鶏卵汚職事件
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2020年12月2日、吉川が広島県福山市の大手鶏卵生産会社アキタフーズ元代表の秋田善祺(当時は日本養鶏協会幹部)から複数回にわたって数百万円の現金を受け取った疑いで、東京地検特捜部が捜査していると報じられた。 本事件は、広島県を地盤とする河井克行と妻・河井案里による、案里の第25回参議院議員通常選挙への出馬を巡る一連の選挙違反事件(河井夫妻選挙違反事件)の捜査がきっかけで発覚した。吉川と河井克行は初当選同期で以前から親しかった(前述)。吉川に秋田を紹介したのは河井克行で、関係者によると秋田は河井克行から2013年に農水副大臣に就任した吉川を紹介されて以降、夏は「お中元」、年末には「お歳暮」として現金を提供していた。 吉川は12月2日付で党内の役職を辞任。また、不整脈で入院したと事務所を通じて発表した。この問題では内閣官房参与だった西川公也も接待を受けていたことが報じられ、同月8日に西川は内閣官房参与を辞任している。 その後、同月21日に事務所を通じて「健康上の理由により職責を果たすことが難しい」として、衆議院議員を辞職することを表明、翌22日に大島理森衆議院議長へ議員辞職願を提出、同日辞職が許可された。 吉川は特捜部の任意の事情聴取に対し、現金500万円の受領を認めた上で「返すつもりだった」などと供述したことが同月24日に関係者の話で分かった。また秋田から受領した現金のうち200万円については、秋田らから家畜のストレスを減らすためのアニマルウェルフェア(動物福祉)の考え方に基づく国際的な鶏の飼育指針に関する陳情を受けて間もなく受領していたことが関係者の話で分かった。 秋田は特捜部の任意聴取に対して吉川への現金提供を認め、趣旨について「業界のためだった」などと供述した。現金提供があった時期に秋田は吉川に対し「鶏の飼育環境を巡る国際機関の指針案に反対すること、日本政策金融公庫からの養鶏業界向け融資を拡大すること」を求めていた。 同月25日、特捜部が衆議院議員会館や札幌市の吉川の事務所で家宅捜索を行った。 2021年1月1日、現金の受領総額は2015年以降、1800万円に上るとみられることがわかったと報じられた。新たに判明した計1300万円の現金授受は、農水相就任前の2015~18年と退任後とみられる。 同月15日、特捜部と広島地検は吉川を収賄罪で、秋田を贈賄罪でそれぞれ在宅起訴した。起訴状によると、吉川は農水相在任中の2018年11月~19年8月、国際的な鶏の飼育指針案や日本政策金融公庫の業界向け融資を巡り、養鶏業界に便宜を図ってほしいという趣旨と知りながら、都内のホテルや大臣室で3回にわたり、秋田から現金計500万円の賄賂を受領したとされる。特捜部は吉川の健康状態などを考慮した結果、証拠隠滅や逃亡などの恐れが少なく「逮捕の必要はない」と判断したとみられている。 一連の収賄がおこなわれていた最中の2019年1月、農林水産省は日本国政府の意見として、国際獣疫事務局(OIE)が策定中だった鶏の飼育環境改善案に対する18ページにわたる反対コメントを提出したが、その後、みずから組織した検証委員会で「政策が歪められた事実は認められなかった」と結論づけた。 2月25日、農林水産省は、吉川と秋田が同席する会食に参加していた農水省幹部6人について、枝元真徹次官ら3人を減給10分の1(1か月)、2人を戒告の懲戒処分とし、1人を訓告とした。飲食費を秋田側が負担していた。 10月6日、秋田に贈賄罪などで執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。なお、吉川は「政治献金の趣旨だと受け止めていた」と無罪を主張していた。 2022年5月26日、吉川に懲役2年6月・執行猶予4年、追徴金500万円の有罪判決が言い渡された。 6月8日夜、吉川は弁護士を通じてコメントを出し、「事実と異なる内容を認定した判決には大いに不満が残る」「体調も芳しくなく、これ以上、関係者の皆様にご心配やご迷惑をおかけすることはできない。こうした事情に 鑑み、控訴を断念する」と表明した。検察側も期限の9日までに控訴しなかったため、10日に判決が確定した。
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鶏卵汚職事件
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「河井夫妻選挙違反事件」の記事における「鶏卵汚職事件」の解説
