行政・制度とは? わかりやすく解説

行政

(行政・制度 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/25 13:50 UTC 版)

行政(ぎょうせい、: Executive /Administration)とは、国家の統治作用のうち、立法司法を除いた作用の総称であり、以下を指す[1]行法ともいう。

1. 法律に従ってを治めること。

2. 国の機関または地方公共団体が法律・政令の範囲内で行う政務

概説

行政法学上の定義

法律学においては立法司法と並ぶ一つの国家作用である[2]立法権司法権と並び、統治権の一つとして、行政を行う権能を行政権という。

実質的意義の行政

国家作用が作用自体の性質という点に着目して立法、司法、行政に三分類されるとき、これらはそれぞれ実質的意義の立法、実質的意義の司法、実質的意義の行政と概念づけられる[3]

実質的意義の行政とは何かという点については、現代の行政は複雑で多岐な内容にわたっており、これに必要かつ十分な定義を与えるのは、容易でない。そのため、行政の定義については、内容的に定義することを放棄し、消極的に定義するにとどまる控除説消極説)と、なんとか行政の内容を積極的に定義してその内容を明らかにしようと努める積極説が対立する。

控除説(消極説)
日本の公法学上は、国家作用のうち、立法作用と司法裁判)作用を控除した残余の作用を指すとする見解(控除説、消極説)が支配的である。
このような控除説による説明は、内容的な定義づけを放棄しており、意味がないようにも見える。しかし、君主が有していた包括的な国家権能のうちまず立法権が議会に移譲され、その残りである執行権のうち司法権がさらに分化され、君主に残された権能が行政とされたという沿革に対応している。さらに、現実問題としても、行政と観念される作用には様々なものがあり、それらを漏れなく包括する必要もある。したがって、控除説は一般的に支持されている。
積極説
控除説のような消極的な定義づけに満足せず、積極的な定義づけをする試みもある。代表的な見解は田中二郎によるものであり、「法の下に法の規制を受けながら、現実に国家目的の積極的実現をめざしておこなわれる全体として統一性をもった継続的な形成的国家活動」とするものである。だが、行政の特徴等を大まかにイメージしたものに過ぎないという批判もある。

実質的意義の行政を主たる任務とする機関を行政機関というが、実質的意義の行政は、行政機関のみならず、立法機関や司法機関にも存在する。

形式的意義の行政

行政府に属する一切の作用の総称をいう。

国家作用は作用自体の性質という点に着目すると実質的意義の立法、実質的意義の司法、実質的意義の行政とそれぞれ概念づけられるが、個々の国家作用が現実にいずれの機関に配当されるかは憲法の体制・個別の法律により異なる[3]。そこで、現実に配当されている機関という点に着目して国家作用を分類したものが形式的作用である[3]

日本の場合、政令の制定は実質的意義においては立法作用であり、また、恩赦の決定や行政審判は実質的意義においては司法作用であるが、行政府に属する権限とされるため、形式的意義においては行政に含まれることになる[4]

行政学上の定義

「政治体系において権威を有する意思決定者によって行われた公共政策の決定を実行することに関連する活動」[5]などと定義される。

行政法

行政法は、行政の組織・機構に関する行政組織法、行政の手続に関する行政作用法、違法な行政活動によって不利益を被った国民の救済に関する行政救済法の3部門に大別される[6]

行政組織法

行政主体とは「行政という国家作用を担当する行政機関が帰属する法主体」[7]と定義され、また、これと対をなす行政客体とは「行政主体の行う行政の相手方となる法主体」[7]と定義される。行政主体の代表例は国(中央政府)と地方公共団体(地方政府)である。

近代統一国家の下では立法・行政・司法などすべての国家権力は国に集中するが、地方分権主義が進むにつれ地方公共団体が国と並ぶ重要な行政主体となるに至っている[8]

行政作用法

行政主体が行政機関を通じて私人に対して行う行政活動をめぐって生ずる権利義務関係を規律する法であり、行政救済法を除く「行政外部の法」を意味する[9]。行政作用法は行政機関による「立法」作用(いわゆる行政立法)をも「行政作用法」の対象としてきており、行政作用法の対象となる「行政作用」は、行政立法をも含む広義の形式的意味をしている[10]

行政組織法や行政救済法と異なり、行政作用の領域には、まとまった統一的な法律が少ない[11]

法治国家ないし行政の原則の下においては、法に従ってなされることが要求される[12]

