筋ジストロフィーとは? わかりやすく解説

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きん‐ジストロフィー【筋ジストロフィー】

読み方:きんじすとろふぃー

進行性筋ジストロフィー


筋ジストロフィ症

同義/類義語:筋ジストロフィー, 筋ジストロフィー症
英訳・(英)同義/類義語:muscular dystrophy

様々な原因で、筋組織萎縮し筋力低下する疾患総称症状原因により、デュシェンヌ型ベッカー型福山型などいろいろなタイプ知られている。
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病名疾患名治療など:  神経変性疾患  神経繊維腫  種の起源  筋ジストロフィ症  糖尿病  経口避妊薬  結核

筋ジストロフィー(進行性筋ジストロフィー) ( myotonic dystrophy )

骨格筋変性生じ遺伝性の疾患。ディシュエンヌ型、顔面肩甲上腕型、肢帯型、眼型あるいは眼咽頭型、その他6種類ほどに分類されていますが、いずれも進行性でまだ根本的な治療はありません。

筋ジストロフィー

学名muscular dystrophies

筋ジストロフィーとは「筋線維変性壊死を主病変とし、進行性筋力低下をみる遺伝子疾患である」と定義されています。多く遺伝しますので、その遺伝形式により、分類が行われてきました。しかし、近年分子遺伝学進歩により、遺伝子座次々と明らかにされ、またクローニングされ、それに基づいた疾患分類試みられるようになってます。主な病気分類表1示しました
表1 主な筋ジストロフィー
×遺伝子座遺伝子産物
1)X連鎖劣性遺伝
a. Duchenne型Xp21dystrophin
b. BeckerXp21dystrophin
c. Emery-DreifussXq28emerin
2)常染色体劣性遺伝
a. 肢帯表2
b. 先天性××
福山9q31fukutin
福山型(古典型)
メロシン欠損6qmerosin
(laminin α2鎖)
メロシン陽性××
c. 遠位型三好2p13dysferlin
3)常染色体優性遺伝
a. 顔面肩甲上腕4q-ter×
b. 肢帯表2
c. 眼・咽頭14q11.2-q13poly A binding protein 2

A.デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy: DMD)
a.病因病態病理
本症はX連鎖性染色体劣性遺伝をとるため、患者男児限られます。同じ様な遺伝形式をとる病気血友病色盲あります母親遺伝子に異常(変異をもっていて、それが男の子に伝わることが多いのです。しかし、母親遺伝子変異をもっているとは限りません。この病気突然変異率が高いので、お子さん遺伝子突然変異があり、お母さんには変異がないことがまれではありません。お母さんの約1/3は変異がありません。
まれに染色体異常X染色体常染色体の相互転座Turner症候群)があると、女性同様な症状とります。また女性保因者女性遺伝子の異常を持っている人)も、まれですが血液CK値が高かったり、軽い筋肉の力が弱かったりします
この病気起こす遺伝子はどこにあって、その遺伝子変異があるとどのような蛋白欠損するか明らかになっています。遺伝子のある場所はX染色体短腕Xp21)にあります。この遺伝子分子量427kDの蛋白ジストロフィン命名されています)をコードしています。ジストロフィン遺伝子クローニングされ、それはcDNAで14kbあって、79エクソンからなっています。患者さんではこのジストロフィン遺伝子変異があり、ジストロフィン蛋白生成されないのです。患者さんの5060%はジストロフィkン遺伝子欠失遺伝子欠けていて短い)、約10%重複遺伝子重なって長くなっている)です。残り3040%は多分点変異DNA一個間違っているような一塩置換など)と考えられています。 最も多い欠失は、3塩基づつの読みにずれがある(out of frame)欠失(正常では塩基3個で一つアミノ酸できます。3個の組み合わせがずれるので、めちゃくちゃなアミノ酸ができるのです)です。それだけでなく、欠失部以下にもう蛋白作るのを止めなさいというストップ命令コドン)が働き不完全な蛋白生成されます。それは不安定で、すぐに分解される考えられています。ですからデュシェンヌ型ではジストロフィン蛋白はまった作られません。
ジストロフィン蛋白筋細胞直下局在していて、ジストロフィン結合蛋白結合してます。ジストロフィン細長い棒状構造をしていると考えられています(図6)。
図6:ジストロフィンとジストロフィン結合蛋白の関係
図6:ジストロフィンジストロフィン結合蛋白の関係
この図は筋細胞膜(基底膜形質膜の2重膜からなる)の一部拡大した分子モデルの図である。
20DAPはサルコスパンとよばれている。DGジストログリカンSG:サルコグリカン

