大地の四神
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四人のネイティブ・アメリカンのフレイムヘイズで、彼らの「神」である“紅世の王”と契約した古代の神官たち(彼らの認識に従えば、本当の「四神」は契約した“王”であり、一般にそう呼ばれている契約者の方はあくまでも「神官」)。全員フレイムヘイズとしての適性を高めてから契約しており、アメリカ大陸を長年“徒”から守ってきた、いずれも非常に優れた強力な討ち手だが、19世紀後期の1863年、白人を中心としたヨーロッパ移民の「侵略」行為に立ち向かい、アメリカ合衆国で『内乱』を引き起こした。彼らを止めるためフレイムヘイズたちの大規模な同士討ちが始まり、その間に“徒”たちの跳梁跋扈を許す結果になったことから十数年後に矛を収めたが、護るべきものを“徒”ではなく「人間」に侵されているという事実から、世界を護る意欲を失った。こうした経緯により、現代まで南北アメリカ大陸主要四都市の外界宿でフレイムヘイズを支援するという消極的な協力にのみ留まっていた。なお“徒”からは「“徒”を殺し続けた挙句、討ち手にまで牙を剥いた『フレイムヘイズの悪徳そのもの』たる魔物」と認識されている。 フレイムヘイズや“王”を、『大地の四神』独自の呼称で呼ぶ(シャナなら『眩き炎』、アラストールなら『裁きの業』、キアラなら『閃く矢』といった具合である)。また、神器名が共通で“テオトル”なのも特徴。契約した“王”たちの真名には楽器が含まれていることや、当人の名に方角が含まれていること(先師が北)や、炎の色が全て宝飾品の色、フレイムヘイズとしての能力が「“存在の力”をこの世の何かに変換・還元する力」という共通点もある。また『四神』達は契約した“王”を「御憑神」と呼んでいる。『四神』自身もまた、互いを独自の呼称で呼ぶが、これは各々の自在法と戦闘スタイルを形容したものである。 他の誰とも違う、彼ら独自の論理によって行動する得意なタイプの討ち手だが、実は行動原理は“徒”のそれに通じるものがある。また契約した“王”達は、新たな神話が発生する度に通称を更新しており、かつての名前は不明。 本編では、対[仮装舞踏会]戦に関して揺れている『四神』らの代表として、センターヒルをフレイムヘイズ兵団に送り込んだ(XVII巻)。彼が参戦を決意し戦死した(XX巻)ことを知ると、残る『三神』もセンターヒルの遺志とシャナの決意に賛同して参戦。御崎市決戦において、狂乱状態となって御崎市へなだれ込む大量の“徒”をひたすら殺し続けた(XXI巻)。その真意は、シャナが提案し新世界『無何有鏡』に組み入れられた「人間を喰らえない」理を徹底周知させることであり、「今まで人間を喰らってきた“徒”を可能な限り殺す」ことで、今後の“徒”たちに「人を喰らう行為が禁忌である」という認識を植え付け、“徒”が人を喰らってきた歴史に終止符を打つこと(つまりは、「人を食らう“徒”が、それによって現れた討ち手たるフレイムヘイズに虐殺された」という事実を新世界に持ち込ませることで、「人を食らう事には意味がなく、行えば以前のような殺戮者が現れかねない、だからやめておこう」という流れを作り出すこと)であった(XXII巻)。 新世界『無何有鏡』完成後は、フレイムヘイズが無事に新世界『無何有鏡』へ渡れるかの「人体実験」に自ら志願し、フレイムヘイズとしては最初に新世界『無何有鏡』へ旅立った(XXII巻)。 イーストエッジ[EastEdge] 声 - 乃村健次 『星河の喚び手(せいがのよびて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。初登場はS巻『マイルストーン』、本編への登場はXXI巻から。『四神』としての呼称は『全ての星を見た男』。星空に似た空間を生み出して戦うことに由来する。ニューヨークで外界宿『イーストエッジ外信』を運営しており、また名目上は外界宿ニューヨーク総本部の本部長でもある。 中肉中背でいかつい面相のネイティブ・アメリカン。神器“テオトル”は浮き彫りを施した石のメダル型で、ベルトに下げている。 変換能力は「炎」。