ケイロニアの人物
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「グイン・サーガの登場人物一覧」の記事における「ケイロニアの人物」の解説
アキレウス・ケイロニウス ケイロニア第六十四代皇帝。父はケイロニア第六十三代皇帝アトレウス。妻はクム元大公タリオ妹マライア・タル・クラディン。愛妾にユラニア貴族ユリア・ユーフェミア。娘にオクタヴィア、シルヴィア。弟に元ケイロニア大公ダリウス・ケイロニウス。鋼鉄色の瞳、白髪まじりの頑健な老人。英名果断な名君として名高く、獅子心皇帝の異名をとり、重臣や国民からの崇拝と信頼を集め、敬愛されている。規律を極めて重んじる反面、その判断を下すに際しては十分に情状を酌量してもおり、慈愛と厳格のバランスに秀でた施政を行っている。 長年にわたるケイロニアの平和を中心となって支えてきた一方で、即位三十周年記念式典の折の、皇后マライアの首謀による自身の暗殺未遂事件や、弟ダリウスが加担した皇女シルヴィアの誘拐事件など、身内絡みの大事件に悩まされてきた。ことに事件を経て精神を病んだ娘シルヴィアの行状は、義理の息子でもあるケイロニア王グインの将来とともに、長年の彼の最大の悩みとなっていた。グインがパロから帰還した後、グインから彼がシルヴィアと決別したこととその事情を聞き、ついにケイロニア皇帝位はそのままにグインにケイロニアの統治権を移行して自身は隠居することを決断し、それを公表した。 そんな彼にとっては、生涯でただひとり愛した相手であるユリアの忘れ形見オクタヴィアと、その娘マリニアとともに過ごす時間がなによりの幸福な時間となっている。とりわけ溺愛する孫娘マリニアに対しては、獅子心皇帝も形無しのめろめろぶりを見せて、周囲の暖かな微笑を誘っている。 134巻「売国妃シルヴィア」において崩御。 シルヴィア・ケイロニアス ケイロニア王妃。夫はケイロニア王グイン。父はケイロニア皇帝アキレウス・ケイロニウス。母はアキレウス妃マライア・タル・クラディン。異母姉にオクタヴィア・ケイロニアス。金髪、くるみ色の瞳、小柄で痩身。 オクタヴィアが現れるまではケイロニア皇帝家の唯一の後継者であったため、その重圧に耐えかねた部分もあってか、周囲に対して極めて我儘なふるまいを見せ、その評判はあまり芳しいものではなかった。父の即位三十周年記念式典をきっかけとしてグインと親密になり、一時はその我儘ぶりも多少は落ち着いたかに思われた。しかし、魔道師グラチウスの手下ユリウスに誘惑されて拉致され、キタイのさかさまの塔に監禁されて、麻薬と性の快楽に溺れさせられてしまう。その後、グインによって救出されたものの、それによって彼女の精神は完全に病んでしまった。グインとの結婚によって病状も多少は落ち着くかとも思えたが、グインのパロ遠征と、その後の失踪による孤独感が、彼女の病状をさらに悪化させてしまった。 やがてシルヴィアは下町に繰り出して乱交を繰り返し、父親のわからぬ子供を妊娠してしまい、グインがパロから帰還してからまもなく出産する。しかし妊娠・出産の事実はハゾスによって極秘扱いされ、出産した子供も出産直後にハゾスによって引き離される。その数日後にグインが会いに来たが、すでにシルヴィアの心はグインから離れていたため、子供と引き離されたこともあり、グインを口汚く罵る。そしてついに、グインから決別を告げられる。 その後、アキレウスが隠居するに伴い、アキレウスの命令でサイロンの光ヶ丘に新設された療養所に療養という名目で幽閉され、その後に闇ヶ丘の離宮に監禁され狂気のままに泣き叫ぶ毎日が続いていたが、何者かがシルヴィアの元を訪れて彼女を更なる闇へと誘い、ついには失踪してしまう。 オクタヴィア・ケイロニアス ケイロニア皇女。父はケイロニア皇帝アキレウス・ケイロニウス。母はアキレウスの愛妾ユリア・ユーフェミア。娘にマリニア。異母妹にシルヴィア・ケイロニアス。夫はパロ王子アル・ディーン(吟遊詩人マリウス)だが、事実上の離婚状態にある。月の光にもたとえられる美しい銀髪に青い瞳を持つ長身の美女で、女性ながらになかなかの剣の腕前でもある。 