2020年7月4日、検察当局は河井事件の関係先として、鶏卵生産会社「アキタフーズ」の東京本社と広島県福山市の本社などを家宅捜索し、アキタグループ元代表による「政界工作」の証拠を押収した。この家宅捜索の余波として、アキタフーズは2020年8月5日付で、アキタフーズグループ代表が辞任し、グループ代表の長男はアキタフーズ社長職が解かれ生産管理部門担当の取締役に就き、アキタフーズ会長が後任の社長に就いた。更に、2020年12月2日、アキタフーズグループ元代表が鶏卵業界に便宜を図ってもらう目的で、元農林水産大臣の吉川貴盛衆院議員(当時)に対し、大臣在任中に現金を提供した疑いで東京地方検察庁特別捜査部が動いていることが報じられた。鶏卵業界団体の役員を務めていたアキタフーズグループ元代表は河井克行の紹介で吉川農林水産大臣と知り合ったが、吉川と克行は衆院初当選が平成8年の同期で交流が長く、克行は平成25年に農林水産副大臣に就任した吉川をアキタフーズグループ元代表に紹介した。12月22日、吉川は自身の健康状態を理由に衆議院議員を辞職した。12月25日午前、東京地方検察庁特別捜査部は、衆院議員会館(東京・永田町)や札幌市の吉川の事務所などに収賄容疑で家宅捜索に入った。既に吉川の任意聴取も行っており立件を視野に押収資料の分析などを進める方針。 続いて、2020年12月8日、西川公也(元農林水産大臣)が「一身上の都合」で内閣官房参与を辞任。同日、アキタフーズグループ元代表が西川公也にも現金数百万円を提供した疑いがあり、東京地方検察庁特別捜査部も把握し、現金の趣旨や参与の権限などを慎重に疑惑を捜査しているもようと報道された。西川は2020年11月、取材に「政治資金規正法にのっとり、適正に処理している」と話し、不正な受領はないと説明したが、政党支部や資金管理団体の政治資金収支報告書に記載はなかった。西川はアキタフーズグループ元代表からアキタ社所有のクルーザーで2020年7月3日に元農林水産官僚らとともに接待されていたことが判明、また、西川は2018年1月からアキタ社の顧問を務め、別の政治家にアキタフーズグループ元代表を紹介するなどしていた。西川は河井克行と当選同期で一緒に会食する間柄だった。 2020年12月27日、鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県福山市)グループの元代表から現金を受領したとされる元法相で衆院議員河井克行の政治資金パーティーを巡り、パーティー券の購入者が偽装されていた可能性があることが報道された。政治資金規正法では、1回で20万円を超すパーティー券を購入した人の氏名などを政治資金収支報告書に記載する必要があるが、アキタ社関係者は取材に克行側のパーティー券について「20万円を超えると名前が出るので、グループ会社7社を使っていた」などと証言した。 多額のパーティー券を購入したアキタ社を収支報告書に登場させなかったり、金額を減らしたりするためだった疑いがあり、東京地方検察庁特別捜査部は本人名義以外での購入を禁じた規正法に抵触する可能性があるとみて、広島地方検察庁特別刑事部と共に克行側の認識などを調べているもよう。 2021年1月15日、東京地方検察庁特別捜査部は、吉川貴盛元農林水産大臣を大臣在任の前後にも現金を提供され2020年までの6年間に現金総額1,800万円を渡されたうち、大臣在任中の500万円が大臣の職務に関する賄賂にあたると認定し収賄罪で在宅起訴し、アキタフーズグループ元代表も贈賄罪で在宅起訴した。また、アキタフーズグループ元代表は、実際には会社が購入した吉川元農林水産大臣の政治団体のパーティー券300万円分と河井克行元法務大臣の政治団体のパーティー券234万円分を複数の社員などの名義で購入したように装っていたとして、他人名義での購入などを禁じた政治資金規正法違反の罪でも在宅起訴された。1月17日、アキタフーズグループ元代表が平成31年3月に吉川に手渡し賄賂と認定された現金200万円について、吉川側が「資金が必要」と催促していたこと、吉川側の現金の要望を伝えたのは元法相で衆院議員の河井克行だったことが報じられた。 西川公也元農林水産大臣は、大臣を辞任したのは5年以上前で収賄罪の時効をすぎていること、内閣官房参与で非常勤の国家公務員だったがアキタ社で顧問も務めており「給与」との切り分けが難しいこと、内閣官房参与は非常勤で職務権限が明確ではないことなどから、収賄罪などに問うのは難しいと判断された。また、一時はアキタ社の顧問として贈賄側での立件も検討されたが立件されていない。 2021年1月29日、農林水産省は、「養鶏・鶏卵行政に関する検証委員会」を設置した。委員会の構成メンバーは、井上宏(弁護士)、酒井健夫(日本大学名誉教授)、榊田みどり(農業ジャーナリスト)、谷口将紀(東京大学大学院法学政治学研究科教授)。座長は、委員の互選により選出される。 2021年2月25日、農林水産省は、吉川貴盛元農林水産大臣への贈賄罪で在宅起訴された鶏卵生産会社「アキタフーズ」(広島県福山市)前代表の接待を受けたとして、枝元真徹事務次官ら6人の幹部職員を処分し、国家公務員倫理審査会の承認を得て処分を発表した。国家公務員倫理法は国家公務員に対し、利害関係者の負担による会食を禁止している。野上浩太郎農林水産大臣は閣僚給与1か月分を自主返納する。 2021年6月3日、農林水産省の第三者委員会である「養鶏・鶏卵行政に関する検証委員会」(座長:井上宏弁護士)は、収賄罪で元農林水産大臣の吉川貴盛被告が在宅起訴された汚職事件をめぐる報告書を野上浩太郎農林水産大臣に提出した。