魔道師
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/06 00:20 UTC 版)
「グイン・サーガの登場人物一覧」の記事における「魔道師」の解説
グラチウス ドールの最高祭司にして、世界三大魔道師のひとりに数えられる黒魔道師。〈闇の司祭〉。限りなく年老いてひからびたミイラのような風貌の老人。年齢は三千歳以上ともいわれるが、パロに残る記録によれば八百余歳程度であるらしい。極めて強力な魔力を誇り、彼ひとりでパロ魔道師ギルドに所属する白魔道師全員を合わせたそれを凌駕するらしい。 若いころから世界支配の野望に満ちており、魔道十二条に背いたものとして、ドール教団を設立したともいわれる。性格は極めて邪悪にして冷酷で、自らの野望の実現のためには他者を破滅させることになんのためらいも見せないが、一方でどこかおちゃらけたような剽軽なところもあり、稚気にあふれた憎めない老人でもある。また、なにかというと自慢話をしたがる困った性癖もあり、第一の手下である淫魔ユリウスの下品さとともに、周囲をいつも辟易させている。自らの魔力の強さに対しては極めて強い自負を持っているが、それだけに、それを脅かす存在に対しては敏感であるようで、特にキタイの魔道竜王ヤンダル・ゾッグに対しては強い対抗心を燃やし、それに対抗するべく、黒魔道師や魔物の勢力を結集した《暗黒魔道師連合》を中心となって設立したこともある。 彼の野望を実現に導くものとして、グイン、パロの古代機械、ノスフェラスのグル・ヌーに対して並々ならぬ関心を持っており、それゆえ、グイン自身と、古代機械の秘密を知るアルド・ナリス、グル・ヌーの秘密を知るスカールに対しては幾度となく接触し、また彼らを手中に収めるべく陰謀をめぐらせてきた。もっとも執着する対象であるグインに対しては、グインがサイロン入りした直後から接触を開始し、二度にわたるケイロニア-ユラニア戦役の黒幕となり、グインに《生涯の檻》の罠をしかけ、またケイロニア皇女シルヴィアを誘拐し、などとその手は苛烈にして休むところを知らない。スカールに対しては、ノスフェラスで彼が患った放射線障害と思しき病の治療を行ったり、また長らく子のなかった彼の兄スタックの妻エマに対して不妊治療を行い、スカールの孤立を図ったりもしている。ナリスに対しては、彼が16歳の時に接触し、彼に将来の反乱を唆すような言動をみせており、実際にナリスが反乱を起こした際にも再び接触を図っている。さらに、2人が出会うときには、世界のエネルギーを変動させる《会》が起こると、古の大科学者アレクサンドロスによって予言された、グインとスカールとの邂逅の実現に、影から動いたのも彼である。が、これまでのところ彼のもくろみは、グイン自身の強大な力や、グラチウスの宿敵である魔道師イェライシャの活躍などにより、ことごとく失敗に終わっている。 ロカンドラス ノスフェラスの中心部、グル・ヌーの周辺を自らの結界とする、世界三大魔道師のひとりに数えられる魔道師。〈北の賢者〉。齢千年を超えるといわれる、骸骨のように痩せた小柄な老人。白魔道師であるとされるが、かつて魔道十二条の制定者たるアレクサンドロスへの協力を拒んでパロを去ったともいわれ、俗世の争いに関わることなく、ひとり世界生成の秘密と宇宙の黄金律への観相を行うことをもっぱらとしている。魔道師の中では、魔道に対してもっとも科学的な見方をしている人物でもあり、彼が魔道に関して話す際には、グル・ヌーの瘴気を放射能と表現するなど、物理科学的な用語が頻繁に登場するのも特徴である。最近になって入寂し、肉体は滅びたものの、魂は精神生命体となって生き続けており、その魔力もいくつかの制限を除けば、生前とほぼ変わらないようである。 彼の最大の関心は、グル・ヌーと、その地下に眠る星船にあった。