タンパク質 タンパク質の概要

タンパク質

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/30 08:51 UTC 版)

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ミオグロビンの3D構造。αヘリックスをカラー化している。このタンパク質はX線回折によって初めてその構造が解明された。

構成するアミノ酸の数や種類、また結合の順序によって種類が異なり、分子量約4000前後のものから、数千万から億単位になるウイルスタンパク質まで多種類が存在する[1]。連結したアミノ酸の個数が少ない場合にはペプチドと言い、これが直線状に連なったものはポリペプチドと呼ばれる[2]ことが多いが、名称の使い分けを決める明確なアミノ酸の個数が決まっているわけではないようである。

タンパク質は、炭水化物脂質とともに三大栄養素と呼ばれ、英語の各々の頭文字を取って「PFC」とも呼ばれる。タンパク質は身体をつくる役割も果たしている[3]

名称

ドイツ語: Protein英語: proteinフランス語: protéine [prɔtein]スペイン語: proteínaギリシア語で「第一の」を意味する prōteîos から採られた。1838年にオランダの化学者ヨハンネス・ムルデルが、スウェーデンの化学者イェンス・ベルセリウスから助言を受け、窒素を非常に多く含む生物の基本要素と考えてこの名称をつけた[4]

「蛋白質」の「蛋」とはのことを指し、卵白(蛋白)がタンパク質を主成分とすることによる。これは Protein がドイツ語でまたEiweiß(卵白)とも訳され、これが日本語に直訳されたと考えられる[4]

「蛋」という漢字は、例えば皮蛋のように中国ではよく使われる字であるが、日本ではあまり普及していない。そのため栄養学者川島四郎が「蛋白質」では分かりにくいとして「卵白質」という語を使用したが、一般的に利用されるにはいたらなかった。 現在では、栄養学分野では平仮名の「たんぱく質」、生物学では片仮名の「タンパク質」が使われる傾向にある[5]

構造

タンパク質は以下のような階層構造をもつ。

また、アミノ酸のみで構成された種類は単純タンパク質と言い、構成成分にアミノ酸以外のものが含まれる場合は複合タンパク質と呼ばれる[1]

アミノ酸

食物として摂取したタンパク質は消化の過程でアミノ酸にまで分解され吸収され、体内で再びタンパク質へ構成される。このタンパク質を作る基本物質であるアミノ酸は、炭素元素を中心に水溶液中でプラスに荷電するアミノ基とマイナスに荷電するカルボキシル基を持ち、残り2箇所に水素と側鎖と呼ばれる分子構造を持つ[2]。タンパク質をつくるアミノ酸は20種類あるが、これらの差は側鎖の形状の違いで分けられる[2]

一次構造

タンパク質はアミノ酸のポリマーである。その基本的な構造は2つのアミノ酸のカルボキシル基 (−COOH) と別のアミノ酸のアミノ基(−NH2)が水分子を1つ放出する脱水縮合ペプチド結合)を起こして酸アミド結合(−CO−NH−)を形成することでできる鎖状である[2]。また、システイン残基がしばしばジスルフィド結合(S−S)の架橋構造をつくることもある。このポリマーの末端の結合していない部分は、アミノ基側をN末端、カルボキシル基側をC末端とよぶ[6]。この時、一列のアミノ酸の脇には側鎖が並ぶ事になり、この配列の数や順序を指してタンパク質の一次構造とよぶ[2]

アミノ酸の配列は、遺伝子の本体である物質・DNA塩基配列により決定される[6](3個のヌクレオチドにより、1つのアミノ酸が指定される)。ペプチド結合してタンパク質の構成成分となった単位アミノ酸部分(−NH−CH(−R)−CO−)をアミノ酸残基と呼ぶ。それぞれの残基は、側鎖置換基 R の違いによって異なる性質をもつ。

二次構造

鎖状のポリペプチドは、それだけではタンパク質の機能を持たない。一次構造で並んだ側鎖が相互作用で結びつき、ポリペプチドには決まった2種類の方法で結びついた箇所が生じる。1つはαヘリックス(螺旋構造)と呼ばれ、あるアミノ酸残基の酸素と、4つ離れた残基の水素の結びつきを基礎に、同じ事が順次起こってポリペプチドにらせん構造をつくる[7]。もう1つのβシートとは、ポリペプチドの一部が折り畳まれ、それぞれの水素と酸素残基が結合してつくるシート状の構造である[7]。これらは二次構造と呼ばれる[8]水素結合ファンデルワールス力などによるこの畳み込みはフォールディング(folding)とも呼ばれる[9]。結合エネルギーが比較的低いため、簡単な処理によって構造を変性させやすい[8]

