弁証法についてとは? わかりやすく解説

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弁証法について

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 16:16 UTC 版)

反デューリング論」の記事における「弁証法について」の解説

デューリング論理学基礎矛盾認めないということ見出し弁証法を「背理思想」と見なした。 「定立された矛盾ということ自体背理骨頂なのであり、現実世界矛盾というのは起こり得ない」というのが弁証法に関するデューリングの評である。エンゲルス事物静止状態ならば矛盾発生しない語っている。しかし、それは伝統的な形式論理学のなかでの話であって事物運動変化生命交互作用のなかではこういった見解通用しない一方真ならば、他方誤りという関係では片づけられないというのがエンゲルス見方であったエンゲルスは、デューリング見解に対して常識範囲では形式論理学の手法が真実あり得るが、複雑な問題については弁証法通じて答えを探るべきだと主張したエンゲルス弁証法矛盾相克による運動性の思想と位置づけ、現実世界成り立ちと展開を説明づける原理であると立証しようとした。そして、弁証法三つ構成要素、1)矛盾(対立物と統一闘争)、2)量から質への転化、3)否定の否定から成り立っていることを示したエンゲルス矛盾について説明する際、分かりやすい例を示した微積分を例にとり、微分の手法では直線直線限りなく短く線分取れば直線曲線限りなく同一ライン近接していくと語った。さらに、生理学二度目となるが、生命支え新陳代謝一例として紹介されている。多細胞生物では身体構成する細胞作られては死に繰り返しており、細胞レベルの死の連続によってその生命活動支えている。事実、骨も造骨細胞によって作られては破骨細胞によって壊されることでその強度保ち続けており、体を構成する細胞入れ替わって同一個体その人格を維持している。これは矛盾にも見え弁証法現実世界での実例であるとエンゲルス考えたエンゲルス矛盾した個々の死が生命という全体統一実現させている点に着目し生命過程をはじめ世界の諸現象矛盾からみることが重要であると再度強調している。 次にデューリングは量から質への転化については「ヘーゲル朦朧観念一つ」として一蹴したエンゲルス水の凍結蒸発という身近な化学現象指摘して反論した標準気圧の下では0度で凍結して100度で蒸発するが、温度という量的な変化水の相転移という質的変化もたらすまた、脂肪酸系列化学物質化学式CnHmCOOHで表されるが、これらはnの原子数量的に増えると、化学的な性質変わっていく。n=1ならば蟻酸n=2ならば酢酸、n=3ならばプロピオン酸といった具合で、各々沸点融点が変わるのだが、分子量大きければ沸点融点高くなり、メリシン酸C30H60O2では80度で融解し沸点はなく決し気化しない性質がある。これらは化学における量から質への転化具体例と言えるエンゲルス社会科学分野でも事例提示している。 カール・マルクスは『資本論第四編「協業分業マニファクチュア機械大工業」の分野において、投入した労働者の数を増やして分業体制構築すれば、一人労働者商品作るよりもはるかに高い効率性でより多く商品作ることができること言及している。エンゲルス分業による生産性向上も量から質への転化実例であると指摘した。さらに、軍事明るエンゲルス近代戦争の例を参考に、ナポレオン兵力組織において練度優れマムルーク騎兵との戦いについて一対一ならばマムルーク圧倒的に強くフランス3マムルーク2で互角となり、300300ではフランス優位に立ち、千対千ではフランス圧倒的に強いという状況になったことを指摘していることを紹介している。エンゲルス兵数揃えて組織することでナポレオンマムルーク打倒したことは量から質への転化達成して勝利を得た実例であり、弁証法的手法戦術応用したことでナポレオンエジプト遠征戦果をあげたのだと語りデューリング論法自分ナポレオン上の存在であると高ぶる思い上がりに過ぎない評した最後の「否定の否定」について、デューリングマルクスを訳のわからない個人的であり同時に社会的である所有」という理論提唱していると主張した。しかし、これはデューリングによる誤った引用による早合点産物であって、『資本論第二十四第七節「資本主義的蓄積歴史的傾向」での実際文脈に従うならばその内容大きく異なる。 