造園分野
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/03 09:48 UTC 版)
造園分野でも造園計画や設計.施工、維持管理などに際して図面をそれぞれ作製される。 使用される縮尺とその図面の種類は、標準的なものが下記のとおりである。 1/50000 - 土地利用の計画などで使用される。地形図など 1/25000 - 公園緑地の配置計画など 1/10000 - 地域のランドスケープ計画など 1/3000 - 300ヘクタール以上の造園、大規模な公園やレクリエーションエリアの基本計画など 1/1000 - 100ヘクタール程度の造園空間、たとえば住宅団地などの基本計画図、造成計画平面図など l/500 - 30ヘクタール以下の造園空間、たとえば都市基幹公園の基本設計、基本計画など l/200 - 公園の実施設計計画など 1/100 - 小公園や都市広場の実施設計など 1/50 - 庭園や緑道などの実施設計 1/20 - 造園施設の詳細図など 1/10.1/5 - 部分詳細図など またさらに上記で小規模で分かりにくいものに際しては、拡大したものを製作する場合がある。 1/1 - 原寸図。通常は小規模施設等の検討用 造園の設計では基本計画や基本設計から実施設計まで、どれも平面図が同じとなるため、造園の計画図面段階においてはマスタープランを表現する図面の他に「概念図」を描く。ゾーニングや動線計画などを含めた、かたちにする以前の概念の組み立てとして図面を作製する。こうして設計段階のプロセスから整理し土地利用の仕方を理解する。 造園の設計図面には、アイデアや完成イメージを伝えるためのプレゼンテーション用の図面と造園工事実施用の施工図面とがある。 プレゼンテーション用の図面は主にコンペティション(設計競技)やクライアント(施主)への説明のための図面であるが、図形記号よりも絵画表現・描法に近く、表現技法について筆記用具を駆使して線の太さ強弱と濃淡、定規での使用線やフリーハンドで描く、必要に応じ着色、などが重要となる。 プレゼンテーションでは、図面の印象は非常に重要となるため、どのような表現をとるのかを考慮し、平面図上で陰影をつけるなどから、樹木および地表面の描画手法のバリエーションの工夫を行う必要がある。 テクスチャ(肌理)により地表面を表現しておくと、あとは簡易な色付けで図面を完成させることができる。芝生地のように面が広がる地表面の場合には、輪郭部分だけのテクスチャを入念に描く表現が行われる。 また上記投影法を駆使して鳥瞰図などの完成予想図、見取図などを製作する場合も非常に多い。鳥瞰図(Birdseye View)は一種の透視図でもあるが、視点の位置を一層高度にしたもの。配景図ともいい庭園設計の場合多く用いられる。工事目的物の設計意図や竣工姿をより端的に、より直視的に施工者に伝達する意図で作製される場合もある。 施工図面は施工時に必要な正確な寸法や仕様を示した設計図である。 各種の設計図で植栽に関しては、必要に応じ樹冠の大きさと樹幹の位置、木の特徴をわかるような表現で描写し、木のかたまりが必要な場合は、樹木群として樹冠の輪郭線のみを描写するが、低木の場合、樹冠の輪郭線だけが示されることが多い。造園製図を参照。 工事に伴い早速設計し作図を行われる。1枚の図面に表現しきれないときには施設別、工種別に複数の図面にする場合がある。 一般につぎの図面が作図される。 現況図(実測平面図) 対象地の地形や地質、敷地境界がわかる実測の平面図で、これに加えて地質、植生と植物生育状況、景観の状況、利用の銅線と到達性、既存施設との関係、給排水や電気などの現地設備の様子がわかる図面。工事図書としては計画敷地の状況が精査され、包括的に現況の地盤高や法面の位置などが表示されている。 構想図(エスキス) 対象地の平面図を元に、構造を平面図またはイメージ図として、描き入れた図面。あくまで構想用の図面であり、施工に際して必要となるわけではない。 計画平面図(Plan) 平面図とは空から下を見た姿で表現した図。設計図の中心ともなるもので、計画平面図は計画の一般的平面図で、対象地の設計意図を総括的に網羅している。