自身の類いまれな魔力によって身を守り、ただひとり強烈な瘴気に満ちたグル・ヌー内部へ侵入することの可能であった彼は、その生涯のほとんどをその研究に捧げたといっても過言ではない。スカールがグル・ヌーの秘密を求めて、ノスフェラスの中心部を目指した際には、彼をバリヤーで保護してグル・ヌーへ誘い、星船の秘密の一端を彼に明かした。が、そのバリヤーも、普通の人間であるスカールを守るには不充分であったのか、その後、スカールは放射線障害と思われる病に冒されてしまった。また、精神生命体となってからも、怪物アモンとともに古代機械によってノスフェラスへ転送されたグインを星船へと誘い、また記憶を失って帰還したグインを、消滅後に死者の怨念渦巻く《怨霊海》へと変貌したグル・ヌーから救出する役割を果たした。 アグリッパ 世界三大魔道師のひとりに数えられる大魔道師。ハルコン出身。〈大導師〉。カナンを大災厄が襲う直前に生まれ、三千年以上の齢を誇る。その生涯をひたすら研鑽に努めたゆえ、その魔力は極めて強大で、同じ世界三大魔道師に数えられるロカンドラスやグラチウスも到底及ぶものではない。いくつかの人造生命の創造にも成功しており、そのうちのひとつ“蹄ある”イグ=ソッグは、自ら強力な魔力を身につけ、世界支配の野望を抱くまでに至ることになる(外伝『七人の魔道師』)。アグリッパ自身は、しばらくノスフェラスに居をかまえたのち、地上に存在が許されないほどの強大なエネルギーを持つ精神生命体へと進化を遂げたため、現在は地上を離れて、他の広大な無人の惑星にその身をおいている。魔道師が白魔道師と黒魔道師に分かれる前から存在しているため、どちらにも属さないが、自身の関心が俗世を離れた大宇宙の運命の観相に向いているためか、俗世に対して野望を向ける黒魔道に対しては、あまりよくは思っていないようである。 一部からはその存在が疑問視されるほど、長期にわたって人前に姿を現すことはなかったが、キタイの魔道竜王ヤンダル・ゾッグの野望から中原を守るために、アグリッパの助力を求めて、魔道師イェライシャとともに、ヴァレリウスが彼の結界を訪れた際には、約二百年ぶりに他者に対して自らの結界を開き、彼らを中へと招き入れた。が、すでに俗世に対する興味を完全に失ったアグリッパとヴァレリウスとの思惑は、一致する点すら見出すことができず、ヴァレリウスがアグリッパの助力を得ることはできなかった。だが、アグリッパもグインの動向には少なからぬ興味を引かれているようであり、今後、グインに関連して俗世に対するなんらかの干渉を行う可能性がないとはいえない。 ヤンダル・ゾッグ キタイの魔道竜王。遠い過去に別の惑星から飛来したインガルスの竜神族の末裔にして、ウルクの竜の民を名乗り、竜頭人身の異形を持つ。種族の悲願でもあった故郷の星への帰還を目指し、そのための足掛かりとして、約20年前にキタイの前王カン・チェン・ルアンを倒して、東方の支配者となった。その後、故郷へ帰還するための拠点となる新都シーアンの建設に必要となる生体エネルギーを集めるため、多くの人々を生贄とし、キタイの人民を恐怖に陥れた。 故郷への帰還を果たすためにはかかすことのできないカイサール転送装置(パロの古代機械)を手に入れるために、早い段階からさまざまな陰謀をめぐらしていた。物語の発端となった黒竜戦役においても、キタイの魔道師カル=モルを通じてモンゴールに働きかけて、パロを奇襲させると同時に、傀儡となっていたパロ宰相リヤをして、王太子レムスと王女リンダを、古代機械によってキタイへ転送させようとした。この際、強力な結界を張ることにより、モンゴールの奇襲をパロの魔道士軍団が察知することを妨げる役目を担ったとのナリスらによる推測もある。 その後も、レムスに憑依したカル=モルの亡霊を通じて、徐々にパロへの支配を強め、また古代機械の秘密を知るアルド・ナリスを手中にすべく陰謀をめぐらしてパロ内乱を引き起こした。