現在の緊急勅令
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緊急勅令は、「法律にかわるべき」ものであり法律としての効力を有し、帝国議会の承諾によりその効力は永続的なものになる。そのため日本国憲法施行後においても効力を失うことはない。従って現在効力については、その後に別の法律(又は緊急勅令もしくはポツダム命令)により廃止され、あるいは実効性喪失と認められるか個別に検討する必要がある。 緊急勅令は108本あるが現在の効力についてまとめると次のようである。 他の法律(あるいは緊急勅令)の廃止又は改正のためのもの 11本廃止するためのもの 7本明治二十七年勅令第百三十四号廃止ノ件(明治27年勅令第167号) 朝鮮国へ渡航禁止ノ件)廃止ノ件(明治29年勅令第395号(明治二十九年勅令第二百四号) 明治三十二年勅令第二百七十八号(韓国渡航禁止ノ件)廃止ノ件(明治32年勅令第376号) 明治三十八年勅令第二百五号及同年勅令第二百六号廃止ノ件(明治38年勅令第242号) 明治三十九年法律第五十六号(韓国ニ於ケル裁判事務ニ関スル件)廃止ノ件(明治42年勅令第235号) 大正十二年勅令第三百九十八号(一定ノ地域ニ戒厳令中必要ノ規定ヲ適用スルノ件)廃止ノ件(大正42年勅令第478号) 一定ノ地域ニ戒厳令中必要ノ規定ヲ適用スルノ件廃止ノ件(昭和11年勅令第189号) 改正するためのもの 4本徴兵令中改正ノ件(明治37年勅令第212号) 治安維持法中改正ノ件(昭和3年勅令第129号) 昭和十四年法律第一号兵役法中改正法律中改正ノ件(昭和16年勅令第923号) 所得税法中改正等の件(昭和21年勅令第128号) 失効したもの 15本不承諾による失効 14本新聞雑誌又ハ文書図書ニ関スル件(明治24年勅令第46号) 朝鮮国ニ渡航禁止ニ関スル件(明治27年勅令第135号) 朝鮮国ニ渡航禁止ニ関スル件(明治28年勅令第144号) 議員選挙ニ就キ人ヲ殺傷スヘキ物件携帯禁止ノ件(明治31年勅令第21号) 衆議院議員選挙取締罰則ニ関スル件(明治31年勅令第170号) 府県、郡会議員選挙罰則ニ関スル件(明治32年勅令第377号) 災害地地租延納ニ関スル件(明治36年勅令第8号) 穀類収用令(大正7年勅令第324号) 朝鮮ニ施行スヘキ法令ニ関スル件(明治43年勅令第324号) 独逸国等ニ属スル財産管理ノ件(大正8年勅令第304号) 大豆、生牛肉、鳥卵、綿、繊糸及綿織物ノ輸入税ノ低減又ハ免除ノ件(大正8年勅令第478号) 臨時物資供給令(大正12年勅令第420号) 臨時物資供給特別会計令(大正12年勅令第421号) 金貨兌換禁止ニ関スル件(昭和6年勅令第291号) 当該緊急勅令自体に定めた期限到来により失効 1本戦時船舶管理令(大正6年9月29日勅令第171号)は、同勅令附則第2項により第一次世界大戦の講和条約調印から1年後に失効した。 廃止されたもの 69本個別に廃止を目的とするものによるもの 15本他の緊急勅令によるもの 7本 (この項は廃止された勅令の件名のみ掲載する)新聞紙雑誌及其他ノ出版物ニ関スル件(明治27年勅令第134号) 朝鮮国ニ渡航禁止ニ関スル件(明治29年勅令第204号) 朝鮮国ニ渡航禁止ニ関スル件(明治32年勅令第278号) 東京府内一定ノ地域ニ戒厳令中必要ノ規定ヲ適用スルノ件(明治38年勅令第205号) 新聞紙雑誌ノ取締ニ関スル件(明治38年勅令第206号) 一定ノ地域ニ戒厳令中必要ノ規定ヲ適用スルノ件(大正12年勅令第398号) 一定ノ地域ニ戒厳令中必要ノ規定ヲ適用スルノ件(昭和11年勅令第18号) 法律によるもの 8本(この項は廃止する法律の題名のみ掲載する)明治四十三年勅令第三百三十一号(朝鮮ヨリ移入スル貨物ノ移入税等ニ関スル件)等ノ廃止ニ関スル法律(大正9年8月7日法律第50号) 非常徴発令廃止ニ関スル法律(大正13年7月18日法律第7号) 大正十二年勅令第四百五号(生活必需品ニ関スル暴利取締ノ件)廃止法律(大正15年3月25日法律第5号) 昭和十一年勅令第二十一号(東京陸軍軍法会議ニ関スル件)廃止法律 (昭和13年4月9日法律第80号) ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律(昭和27年4月11日法律第81号) 日本銀行券預入令等を廃止する法律(昭和29年4月10日法律第66号) 金融緊急措置令を廃止する法律(昭和38年7月22日法律第159号) 後継の法律の制定によるもの 9本俘虜処罰ニ関スル法律(明治38年3月1日法律第38号)により廃止俘虜ノ処罰ニ関スル件(明治37年勅令第225号) 外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律(明治38年3月20日法律第66号)により廃止外国ニ於テ流通スル硬貨紙幣銀行券帝国官府発行ノ証券ノ偽造変造ニ関スル件(明治37年6月28日勅令第177号) 陸軍軍法会議法(大正10年4月26日法律第85号)により廃止臨時陸軍軍法会議並其管轄地内ニ於ケル陸軍刑法ノ適用ニ関スル件(明治28年7月1日勅令第92号) 治安維持法(大正14年4月22日法律第46号)により廃止治安維持ノ為ニスル罰則ニ関スル件(大正12年9月7日勅令第403号) 家畜伝染病予防法中改正法律(昭和2年3月31日法律第28号) により廃止牛ノ伝染性肋膜肺炎ノ防遏ニ関スル件(大正14年7月3日勅令第245号) 鉄ノ輸入税免除ニ関スル法律(昭和12年8月11日法律第57号)により廃止鉄ノ輸入税免除ニ関スル件(昭和12年4月15日勅令第130号) 金準備評価法(昭和12年8月11日法律第60号)により廃止銀行券ノ金貨兌換ニ関スル件(昭和7年1月28日勅令第4号) 財産税法の一部を改正する法律(昭和26年11月26日法律第263号)により廃止臨時財産調査令(昭和21年2月17日勅令第85号) 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成6年12月14日法律第113号)により廃止食糧緊急措置令(昭和21年2月17日勅令第86号) 後継の緊急勅令の制定によるもの 1本軍事郵便物ニ関スル件(明治37年2月6日勅令第19号)により廃止海外派遣ノ軍隊軍艦軍衛其他軍人軍属ニ関スル郵便物ノ件(明治27年6月15日勅令第67号) 戦時立法廃止のポツダム勅令によるもの 3本昭和二十年勅令第五百四十二号「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件ニ基ク臨時郵便取締令廃止ノ件(昭和20年10月24日勅令第605号)昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴ひ発する命令に関する件に基く船舶保護法の廃止等に関する勅令(昭和21年11月22日勅令第562号) により廃止 軍事郵便物ニ関スル件(明治37年2月6日勅令第19号) 昭和二十年勅令第五百四十二号「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件ニ基ク要塞地滞法廃止等ノ件(昭和20年10月15日勅令第576号) により廃止防禦海面令(明治37年1月23日勅令第11号) 適用対象消滅により一括廃止法律によるもの 41本政府出資特別会計法外二十一法令の廃止等に関する法律(昭和21年9月13日法律第21号) により廃止朝鮮総督府特別会計ニ関スル件 ( 明治43年勅令第406号 ) 自治庁関係法令の整理に関する法律(昭和29年法律第82号)により廃止 4本衆議院議員選挙資格ニ関スル件(大正4年勅令第11号) 東京府神奈川県等ニ於ケル現任府県会議員ノ任期等ニ関スル件(大正12年勅令第409号) 東京府及神奈川県ニ於ケル衆議院議員選挙人名簿調製ニ関スル件(大正12年勅令第423号) 衆議院議員選挙法第十二条ノ特例ニ関スル件(昭和20年勅令第537号) 大蔵省関係法令の整理に関する法律(昭和29年法律第121号) 27本朝鮮事件費に関する財政上必要処分の件(明治27年勅令第143号) 軍事公債条例(明治27年勅令第144号) 