ルネサンス
ルネサンス(仏:Renaissance)とは、14世紀から16世紀にかけてヨーロッパで起こった文化・芸術の大変革を指す言葉である。この時期は、中世の封建社会から近代の市民社会への移行期であり、人間中心主義(ヒューマニズム)の思想が広まり、科学や芸術、文学など多岐にわたる分野で大きな進歩が見られた。ルネサンスの語源はフランス語の「再生」を意味する。 ルネサンス期には、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロといった芸術家が活躍し、彼らの作品は今日でも世界中の人々から高く評価されている。また、科学の分野では、コペルニクスの地動説が提唱され、科学的な世界観が形成され始めた。これらの動きは、人間の知識と理解を大きく広げ、近代社会の礎を築いたと言える。
ルネッサンス
英語:Renaissance
「ルネッサンス」とは・「ルネッサンス」の意味
ルネッサンス(Renaissance)とは、もともと「復活」や「再生」を表すフランス語であり、14世紀から16盛期頃にかけて西ヨーロッパ全体に広まっていった文化運動やその時代を指す言葉である。ルネッサンスの時代より前の中世ヨーロッパ文化は、キリスト教(ローマ・カトリック教会)の影響が非常に強かった。中世末期、それまで絶対的に君臨してきた教会の権威が衰えを見せ、それに伴い、キリスト教の神に仕える生き方や価値観も囚われすぎない気運が高まった。そんな風潮のもとで、人間の個性や自由な生き方を求める「ルネッサンス」の理念が生じたとされている。
ルネッサンスの思想の模範とされたのは古代ギリシア・ローマの文化である。古代に花開いた、すぐれて人間的な美を追い求める古典文化を「復興」させることで、自分たちの生き方に役立てようとしたのである。
ルネッサンス運動が生まれた背景としては、ローマ教皇による十字軍の遠征も要因に挙げられる。十字軍は、聖地エルサレムをイスラム勢力から奪回する目的で幾度も編成され、最終的には失敗に終わるが、この遠征が西欧と東方との積極的な交流を生むきっかけにもなったのである。イスラムの優れた文化は、翻訳活動などによってシチリア王国やスペインを経由してヨーロッパ全体にもたらされ、人々がギリシアの哲学や科学に触れることになったことが、のちにルネッサンス文化が花開く前準備になったと言われている。
ルネッサンス(文芸復興)の動向は、まずイタリアで始まった。イタリアはイスラム世界の影響を受けつつも古代の文化遺産が数多く保存されていて、当時のヨーロッパの中でひときわ経済的に反映していたためである。ただし、ルネッサンスの文化が開花したのはフィレンツェ、ミラノ、ローマ、ヴェネツィア、ナポリなどの大都市においてであり、イタリアの全都市で同様の動きがあったというわけではない。
その後、フィレンツェのメディチ家やミラノのスフォルツァ家をはじめとする大富豪たちがパトロンとして後押しをしたことで、芸術家たちは飛躍的な活躍を遂げる。そして、ルネッサンスの文化や理念は西ヨーロッパ諸国にも発展していきながら、16世紀に最盛期を迎える。
ルネッサンスの時代区分としては、ルネッサンス期に突入する前の「プロト・ルネッサンス」から「前期ルネッサンス(初期ルネッサンス)」「盛期ルネッサンス」「後期ルネッサンス」に分けられる。もちろんこれらの時代区分は明瞭に区切られているわけではない。
ルネッサンスの時代より前にも、「古典古代の文化の復興」というルネッサンスの機運は息づき始めていた、とする見解もある。ルネッサンスとは一線を画す時代とされている中世文化の中にすら、そのような動向が見いだせる。中世のルネッサンス的な動向は「カロリング期ルネッサンス」や「12世紀ルネッサンス」のように呼ばれることがある。
ルネッサンスの時代は、地中海交易がもたらした多くの冨やさまざまな産物によって、ヨーロッパに住む人々の生活にも大きな変化をもたらした。服装や髪型などで自由に表現をするファッションが登場したほか、文化面では現実世界をありのままに観察していくことが重んじられる。そのため、絵画や科学などをはじめ、生活文化に至る幅広い分野にわたって数多くの変化や新しい発見が見られた時代であると言える。
例えば、中世文化では禁欲や節制こそが神の意向に応えるための行為とされてきたが、都市や市民が繁栄したルネッサンスにおいては、美食の追求が認められるようになる。イタリアの裕福な市民たちは冨と名声を示すためにあらゆる機会に宴会を催し、美術品として価値の高い食器でテーブルを飾り、味付けを工夫した豚肉料理や高価な砂糖を用いた贅沢な菓子などが食卓に並んだ。ルネッサンス的イタリア料理や調理方法は、古代ローマの伝統を受け継ぎつつ、かつ地方色も豊かであった。これはヨーロッパ各国の料理にも影響を与えることになる。