が、参戦したケイロニア王グインらの活躍と、本拠地たるキタイでリー・リン・レンやヤン・ゲラールが中心となって起こした大規模な反乱などにより、中原からの撤退を余儀なくされた。しかしその後、再び中原に対する野望を燃やしてケイロニアの首都サイロンに大いなる災厄をもたらし(外伝第1巻『七人の魔道師』など)、サイロンで暗躍していた魔道師たちの肉体とパワーを吸収し、ヤガで台頭している《新しきミロク》を裏で操るなど、今後もその動向がおおいに注目される存在である。 イェライシャ 世界三大魔道師に次ぐ力を持つ白魔道師。ハイナム、カナリウム出身。すらりとした長身、長い白髪の老人。〈ドールに追われる男〉。グラチウスの兄弟子にあたり、グラチウスよりも長い千年の齢を誇っている。もともとは悪魔神ドールの徒として、グラチウスとともにドール教団の創設に深く関わり、教団の最高司祭もつとめたという。だが、600年ほど前のある白魔道師との闘いをきっかけにヤヌスの啓示をうけ、ドールに背いてヤヌス大神の徒となり、以来、ドールに追われる身となった。 その数十年後、グラチウスの罠にはまって囚われの身となり、ユラニアの首都アルセイスのザンダロスの塔の地下に幽閉されてしまう。もっとも、身体は拘束されても、精神は比較的自由に行動できたようで、約300年前にはルードの森でアグリッパと邂逅を果たし、またサイロンでグラチウスの罠に落ちかけたグインを救助したこともある。 第二次ケイロニア-ユラニア戦役の際に、アルセイスを訪れたグインの手によって、550年ぶりに自由の身となり、以後グインの忠実な味方となる。グラチウスに拉致されたケイロニア皇女シルヴィアの居場所について、グインに示唆したのも彼である。また、パロ内乱の際には、アグリッパの行方を求めて訪れたヴァレリウスを先導して、ともにアグリッパの結界を訪れ、その後もヴァレリウスの求めに応じて、ナリスをマルガに戻すための佯死の術を施すなど、キタイの魔道竜王ヤンダル・ゾッグの中原進出を阻止するに一役買った。さらに、星船を舞台としたアモンとの闘いから帰還して記憶を失ったグインと、放射線障害と思しき病が再発して死に瀕していたスカールにも救いの手を差し伸べ、スカールに新たな治療を施すとともに、グインをマリウスとともにパロへの道中へと送り出す役目を果たした。 カル=モル キタイ出身の魔道師。元パロ王立学問所所長カル・ファン、キタイの首都ホータンのゼド教の僧侶カル=カンとは同族であるらしき事が作中で示唆されている。百年ほどの昔、ノスフェラスの秘密を解いてカナンを再興させんとする野望を抱き、大導師アグリッパを求めてノスフェラスへと入った。その後、ノスフェラスの中心部であるグル・ヌーの周辺部に至る(本人はグル・ヌーそのものに到ったものと考えていたらしい)が、周辺部にまで及ぶ、放射能と思われる強烈な瘴気の影響からか、すっかり干からびた骸骨同然の姿となってしまう。なんとかケス河を渡り、モンゴールの辺境にたどり着いた彼は、辺境開拓民に救われ、辺境警備隊の手によってモンゴールの首都トーラスへと送られる。 少なくとも、この頃には彼はキタイの魔道竜王ヤンダル・ゾッグの傀儡となっていたとされる。モンゴール大公ヴラドと謁見した彼は、グル・ヌーについて告げるとともに、パロの古代機械の存在をヴラドにあかし、パロへの奇襲の進言と、その成功の保証を行う。その進言どおりにパロ奇襲が成功したのち、彼はアムネリス率いるノスフェラス侵攻軍に同行して、再びノスフェラスへと入る。しかし、グイン率いるセム・ラゴン連合軍との戦いの中で、ラゴンの槍に刺され、あえなく戦死する。 だが、肉体は滅びても、彼の妄執にまみれた精神は滅びてはいなかった。怨霊と化した彼はパロ王太子レムスの精神に憑依し、徐々に彼をキタイの傀儡に仕立て上げたのちに、ようやくその役目を終えて消滅した。 