嫉妬した皇后マライアの手により誘拐された母ユリア・ユーフェミアから産み落とされた彼女は、その後まもなく母とともに叔父ダリウスに救出される。だが、ダリウスの別荘で母と共に暮らしていた5歳の時、目の前で母が凌辱され、惨殺されるのを目撃してしまう。彼女を助けた森番の老夫婦のもとで10年間成長した彼女は、母を見捨てた父アキレウスへの復讐を心に誓い、叔父ダリウスに接触する。ケイロニアの権力を簒奪するため、ダリウスと手を組んだ彼女は、イリスと名乗り、男に扮して皇太子を僭称し、ケイロニア皇帝位を手中に収める陰謀を企てる。 アキレウス帝即位三十周年記念式典の際に、いよいよその陰謀が実行に移され、彼女の復讐は成就間近にも思えた。だが、その時に出会ったマリウスと、彼女は不覚にも恋に落ちてしまう。マリウスとの恋に次第に心の殻を溶かされていった彼女は、自らがパロ王子であると明かしたマリウスの告白に強く心を動かされる。さらに、グインの働きにより、父が母に寄せていた愛情の深さと、母に横恋慕した叔父ダリウスが母の死を招いたことを知り、彼女はついに復讐心を捨て、マリウスと結ばれてケイロニアを後にする。 マリウスが行方不明となる中、彼女はトーラスの〈煙とパイプ亭〉で娘マリニアを出産する。そして、グインによって救出されたマリウスと再会した際、グインの説得に応じて、夫と娘とともにケイロニアの首都サイロンに帰還する。父の愛情を受けて、父とともに生活を始め、安定した幸福を実感した彼女だったが、一方でその生活は、なによりも自由を愛する夫マリウスの出奔を招いてしまう。のちに一時的に帰還したマリウスと話し合った彼女は、マリウスと事実上離婚することに同意し、娘とともに宮廷で生活していくことを選択した。その後、アキレウスの隠居に伴い、サイロンの光ヶ丘の隠居所でアキレウスと共に、マリニアの養育に当たることになる。 アキレウスの崩御、シルヴィアの失踪の後、ハゾスによるグイン即位工作の失敗もあり、娘のマリニアを皇位に着けるのを好しとせず、138巻「ケイロンの絆」においてケイロニア皇帝に即位する。 マリニア ケイロニア皇孫。父は吟遊詩人マリウスことパロ王子アル・ディーン。母はケイロニア皇女オクタヴィア。金色の巻き毛と、大きな瞳の愛らしい女児。マリウスの素性が隠されていたゆえ公にはなっていないが、ケイロニア皇帝家とパロ聖王家双方の血を引く、極めて注目されるべき存在でもある。いつでも機嫌よく、にこにことしているが、実は先天性あるいは生後早い時期に重度の聴覚障害児となっていたようである。 マライア・タル・クラディン ケイロニア皇后。夫はケイロニア皇帝アキレウス・ケイロニウス。娘にケイロニア王妃シルヴィア。父はクム元大公タリム・ヤン。異母兄にクム元大公タリオ・サン・ドーサン。骨太で痩身だが長身。男のようにごつい顔と大きな口の持ち主。美人であるとはお世辞にも云えず、サウル皇帝とその側近にも「クムでまだ良かったがパロなら見世物小屋だ」などと陰口を叩かれたこともある。非常に嫉妬深い性格で、夫の愛妾ユリア・ユーフェミアを拉致監禁した首謀者でもある。かつて義弟ダリウス・ケイロニウスとは不倫関係にあった。アキレウス帝即位三十周年記念式典に際して、ユラニアの軍師ユディトー伯ユディウスと謀り、夫アキレウスの暗殺計画を実行するが、グインらの活躍により計画が露見して失敗。囚われて裁判にかけられた際、服毒して自殺した。 ダリウス・ケイロニウス ケイロニア元大公。父はケイロニア第六十三代皇帝アトレウス。兄にケイロニア第六十四代皇帝アキレウス・ケイロニウス。妻はユラニア公爵マックス・リン妹アントニア。英明な兄に対して強い嫉妬心を抱き、兄に代わって皇帝位に就く野望を常に抱いていた。兄の妻マライアと不倫し、また兄の愛妾ユリア・ユーフェミアに横恋慕して、結局は死に至らしめたのも、あるいは兄に対するコンプレックスの表れであったのかもしれない。アキレウス帝即位三十周年記念式典の際に、オクタヴィアに皇太子を僭称させて自らの傀儡とする陰謀を企てるが、露見して失敗。大公位を剥奪されて国外へ追放される。