ケツアルコアトルと共に「歌う」という行為をトリガーとし、一定の空間内の光を上空に凝縮させることで満天の星と見える空間を生み出し、その光を流星雨として撃ち放ち爆砕させる自在法『夜の問い』を使用し、強力な広範囲攻撃を行う。この攻撃で死した者は、その固有の色の火の粉となって散るのではなく、その“存在の力”が尽きるまで青磁色の炎に変換・還元されて強制的に燃やされる。一発一発の威力は、雑兵レベルの“徒”でも全力で防御すれば凌ぐことが出来、リベザルほどの防御力があれば素で耐えられる程度でしかない。が、同時に無数作り出し、流れ落とすため、大抵の場合かわし切れず、防ぎ切れずに餌食となる。また特性上、光の多い昼間に使った方が威力が高くなる。さらに光を凝縮すると言う特性上、星が現れるのは空だけではなく地上近くなど高さも距離も問わず、敵の足元を巻き込む形で銀河を形成する、イーストエッジ自身の周囲に展開して格闘戦の助けとする、目くらましと短距離転移に使うなど応用性が高い。 心身ともに落ち着いており、物静かで表情も少ない。 マージョリーとは飲み友達だが、かつて『内乱』の際に戦ったこともある。 1930年代に未熟なユーリイを世話していたが、ユーリイが心の内側に抱えている危うさに気付いており、戦いを禁じていた。対[革正団]戦でほとんどのフレイムヘイズが欧州に赴いている時に、ドレルからの手紙を持ってニューヨークにやって来たマージョリーにユーリイの教育を頼むが、結果として無駄に終わった(S巻『マイルストーン』)。 本編では、対[仮装舞踏会]戦について当面は慎重に事態の推移を窺うつもりであった(XVII巻)。 御崎市決戦では、市の東側から侵攻し流星雨によって御崎市の封絶外にいた“徒”たちを先だって殲滅した後に市内へ入り、オフィス街ごと“徒”を吹き飛ばしながら前進。御崎市駅舎に本陣を置くリベザルとピルソイン率いる東部守備隊との交戦に入った。その後に後背から遅れ来た膨大極まる数の外来の“徒”による攻撃を受けつつ、リベザルとの直接の交戦に移った(XXI巻)。 その後もリベザル率いる“徒”の大軍勢を敵に回して戦い続け、新世界が創造されて戦火が収まるまで全くの無傷であった(彼と対戦したリベザルは片腕をなくしたが、後に再構成した)。そして、一旦河川敷に集まった後でサウスバレイ・ウェストショアと共に、フレイムヘイズとしては最初に新世界へ旅立った(XXII巻)。 アニメでは第2期から登場。“啓導の籟(けいどうのふえ)”ケツアルコアトル[Quetzalco'atl] 声 - 田中完 イーストエッジと契約している男性の“紅世の王”。炎の色は青磁色。 短く深く、貫禄のある声で話す。読点が多い。 アニメでは第2期から登場。 アステカ神話の農耕神にケツァルコアトルがいる。 センターヒル[CenterHill] 声 - 仲野裕 『晧露の請い手(こうろのこいて)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。初登場はXVII巻。『四神』としての呼称は『雨と渡り行く男』。豪雨の結界を張り、その中を瞬間移動することに由来する。 短躯ながら頑強な体つきをした、穏やかな初老の男。神器はイーストエッジと同じく、角ばった石のメダル型の“テオトル”で、腰のベルトに下げている。 変換能力は「植物」。広範囲に影響力を及ぼす雨の結界を張る自在法『トラロカン』を行使し、その中では圧倒的な戦闘力を発揮する。この『トラロカン』は遠話などの通信や『熒燎原』のような持続型の自在法を阻害・解除し、“存在の力”をこの世の植物に転化・変質させる。また、本人は『トラロカン』の中で短距離を転移移動できるほか、雨粒を弾丸として差し向け、攻撃することも可能。当人は転移移動で敵の眼前に現れ、不動のまま敵に掌底を当てるという攻撃を行う。これを受けた方は、「絶対に動かないもの」に激突したかのように撥ね飛ばされることになる。 『トラロカン』は広域に影響を及ぼす自在法としては破格の性能を持ち、討ち手として活動していた頃には『踏み入ってはならない戦鬼の庭』とまで恐れられていた。 サウスバレイによると「戦が好きでも得意でもない」とのことだった。直接的な戦闘力は他の『三神』に比べれば低いものの、それでも通常のフレイムヘイズからすれば常識破りの実力を持つ。当人も肉弾戦闘能力は非常に高い。 