停車駅争奪戦・追加運動・臨時停車など
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「鉄道と政治」の記事における「停車駅争奪戦・追加運動・臨時停車など」の解説
東海道本線興津駅井上馨が晩年を過ごした「長者荘」が付近にあったため、伊藤が死去した後、政官界で井上の存在感が高まったから、井上の存命中に興津駅に急行列車が停車するダイヤが組まれることもあった。 東海道新幹線三島駅1989年7月17日、第15回参議院議員通常選挙の選挙活動において、静岡県選挙区の候補者・櫻井規順(日本社会党)陣営の幹部の要請により、ひかりを三島駅で臨時停車させた事件が発生。その結果、日本社会党は櫻井の公認を取り消した。 高崎線深谷駅衆議院議員荒舩清十郎が運輸大臣に在任していた時、自分の選挙区にある深谷駅を、急行列車の停車駅に追加させたことが政治問題化した。これが一因となって、荒舩は運輸大臣辞任に追い込まれた。また、それを了承した国鉄総裁石田禮助は「武士の情け」と釈明し、有名になった。詳細は「荒舩清十郎#運輸大臣就任と深谷駅問題」を参照 上越新幹線および北陸新幹線開業後、高崎線を走る長距離列車の多くが姿を消した中、現存する中で最長距離を走る特急草津は深谷駅を通過し、比較的近距離の特急あかぎ・スワローあかぎのみ停車している。 中央線快速高円寺駅・阿佐ケ谷駅・西荻窪駅1960年代に中野駅 - 三鷹駅間が複々線化された際、国鉄の当初の計画では快速列車を通過させることになっていた。しかし杉並区や住民の反発により、「複々線化後も三駅には停車する」旨の覚書を締結。この結果、平日は一部速達列車を除いて全快速列車が停車することになったが、現在に至るまで続く慢性的な遅延の一因にもなった。詳細は「中央線快速#快速停車駅に関する議論」を参照 北陸本線大聖寺駅・作見駅(現加賀温泉駅)・動橋駅加賀温泉郷(山中温泉・山代温泉・片山津温泉・粟津温泉)の入り口である大聖寺駅と動橋駅では、北陸本線初の特急列車「白鳥」が設定されたときから、地元行政や住民、各温泉の観光協会などの団体の間で特急停車を巡る争奪戦が繰り広げられてきた。当初は、上下列車をお互いの駅に分けて停車させるなどといった方法で妥協していたが、特急が増発されるたびに同じような揉め事が繰り返された。さらに1960年代末期には特急「雷鳥」・「しらさぎ」が大聖寺駅と動橋駅の両駅に停車し、特急でありながら金津駅(現・芦原温泉駅)から小松駅までの4駅間を1 - 2駅ごとに停車するダイヤとされていたことが、特急の格やスピードアップの観点から問題視されたことから、1970年に国鉄は両駅の中間に位置し、それまで普通列車しか停車しないローカル駅であった作見駅を「加賀温泉駅」と改称し、この駅に特急停車を集約し各温泉地へはこの駅からバス路線を開設して、大聖寺・動橋の両駅は特急通過駅とすることで解決させた。なお、この当時の特急列車には文字通り「特別な急行列車」として停車駅をできるだけ絞るようにすることが求められており、現在の琵琶湖線を走る「びわこエクスプレス」などのように連続停車させるという発想自体が存在しない時代であったため、加賀温泉駅への改称直前に前述の特急が両駅に連続停車していたことは、当時の慣例から見ると極めて異例であった。 また、この特急列車の停車駅移動は、大聖寺駅と動橋駅を国鉄線との接続駅にしていた北陸鉄道加南線に大打撃を与え、その廃線の一因ともなり、結局は地域の公共交通に大きなダメージを与えることにもつながった。 山陰本線豊岡駅・城崎駅(現城崎温泉駅)ここも山陰本線初の特急列車「まつかぜ」が設定されたときから、特急停車を巡って揉め事を起こしていた。「まつかぜ」は当初上り下りで停車駅を変える方式とし、後には上下とも宮津線の連絡駅である豊岡駅停車としたが、同時に運転を開始した「やくも」を豊岡駅通過・城崎駅停車とすることなどでバランスをとっていた。その後特急の大衆化が進むにつれて、停車駅の間隔が大きな問題ではなくなったことから、1970年代になると特急が豊岡駅・城崎駅の両方に停車するようになり、この問題は収束した。 なお山陰本線の同地区においては、他にも駅間が近接しており特急「まつかぜ」が通過していた和田山駅・八鹿駅・江原駅の3駅間においても特急「あさしお」・「はまかぜ」の両列車が選択停車を行う措置が取られていたことがあったが、2000年前後には選択停車の措置がなくなりいずれの駅も全ての特急が停車することとなった。ただし、「かにカニ日帰りエクスプレス」期間中に運転されるかにカニはまかぜは八鹿駅・江原駅を通過し、同期間中に運転される臨時こうのとり75号は上記2駅に加えて和田山駅も通過する。 山陰本線東萩駅・萩駅山口県萩市の玄関口としての地位を、この2駅が争ったと言われる。