5’側(ジストロフィンの頭の部分)は細胞膜しっかりと強固に保つ、アクチンという細い糸と結合する部位(actin binding domain)で、それに続いて3重らせん構造をとる桿状部分(rod domain)が続いてます。それはさらにシスティンに富む部分(cysteine-rich domain)、C端(carboxyl terminal)へと続いてます。図6のようにジストロフィン分子はcysteine-rich domainのところでジストロフィン結合蛋白のβジストログリカン(β-dystroglycan)と結合してます。ジストロフィンアクチンという細い線維一緒になって膜を補強するものです(細胞膜しっかりと裏打ち構造をするもので細胞骨格いいます)。
患者さんではこのジストロフィンは全く欠損してます。それは抗ジストロフィン抗体免疫染色をすると、正常では筋細胞膜に局在するジストロフィンが全く染色されないことから容易に判定でき(図7)、本症の診断用に使用されています。細胞膜しっかりと安定させているジストロフィン蛋白がないので、細胞膜弱く、すぐにシャボン玉のようにこわれるのでしょう
図7:ジストロフィン抗体による免疫染色正常筋(左)では筋細胞膜にジストロフィン存在するので、膜の部分蛍光発し染色されている。
デュシェンヌ型(右)ではジストロフィンがないので、まったく染色されていない
図7:ジストロフィン抗体による免疫染色
患者さんの骨格筋生検してみますと、筋線維活発な壊死活発な再生をみます(図8)。筋細胞膜がひ弱なため、細胞の外にある高濃度カルシウムCa)が細胞内逆流して線維変性起こす考えられています。高濃度カルシウム細胞内に入ると、筋線維はぎゅうっと縮みあがり、特殊な酵素(たとえばカルパイン)、で溶かされどろどろになるのです。でもその「どろどろ」を食べてきれいにする細胞貪食細胞マクロファージ)が細胞内きれいにしてくれます
図8:デュシェンヌ型筋ジストロフィーの筋病理-1筋線維大小不同壊死線維(この図の中央にあって溶けたような胞体をもっている)(矢印)をみる。
壊死線維には大型をもつマクロファージ侵入している。
図8:デュシェンヌ型筋ジストロフィーの筋病理-1

筋ジストロフィーにみられる沢山の再生線維中央にみえる青み帯びた小さな線維(→)
で、デュシェンヌ型では筋線維平均15%は再生途上筋である。

マクロファージ掃除されきれいになった壊死細胞には続いて再生が起こる。病気が進むと筋線維著明減少し結合織脂肪織置換されてしまう。こうなると力は弱く関節硬くなり、伸びなくなってしまう。
図9:デュシェンヌ型筋ジストロフィーの筋病理-2
図9:デュシェンヌ型筋ジストロフィーの筋病理-2


b  本症の頻度男児出生3、300人に1人人口10万人に3ー5人くらいの患者さんがいるといわれています。人種差はなく、あらあゆる国に患者さんがいます。
従来は3ー5歳頃、走れない、転びやすい、階段昇降困難で気付かれることが多かったのです。しかし最近では、乳児期他の疾患(たとえば風邪をひいたとか)での検査中に偶然高CK血症で見いだされることが多くなりましたた。乳児期から追跡する歩行開始遅延1歳カ月以降歩行開始)が3050%いること、歩行開始時にはすでに筋力低下立ち上がり方の異常)がみられることから、乳児期にもすでに異常があるお子さんがいるようです
初期上記のように転びやすい、走れないなど歩行に関する異常が最も多くみられます。また筋肉の力が明らかに弱くなると、そん居の姿勢から立ち上がるとき、床に手をつき、臀部高く挙げて立つようになります健康なお子さんは、しゃがんだ位置からすっと垂直に立ち上がります。さらに筋肉の力が弱くなると、手を床に着き、つぎに膝に手を交互にあてて立つ、いわゆる登はん性起立(Gowers徴候)をみるようになります
(図10)。