イーストエッジに比べれば気さくで、旧友のフレイムヘイズたちにも好意的である。 本編では、対[仮装舞踏会]戦に関して揺れている『四神』らを代表して、『四神』らにとっての『神』である契約した“紅世の徒”、その“紅世の徒”の中の『神』である“祭礼の蛇”が何を為そうとしているのか、戦うべきかどうかを見定めるためフレイムヘイズ兵団に同行する。あくまでも『四神』らの行動の決断を促すための視察・傍観であり、当初はフレイムヘイズ側として参戦するつもりはなかった。しかし、友誼から助力はしたいと思ってもいた(XVII巻)。 対[仮装舞踏会]戦では戦闘に加わらず、ただの傍観者として兵団と共に『星黎殿』を目指した(XVIII巻)。しかし『星黎殿』直衛軍との戦闘が膠着、その間に戻ってきた[仮装舞踏会]西部方面主力軍と挟まれる形となり、兵団が窮地に陥った。そこで戦場からいち早く単独脱出するようゾフィーに勧められるものの、彼女の思惑(=万が一の場合は自分に代わって指揮を引き継いでほしい=兵団に協力して欲しい)に気づいており、未だ“祭礼の蛇”の真意を見定めていないため、その申し出を断って後方基地に留まった(XIX巻)。その直後に“祭礼の蛇”神体が帰還し『大命』の具体的な内容が宣布されると、それを絶対に受け入れられないものと判断し、“祭礼の蛇”との戦いを決断。兵団が崩壊する中、生き残ったフレイムヘイズ達に『世界』の実像を諭して戦う気力と意義を取り戻させた。その後はザムエルと共に兵団の殿となり、『トラロカン』でハボリムの『熒燎原』を無効化しつつフレイムヘイズ達の撤退を援護した。シュドナイに貫かれて片腕を失いながら、最後に残ったシャナたちが脱出する中、彼女らを無事脱出させるため自ら戦場に残ることを選び、ザムエルが死亡した十分後に“千変”シュドナイに討たれて戦死した(XX巻)。 アニメでは第3期に登場。“殊寵の鼓(しゅちょうのつづみ)”トラロック[Tlaloc] 声 - 長谷川芳明 センターヒルと契約している男性の“紅世の王”。炎の色は瑠璃色。 涼やかな青年の声で話す男性の“王”。XX巻の終盤でセンターヒルが戦死すると、“紅世”へ帰還した。そして創造された新世界へ渡り来て、秩序派の“王”の一人として活動している(『灼眼のシャナノ全テ 完』)。 アニメでは第3期に登場。 アステカ神話には、トラロックという雨と雷の神が登場する。 サウスバレイ[SouthValley] 声 - 梶裕貴 『群魔の召し手(ぐんまのめして)』の称号を持つ男性のフレイムヘイズ。初登場はXXI巻。『四神』としての呼称は『死者の道を指す男』。無数の「亡者」を指揮して戦うスタイルに由来する。南北アメリカ大陸の主要四都市の外界宿の管理者の一人である。 見た目は山高帽とポンチョを纏った、細く尖った体格と容貌をした二十歳に満たない少年。左足は簡素な作りの義足となっている。神器“テオトル”は尖った石のメダル型。 変換能力は「土」。戦闘では、黄金の仮面を付けた人や動物など様々な形を模した、「亡者」と呼ばれる大作りな土人形を無数に召喚して戦わせる自在法『パチャクチ』を使用する。亡者は整然とした隊伍や精緻な集団行動などはまるで取らず、ただひたすら敵に襲い掛かると、仮面の口で相手を「捕食」する。そして喰らった“存在の力”を土と黄金に変換・還元し、その分だけ肥え太り、一定以上まで太ると分裂・増殖していく。また、亡者を人間の体に潜りこませて操ると言ったことも可能。サウスバレイ自身は黄金の輿に乗ったまま、それを亡者たちに担がせ、亡者の軍勢と共に行進する。なおこの「亡者」は飛行することも可能。 『パチャクチ』本来の力は、「亡者」を他者や物体に取り付かせ、それを媒介に行動を統御・掌握することにある。 何かというと「ははははは!」と作り物の高笑いをしながら話す癖があり、カラッとした性格だが、戦いを面白がり一般人の前でも亡者を使うなど無遠慮な面も持つ。しかし笑顔が作る皺は深く、時折得体の知れない雰囲気を覗かせる。『四神』の中で唯一「聖人君子とは言えない男」。 現代の対[仮装舞踏会]戦に対しては、当面は戦う相手を見極める構えであった(XVII巻)。 御崎市決戦では、亡者の軍勢を繰り出して西方の住宅地から侵攻し御崎市の封絶外にいた“徒”たちを亡者たちに食い散らせ、追い立てながら前進。