しかし同市の中心部には、萩駅に7ヶ月遅れて開業した東萩駅のほうが近かったことから、「まつかぜ」の設定時より東萩駅が特急停車駅とされた。また、新山口駅との間を結ぶ「特急はぎ号」などの高速バスも東萩駅前を発着地にしている。なお、1往復だけ残っていた「いそかぜ」が2005年のダイヤ改正で廃止されたことにより、両駅を通る特急列車そのものが消滅している。 土讃線西佐川駅・佐川駅準急列車が設定されたときから、高知県佐川町の玄関口としての地位を両駅が争っていた。後には佐川駅に全ての優等列車が停車するようになり、西佐川駅は無人化されたあと業務委託駅になった。 身延線内船駅1995年に「ふじかわ」が特急化される際に、所要時間短縮を目的とした停車駅の整理が行われ、身延駅以北については速達便以外はほぼ現状維持なのに対し、それ以南については途中停車駅を清水駅・富士駅・富士宮駅に絞り、その他の急行停車駅は特急化の際は全列車通過が検討されていた。しかし山梨県内で唯一全通過とされた内船駅のある南部町と町営バスで接続していた富沢町が、それを知るや通過反対運動を展開。南部町町長小沢介三が、名古屋市の東海旅客鉄道本社に出向き、停車の陳情を行なった結果、方針を改め内船駅についても速達便を除き停車することになった。その後内船駅は1999年に無人化されたが停車は維持され、2006年のダイヤ改正で停車駅の整理が行われた際に速達便が廃止され全列車が停車となった。なお、南部町と富沢町は2003年に合併し、(新)南部町となっている。 東海道本線(JR神戸線)芦屋駅・西ノ宮駅(現西宮駅)1957年に快速列車(それまでの「急行電車」を改称)の停車駅を1駅増やす際にこの両駅が争った。結果的に、この複々線区間の外側線(急行線)を走る快速列車は西ノ宮駅、内側線(緩行線)を走る快速列車は芦屋駅に停車させることで決着した。後に、芦屋駅は全ての快速列車が、1990年に入ると新快速列車も昼間時停車駅となり、2003年からは終日停車になっている。また西ノ宮駅も、同じく2003年より快速列車が終日停車となっている。なお2005年まで、兵庫県西宮市におけるJR駅の利用客数は西宮駅よりも普通列車しか停車しない東隣の甲子園口駅の方が多かった。 外房線鎌取駅・誉田駅・土気駅千葉市(1992年に政令指定都市化により緑区)内の駅では、特急列車「わかしお」の停車駅を巡って揉め事を起こしていた。「わかしお」は、1990年代前半まで一番乗降客数の多かった誉田駅にのみ一部の列車が停車していた。しかし2000年代までに住宅開発が進んだ鎌取駅や土気駅の乗降客数が誉田駅の乗降客数を大きく上回ったが、特急停車駅は旧態依然のままだった。このことに鎌取駅や土気駅の利用者から不満が噴出し、鎌取や土気地区出身の市議会議員などは、誉田駅の特急停車を止め、鎌取か土気停車に変更するようにとJR東日本に要望を出すまでになった。2002年のダイヤ改正では内房線の「さざなみ」のように列車によって誉田駅もしくは土気駅と停車駅を変える方式になり、更に2005年のダイヤ改正からは土気駅一部停車に統一された。一方、特急が全通過となった誉田駅に対しては千葉・東京方面への快速・普通列車の始発着を増発する配慮を行っている。なお、鎌取駅には『ブリヂストンオープンゴルフトーナメント』開催時には一部の『わかしお』が臨時停車する。 京浜急行電鉄京急蒲田駅2010年5月16日に実施された同駅の高架化工事進捗に伴うダイヤ改正で、エアポート快特が同駅を通過すると発表された途端、地元大田区長の松原忠義や区議、蒲田に住む住民からの猛抗議が起こり、高架化費用の補助金打ち切りも示唆した。これに対して、当時の東京都知事石原慎太郎が、高架化は国道15号の踏切と渋滞解消が目的と反論される一幕があった。なお、同駅には1998年11月18日ダイヤ改正より、平日夕方・夜間に運転の京急ウィング号を除く全列車が停車していたが、再び平日朝・日中・土休日の通過列車が設定となった(その後、京急ウィング号の平日朝版としてモーニング・ウィング号が運転を開始し、これも京急蒲田駅を通過しているが、有料列車であることから、エアポート快特の時とは異なり、通過に対する地元住民や大田区からの抗議はなかった)。詳細は「エアポート快特#京急蒲田駅通過騒動「蒲田飛ばし」」および「京浜急行電鉄のダイヤ改正#5月16日改正」を参照 東武鉄道伊勢崎線・日光線・東上線急行列車の停車駅追加の際、追い抜き設備を有する駅を新設して、これを追加の停車駅としたケースがあった。これは列車の追い抜き設備が必要という設備面の問題もあるが、それと同時に以前、既存の地元駅への速達列車(準急・快速)の停車を求める運動を行っていた沿線自治体が複数あり、既存の停車駅への急行停車の追加では、近隣の市町村による停車駅の争奪戦が起きるので、それを避けるため新設した鉄道駅に、急行列車を停車させていると言われる。