行政救済法

行政法において、市民の権利が行政によって違法か適法かを問わず侵害された場合、その権利を救済する。

日本の行政法

行政組織法

行政機関

行政機関とは、行政主体のために行政を実施する機関をいう。権限の帰属で捉えた機関概念である。
指揮監督権

行政の統一をはかるために、上級機関が下級機関に対して有する権限。具体的には以下のものが挙げられる[13][14]

権限の代行
  • 権限の委任(権限の所在を変更)
    事務の委任ともいう。
    法令の根拠が、必要である。
  • 権限の代理(権限の所在を変更しない)
    • 法定代理(権限の全てに及ぶ)
      • 狭義の法定代理
      • 指定代理
    • 授権代理(権限の一部について行われる)
      委任代理ともいう
国家行政組織
第2条第1項
内閣は、国会の指名に基づいて任命された首長たる内閣総理大臣及び内閣総理大臣により任命された国務大臣をもつて、これを組織する。
第4条第1項
内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。

日本では、憲法第65条で、行政権は内閣に属すると定めている。これは、一般的には行政権が内閣総理大臣一人に属しているのではなく、内閣総理大臣と国務大臣の合議体からなる内閣に帰属していることを意味すると解釈されている(憲法第66条第1項・内閣法第2条第1項参照)。ただし、例えば内閣総理大臣が自己の任命式を終えた後、人事熟考のために時間をかけて組閣を行う場合、全会一致を要する閣議において閣議決定・閣議了解の採択にすべての国務大臣が反対した場合に全閣僚を罷免して自身が兼務することで閣内意思の一致を図るなどの場合において、内閣総理大臣のみをもって内閣が組織されることがありうる(いわゆる一人内閣。憲法第68条・第71条参照)。

地方行政組織

都道府県市町村がある。

公務員

行政組織の人的要素である。

公物

行政組織の物的要素である。

行政作用法

行為形式

行政立法
行政立法は、行政機関によって定立された一般規範またはその立法行為である。
  • 実質による種類
    • 法規命令
      国民の権利義務にかかわる法規たる性質を有するもの
      (例)政令、内閣府令、省令、会計検査院規則、人事院規則、地方公共団体の長や教育委員会等の規則
      • 執行命令
        憲法・法律等上級の法令を実施するための具体的細目・手続事項
        (例)政令・府令・省令・府や省の外局である委員会の規則・会計検査院規則・人事院規則などの命令。
      • 委任命令
        法律等上級の法令に基づき発せられる。
        (例)政令の委任に基づく省令、委員会規則
    • 行政規則
  • 形式による種類
    • 政令
    • 府省令
    • 外局規則
    • 独立機関規則
    • 行政規則
行政行為
  • 法律行為的行政行為
  • 準法律行為的行政行為
    • 確認、公証、通知、受理
  • 附款
行政契約

行政契約とは、行政目的を達成するための契約

行政指導

行政指導とは、指導・勧告・助言等で処分に該当しない行為。

行政計画

強制措置

行政強制

行政目的の達成のために、行政権が国民の身体・財産等に実力をくわえ、行政上必要な状態を実現させる作用といわれる[15][16][17]

行政上の強制執行
即時強制
義務違反に対する制裁
行政罰
  • 行政刑罰
    刑法上の刑罰を科す
  • 秩序罰
    制裁として過料を科す
その他の手段
  • 許認可処分の停止・取消
  • 経済的負担
  • 違反事実の公表
  • 給付拒否

行政手続

行政調査

行政調査は、行政機関が行政作用を公正に行うために、身体・財産を半強制的に調査し情報を収集すること。

行政情報

行政救済法

脚注

注釈

  1. ^ 実地視察等[13]
  2. ^ 事後的に違法・不当な行為の取消または停止を命じる[14]
  3. ^ 権限を巡る下級行政庁同士の争いの裁定[14]

出典

  1. ^ 精選版, 日本国語大辞典,デジタル大辞泉. “行政とは”. コトバンク. 2021年8月17日閲覧。
  2. ^ 塩野『行政法1 第4版 行政法総論』2頁
  3. ^ a b c 塩野『行政法1 第4版 行政法総論』6頁
  4. ^ 伊藤正己『憲法 新版』弘文堂、1990年、504頁、ISBN 4-335-30036-0 
  5. ^ 竹尾『現代行政学理論』5頁
  6. ^ 原田『行政法要論 全訂7版』14頁
  7. ^ a b 塩野『行政法1 第4版 行政法総論』328頁
  8. ^ 原田『行政法要論 全訂7版』45頁
  9. ^ 稲葉・人見・村上・前田『行政法 第4版』20頁
  10. ^ 稲葉・人見・村上・前田『行政法 第4版』21頁
  11. ^ 稲葉・人見・村上・前田『行政法 第4版』51頁
  12. ^ 原田『行政法要論 全訂7版』82頁
  13. ^ a b c d e f "指揮監督権". 日本大百科全書. コトバンクより2022年5月5日閲覧
  14. ^ a b c d e f g h "指揮監督権". ブリタニカ国際大百科事典. コトバンクより2022年5月5日閲覧
  15. ^ "行政強制". ブリタニカ国際大百科事典. コトバンクより2022年3月27日閲覧
  16. ^ 須藤陽子「「即時強制」の系譜」『立命館法學』第4号、2007年。 
  17. ^ a b c 即時強制. コトバンクより2022年3月27日閲覧