清国事件費に関する財政上必要処分の件(明治33年勅令第277号) 帝国憲法第七十条に依る財政上必要処分の件(明治36年勅令第291号) 公債募集に関する件(明治37年勅令第228号) 公債募集に関する件(明治38年勅令第194号) 帝国憲法第七十条に依る財政上必要処分の件(明治43年勅令第326号) 帝国憲法第七十条に依る財政上必要処分の件(明治43年勅令第327号) 帝国憲法第七十条に依る財政上必要処分の件(明治43年勅令第328号) 朝鮮に於ける臨時恩賜に関する件(明治43年勅令第329号) 旧韓国政府に属したる歳入歳出の予算に関する会計の経理及旧韓国政府に属したる財産の管理に関する件(明治43年勅令第330号) 小額紙幣発行に関する件(大正6令年第202号) 大豆、生牛肉、鳥卵、綿織糸及綿織物の輸入税の低減又は免除に関する件(大正9年勅令第52号) 震災被害者ニ対スル租税ノ減税等ニ関スル件(大正12年9月12日勅令第410号) 生活必需品並土木又は建築の用に供する器具、機械及材料の輸入税の低減又は免除に関する件(大正12年勅令第411号) 日本銀行の手形の割引に因る損失の補償に関する財政上必要処分の件(大正12年勅令第424号) 震災被害者の営業税課税標準算定の特例等に関する件(大正13年勅令第21号) 震災善後に関する経費支弁の為公債発行に関する件(大正13年勅令第46号) 満州事件に関する経費支弁の為公債発行に関する件(昭和7年勅令第6号) 昭和六年度に於ける国債償還資金の繰入一部停止に関する件(昭和7年勅令第7号) 満州事件に関する経費支弁の為公債発行に関する件(昭和7年勅令第14号) 満州事件に関する経費支弁の為公債発行に関する件(昭和7年勅令第19号) 復員に関する経費等支出の件(昭和21年勅令第127号) 生鮮食料品、石炭、鉄及電気銅に関する価格調整補給金等支出の件(昭和21年勅令第159号) 政府職員の給与改善に伴ひ要する経費等支出の件(昭和21年勅令第179号) 昭和二十一年度に於ける大蔵省証券及借入金の最高額に関する件(昭和21年勅令第241号) 外地等職員の帰還に伴ひ要する経費等支出の件(昭和21年勅令第242号) 農林省関係法令の整理に関する法律(昭和29年6月1日法律第137号)により廃止馬匹ノ輸出ヲ禁止スルノ件(明治33年7月5日勅令第294号) 通商産業省関係法令の整理に関する法律(昭和29年6月1日法律第138号)により廃止 3本特許法、意匠法及び実用新案法を朝鮮に施行することに関する件(明治43年勅令第336号) 商標法を朝鮮に施行することに関する件(明治43年勅令第337号) 隠匿物資等緊急措置令(昭和21年勅令第88号) 内閣及び総理府関係法令の整理に関する法律(昭和29年7月1日法律第203号)により廃止震災地ノ行政庁ノ権限ニ属スル処分ニ基ク権利利益ノ存続期間等ニ関スル件(大正12年9月12日勅令第412号) 中央省庁等改革関係法施行法(平成11年12月22日法律第160号)により廃止 4本法人に対する破産宣告に関する件(大正12年勅令第475号) 災害善後に関する経費支弁の為公債発行に関する件(昭和11年勅令第7号) 通信事業特別会計又は帝国鉄道会計に於ける昭和二十年度の追加経費支弁の為の借入金に関する件(昭和21年勅令第111号) 通信事業特別会計業務勘定又は帝国鉄道会計収益勘定に於ける昭和二十年度の追加経費支弁又は歳入不足補填の為の追加借入金及帝国鉄道会計用品資金補足の為の公債発行に関する件(昭和21年勅令第180号) 上記以外の次の13本についてもほとんどが実効性喪失と認められる。ただし実効性喪失は、法的な根拠によるものでないため見解の相違が発生する。公的な法令データベースとして、日本法令索引(国立国会図書館)と総務省のe-Gov法令検索があるが見解に相違がある場合がある。 船舶及物件ノ検疫及取締ニ関スル件(明治43年勅令第333号) 著作権法ヲ朝鮮ニ施行ノ件(明治43年勅令第338号) この2本は、韓国併合に伴うものであり、現在では適用対象がないとして日本法令索引では、実効性喪失、e-Gov法令検索でも未収録としている。