腰の筋力低下があるため、床から起立する時、まず床に手をついて、お尻高くあげる(a)
次にひざに手をあてて、手の力を借りて立ち上がる(b)。
ふくらはぎ太く偽性肥大示している。
この偽性肥大デュシェンヌ型ベッカー型特徴的である。
図10: 登はん性起立(Gowers徴候)
10: 登はん性起立(Gowers徴候)

さらに進行すると、何かものにつかまらない立てなくなり10歳前後歩行不能となり、車椅子生活となります次第寝返りにも人の介助が必要となり、20歳前後で、呼吸筋の力が弱くなるため、人工呼吸器助けが必要となります。むかしは人工呼吸器がなかったので、患者さんは20歳以前死亡していました。でも今は40歳まで生きる方がでてきました医療機器進歩で、患者さんの生命もっともっと伸びるでしょう
筋萎縮見た目筋肉細くなる)は病初期にはあまり目立たちません。むしろふくらはぎ異常に太いのが特徴的で、これは仮(偽)性肥大(pseudohypertrophy)とよばれてます。この筋の肥大は肩や、頬筋舌筋にもみられます。ふくらはぎ肥大デュシェンヌ型次に述べベッカー型では、ほとんどの患者さんが経験する病気特徴的所見です。
病気進行すると、筋萎縮躯幹近位筋(大腿上腕躯幹筋)に著明みられるようになります歩行時には関節拘縮関節伸展悪くなることです)はアキレス腱短縮による尖足のみですが、歩行不能となった時点から、股関節膝関節などに広がっていきます脊柱変形手指顎関節など全身関節拘縮をみるようになるのです。腱反射アキレス腱反射除いて減弱ないし消失します(図11)。
図11:車イス生活になったデュシェンヌ型筋ジストロフィーのT君と筆者足の関節拘縮している。

T君は今人呼吸器をつけているが、亜細亜大学法学部通学し勉強しているファイトあふれる青年(この写真掲載はT君の許可得たものです)。
11:車イス生活になったデュシェンヌ型筋ジストロフィーのT君と筆者
c.治療
現在のところ病気進行とめたり筋力回復するような根本的治療法みつかっていません。でも、病気進行遅らせるさまざまな試みなされてます。

その一つとして副腎皮質ホルモン投与試みられています。副作用出ない少量投与でよい結果出てます。 わたしはデュボビッツ(Dubowitz)先生方法毎月10日間だけプレドニゾロン0.75mg/Kg/日投与20日間休)をとっています。 これですと副作用が出る人はごくまれです。副作用もほっぺがふっくらとする程度です。 中にはとても効果があって、5年らい病気の進行がなくなる人もいます。 でも、効果はっきりしない人もいます。アメリカ調査では副腎皮質ホルモン治療受けた人は歩行期間が2年延長するとのことです。
最近アメリカ神経学会、小児神経学会では多く患者治験をしたところ、最初はプレドニソン0.75mg/Kg/日の連日投与から開始することがもっとも有効であったとして、推薦してます。副作用出てきたら、0.3mg/Kg/日に減量します。(http://www.aan.com/professionals/practice/pdfs/DMD_Guideline_Physicians.pdf)。 この量ですと、日本人には量が多すぎて、副作用が出る可能性が強いと思います日本人用のスタンダード欲しいです

デュシェンヌ型では筋力低下関節拘縮進行するので、それを少しでも防ぐためのリハビリテーションが行われ、効果をあげています。 また呼吸不全をみるようになった場合鼻マスクによる人工呼吸器(nasal:noninvasive intermittent positive pressure: NIPP)の使用、あるいは気管切開による人工呼吸器使用が行われ、患者さんの延命効果大きく寄与しています。 心不全徴候みられるようになった患者さんには、アンジオテンシン変換酵素阻害剤ACE阻害剤)、ベーターブロッカージギタリス剤、利尿剤組み合わせた治療が行われていて、とてもよい結果をえています。 いろいろな薬物治療呼吸管理などで、患者さんの生命予後飛躍的によくなっています。

