サウル【Saul】
サウル 【Saul】
サウル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/05 03:39 UTC 版)
サウル שָׁאוּל |
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イスラエル王 | |
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ダビデの弾く竪琴に聞き入るサウル。レンブラント・ファン・レイン画
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死去 | 紀元前1000年頃 ギルボア山 |
配偶者 | アヒノアム |
リヅパ | |
子女 | 本文参照 |
王朝 | サウル朝 |
父親 | キシ |
サウル(Saul、ヘブライ語: שָׁאוּל、Šāʾūl)は、旧約聖書『サムエル記』に登場する、紀元前10世紀頃のイスラエル王国の最初の王。
生涯



選ばれた経緯
サムエルが士師としてイスラエルを指導していた頃、民の中から王を求める声が強くなった。サムエルは王政のデメリットを以下のように説明するが、民が聞き入れなかったので神の指示によって王になるべき男を捜す[1]。
サウルはベニヤミン族出身のキシの息子で、背が高く美しい若者であった。ロバを探しに出てサムエルに会い、サムエルは彼が神が選んだ人であることを悟って油を注ぐ[2]。
王としてのサウル
最初の戦闘でサウルはアンモン人に攻め囲まれたヤベシ・ギレアデを救い、民に王として歓迎される[3]。その後もサウルは息子ヨナタンや家臣たちと共にイスラエルを率いて、ペリシテ人や周辺民族と勇敢に戦った。しかしアマレク人との戦いで「アマレク人とその属するものを一切滅ぼせ」という神の命令に従わなかったため、神の心は彼から離れた[4]。神の声を伝えていたサムエルもこれ以降サウルに会うことはなかった。
サムエルはサウルをあきらめ、神の言葉によってひそかにエッサイの子ダビデに油を注いだ。ダビデはペリシテの勇者ゴリアテを討って有名になり、竪琴の名手としてサウルに仕えたが、サウルはダビデの人気をねたんで命を狙った[5]。ダビデは逃れ、何度もサウルを殺害するチャンスを得たが、「神の選んだ人に手をかけられない」といってサウルに手を触れなかった[6][7]。
ダビデの立琴によってサウルから悪霊が出て行った、第一サムエル16章23節の聖書記事は初期の音楽療法とみなされている。
最期
サムエルの死後にペリシテ軍がシュネムに陣を取った際、サウルは恐れて主に伺いをたてるが答えを得られず、自ら断ち滅ぼしたはずの口寄せに頼った。サムエルが現れるが「主はイスラエルの軍勢をペリシテびとの手に渡される」と言い渡される[8]。
サウルはペリシテ軍との戦いの中で、ギルボア山で息子たちと共に追い詰められ、剣の上に身を投げて自害した[9]。また「重傷だったサウルに頼まれて家臣がとどめをさした」との異なる伝承もあるが[10]、そのようにダビデに話した若者はダビデによって処刑された[11]。
死後
サウルとヨナタンの遺体はペリシテ人に奪われ、鎧を剥ぎ取られた上でベテ・シャンの城壁に釘付けにされ晒し者にされていた。それを聞いたヤベシ・ギレアデの勇士たちは夜に取り返しに行き、取り返した後は火葬し遺骨はヤベシのギョリュウの木の下に埋葬して一週間断食した[12][13]。後に次の王となったダビデによって、ベニヤミンの地ゼラにあるその父キシの墓に移送され葬られた[14][15]。
サウル王の四男のイシュ・ボシェテがただ一人生き残り、将軍アブネルに支持されて、マハナイムでサウル王朝第2代目の王になった。イシュ・ボシェテが暗殺されるとサウル王朝は滅亡して、ダビデ王朝が始まった[16]。
サウルの孫に当たるヨナタンの足萎えの子メピボセテは、その父ヨナタンゆえにダビデより施しを受け、常にダビデと共に食事をするよう食卓に招かれた[17]。
家族
サウルの家族については『サムエル記』上14:49-51[注 1]、サムエル記下21:7-14[注 2]、歴代誌上8:33-35[注 3]参照。
- 妻:アヒマアズの娘アヒノアム、アヤの娘リヅパ
- 息子:ヨナタン、エスイ、マルキシュア、アビナダブ、エシバアル(イシュ・ボシェテ)、(めかけのリヅパとの子、アルモニとメピボセテ)
- 娘:メラブ、ミカル
- 従兄弟(または叔父[注 4]):アブネル(サウルの軍司令官)
- 孫:メリバアル、メピボセテ(ヨナタンの子[注 5])
家系図
聖書中の記述を元にするとサウルの身辺は概ね以下のようになる[注 6][注 7]。
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ベニヤミン人 アピヤ |
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ベコラテ |
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ゼロル |
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アビエル |
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ネル |
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アブネル |
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キシ |
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アヤ |
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アヒマアズ |
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リヅパ |
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サウル |
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アヒノアム |
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アルモニ |
