造園の特徴と意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 09:12 UTC 版)
このように、「造園」の定義は様々なものがあるが、これらを要約すれば、造園とは美学的、科学的理論を活用しながら、美と実用すなわち休養、教化、保健、体育、保安等を目的として、自然(地形、水、植生等)その他の要素を編成(アレンジ)し、人間の屋外における理想的な物的環境を構成することといえるが、造園についての定義に従って、造園の意義を他の土木・建築といった広義の物的環境構成のための科学技術と比べてみると、造園における物的環境の構成は、自然(地形、水、植生・気象等を含めて)及び人工材料、施設がそのおもな要素としてなされること、特に植物に重点がおかれていることがあげられる。庭や街路、都市の広場など外部空間はすべてひとつの物理的な空間であり、人々はこの空間における人間と自然とのかかわりの現象を風景としてとらえるが、風景そのものは庭でも広場でもない。庭や広場はその形態要素や構造、素材の選択などを経て物理的空間として形成されてきたものである。 風景はこの物理的空間上でさまざまな現象や出来事が起こる場面の集積としてとらえられるが、そこには境界領域が明確な物理的空間と界隈のように人々が集まったり特定の行為や出来事によって意識化される、さらには人間のスケールを越えたプリミティブな、そうした自然空間をも含まれている。これらは特定の機能によって定義されるものではないから、あらゆる解釈ができ多様な使われ方が出来る。ノルベルクシュルツはこうした特定の性格をもつ空間としての場所を空間+性格として捉え、それを地霊(ゲニウスロキ)と呼び、空間を知覚や印象、雰囲気という人間的で主観的な要素の集合体としてとらえうることを主張したが、このような場所には人間が自然の中に見出すものと人間が自然に干渉してつくったものとがある。土木・建築においてはその構成要素として無生物的要素を取り扱うことが多いのに対して、造園の場合には生命のある植物を主として取り扱いながら、前記の目的を達成しようとしているといえる。 この植物を主体とした物的環境ないし景観構成技術は、土木・建築が工事が完了した時点で“完成"であるのに対し、造園においては必ずしもそうとはいえないゆえんであり、造園の目的達成は工事完了後における生物である植物の管理いかんによって大きく左右される性格のものということができるし、屋外に存在する史跡や名勝、天然記念物など文化財を保存し活用するためにさまざまな形態での造園的な整備と維持管理も行われている。この場合整備形態としては現状を維持するものから復元的な整備(現地での場合と移転とがある)がある。さらに景観の項でもあるとおり、棚田や里山など空間資源を文化的景観(カルチュアルランドスケープ)としてとらえ、文化庁の協力の下田園風景や農村景観を造園技術で保全している。都市あるいは国土の緑の減少が憂慮されている現在、残された貴重な緑地を保全していくばかりでなく、また、積極的に新たな緑をつくりだしていくことが重要な課題となっており、うるおいのある生活環境の実現が強く望まれている中で、造園の意義は大きい。
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