ルカ サイロンのまじない小路に住まう魔道師。〈世捨て人〉。もっとも、まじない小路にあるのは、彼の結界の入り口のみであり、結界そのものはノスフェラスにあるらしい。グインが放浪者として初めてサイロンに入った際、彼を出迎えて最初に「王よ」と呼び掛けた人物でもある。予知の力に極めて秀でているものの、それ以外の魔道についてはさほど強い力は持っていない。もっとも、それは予知の力を得るために、その他の力を犠牲にしているためであるらしい。グインの将来などについて、これまでにさまざまな予言をしてきており、外伝『鏡の国の戦士』では、グインとヴァルーサのあいだの初子が男児であることを予言している。 ガユス モンゴールに程近い自由国境地帯にある派遣魔道士ギルドに所属する魔道師。黒竜戦役では、モンゴールに雇われてアムネリス付きの魔道士としてアムネリスを助けた。第二次黒竜戦役終結後は派遣魔道士ギルドに戻ったが、後にイシュトヴァーンの裁判が行われた際にサイデンによって証人としてトーラスに召喚され、黒竜戦役当時のモンゴールに関する証言を行った。その直後に起こったトーラス動乱の時には、人知れず姿を消していた。 オーノ アリストートスに雇われていたヤミ魔道師で、あらゆる毒物を扱うことが出来る。実際はホータン魔道師ギルド所属の魔道師で、ヤンダル・ゾッグの部下として中原へと送り込まれていた。アリストートスの命令で常にイシュトヴァーンを監視していたが、ゴーラの動乱の最中にイシュトヴァーンがマルコだけを連れてアルド・ナリスに会いに行った帰路の途中でヴァレリウスによって捕らえられ、魔道により自身とアリストートスの悪事の全てを自白させられる。その後、ヤンダル・ゾッグがパワーを送り込むための端末にされるが、イシュトヴァーンに斬り倒されて死亡した。
※この「魔道師」の解説は、「グイン・サーガの登場人物一覧」の解説の一部です。
「魔道師」を含む「グイン・サーガの登場人物一覧」の記事については、「グイン・サーガの登場人物一覧」の概要を参照ください。
魔道師
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/18 00:42 UTC 版)
「グイン・サーガの世界観」の記事における「魔道師」の解説
魔道師は大きく、白魔道師と黒魔道師に分類される。 白魔道師とは、古の超科学者アレクサンドロスとの戦いに敗れた魔道師たちが、魔道の悪用を禁ずるために定められた魔道十二条を守ることを誓約することによって誕生した一派である。彼らは魔道師ギルドと呼ばれる団体によって律され、魔道十二条に背いた者はギルドによって厳しい罰を受けることとなる。その総本山はパロにあり、ゆえにパロに仕える魔道士(魔道を以って士卒として国家に仕える魔道師)のすべては白魔道師である。 一方、黒魔道師は魔道十二条に縛られない魔道師を指す。制約が少ない分大きな力を発揮できるが、その多くは独立しているために、ことに白魔道師の力の大きい中原においては、黒魔道師は個人の力が大きくなければ生き延びられないという一面もある。キタイの魔道師の場合、ある種の魔道師ギルドは存在するようだが、そもそも地理的、歴史的にアレクサンドロスの誓約とは無関係に発展したため、すべては黒魔道師に分類される。かつては黒魔道師を束ねる組織として、グラチウスが創設し、白魔道に転向する以前のイェライシャも最高幹部を務めたドール教団があるとされたが、近年ではグラチウス自身も教団を離れたといわれ、教団の存続自体が疑問視されている。
※この「魔道師」の解説は、「グイン・サーガの世界観」の解説の一部です。
「魔道師」を含む「グイン・サーガの世界観」の記事については、「グイン・サーガの世界観」の概要を参照ください。
- 魔道師のページへのリンク