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メピボセテ |
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ヨナタン |
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エスイ |
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マルキシュア |
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アビナダブ |
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エシバアル (イシュ・ボシェテ) |
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メラブ |
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ミカル | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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メピボセテ (メリバアル) |
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ミカ |
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脚注
注釈
- ^ さて、サウルのむすこたちはヨナタン、エスイ、およびマルキシュアである。ふたりの娘の名は次のとおりである。すなわち姉の名はメラブ、妹の名はミカルである。サウルの妻の名はアヒノアムといい、アヒマアズの娘である。また軍の長の名はアブネルといい、サウルのおじネルの子である。サウルの父キシとアブネルの父ネルとは、アビエルの子である。(サムエル記上(口語訳)#14:49-51)
- ^ しかし王はサウルの子ヨナタンの子であるメピボセテを惜しんだ。[中略...]王はアヤの娘リヅパがサウルに産んだふたりの子アルモニとメピボセテ、およびサウルの娘メラブがメホラびとバルジライの子アデリエルに産んだ五人の子[中略...]アヤの娘でサウルのめかけであったリヅパ[中略...]こうして彼らはサウルとその子ヨナタンの骨を、ベニヤミンの地のゼラにあるその父キシの墓に葬り、すべて王の命じたようにした。(サムエル記下(口語訳)#21:7-14)
- ^ ネルはキシを生み、キシはサウルを生み、サウルはヨナタン、マルキシュア、アビナダブ、エシバアルを生んだ。ヨナタンの子はメリバアルで、メリバアルはミカエル[ミカの誤植?s:歴代志略上(文語訳)#8:34]を生んだ。ミカの子らはピトン、メレク、タレア、アハズである。(歴代志上(口語訳)#8:33-35)
- ^ サウルの父はキシ、アブネルの父はネルで、共にアビエルの子とサムエル記上14:51ではなっているため一見従兄弟に見えるが、歴代志上8:33ではキシの父がネルとなっているため、従兄弟ではなく叔父に相当する可能性が残る。
- ^ 歴代志上8:33ではヨナタンの子はメリバアルで、メリバアルはミカを生んだ事になっているが、サムエル記下9:12ではヨナタンの子メピボセテには小さい子があって、名をミカといったとあるため、ヨナタンの子メピボセテとメリバアルが同一人物を指す可能性は残る。
- ^ さて、ベニヤミンの人で、キシという名の裕福な人があった。キシはアビエルの子、アビエルはゼロルの子、ゼロルはベコラテの子、ベコラテはアピヤの子、アピヤはベニヤミンびとである。(サムエル記上(口語訳)#9:1)
- ^ メピボセテには小さい子があって、名をミカといった。そしてヂバの家に住んでいる者はみなメピボセテのしもべとなった。(サムエル記下(口語訳)#9:12)
出典
- ^ サムエル記上(口語訳)#第8章
- ^ 『サムエル記』上9-10
- ^ サムエル記上(口語訳)#第11章
- ^ 『サムエル記』上15:1-34
- ^ 槍で壁に刺し通そうとする(サムエル記上(口語訳)#18:10-11)(サムエル記上(口語訳)#19:9,10)
- ^ サムエル記上(口語訳)#24:6,7
- ^ 寝ているサウルを槍で刺し通そうとした部下をたしなめた(サムエル記上(口語訳)#26:8-11)
- ^ サムエル記上(口語訳)#第28章
- ^ 『サムエル記』上31:1-6
- ^ 『サムエル記』下1:1-11
- ^ サムエル記下(口語訳)#1:13-15
- ^ サムエル記上(口語訳)#31:8-13
- ^ サムエル記下(口語訳)#2:4
- ^ サムエル記下(口語訳)#21:12-14
- ^ サムエル後書(文語訳)#21:12-14
- ^ 「新聖書辞典」114ページ
- ^ サムエル記下(口語訳)#第9章
関連項目
「サウル」の例文・使い方・用例・文例
- ティラノサウルスの骨組がサウスダコタで発見された。
- 昨日アロサウルスについてのドキュメンタリーを見た。
- ハドロサウルス
- ティラノサウルスは、巨大な肉食獣だった
- 装甲恐竜:ステゴサウルスとアンキロサウルス
- 骨質の堅い頭部を持つ恐竜(パキケファロサウルス)、角を持つ恐竜(ケラトプス類=角竜類)を含むグループ
- カモノハシ竜とその初期の近縁類(ハドロサウルス・トラコドン・イグアナドン)を含む広く分布する群
- 大きなハドロサウルスの属
- 最も大きくて最も有名なハドロサウルスの1つ
- 白亜紀の大きいハドロサウルス
- 大型の草食性恐竜で、巨大な体と長い首に小さな頭部を持つ:原竜脚類と竜脚類からなる(アパトサウルス、ディプロドクス、ティタノサウルス)
- メガロサウルス
- メガロサウルス科の標準属
- オビラプトール類とドロマイオサウルスとおそらく現生の鳥類をも含む高等な獣脚竜類
- エダフォサウルス
- エダフォサウルス科の標準属
- イクチオサウルス科の爬虫類
- 絶滅した海洋爬虫類:プレシオサウルス
- ノトサウルス類の属の1つ
- プレシオサウルスよりも長くて細いが、遊泳にはより適さない四肢を持つ、絶滅した海洋爬虫動物
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