遺伝子治療mdxマウスジストロフィン欠損している筋ジストロフィーマウス)を使用して行われてます。 現在アデノウィルスDNAベクターDNA細胞内への運びやさん)にして、ジストロフィン遺伝子一部あるいは全長挿入され、筋内投与が行われています。 投与部にはジストロフィン陽性線維増加し筋線維壊死抑制がみられています。ただし、1回投与での効果持続性短く、再投与での効果乏しいことが欠点とされています。 でもアデノウィルスベクターに変わるベクター(たとえばアデノウィルス随伴ウィルスベクター)なども開発されています。 遺伝子治療はよいベクター開発かかってます。科学進歩すばらしいです原因がまったく分からなかったデュシェンヌ型筋ジストロフィー遺伝子クローニングされたのが1986年です。 最近学問進歩には目を見張るものがあります根本治療遺伝子治療への時代突入したのです。
遺伝子治療については別に国立精神・神経センター神経研究所 遺伝子治療研究部 武田伸一部長解説いただいてます。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する分子治療のこころみ

筋ジストロフィー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/06 05:08 UTC 版)

筋ジストロフィー
概要
診療科 神経学, 小児科学, 遺伝医学
分類および外部参照情報
ICD-10 G71.0
ICD-9-CM 359.0-359.1

筋ジストロフィー(きんジストロフィー、英語: muscular dystrophy)とは、筋線維の破壊・変性(筋壊死)と再生を繰り返しながら、次第に筋萎縮と筋力低下が進行していく遺伝性筋疾患の総称である。発症年齢や遺伝形式、臨床的経過などからさまざまな病型に分類される。そのうち、最も頻度の高いのはデュシェンヌ型である。2015年7月に難病指定され、日本国内の患者数は約25,400人と推計されている。

定義

主訴が筋力低下、筋萎縮であり、以下の2項目を満たすものをいう。

  • 遺伝性疾患である。
  • 骨格筋がジストロフィー変化を示す。

ジストロフィー変化とは、筋線維の大小不同、円形化、中心核の増加、結合組織の増生、脂肪化を特徴として筋線維束の構造が失われる変化のことをいう。これは筋ジストロフィーの中で最初に報告されたデュシェンヌ型の病理所見から定義されたものである。

特別支援教育における罹患児の教育については、肢体不自由ないしは病弱で対応する。

筋ジストロフィー (Muscular Dystrophy, MD)

性染色体劣性遺伝型筋ジストロフィー

デュシェンヌ型 (Duchenne muscular dystrophy, DMD)
進行性筋ジストロフィーの大部分を占め、重症な型である。おおよそ小学校5年生くらいの10歳代で車椅子生活となる人が多い。昔は20歳前後で心不全・呼吸不全のため死亡するといわれていたが、「侵襲的人工呼吸法」(気管切開を用いる)や最近では「非侵襲的人工呼吸法」(気管切開などの方法を用いない)など医療技術の進歩により、5年から10年は生命予後が延びている。しかし、未だ根本的な治療法が確立していない難病である。このデュシェンヌ型は、伴性劣性遺伝(X染色体短腕のジストロフィン遺伝子欠損)で基本的に男性のみに発病する。
症状
2 - 5歳ごろから歩き方がおかしい、転びやすいなどの症状で発症が確認されることが多数である。初期には腰帯筋、次第に大殿筋、肩甲帯筋へと筋力の低下の範囲を広げていく。なお、筋力低下は対称的に起きるという特徴を持つ。また、各筋の筋力低下によって処女歩行遅滞、易転倒、登攀性起立(とうはんせいきりつ、ガワーズ(Gowers)兆候)、腰椎の前弯強、動揺性歩行(アヒル歩行)[注釈 1]などをきたす。筋偽牲肥大に関しては腓腹筋三角筋で特徴的に起こるが、これは筋組織の崩壊した後に脂肪組織が置き換わることによる仮性肥大である。病勢の進行と共に筋の萎縮(近位→遠位)に関節拘縮、アキレス腱の短縮なども加わり、起立・歩行不能となる。心筋疾患を合併することが多く、心不全は大きな死因のひとつである。
検査
血清CK値著明に上昇。筋電図にて筋原性変化を認める。尿中クレアチニン↓。尿中クレアチン↑。筋生検にて免疫染色を行いジストロフィン蛋白欠損。
治療
現在のところ、根本的治療法はない。機能訓練や関節拘縮予防のためのストレッチ(理学療法)のほか、心不全・呼吸障害に対する対症療法が行われる。作用機序は明らかではないが、プレドニゾロンはDMD型筋ジストロフィーに保険適用がある。国産初のアンチセンス核酸医薬品として治療剤(ビルトラルセン)の臨床試験が開始され[1]、2020年3月25日に承認された[2]。また、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAC阻害剤)による治療の研究がされている。
ベッカー型 (Becker muscular dystrophy, BMD)
病態はデュシェンヌ型と同じだが、発症時期が遅く、症状の進行も緩徐。関節拘縮も少ない。一般に予後は良い。
デュシェンヌ型同様、免疫染色にてジストロフィン蛋白に異常を認めるが、デュシェンヌ型ではジストロフィン蛋白がほとんど発現していないのに対し、ベッカー型では異常なジストロフィン蛋白が産生されたり、発現量が少ないことが知られており、これにより両者の症状の差異が生じているのだと考えられる。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの筋病理