妻の血縁を頼ってユラニアに潜伏したのち、魔道師グラチウスが企てたケイロニア皇女シルヴィア誘拐事件に加担する。続いて起こった第二次ケイロニア-ユラニア戦役の際、バルヴィナの城で自ら火の中に身を投じて焼死した。 ダルシウス・アレース ケイロニアの元黒竜将軍。鉄灰色の髪と鋭い眼を持つ老人。ケイロニアの首都サイロンを訪れたグインを傭兵として迎え入れた。当時、グインの最も良き理解者でもあった。第一次ケイロニア-ユラニア戦役の際には、千竜長となったグインを副官として、黒竜騎士団を率いて国境に出陣した。だが、厳しい冬の最中での出陣に、老齢もあって健康を害してしまう。勅命に背いてのグインのユラニア遠征を黙認して、療養のためにサイロンへ戻り、間もなくして病没した。その後、帰国したグインが、勅命に背いたとして咎められることなく、ダルシウスの後継者として黒竜将軍に任ぜられた背景にも、ダルシウスの遺志があった。 ハゾス・アンタイオス ケイロニアのランゴバルド選帝侯。ケイロニア宰相。外交担当相を務めたこともある。妻はアトキア選帝侯ギラン息女ネリア。娘にミニア、ほか2人。青灰色の瞳の端正な顔立ち。極めて聡明な人物として知られ、武官の多いケイロニアにあっては数少ない有能な文官であり、まだ若いながらもかなりの人望を集め、皇帝の右腕と称されている。サイロンにやってきて間もない、まだダルシウスの傭兵であったグインと出会ったときから、身分の違いを超えてグインと厚い友誼を結んでいた。その友情はグインがケイロニア王となった現在でも変わることなく、グインが最も信頼する股肱の臣となっている。 パロに迎えに行ったグインと共にケイロニアに帰還した後に、グインからシルヴィアが妊娠しているようだと告げられ、その対処を自ら引き受けた。そしてシルヴィア付きの侍女クララと御者パリスを拘束・尋問して詳細を聞き出し、シルヴィアの妊娠・出産の事実を極秘扱いにし、グインにはシルヴィアが想像妊娠していたと報告した。そして、生まれてきた赤子を誕生直後にシルヴィアから引き離し、密かに抹殺しようとしたが果たせず、考えた末にロベルトに他言無用を前提に事情を説明し、赤子を引き取ってもらった。 アウルス・フェロン ケイロニアのアンテーヌ選帝侯。息子にケイロニア子爵アウルス・アラン。娘にワルスタット選帝侯ディモス妃アクテ。灰色の瞳、白髪の剛毅な老人。選帝侯の長老格で、事実上、アキレウス帝、グイン王に次ぐケイロニア宮廷における実力者である。アキレウス帝とも気心の知れた仲であり、宮廷の内外からの信頼は極めて高い。 サイロンに黒死病が大流行する(外伝『七人の魔道師』)前後に、ゴーラとの国交を再開するための特別使節団の団長に任命され、イシュタールへと向かった。 ディモス ケイロニアのワルスタット選帝侯。妻はアンテーヌ選帝侯アウルス・フェロン息女アクテ。息子にマイロン、ラウル、ユーミス。娘にイアラ、サーラ。金髪、青い瞳、長身の、ケイロニア宮廷一の美男子であり、〈太陽侯〉の異名を持つ。かつてはケイロニア皇女シルヴィアに横恋慕され、生真面目で純朴で朴訥で、家庭をなによりも愛する彼は、その我儘な求愛ぶりにおおいに悩まされていた。ランゴバルド選帝侯ハゾス・アンタイオスの親友でもある。 ゼノン ケイロニアの金犬将軍。北方のタルーアン人の血を引く、赤毛、青い瞳、鍛え上げられた巨躯の持ち主。独身。グインとの対比から、その姿は神話に登場する豹頭の神シレノスの従者バルバスにしばしばたとえられる。剣や戦車競争を始めとする武術の達人で、まだ20代の若年ながら近衛部隊の指揮をまかされており、パロ内乱時にはグインの副官としてパロへの遠征に参加した。性格は純朴にして素直。グインを心から崇拝している。 トール ケイロニアの黒竜将軍。金髪、青い瞳の武人。アトキア選帝侯領出身。独身。物語に登場したときには、黒竜騎士団に所属する傭兵であったが、まもなくグインの副官となった。副官時代には、自分を将軍などにするな、とグインに懇望していたが、グインの地位が上がるとともに彼の地位も上がっていき、ついには王として即位したグインの後任として黒竜将軍に任ぜられた。性格は陽気で、長い傭兵生活を反映して、世事に長けている。