ルネッサンスの代表的なイタリアの芸術家としては、14世紀に活躍したダンテやペトラルカなどのほか、16世紀に登場したレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロなどがあげられる。レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」は遠近法を高い完成度で用い、空間を立体的に描いている。「モナリザ」は輪郭を描くことなく陰影によって人物を描写しきった傑作であり、中世文化の平面的な絵画とは一線を画している。ミケランジェロの「最後の審判」は、システィナ礼拝堂の壁一面を覆う巨大な絵画であり、「ルネッサンス」を象徴する独創的な表現方法をとっている。
その他、ヨーロッパ諸国へ広がったルネッサンス作品としては、「ロミオとジュリエット」をはじめルネサンス期の典型的な人間像を描いてイギリス文学を最高の水準にまで高めたシェークスピアや、「ドン・キホーテ」において中世騎士道を風刺して人間性を賛美したスペインのセルバンテス、写実的画風で農民生活をいきいきと描いたフランドルの画家・ブリューゲルなどがよく知られている。
ルネッサンスの動向は、科学技術の進歩にも大いに貢献し、社会の変化に大きな影響をもたらした。特に羅針盤・火薬・活版印刷術のいわゆる「三大発明」は、その象徴として名高い。羅針盤はイスラムを経由してヨーロッパで改良されて使われるようになり、これまでの陸地に沿った航路から、後の大航海時代へとつながる海外進出を促した。火薬の発達は、険で闘う騎士たちの没落を生み、銃や大砲といった従来の戦術とは異なる大規模な戦争を可能にすることになる。活版印刷術は、ドイツのグーテンベルグによって改良され、それまでは手書きで複製されたいた聖書を印刷により大量生産できるようになった。このことはルターの宗教改革にも大きく寄与している。
「ルネッサンス」の語源・由来
「ルネッサンス」はフランス語に由来する語彙である。フランス語では「Renaissance」と表記される。英語でも仏語をそのまま用いて「Renaissance」という。いわゆる文芸復興を指す意味の「ルネッサンス」は固有名詞であるため、先頭大文字である。
フランス語の renaissance は、「re-(再-)」+「naitre(誕生)」+「-ance(〜すること)」という要素で構成される語である。
一般名詞としての「ルネッサンス」は、衰えたものが再び盛んになること、芸術などを蘇らせて勢いを取り戻すこと、および、その様子などを意味する語である。固有名詞としては、中世における文芸復興運動や時代の指す言葉として使われ、「ルネッサンス風」「ルネッサンス様式」「ルネッサンス建築」といった言い回しで活用されることも多い。
「ルネッサンス」に相当する言葉は、「ルネッサンス」が最盛期を迎えた16世紀頃から存在していて、イタリア語の「rinascita(リナシータ)」がそれにあたる。イタリアのマニエリスム期の画家であるジョルジョ・ヴァザーリが、1550年に出版した著書「美術家列伝」「の中で、古代ギリシアとローマ文化の再生という意味で使い始めたのが直接的な起源である。その後、1800年代半ばにフランス語で「ルネッサンス」と訳されて人々に用いられるようになったが、19世紀のフランスの歴史家であるミシュレが「フランス史」第7巻の表題として「Renaissance」を使用したことをきっかけに学問的にも認められる言葉へと発展する。さらに、スイスのヤーコブ・ブルクハルトによる「イタリア・ルネッサンスの文化」をはじめ、数多くの専門家たちが追従したことにより、「ルネッサンス」の概念が決定的に認知されるに至った。
「ルネッサンス」が、ギリシアやローマの古代文化を手本とした文化運動であったことから、日本では長らく「文芸復興」と訳されることが多かった。現在では文芸のみに留まらず、社会形態を含めた総体的な運動として広義で使われることから、「文芸復興」と訳されることは少ない。一方、「ルネッサンス」には美術用語としての側面もあり、15世紀から16世紀にかけてのヨーロッパ美術史における様式や時代区分を指して使われる。歴史学や美術史においては「ルネッサンス」よりも「ルネサンス」の表記が一般的である。
ルネサンス【(フランス)Renaissance】
ルネサンス 【Renaissance フランス】
ルネサンス
【英】:RENAISSANCE
15〜16世紀のヨーロッパの美術史上の様式と時期区分。とくにイタリア美術史上でいう。「ルネサンス」という言葉は、もともと、ヴァザーリが著書『美術家列伝』(1550年初版)の中で初めて用いた美術の“復活”=イタリア語でリナシータに由来し、それが1840年頃にルネサンスとフランス語に訳され用いられている。ヴァザーリは、およそ13世紀後半以降のイタリアの美術家の中にローマ帝国とともに没落していた美術の復活を認め、時代区分としてルネサンスとしたが、これは同時に古代との間に中世の概念を設定したものであった。今日通説の画期としては、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂円蓋起工の1420年より1500年までを初期、1500年〜1520−30年を盛期としている。初期にはフィレンツェ、盛期にはローマが中心となっている。自然と古代とを柱とする人文主義的造形活動を特色とし、美術理論が追求され、また美術作品の世俗化も行われ、メディチ家などの地方君主による美術の流派が形成された時代である。
ルネサンス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/02 09:11 UTC 版)
ルネサンス(仏: Renaissance[† 1][† 2] 伊:Rinascimento)は、「再生」「復活」などを意味するフランス語であり、一義的には古典古代(ギリシア、ローマ)の文化を復興しようとする文化運動。14世紀にイタリアで始まり、やがて西欧各国に広まった(文化運動としてのルネサンス)。また、これらの時代(14世紀 - 16世紀)を指すこともある(時代区分としてのルネサンス)。
注釈
- ^ フランス語発音: [ʁənɛsɑ̃ːs] ルネサーンス
- ^ イギリス英語発音:[rɪˈneɪsns] リネイスンス、かアメリカ英語発音:[ˈrenəsɑːns] レナサーンス
出典
- ^ 林達夫「文芸復興」、花田清輝「復興期の精神」など。
- ^ 通俗的に「復興」「再生」を指す言葉として用いられている場合、例えばコスメティック・ルネッサンス、あるいはカルロス・ゴーン著『ルネッサンス』などは、ルネッサンスと表記されることが多い。
- ^ 柴田治三郎責任編集『世界の名著 45 ブルクハルト』 中央公論社1966、37頁上。- Lexikon des Mittelalters. Bd. VII. München: LexMA 1995 (ISBN 3-7608-8907-7), Sp. 718-720 (Beitrag zu „Renaissance, Karolingische“), besonders S. 718.
- ^ 『世界史序説 アジア史から一望する』岡本隆司、ちくま新書、2018年、p191
- ^ 樺山紘一「ルネサンス」講談社学術文庫P51-52、P121-122
- ^ 「医学の歴史」pp139 梶田昭 講談社 2003年9月10日第1刷
- ^ ハワード・R・ターナー、久保儀明訳「図説科学で読むイスラム文化」青土社、2001年
- ^ 澤井繁男「イタリア・ルネサンス」講談社現代新書p152-164
- ^ 「キリスト教の歴史」p129 小田垣雅也 講談社学術文庫 1995年5月10日第1刷
- ^ ピーター・バーク 著、亀長洋子 訳『ルネサンス(ヨーロッパ史入門)』岩波書店、2005年11月25日、62頁。ISBN 9784000270960。
- ^ 徳善義和『マルティン・ルター ことばに生きた改革者』岩波書店〈岩波新書〉、2012年、155–159頁。ISBN 9784004313724。
- ^ モーリス・ブロール 著、西村六郎 訳『オランダ史』白水社、1994年3月30日、25–26頁。
- ^ 河原温『ブリュージュ: フランドルの輝ける宝石』中公新書、2006年、170頁。ISBN 4-12-101848-6。OCLC 674930479。
- ^ ジュール・ミシュレ 著、大野 一道 編『フランス史』 Ⅲ、藤原書店、2010年。ISBN 9784894347571。
- ^ 上垣豊『はじめて学ぶフランスの歴史と文化』(初版)ミネルヴァ書房、2020年3月31日、55頁。ISBN 9784623087785。
ルネサンス
「ルネサンス」の例文・使い方・用例・文例
- ルネサンス建築様式
- ルネサンス芸術
- 中世の次にはルネサンスの時代が続く
- ルネサンス時代
- ルネサンスは人間の尊厳を確立した。
- その彫刻家はルネサンス派に属する。
- 最盛期のルネサンス(様式).
- これはルネサンス期でも指折りの名画だ.
- ルネサンスのヒューマニズムの、またはそれに関するさま
- ルネサンス初期の理念を復興させることに専念した画家や作家
- 多くの話題についてほぼすべてのことを知ることができた(知識には限りがあったから)ルネサンス期の学者
- 偉大なイタリアのイタリアの盛期ルネサンスの建築家(1444-1514年)
- ルネサンス期に成された三つの大きな発明
- ルネサンス期の西洋音楽
- 約500年前,イタリア・ルネサンスの偉大な芸術家の1人,レオナルド・ダ・ヴィンチが「モナ・リザ」を描いた。
- フィレンツェはイタリア・トスカーナ州の州都で,ルネサンス発祥の地とみなされている。
- ルネサンスはフィレンツェからイタリアの他の地域へ,そしてヨーロッパのさらに北の地域へと広まった。
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