まず、イギリスにおいては資本主義発達前史労働者自己の生産手段個人所有しているマニュファクチュアによる小経営があるが、産業革命起こり経営大規模化していくと、まずマニュファクチュア的な小経営が否定される同時に囲い込みによって農民人口都市へと流出する労働者階級形成進展し労働者大規模な工場制機械工業のへと集中独占され個人的所有のもとに労働力として組み込まれていく。所有形態最初否定によって資本主義経済発達経済システム革新もたらされ労働生産性飛躍的向上が実現していく。 最後に資本主義否定されていく。資本主義崩壊前夜に関して資本論』ではこう述べられている。 「いまや収奪されるのは、……多く労働者搾取しつつある資本家である。この収奪資本主義的生産そのもの内在的な諸法則の作用によって、すなわち資本集中によって行われる。……少数資本家による多数資本家収奪ならんで、たえず規模大きくなってゆく労働過程協業的形態、科学意識的な技術的応用土地計画的な共同利用、……、社会的労働の……生産手段経済的使用発展してゆく。…有力資本家の数が不断に減少してゆくにつれて困窮圧迫隷属堕落搾取の量が増大するが、しかしまたたえず膨張しながら、資本主義的生産過程機構そのものによって訓練され団結させられ組織されてゆく労働者反抗を招く。資本は、それとともにまたそれのもとで開花した生産様式対す束縛となる。生産手段集中労働社会化とは、それらの資本主義的な外皮とは両立しないような点に到達する外皮爆破される。資本主義的私的所有最後鐘がなる収奪者が収奪される。」 経済格差克服提唱した社会主義革命私的所有廃止して集中独占され社会的所有のもとに再編し直すことで資本主義経済の諸矛盾解消されていく。このとき生産性向上した生産体制最新設備整った工場優れた技術知識利用して人類抑圧のない新たな経済的段階へと発展していく弁証法的道筋があるというのがマルクスがいう「否定の否定」の論理であったデューリング見解異なり実際には「諸個人分散的な私的所有」が否定され、「資本主義的な私的所有」となり、これがさらに否定されて、社会主義的な「社会的所有」へと発展するという内容歴史的な見解となっている。 エンゲルスは、身近な事例から「否定の否定」を示す事例次々と紹介した。 「大麦の粒をとってみよう。幾兆のこうした大麦の粒はひきわられ、煮られ醸造されて、そして消費される。しかし、もしかような大麦一粒が、それにとって正常な条件出会って好都合な地面落ちれば、熱と湿気との影響受けてそれ独自の変化が起こる。つまり発芽するわけである。麦粒はそのものとしては消滅し否定されそのかわりにその麦粒から発生した植物が、麦粒の否定現れる。だが、この植物の正常な生涯どのような経過をとるか?それは成長し、花を開き受精し、そして最後に大麦粒を生じる。そしてこの麦粒が熟すると、すぐ枯れてしまい、こんどはそれが否定される。この否定の否定結果としてわれわれはふたたび最初大麦粒を得るのであるが、それは一粒ではなくて十倍二十倍、三十倍の数のものである。……。 この過程はたいていの昆虫、たとえば場合にもおこなわれるは卵の否定によって卵から生じ、そのいろいろな変態経過して性的成熟達し交尾し、そしてその交尾過程がおわり、雌が多くの卵を生むと、すぐに死んでしまうことによって、ふたたび否定される。」 上記の1)植物の例、2)昆虫の例、これに続き、3)地層形成における岩石破砕堆積、4)数学における微積分の例、5)歴史思想の例、ここではルソー社会契約論事例として紹介している。 経済においても「否定の否定」は重要な変革原動力となる。農業生産増が生じると、生産様式変化生じる。共同所有否定され、そこから私有への移行促して農耕の高度な発達もたらされる。しかし、生産量増大限界となった単作進展するなど農業構造変質する生産様式桎梏となっていく。すると私有否定されて、共同所有転化する社会的要請強くなっていくという現象がみられた。 詳細は「唯物弁証法」を参照

※この「弁証法について」の解説は、「反デューリング論」の解説の一部です。
「弁証法について」を含む「反デューリング論」の記事については、「反デューリング論」の概要を参照ください。

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