三次構造

リゾチームのリボンモデル。αヘリックスが赤、βシートは黄色で表される。

タンパク質はαヘリックスやβシートといった二次構造の特定の組み合わせが局部的に集合し形成されたαヘアピンやβヘアピンなどの超二次構造と呼ばれる単位ができて核に纏まったドメインをとり、タンパク質全体としての三次構造をとる[10]。これは立体的に見てまとまった領域である。三次構造は側鎖間の相互作用によって安定する。特殊な塩基間の水素結合やシステイン残基間のジスルフィド結合静電引力などが安定化に寄与するが、特に疎水結合が大きく影響する。そのため有機溶媒界面活性剤などで疎水結合を切ると三次構造が壊れ、タンパク質の変性が起こりやすい[10]。三次構造の立体を図案化し描かれたものは「リボンモデル」と言う[7]

四次構造

ヘモグロビンのリボンモデル。2種2個ずつのグロビンサブユニットが計4つ集まり、四次構造を作っている。

タンパク質の中には複数(場合によっては複数種)のポリペプチド鎖が非共有結合でまとまって複合体(会合体)を形成しているものがあり、このような関係を四次構造と呼ぶ[11]。各ポリペプチド鎖はモノマーまたはサブユニットと呼ばれ、複合体はオリゴマーと言う[11]。各サブユニットには疎水結合や水素結合またはイオン結合が広い領域に多数存在し相補的に働くために方向性があるため、サブユニットは全体で特定の空間配置(コンホメーション)を取る[11]。例えば、ヒトの赤血球に含まれ酸素を運ぶヘモグロビンは、α・β2種類のグロビンというサブユニットがそれぞれ2つずつ結びつく四次構造を持ったタンパク質の一種である[7]

一次構造と高次構造の関係

タンパク質の立体構造は、そのアミノ酸配列(一次構造)により決定されていると考えられている(Anfinsenのドグマ)。また、二次以上の高次構造は、いずれも一次構造で決定されるアミノ酸配列を反映している。例えば GluAlaLeu が連続するとαヘリックス構造をとりやすい。IleValMetはβシート構造をとりやすい。また各構造の継ぎ目の鋭角なターンの部分には GlyProAsn が置かれる、などの例がある。さらに、疎水性アミノ酸残基同士は引き合い(疎水結合)、Cys 同士はジスルフィド結合を形成して高次構造を安定化させる。

プロテオーム

生体のタンパク質を構成するアミノ酸は20種類あるが[1]、それが3つ連結したペプチドだけでも約203=8,000通りの組み合わせがあり得る。タンパク質については、その種類は数千万種と言われる。生物の遺伝子(ゲノム)から作られるタンパク質ひとそろいのセットは、プロテオームと呼ばれるが、ヒトゲノムの塩基配列解読が終わった今、プロテオームの解析(プロテオミクス)が盛んに進められている。

タンパク質の構造と機能

タンパク質の機能は上記の三次構造・四次構造(立体構造)によって決定される。これは、同じアミノ酸の配列からなるタンパク質でも、立体構造(畳まれ方)によって機能が変わるということである。たとえばBSEの原因となるプリオンは、正常なプリオンとは立体構造が違うだけである。なお、多くのタンパク質では、圧力を加えたり、溶液の pH 値を変える、変性剤を加えるなどの操作により二次以上の高次構造が変化し、その機能(活性)を失う。これをタンパク質の変性という。変性したタンパク質においては、疎水結合水素結合イオン結合の多くが破壊され、全体にランダムな構造が増加したペプチド鎖の緩んだ状態になることが知られている。タンパク質の変性は、かつて不可逆な過程であると考えられてきたが、現在では多くのタンパク質において、変性は可逆的な過程である事が確認されている。なお、変性したタンパク質を元の高次構造に戻す操作をタンパク質の再生という。タンパク質の再生は、原理としては、畳み込まれたペプチド鎖を一旦完全にほどき、数時間かけてゆっくりと畳み込むよう条件を細かく調整・変化させることで行われている。