筋ジストロフィーの筋病理の主要所見は筋線維の壊死と再生である。筋線維の壊死と再生に関しては以下のような説明がされている。ジストロフィン欠損に起因する膜の異常があり、細胞外液が細胞内に流入する。外液中には高濃度のカルシウムが存在するためそれが筋細胞に入ると筋肉は過収縮をおこす。これがopaque線維と考えられる。高濃度カルシウムが存在するとカルパインなどの酵素が活性化され自己消化を起こし、筋肉は崩壊し、貪食細胞の侵入を許すことになる。筋ジストロフィーでは筋再生が活発であるが、再生は壊死を代償しない。そのため筋線維は次第に数を減らし、末期には筋線維はほとんど消失し、脂肪組織と結合組織で置換される。骨格筋のみならず、心筋や横隔膜もおかされ、心不全または呼吸不全が死因のひとつとなる。

先天性筋ジストロフィー

出生時より筋力の低下を認めるものを先天性筋ジストロフィーと呼ぶ。

  • 福山型 - 日本では先天性筋ジストロフィーの中で最も頻度が高い。多くは10歳代で死亡する。
  • ウールリッヒ型
  • メロシン欠損症
  • インテグリン欠損症
  • ウォーカーワールブルグ症候群

肢帯型筋ジストロフィー

  • LGMD1A - 1D群  
  • LGMD2A - 2F群

三好型筋ジストロフィー (Miyoshi muscular dystrophy : MMD)

16 - 30歳ごろに発病し腓腹筋ヒラメ筋が侵される。初期症状は、つま先立ちができないジャンプすることができない、走ることが遅くなるなどの症状報告されている。発症後約10年で歩行が不可能となり、手の筋力も遠位から低下しやがて近位にも及んでくると言われているが、病状には違いがあり、発症後10年以上経過した方でも歩行可能の患者が報告されている。この病気は筋ジストロフィーの一種で血中のCK値が顕著に上昇する。原因遺伝子はdysferlinで常染色体劣性遺伝。肢帯型筋ジストロフィー2B型においてもdysferlinの異常が確認されている。肢帯型筋ジストロフィー2B型は、体幹に近い所から筋肉が萎縮するが、病状が進むにつれ三好型と同じように体幹から遠いい手や足にも筋肉の萎縮が現れる。現在、有効な治療法はないが、共に治療を受けることができる。このDysferlin異常で発症する病気をDysferlinopathyと呼ぶ。