単純な武人のように見えて、なかなかの知性の持ち主でもあり、将軍としてもまずまずの評価を受けている。アキレウスの隠居が公表された直後、新設されたケイロニア王騎士団の指揮官である護王将軍に任命された。 ロベルト ケイロニアの十二選帝侯の一人であるローデス侯。盲目で明哲な性格をしており、アキレウスたちの良き相談役になっている。グインがパロから帰還した後に、ハゾスから他言無用を前提にシルヴィアの乱交による妊娠・出産の事実を聞き、誕生したばかりのシルヴィアの息子を引き取ることになる。その際、ロベルトは名前のなかった赤子にシリウスと名付け、ローデス領の開拓民の一家に養子に出すつもりであるとハゾスに告げた。 ヴィール・アン・バルドゥール ケイロニアの子爵。ケイロニア前皇帝アトレウスが、タルーアン人の女性との間になした私生児を父に持っており、それゆえにケイロニアに現れた際に子爵の地位を与えられた。赤毛、青い瞳、色白。タルーアンの血を僻んでか、性格は極めて陰険で嫉妬深く、かつ執念深く、〈ドールの水蛇〉などと呼ばれて、多くの人々から嫌われていた。かつては皇弟ダリウスと手を組んで帝位の簒奪を狙っていたが、その性格が災いしてか、ダリウスからも見放されてしまう。それでもシルヴィアの婿の地位を狙い、何度かシルヴィアを無理やり手篭めにしようとするが、そのたびにイリス(オクタヴィア)やグインに阻止されてしまう。それを逆恨みしてグインを襲い、痺れ薬を使って麻痺させた上で斬りつけて手傷を負わせたが、最後にはグインの剣によって真っ二つにされて死亡した。 ガウス ケイロニアの准将。ケイロニア王グイン直属の特殊親衛隊〈竜の歯部隊〉の隊長。青い瞳を持つ小柄な武人。ケイロニア軍の精鋭中の精鋭として、グイン自らが鍛え上げた千人から構成される部隊の隊長を任されるだけあって、極めて沈着冷静で判断力にも優れた切れ者である。グインに対しては絶対的な忠誠を誓っており、パロ内乱の終結に際してグインが行方不明になった際も、その直前にグインが伝えた命令を忠実に守って、軍をまとめ、パロの首都クリスタルにとどまった。グインがパロに到着した後、グインと再会して喜びを露わにした。そしてグインに同行してケイロニアに帰還した。アキレウスが隠居すると公表した後、〈竜の歯部隊〉は新設されたケイロニア王騎士団の一部隊として組み込まれることになったが、独立部隊としての一面は保たれることとなった。 ヴァルーサ ケイロニア王グインの愛妾。イェライシャによれば、その名は『黄金の盾』を示しているという。初登場は外伝『七人の魔道師』であり、長らく本伝には登場していなかった。クム出身の踊り子としてテッソスの奴隷市場で売られ、サイロンのまじない小路の魔道師アラクネーのもとで暮らしていたが、サイロンを怪異が襲った際にグインに命を救われ、以後、彼のもとで暮らすようになる。そのころ、すでに関係が冷え切っていた王妃シルヴィアに変わって、グインの寵愛を受けるようになり、やがてグインの初めての子(男女の双子、予言では王子を産むとされていた)を産む。 円城寺忍による外伝26巻「黄金の盾」はヴァルーサを主題としている。タイスの出身で、グンドと偽名を名乗っていたグインと出会った様子が描かれる。 パリス シルヴィア付きの武官。寡黙だが剣の腕はいい。女官たちからは気味悪がられていたがシルヴィアには忠実で、どんな理不尽な命令でも従う。グインの失踪後はシルヴィアの愛人となった。グインがパロから帰還した後に、ハゾスによって拘束され拷問を受けたが、それでもパリスはシルヴィアを弁護し続けた。 シリウス シルヴィアの産んだ男児。父親は明確にされていない。 産まれた直後にハデスに取り上げられ、ロベルトに託され、シリウスの名を与えられてローデス領の開拓民の一家に養子となるが、紆余曲折あって、ベルデランド選帝侯ユリアスの下へ引き取られる。 アルリウスとリアーヌ 137巻「イリスの炎」で誕生した、グインとヴァルーサの間に産まれた男女の双子。
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