あるいは対日平和条約の発効で失効という見方もできるかもしれない。 米及籾ノ輸入税ノ低減又ハ免除ノ件(大正7年勅令第373号) この勅令は、米及びもみについて別途の勅令で軽減又は免除できるとするもので、大正7年勅令第374号(米及籾ノ輸入税免除ノ件)で大正8年10月31日まで免除とされ、更に、 大正8年10月13日勅令第443号(大正七年勅令第三百七十四号(米及籾ノ輸入税免除ノ件)中改正ノ件)で適用期限が大正9年10月31日まで延長された。その後は米穀法(大正10年4月4日法律第36号)第2条で「増減若ハ免除」が可能となったためこの規定に基づき米の関税率の調整が行われ、また関税定率法第6条<昭和29年改正の後は第12条>によっても軽減又は免除が可能で、実際にも発動されていたので、この勅令が適用されることはなくなった。このため、日本法令索引では、実効性喪失、e-Gov法令検索でも未収録としている。しかし現在発動されていないとはいえいつでも政令により免除する根拠とはなりえるものであり、関税定率法第12条と重複するが、勅令には発動の要件がなくより広い場合に適用が可能である。また勅令が発動状態であった時期に、同じように勅令で関税の軽減免除を可能とする「大豆、生牛肉、鳥卵、綿織糸及綿織物の輸入税の低減又は免除に関する件(大正9年勅令第52号)」は、大蔵省関係法令の整理に関する法律(昭和29年5月22日法律第121号)で廃止されているのに、米及籾ノ輸入税ノ低減又ハ免除ノ件(大正7年勅令第373号)は廃止対象とされていないのはあえて残す意図があった可能性もあり、実効性喪失とするには疑問がないわけではない。 独逸国等ニ属スル財産管理ノ件(大正9年勅令第48号) 帝国ト独逸国トノ間ニ設置スル混合仲裁裁判所ニ関スル件(大正9年勅令第87号) 同盟及連合国ト独逸国トノ平和条約ニ依ル財産処理ニ関スル件(大正9年勅令第171号) 混合仲裁裁判所ニ関スル件(大正9年勅令第485号) 平和条約ニ依ル財産処理ニ関スル件(大正9年勅令第534号) 帝国ト洪牙利国トノ間ニ設置スル混合仲裁裁判所ニ関スル件(大正10年勅令第375号) 同盟及連合国ト洪牙利国トノ平和条約ニ依ル財産処理ニ関スル件(大正10年勅令第376号) この7本は、第一次世界大戦の終了にともなうベルサイユ条約によるドイツの賠償に関するものである。日本法令索引では、実効性喪失、e-Gov法令検索でも未収録としておりすでに実効性喪失であることは明らかであろう。 私法上ノ金銭債務ノ支払延期及手形等ノ権利保存行為ノ期間延長ニ関スル件 (大正12年 勅令第404号) 関東大震災時における支払い猶予(モラトリアム)のためのもの。延期された期間がすでに終了しており、政府は、効力の消滅していて、効力を継続する必要がないとして議会の承諾を求めなかった。(前述の承諾を求めない場合を参照)。日本法令索引では、実効性喪失、e-Gov法令検索でも未収録としておりすでに実効性喪失であることは明らかであろう。もっとも政府は失効の公布をしていないが、承諾がされない以上、公布後の次の帝国議会の終了(1923年(大正12年)12月23日)時点で失効したという見方もできる。 株主名簿ヲ喪失セル会社ノ件(大正12年勅令第471号) 関東大震災で株主名簿が喪失した場合の措置を定めたもの。現在でも適用されている可能性があり、日本法令索引では、現行法令としてあつかっている。e-Gov法令検索では、未収録。日本法令検索の見解に従えば、唯一の現在効力のある緊急勅令ということになる。 私法上ノ金銭債務ノ支払延期及手形等ノ権利保存行為ノ期間延長ニ関スル件 (昭和2年 勅令第96号) 昭和恐慌における支払い猶予(モラトリアム)のためのもの。猶予期間中に、議会が召集されたため承諾手続きがされた。延期された期間がすでに終了しており、日本法令索引では、実効性喪失、e-Gov法令検索でも未収録としておりすでに実効性喪失であることは明らかであろう。
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