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー

常染色体優性遺伝。第4番染色体長腕に遺伝子座。原則として両親のどちらかが病気であるが、両親が全く正常で突然変異による発症と考えられる例が30%ある。病名のように顔面、肩甲部、肩、上腕を中心に障害される。進行すると腰や下肢の障害も生じ歩行困難となることもある。顔面筋の障害により閉眼力低下、口輪筋障害(口笛が吹けない)などを来たし、独特の顔貌(ミオパチー顔貌)を呈する。肩や上腕の筋萎縮が高度なのに比し前腕部は比較的保たれるため、ポパイの腕と形容される。下肢の障害は、下腿に強いもの、腰帯・大腿に強いものなどいろいろである。CK上昇は軽度である。比較的良性の経過をたどり、進行すると腰や下肢の障害も生じ歩行できなくなることもあるが、生命に関しては良好な経過をとる。筋症状以外では、感音性難聴、網膜血管異常の合併が高率であり、まれに精神遅滞やてんかんの合併がある。

筋緊張性ジストロフィー (myotonic dystrophy)

筋強直性ジストロフィーとも呼ばれる。常染色体優性遺伝を示す疾患で、マウスではmuscleblind-like(Mbnl)遺伝子の阻害により同様の症状が発現することが確認されている[1]トリプレットリピート病の一種である。進行性に罹患筋の萎縮とミオトニアが見られる。有病率は10万人に1 - 5人、好発年齢は20 - 30歳代であるとされる。先天型では母からの遺伝による重症型がある。フロッピーインファントで発症。

症状
顔筋、舌筋、手内在筋のミオトニア(筋強直。筋の収縮が異常に長く続き、弛緩が起こりにくい現象のこと。手を強く握るとすぐには開けない、など。低温下で増強されるため、冷水中の雑巾絞り様動作が診断の一助になるという)や、咬筋胸鎖乳突筋筋萎縮(西洋斧顔貌)、側頭筋の筋萎縮(白鳥の頸)、または四肢遠位筋の筋萎縮を見る。ミオトニアは筋萎縮に先立って生じる
その他に、白内障などの眼症状、内分泌障害(耐糖異常、性腺萎縮(無精子症)、甲状腺機能低下)、精神薄弱、循環器障害、呼吸器障害、消化器障害、前頭部の脱毛など多彩な症状の見られる全身性疾患である。
検査
血清CK軽度上昇。筋電図にて筋原性変化を認め、また電極の刺入時に特徴的な筋強直性放電を認める(急降下爆撃音)。
治療
現在のところ、根本的治療法はない。対症的にプロカインアミドフェニトイン塩酸キニーネ副腎皮質ステロイド剤などの投与を行う。

脚注

注釈

  1. ^ 動揺性歩行(waddling gait)とは、ヒトに見られることのある病的な歩行形態の1つであり、アヒル歩行とも呼ばれる。具体的には、歩行時に筋力が不足して地面から挙上した脚の側の骨盤の高さを維持できずに、挙上した側の骨盤が重力の方向に落ちる。よって上半身を支えるために、接地している側の脚の方へと体幹を傾ける。これが左右交互に繰り返されるために、歩行時に上半身が大きく揺れるという歩行形態のことである。

出典

  1. ^ トランスレーショナル・メディカルセンター (2013年5月9日). “国産初のアンチセンス核酸医薬品としてデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療剤の臨床試験開始へ”. 2014年10月29日閲覧。
  2. ^ 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 (2020年3月27日). “デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬(NS-065/NCNP-01、ビルトラルセン)の製造販売承認について”. 2020年7月10日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク


筋ジストロフィー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 05:00 UTC 版)

筋炎」の記事における「筋ジストロフィー」の解説

筋病理では筋ジストロフィーにおいても反応性細胞浸潤がしばしば認められる。特に顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーFSHD)、LMNA遺伝子変異による筋ジストロフィーやジスフェルリン遺伝子変異による筋ジストロフィーが有名である。LMNA遺伝子変異による筋ジストロフィーはエメリ・ドレフェス型筋ジストロフィーやLGMD1Bを呈する。またジスフェルリン遺伝子変異はLGMD2Bを呈する原則として炎症性筋疾患ではHLA-ABCが筋線維発現するが筋ジストロフィーでは発現しないことが多い。

※この「筋ジストロフィー」の解説は、「筋炎」の解説の一部です。
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