構想から縮尺をつけてしだいに明確に位置と規模、収まり等を決定するために必要とする図面。現況図に基いて地割したもの。スケールは50から100分の1、中規模庭園以上の場合には100から200分の1、広地積のときは300分の1以上が用いられ、工事実施の場合には、更に工種別の平面図が必要な場合もある。同時に施設やその周辺の取り合いから、植栽の種類を決定などを行う。 なお、平面図類には、縮尺と方位、敷地境界線を忘れずに描く必要がある。平面図の縮尺はコピーによる縮小、拡大に備え、スケールバーにより表されることが多い。敷地境界線は一点鎖線などであらわす場合がある。また必要に応じて座標位置等も記入する。 位置図と案内図 位置図は事業の対象地の位置を表す図面。対象敷地の周辺状況を表示している。案内図は対象地の位置関係が広域からわかるように主要交通網や目標となるランドマークが記入されている図面。 求積図 別名で丈量図とも呼ばれ、必要に応じ用意される。敷地の面積を三角に区分していく三斜法などで表した図面。区分ごとに一覧表に整理され面積が計算される。 地割図と施設配置図 地割図は敷地ゾーニング図で、基本計画の下になる敷地全体図をそれぞれの性格の目的によって分けたものを表した図面である。施設配置図は対象地敷地の各施設位置、形状、規模を示した図面。いずれも施設等の記号、名称、形状と各種寸法、数量や単位が記入されており、これによって諸施設の位置と大きさ等が示される。 割付平面図(割付図) 石や二次製品などの割付、施設配置に関する詳細な図面となるもので、施工に当たっての施工図はこの平面図をもとにして作成され、丁張等がなされる。 造成平面図・造成断面図 両者とも基礎的な地盤造成にかかわる図。切土、盛土など、土地造成に関する情報を網羅しており、現況と計画の地盤高、場合によっては等高線を表し、比較検討できるよう作成される。擁壁や石積み、排水等を伴い、その構造等を示すために展開図や詳細図、断面図が用意される。 立断面図 立面図は横から見た図で、断面図はある断面を切断した際に表現される図。平面図上の2点を結ぶラインで地表を切断し、横から眺めた図である。造園では場合によっては、立面図と断面図を組み合わせた立断面図として作図される場合がある。これは断面図のように切断面における地形、段差、壁、天井、樹冠等の高さの関係をわかりやすく表現する他に立面図のように後方に立つ物体のデザインも同時に表現できる特長が生かせるためで、さらに人物を描き入れスケール感を、空や地面をも描き加え臨場感を出すことを行う。どこの立断面図であるかわかるように平面図上に切断ラインを示す2点と、どちら向きに眺めた図であるのかを表す矢印を描き入れておく。 縦断図 細長い敷地で造成の必要が生じる場合、必要に応じて法線等に沿った縦断方向の断面図も作成される。 植栽図 植栽は小規模な場合や簡単な地割計画なものでは計画平面に表されるが、大規模なものや複雑な計画の場合、わかりやすいように植栽の種類や配置、規模や割付に関する専門の平面図面を作製する。地割図や施設配置図同様、植栽に関する名称や必要な事項を記号で記載し、図上に一覧表に整理し添付する。 詳細図(detail:ディテール) 建築や土木の設計図同様、必要に応じ局部的なものを各局部ごとに必要に応じて作成し、全体からみた詳細部分について決める詳細を作製する。施設詳細図として施工区域の一部の縮尺を拡大して施設配置や植栽等での密度の高い区域で500分の1程度の平面図のみでは工事目的物の詳細意図が表現しきれないときに作成される。工作物等の局部を重点的に詳細化の過程で一般的には普通スケールは10-20分の1を採用するが、時には原寸図を作ることもある。 施設構造図 施設を伴う場合、その各種の構造を示す構造図面を作成する。縮尺の大きなものは構造詳細図とも呼び、平面図から立面図、側面図、断面図、展開図などを第三角法などを用いるなどして表される。 電気設備図・給排水設備図等 建築同様、これら一連の設備についても図面製作が必要となる場合がある。電気設備図は照明、放送、動力等の架空線や地下埋設線等の配管、配線平面図。給排水設備図は屋外施設のための給水・排水等の配管平面図である。 