第三者委員会は、一連の事件による元代表からの要望を受けた政策変更は確認されず、養鶏・鶏卵政策決定過程での判断がゆがめられた事実は認められなかったと報告した。吉川被告らによる幹部職員に対する働き掛けがあったほか、吉川被告が同席した上で幹部職員への接待会食があったが、政策決定に影響を与えたとは認められなかったと結論付けた。同日、野上農林水産大臣、農林水産省内で記者会見し、「二度と疑念を持たれることがないように国民の厳しい視線を意識し、公正な農林水産行政を心掛けたい」とコメントした。 2021年6月28日、東京地方裁判所で開かれた初公判で、アキタフーズグループ元代表は、吉川貴盛元農林水産大臣に大臣在任中の2018年11月から19年8月にかけて養鶏業界に便宜を図ってもらう趣旨で3回にわたり現金計500万円を渡したとされる起訴内容を認めた。弁護側も争わない姿勢を示した。 2021年8月3日、吉川貴盛被告は東京地方裁判所(向井香津子裁判長)で開かれた初公判で「いずれも政治献金と受け止めていた」と起訴内容を否認し、無罪を主張した。 2021年10月6日、東京地方裁判所(向井香津子裁判長)は「アキタフーズ」(広島県福山市)グループ元代表 秋田善祺被告に対し、「農林水産行政や国政に対する国民の信頼を大きく害した」として、懲役1年8月、執行猶予4年(求刑・懲役1年8月)の判決を言い渡した。 2021年11月16日、東京地方裁判所で吉川貴盛被告の公判が行われ、証人として出廷した「アキタフーズ」(広島県福山市)の秋田善祺前代表(贈賄罪などで有罪確定)が、吉川元農林水産大臣に大臣在任前後と合わせて14回にわたり計1800万円を渡したと認めたうえで、現金を渡した理由は「政治活動を支援するためだった」「タニマチ(有力支援者)的な気持ちからだった。お願いをするために金を渡したことはない」と説明し「贈収賄と言われればしようがない」と述べた。 2022年3月23日、東京地方裁判所で吉川貴盛被告の公判が行われ結審した。検察側は「現金は養鶏業者に便宜を図ってもらおうと渡された。受け渡しには隠語が使われ、収支報告書に記載もしていない。賄賂の認識がありながら受け取ったことは明らかだ」「現金はトイレの入り口で背広のポケットにねじ込まれるなど通常の寄付と考えると異常」「農相でありながら、順法精神の欠如が著しい」「農林水産行政の最高責任者である現職大臣が現金を受け取った事案で、収賄の悪質性が高い」として、懲役2年6カ月、追徴金500万円を求刑。弁護側は現金受領を認めた上で「応援の趣旨で受け取っていた。賄賂と認識していない」と無罪を主張した。吉川は、「(秋田から)現金を受け取ってしまったこと、政治資金規正法にのっとった処理を行わなかったことは最大の不徳の致すところ」と述べ、謝罪した。 2022年5月26日午前、東京地方裁判所(向井香津子裁判長)は、東京都内のホテルや大臣室で3回にわたり大手鶏卵会社「アキタフーズ」(広島)の秋田善祺前代表(贈賄罪などで有罪確定)から計500万円を受領した吉川貴盛元農林水産大臣に、「家畜の飼育環境に関する国際的な基準案に国として反対するなど、養鶏業者に有利な取り計らいをしてほしいとの趣旨を含む現金だろうと認識していた」と指摘し、受け取った500万円すべてを賄賂だと認定した。さらに、現金を受け取ったあと、元大臣がそれについて検討する会議の開催を職員に指示し、便宜を図ったことも認定した。「養鶏業界に強い影響力を持つ元代表から多額の現金を繰り返し受け取ったことは、大臣の職務や農林水産行政の公正さを害する危険性が高く、非常に悪質だ。業界側から繰り返し陳情を受ける中で安易に収賄行為に及び、受け取った現金をすべて使った。高い倫理性などが求められる大臣としての自覚が欠けていたというほかない」として、懲役2年6か月、執行猶予4年、追徴金500万円の有罪を言い渡した。判決について吉川貴盛元農林水産大臣は、弁護士を通じて「私の主張が受け入れられなかったことは誠に残念です。判決内容を精査し、弁護士とも協議のうえで適切に対応したいと考えています」とコメントを出した。岸田文雄総理大臣は、衆議院予算委員会で「個別の裁判所の判断について、私の立場から政府としてコメントすることは控えなければならないが、本件で国民の政治不信を招いたことは重く受け止める必要がある。政治家は、その責任を自覚し、国民に疑念を持たれないよう襟を正し、緊張感をもって仕事に取り組むことが重要だ」と述べた。 2022年6月8日夜、吉川貴盛元農林水産大臣は弁護士を通じてコメントを出し、「事実と異なる内容を認定した判決には大いに不満が残る」「体調も芳しくなく、これ以上、関係者の皆様にご心配やご迷惑をおかけすることはできない。こうした事情に 鑑み、控訴を断念する」と表明した。検察側も控訴しなかったため、10日に判決が確定した。
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