伊勢崎線のせんげん台駅、日光線の板倉東洋大前駅、東上線のふじみ野駅が実例として挙げられる。 東海道本線(琵琶湖線)南草津駅南草津駅は1994年に開業した琵琶湖線でもっとも新しい駅であるが、開業と前後して区画整理が進んだことや、パナソニックグループなどの工場群への通勤客に加えて立命館大学の進出もあり乗客が急増。2008年の利用者数は滋賀県内では新快速停車駅の草津駅、石山駅に次いで3位となっていた。しかし、日中は普通(高槻駅 - 明石駅間快速)が毎時4本止まるだけで、不便に感じていた地元から新快速停車の要望が高まり、2008年2月には南草津駅への新快速停車を公約に掲げた橋川渉が草津市長に当選。2009年12月2日には、2011年春のダイヤ改正での南草津駅への新快速停車を目標に「南草津駅新快速停車促進期成同盟会」が設立された。そして多数の署名を集めJR西日本に掛け合ったところ、2010年12月に「2011年3月12日ダイヤ改正より新快速が終日停車」と発表された。その後も利用客数は増加し、2011年には石山駅を抜いて県内第2位に、そして2014年には県内首位となっている。 東北本線西那須野駅・東那須野駅(現那須塩原駅)・黒磯駅北陸本線加賀温泉駅と経緯は似ている。塩原・那須への玄関口として西那須野駅と黒磯駅で特急停車駅を争っていた上に、東北新幹線が併走する形で建設される事からその中間にあった東那須野駅を那須塩原駅に改称した上で新幹線の駅を設置する事になった。 最終的には関係する自治体である栃木県黒磯市・西那須野町・塩原町は合併の上「那須塩原市」となった。詳細は「那須塩原駅#歴史」および「那須塩原市#市名」を参照 京阪電気鉄道京阪本線枚方市駅・樟葉駅京阪特急は長らく京橋駅 - 七条駅間ノンストップ運転であったが、沿線の有力自治体の一つである大阪府枚方市は、かねてより主要駅の枚方市駅への特急停車の要望を、枚方市議会を通して京阪本社に陳情し続けていた。 これに対し、京阪側は陳情開始当初は「特急の途中駅停車は円滑な輸送体系を却って乱す恐れがある」として頑なに拒否し、代案としてバブル景気期には、特急と急行の中間に位置する「快速急行」の設定を計画していた時期もあった。しかしバブル崩壊後の輸送需要の低迷で、特急の途中駅停車の実施に方針を転換し、1997年に朝の大阪方面のみ枚方市駅停車となった後、2003年に枚方市駅に全特急列車が停車開始した。なお、快速急行はこれとは別の理由で、特急の途中駅停車の実施から5年を経た2008年に設定している。 当初は枚方市駅1駅のみを追加停車とする計画であったが、これとは全く別の理由で計画を変更し、ニュータウン開発が進んで人口が増加した同市内の樟葉駅を新たに追加停車駅とすることになった。同駅についても枚方市駅停車と同日に停車し、枚方市内には2駅同時に停車するようになった。ただし、現在の快速特急「洛楽」は両駅には停車しない。 小田急電鉄小田原線登戸駅・向ヶ丘遊園駅両駅とも急行停車駅だが、2002年3月23日ダイヤ改正で、向ヶ丘遊園駅を通過する多摩急行が設定され、さらに同改正で設定された湘南急行は2004年12月11日のダイヤ改正で、両駅を通過する快速急行に置き換わる形で廃止された。以来「神奈川県鉄道輸送力増強促進会議」が小田急電鉄に対し登戸駅に快速急行、向ヶ丘遊園駅に多摩急行の停車を要望し続けるが、小田急電鉄は各種別の設定目的を理由に、どちらとも停車の計画はないと回答し拒否していた。詳細は「小田急電鉄のダイヤ改正#2004年 - 快速急行・区間準急が登場」を参照 しかし2016年3月26日ダイヤ改正で日中の多摩急行が急行に置き換えられ、2018年3月17日ダイヤ改正では快速急行の登戸駅停車と多摩急行の廃止に加え、平日朝ラッシュ時に向ヶ丘遊園駅に停車し登戸駅を通過する通勤急行が設定された(なお、向ヶ丘遊園駅はロマンスカー停車駅であったが、同改正で全列車が通過となった)。詳細は「小田急電鉄のダイヤ改正#2016年 - 日中運行パターンの大幅変更、快速急行、千代田線直通列車の増発、ロマンスカー停車駅の追加」を参照 京浜東北線神田駅京浜東北線は快速運転開始当初、神田駅を通過していた。2015年3月14日改正から快速が停車するようになった。中央線快速との連絡、東京都政の有力者だった東京都議会議員内田茂のお膝元(内田氏は2017年都議選で落選し引退している)、上野東京ライン建設に伴う日照権問題が重なった。 そのほか、京急本線青物横丁駅の特急停車も政治家の力が働いたといわれている が、真相は定かではない。
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