御崎高校に本陣を置き、いち早く外来の“徒”流入の混乱を収めたハボリム率いる西部守備隊との交戦に入った。その後に後背から遅れ来た膨大極まる数の外来の“徒”による攻撃を受け、初めて自身の力を以ってしても捌き切れない数の敵に相対し、その飽和攻撃の前に徐々に亡者の軍勢を削られていった(XXI巻)。 しかしそれさえも予定通りで、ハボリムが流入させる外来の“徒”たちを容赦なく討滅し続けた。そして新世界が創造されて戦火が収まってからは、一旦河川敷に集まった後でイーストエッジとウェストショアと共に、フレイムヘイズとしては最初に新世界へ旅立った(XXII巻)。 新世界へ渡り来てから一年後の春までの間に、シャナと再会して新世界の外界宿の再編成が軌道に乗り始めたことを伝えた模様(外伝『ホープ』)。「枷から逃れるために右足を引きちぎった王子」と形容されていたが、義足は左足である。 アニメでは第3期に登場。“憚懾の筦(たんしょうのかん)”テスカトリポカ[Tezcatlipoca] 声 - 山口りゅう サウスバレイと契約している“紅世の王”。炎の色は象牙色。 常に野太い怒鳴り声を張り上げて話す男性の“王”。 アニメでは第3期に登場。 アステカ神話にテスカトリポカという同名の神が登場する。 ウェストショア[WestShore] 声 - 高橋美佳子 『滄波の振り手(そうはのふりて)』の称号を持つ女性のフレイムヘイズ。初登場はXXI巻。『四神』としての呼称は『波濤の先に踊る女』。水を自在に操り、踊ることでそれらを行使するスタイルが由来。南北アメリカ大陸の主要四都市の外界宿の管理者の一人である。なお、他の3人と異なり経営者としてのセンスはなかった模様。 年齢不詳の麗容な黒髪の女性。神器“テオトル”は波状輪郭をした石のメダル型。 変換能力は「水」。水を自在に操り、水に捕らわれた者の“存在の力”を水に変換・還元する自在法『セドナの舞』を使用する。大津波で相手を飲み込み捕らえる他にも、水で形作ったアザラシや鮭などの魚による直接攻撃なども行える。水の波で相手を捕らえて身動きを取れなくした後に、まず“紅世”に帰る様に説得を試みるという、非常に珍しい戦法を基本としている。この水は相手の炎弾や自在法の“存在の力”をも水へと変換して封じる為、水から出る術の無い“徒”はやむなく“紅世”に帰ることを余儀なくされ、それでも帰らぬ者は水に変換して討滅する。 常に大人しく穏やかで、嬉しくて泣き、悲しんで泣き、“徒”に怯えて泣くなど、何かにつけよく泣く性格。ただし、これは有利不利など状況を問わず変わらないため、対峙する相手は逆に違和感から来る危機意識を喚起されることになる。振る舞いは弱々しく、“存在の力”による周囲への影響力も相まって他者から異常なまでに気遣われるが、対峙した“獰暴の鞍”オロバスの奇襲すら鋭い蹴り技で軽くあしらうほどの技量を持つ優れた戦士でもある。 現代の対[仮装舞踏会]戦に対しては、悲嘆に暮れるばかりであった(XVII巻)。 御崎市決戦では、真南川の川面を歩いて北方から侵攻し御崎市の封絶外にいた“徒”たちを追い散らしながら前進。井之上原田鉄橋にてオロバスとレライエ率いる北部守備隊との交戦に入った。その後に後背から遅れ来た膨大極まる数の外来の“徒”による攻撃を受け、従来の説得戦法もままならずにその対処にかかり切りになっていたところ、オロバスとレライエの奇襲を危うくかわし、直接の交戦に移った(XXI巻)。 流入してきた無数の“徒”たちを全く寄せ付けない強さを見せ付けながらも、前進しないまま“徒”たちを討滅し続けた。新世界が創造されて戦火が収まった後、一旦河川敷に集まった後でイーストエッジとサウスバレイと共に、フレイムヘイズとしては最初に新世界へ旅立った(XXII巻)。 アニメでは第3期に登場。“清漂の鈴(せいひょうのすず)”チャルチウィトリクエ[Chalciuhtlicue] 声 - 山下百合恵 ウェストショアと契約している“紅世の王”。炎の色は珊瑚色。 穏やかな声で話す女性の“王”。 アニメでは第3期に登場。 アステカ神話にチャルチウィトリクエという同名の水の女神が登場する。
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