参考文献

関連項目

外部リンク


行政・制度(南)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/19 09:49 UTC 版)

太陽の黙示録」の記事における「行政・制度(南)」の解説

日本復興支援機構 復興省前身にあたる機関。元々は復興委員会傘下で、南日本(サウスエリア)の復興実務司っていたが、政府分裂機にアメリカ主導機関として、復興政策を自ら立案施行するうになる。なお、この当時副長官務めていたロックウェルは、後に復興省行政府長官となる。 復興省 南日本(サウスエリア)の震災復興経済政策・対北日本(ノースエリア)交渉担当する北日本復興委員会相当するアメリカ主導特別官庁ロックウェル・プラン国費留学生たちが高いポストついているアメリカ本国意向踏まえて難民支援治安対策よりも経済発展優先していた。行政長官施行同時に発展解消行政府に。 行政府 復興省前身とする、南日本(サウスエリア)の国家行政全般取り仕切る機関行政長官を長とし、各省庁をその下に直属させる政府とほぼ同義現在の行政長官宗方操道州制 サウスエリアの行政区分玄海首都圏福岡県下関近辺)のほか、山陽道山陽地方と旧兵庫県南部)、山陰道山陰地方と旧兵庫県北部)、南海道四国)、北陸道(旧京都府福井県石川県地域)、九州の計6つ広域行政区分で成り立つ。しかし各道州庁の行政は「バランスが重要であり、一部独走を許すわけにはいけない」とするロックウェル方針により、事実上復興省管理下に置かれていた。 駐南日本(サウスエリア)米軍 南日本(サウスエリア)に駐留する米軍政府分裂以前震災前同様に北日本(ノースエリア)領内にも部隊を展開させていたが、政府分裂以降北日本領内基地から完全撤退した劇中確認出来装備品M16A2UH-60南日本(サウスエリア)国防軍 自衛隊再編された南(サウスエリア)の軍隊正式に南日本独立国際的承認国連加盟同時に移行されることになっているが、隊員ならびに政府高官の間ではすでにこの名称が用いられ意識の上では名実ともに自衛隊とは差別化されている。階級小銃等の装備米軍と同じものに改められ、また隊員の3割が日本人ではない。 かつて南日本領内配備されていた旧陸上自衛隊と、旧海上自衛隊・旧航空自衛隊前身であるため、総兵力兵器の種類の点では北日本(ノースエリア)自衛隊上回っている。 劇中確認出来装備品M16A2AH-64DSCIA(サウスエリア中央情報局, South Central Intelligence Agency南日本(サウスエリア)において設立され情報機関。その名の通りアメリカ情報機関CIAモデル設立され宗方M資源確保のための南北境界線確定と共に行った北日本(ノースエリア)からの工作員侵入阻止目的とした南北間の渡航制限認めさせるべく、ロックウェル指揮執るCIAと共に世界規模活動多く海外一時雛民受入国において暴動誘発した北日本には水面下相当数工作員送り込んでおり、董七星会、及び舷一郎孫市などの動き監視している。また、宗方恵理護衛監視のために送り込んだ工作員児島劇中明言されていないが、SCIA所属思われる建国においては宗方彼の意を受けた長官ピートによって、舷一郎暗殺デマの流布などを命ぜられた、約100人に及ぶ工作員海外からの帰還者南日本からの脱南者を装って潜入した

※この「行政・制度(南)」の解説は、「太陽の黙示録」の解説の一部です。
「行政・制度(南)」を含む「太陽の黙示録」の記事については、「太陽の黙示録」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「行政・制度」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「行政制度」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「行政・制度」の関連用語

行政・制度のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



行政・制度のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの行政 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの太陽の黙示録 (改訂履歴)、イリ将軍 (改訂履歴)、モンゴル帝国 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS