテン翻字: energos) に由来する。これは、ἐν(エン)と ἔργον(エルゴン)を組み合わせた語で、ἐν前置詞ἔργον (ギリシア語ラテン翻字: ergon) は「仕事」を意味する語である。つまり、「物体内部に蓄えられた、仕事をする能力」という意味の語である。エネルギーという概念は「仕事」という概念と深い関わりがあるのである。

このようにエネルギーという語・概念は「物体が仕事をなし得る能力」を意味したが、その後、自然科学の説明体系が変化し、電磁気もエネルギーを持つことが知られるようになり、さらに、質量までがエネルギーの一形態である、と理解されるようになった[2]

歴史

現代において「エネルギー」という語で呼ばれている概念には、ひな形(あるいは萌芽と呼んでもよいもの)があり、その概念は、ヨーロッパ近世においては「エネルギー」とは呼ばれておらず、ラテン語vis(ウィス、の意)と呼ばれていた。この概念が様々な経緯を経て、現在の「エネルギー」という概念に似たものに変化してゆくことになった。

1600年頃のこと、ガリレオ・ガリレイは、の頭に(金づちよりもはるかに)重い物(など)をのせても、釘は木の中にめりこんでゆかないのに、それよりも軽い金づちでも振って打つだけで、釘が木材に入ってゆく、ということを、ひとつの問題として取り上げ、運動する物体には何らかの固有の「ちから」がある、との考え方を示した。

デカルトは、1644年に出版された著書において、衝突という現象においては、物体の重さ速さ(現在の式で言えば、おおよそ mv に相当するような量)が保存されるとし、この量こそが物体の持つ「ちから」である、と述べ、この量は保存されている、と主張した。

ライプニッツは、重さと速さの二乗の積(現在の式で言えば、おおよそ mv2 に相当する量)こそが「ちから」である、とし、この量が保存されている、と主張した。なお当時、静力学の分野では、vis mortua(死んだ力)という概念があったが、その概念と対比ししつつ、ライプニッツはその力 mv2vis viva(生きている力、活力)と呼んだ。

デカルトの考え方とライプニッツの考え方では、数式上異なった結論が導き出される。デカルト派の人々とライプニッツ派の人々の間で「ちから」の解釈に関する論争が起き、この論争は実に50年ほども続いた。この論争を活力論争[6]と言う。

この問題についてレオンハルト・オイラーは、1745-50年頃執筆された手稿「自然哲学序説」の中で (1) 両主張の差異は運動と力の関係を同一時間で比較するのか()または同一距離で比較するのか()の違いであること、(2) 慣性を物体に内在する「力」に置き換えることが誤りであること、を示している[7]

その後、ガスパール=ギュスターヴ・コリオリが、活力が であることを示した[4]。これは、今日で言うところの「運動エネルギー」に相当することになる[4]

一方、1840年代に入るとロベルト・マイヤージェームズ・プレスコット・ジュールエネルギー保存の法則の存在に気づき、1847年にヘルマン・フォン・ヘルムホルツがこれを熱力学の第一法則とし、1850年にはルドルフ・クラウジウスが熱力学の第一法則の定式化を行った。また、1824年にはサディ・カルノー熱力学第二法則につながる発見をし、1850年代にはクラウジウスとウィリアム・トムソン(ケルヴィン卿)がそれぞれ独自に熱力学第二法則を導きだした[8]

熱力学

熱力学において、ある条件の元で仕事として取り出すことのできるエネルギーとして自由エネルギーが定義される。自由エネルギーには、ヘルムホルツの自由エネルギーギブズの自由エネルギーの 2 つがある。ヘルムホルツの自由エネルギー[9]は等温操作によって熱力学系から得られる仕事の最大値として定義される。ギブズの自由エネルギー[10]は等温等圧操作によって得られる仕事の最大値を与える。

自由エネルギーは、適切な変数の下では平衡状態の熱力学系のすべての情報を持った関数、すなわち熱力学ポテンシャルとなる。また、平衡状態は自由エネルギーが極小である状態として実現する。このように、自由エネルギーは理論的な道具として良い性質を持った量である。

一方、工学などの応用領域においては、熱力学系で仕事に寄与する有効エネルギーのみに意味があり、それを評価する量としてエクセルギー[11]が考案されている。反対に、熱力学系の仕事に寄与せず捨てられる無効エネルギーをアネルギーと呼ぶ。カルノー効率によれば、エクセルギーとアネルギーの発生割合は、高温側の熱源と低温側の熱源の温度比のみで規定されている。


注釈

  1. ^ 系全体のハミルトニアンの固有状態を特にエネルギー固有状態と呼び、固有値をエネルギー固有値と呼ぶ。エネルギー固有状態とは、エネルギーがある 1 つの値に定まった状態を指し、エネルギー固有値はそのときの系のエネルギーに等しい。
  2. ^ 正確にはその 1/2

出典

  1. ^ a b 小学館『デジタル大辞泉』
  2. ^ a b 岩波書店『広辞苑』、第5版、301頁、「エネルギー」。
  3. ^ 朝永 1981, p. 67.
  4. ^ a b c d 培風館『物理学辞典』(1998)、pp.191-193。
  5. ^ a b c 『世界大百科事典』第3巻、pp.613-615、エネルギー。
  6. ^ : the vis viva dispute
  7. ^ 山本義隆、『古典力学の形成 ニュートンからラグランジュへ』、日本評論社 (1997)、pp.181-184。
  8. ^ 「はじめて学ぶ科学史」p89-92 山中康資 共立出版 2014年9月25日初版1刷
  9. ^ : Helmholtz free energy
  10. ^ : Gibbs free energy
  11. ^ : exergy
  12. ^ 江沢 2002, pp. 112-116, §6.3 観測.
  13. ^ 須藤, 2008 & 12.3 演算子と固有値・固有ベクトル, pp. 177-180.
  14. ^ 江沢 2002, pp. 127-128, §7.1 定常状態.
  15. ^ 江沢 2002, pp. 121-122; 127-128, §6.3 観測; §7.1 定常状態.
  16. ^ a b 江沢 2002, pp. 100-103, §6.1 物理量を表す演算子.
  17. ^ 砂川 1987, pp. 227-229, 第 5 章 マクスウェルの方程式 §2 電磁場のエネルギーと運動量.
  18. ^ 砂川 1987, pp. 74-75, 第 1 章 静電場 §6 静電場のエネルギーとマクスウェルの応力.
  19. ^ 砂川 1987, pp. 227-229; 284-286, 第 5 章 マクスウェルの方程式 §2 電磁場のエネルギーと運動量; 第 7 章 電磁波とその放射 §1 自由空間における電磁波.
  20. ^ 砂川 1987, pp. 111-112; 229-233, 第 2 章 定常電流 §2 オームの法則; 第 5 章 マクスウェルの方程式 §2 電磁場のエネルギーと運動量.
  21. ^ 砂川 1987, pp. 229-233; 284-286, 第 5 章 マクスウェルの方程式 §2 電磁場のエネルギーと運動量; 第 7 章 電磁波とその放射 §1 自由空間における電磁波.
  22. ^ 八坂保能編著『電気エネルギー工学 新装版 発電から送配電まで』森北出版、2017年、5-6頁。
  23. ^ 「科学は歴史をどう変えてきたか その力・証拠・情熱」p145-148 マイケル・モーズリー&ジョン・リンチ著 久芳清彦訳 東京書籍 2011年8月22日第1刷
  24. ^ 「科学は歴史をどう変えてきたか その力・証拠・情熱」p160-161 マイケル・モーズリー&ジョン・リンチ著 久芳清彦訳 東京書籍 2011年8月22日第1刷
  25. ^ 「科学は歴史をどう変えてきたか その力・証拠・情熱」p185 マイケル・モーズリー&ジョン・リンチ著 久芳清彦訳 東京書籍 2011年8月22日第1刷
  26. ^ https://www.fepc.or.jp/enterprise/jigyou/world/index.html 「世界のエネルギー消費と資源」電気事業連合会 2019年11月26日閲覧
  27. ^ a b 「エネルギー革命」『世界大百科事典』3、平凡社、615頁。
  28. ^ 八坂保能編著『電気エネルギー工学 新装版 発電から送配電まで』森北出版、2017年、6頁。
  29. ^ 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 pp.55–57。
  30. ^ 計量単位令(平成四年政令第三百五十七号)別表第6(第5条関係) 第13号”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2019年12月17日閲覧。
  31. ^ International Energy Agency (IEA). “Unit Converter” (英語). 2012年4月29日閲覧。






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