その他 建築同様場合により図面にて特記仕様書・仕上表、また簡易な施設を設置する場合に必要に応じその施設の矩計図や梁伏図と建具表、側面図、正面図、展開図、施工図、配筋図(加工図、鉄筋表など)も作製。発注者の作成した設計図書と施工現場の地形等の間には何らかの理由により若干の差異のあることが多く、このような場合に現場の管理者は現地に即応したおさまりをつけるためや、寸法に遊びの少ない施設を施工するに際して施工図を作成することにより、きれいに設計意図を現地におとすことが可能となる。この他土工図(整地部分、給排水管埋設図、ケーブル敷設図、各所集水枡や浄化槽配置図等)、工作物配置図(池泉、流れ、壁泉·配石·舗床、舗道·階段、その他庭園建造物·門·外囲等の配置)や配植物図(常緑高木と落葉高木との組合わせ、それに各種低木類等の配植、芝生·下草等の張付け·植付け箇所等)の3工種別の図面を用意するが、それらを色分けなどで区別して、2種類ですます場合もある。 スケールはなるべく大なるものが分り易いが、50分の1ぐらいが最も使用される。これは大なるスケールの場合には図上に配植物、配石、工作物等のスケール·材質·工法、仕上げ意匠等の大要まで記入することもでき、仕様書をも兼ねたものなら現場使用に便利が多い。 外構図 造園設計として建築の外構・エクステリアを設計する場合も、建築同様、建物の外回りの状態を図で示す。一般には植栽も同時に描き込むが、情報が込み入りが図示複雑な表現となる場合は別に植栽図を作成する。 原寸図 精密な工作物等を製作するときに設計図を拡大した原寸大の図面や姿図。これをつくってなぞることで施工をおこなう。 変更図面 工事の着手後に事情の変化によって設計変更の行われるケースは非常に多く、この変更内容を伝えるために変更図面を用意する。変更箇所を朱書きにする方法や、変更前後を併記、原設計図の第二原図を作製し、変更箇所を追い描きして線の濃淡で表すなどの手段によって、変更内容を表す。 竣工図 原設計図に実施の変更を加えて、作製した図面。内容変更に伴い、発注当初の図面と竣工させたものとの間に差異が生じることがある。このため、工事の竣工検査や管理者への引渡し、施設公開後の管理など、この図面によってなされる。 成果として提出する図面類の順は通常は次の通り。 表紙と目次または図面一覧 案内図 配置図(完成図) 現況図(完成前の現地状況図) 造成平面図・造成断面図 平面図(仕上図) 寸法図 レベル図・断面図・詳細図など 植栽図 必要に応じて設備図・仮設図等 また、建築と同様に仕様書を図面形式で作成し、これらをセットで製本しておくことも多い。仕様書は施主、設計者、施工業者のための拠りどころともなり、工事上における一種の契約書にもなり得る。 庭園事業の設計図を分類すると平面図、鳥瞰図、詳細図など。他に立面図·断面図·透視図等も、特別の工事以外にはそう必要もない。 大規模外部空間造園/ランドスケープエリア設計で一般的な実施設計での図面リストとして、対象エリアが広くない場合は外構平面図・植栽図・詳細図、程度の図面とし、設備関係は建築の設備図に記入することもある。 図面の他に仕様書や特記、メーカーリストなども図面形式で作成して同じ冊子に綴じこんで提出する場合もあるが、大規模事業の場合は共通仕様書として旧建設省や国土交通省、URなどの公共団体が発行している公園工事共通仕様書を「公共団体が作成した者に準ずることとする」とする場合もある。 対象エリアが広範囲になるにつれて、より詳細図などの詳しく示した図面類が多くなる。種類等としては以下の通りのものがある。 施設詳細図 - 例)門扉詳細図、滝詳細図、パーゴラ詳細図など 平面詳細図 - 例)エントランス部分平面詳細、池平面詳細、坪庭平面詳細 など 断面詳細図 - 例)舗装断面詳細図、縁石断面詳細図、側溝断面詳細図、擁壁断面詳細図 など 備品配置図・備品詳細図、サイン配置図・サイン詳細図 など 現況植生図・伐採移植計画図 植栽に関する詳細植栽図、高中木植栽図、低木・地被植物植栽図 客土図、客土断面詳細図 支柱詳細図 外構電気設備図、外構排水設備図、外構給水設備図 電気設備詳細図、給水設備詳細図、排水設備詳細図 排水設備詳細図、排水断面詳細図 など
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