タンパク質の折り畳み

特定のアミノ酸配列に対して、存在しうる安定な高次構造が複数存在するにもかかわらず、生体内では特定の遺伝子から特定の機能を持つ高次構造をとったタンパク質が合成できるかは、必ずしも明らかではない。クリスチャン・アンフィンセンの実験などで判明した多くのタンパク質が変性した後にもその高次構造の再生が可能なことから、一次構造それ自体が、高次構造のかなりの部分を決めていることは疑いがなく、これは「アンフィンセンのドグマ」と呼ばれる[9]。しかし、先のタンパク質の再生は数時間かかる操作(実際には、二次構造の畳み込みはかなり迅速に起こっていて、三次構造の確定に時間がかかるらしい)であるのに対し、生体内でのタンパク質の合成は数十秒から一分で完了する。さらに、発見された「アンフィンセンのドグマ」に反する事例からも、タンパク質分子を高速に畳み込み、正しい高次構造へと導く因子の存在が考えられている[9](例:タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ、プロリンシストランスイソメラーゼ、分子シャペロン)。また、生体内では間違った立体構造をしているタンパク質はそのタンパク質のLysのアミノ基にポリユビキチン共有結合で結合した後に、プロテアソームによって分解される。

タンパク質は周囲の環境の変化によりその高次構造を変化させ、その機能を変えることができる。タンパク質である酵素は、その触媒する反応の速度を条件に応じて変化させることができる。

立体構造の決定

上記のようなタンパク質の高次構造は、X線結晶構造解析NMR(核磁気共鳴)、電子顕微鏡などによって測定されている。また、タンパク質構造予測による理論的推定なども行われている。タンパク質の立体構造と機能は密接な関係を持つことから、それぞれのタンパク質の立体構造の解明は、その機能を解明するために重要である。いずれ、ほしい機能にあわせてタンパク質の立体構造を設計し、合成できるようになるだろうと考えられている。

これまでの研究により構造が解明されたタンパク質については、蛋白質構造データバンク[12]によりデータの管理が行われており、研究者のみならず一般の人でもそのデータを自由に利用、閲覧できる。




  1. ^ a b c d 生化学辞典第2版、p.810 【タンパク質】
  2. ^ a b c d e 武村(2011)、p.24-33、第一章 たんぱく質の性質、第二節 肉を食べることの意味
  3. ^ 『見てわかる!栄養の図解事典』
  4. ^ a b 武村(2011)、p.16-23、第一章 たんぱく質の性質、第一節 栄養素としてのたんぱく質
  5. ^ 武村(2011)、p.3-6、はじめに
  6. ^ a b 生化学辞典第2版、p.812 【タンパク質の一次構造】
  7. ^ a b c d e 武村(2011)、p.34-48、第一章 たんぱく質の性質、第三節 「焼く」とどうなる?たんぱく質
  8. ^ a b 生化学辞典第2版、p.816 【タンパク質の二次構造】
  9. ^ a b c d 武村(2011)、p.85-96、第二章 たんぱく質の作られ方、第四節 ポリペプチドはいかにして「たんぱく質」となるか
  10. ^ a b 生化学辞典第2版、p.812 【タンパク質の三次構造】
  11. ^ a b c 生化学辞典第2版、p.816 【タンパク質の四次構造】
  12. ^ (PDB) [1]
  13. ^ 東京大学の和田昭允教授の命名による
  14. ^ a b 武村(2011)、p.54-60、第二章 たんぱく質の作られ方、第一節 体をつくるあげるたんぱく質
  15. ^ 武村(2011)、p.98-113、第三章 たんぱく質のはたらき、第一節 たんぱく質はたんぱく質を分解する
  16. ^ a b c d e 武村(2011)、p.113-123、第三章 たんぱく質のはたらき、第二節 体のはたらきを維持するたんぱく質を
  17. ^ a b たんぱく質 (PDF) 」『日本人の食事摂取基準」(2010年版)
  18. ^ a b Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases, 2003
  19. ^ 『タンパク質・アミノ酸の必要量 WHO/FAO/UNU合同専門協議会報告』日本アミノ酸学会監訳、医歯薬出版、2009年05月。ISBN 978-4263705681 邦訳元 Protein and amino acid requirements in human nutrition, Report of a Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation, 2007
  20. ^ 低炭水化物ダイエットご用心…発症リスク高まる2012.07.08読売新聞。スウェーデンの30〜49歳の女性43396人[信頼性要検証]
  21. ^ joint FAO/WHO expert consultation. "Chapter 11 Calcium", Human Vitamin and Mineral Requirements, 2002.
  22. ^ ウォルター C. ウィレット 『太らない、病気にならない、おいしいダイエット-ハーバード大学公式ダイエットガイド』 光文社、2003年5月。174〜175頁。ISBN 978-4334973964。(原著 Eat, Drink, and Be Healthy, 2001)
  23. ^ a b 武村(2011)、p.123-133、第三章 たんぱく質のはたらき、第三節 たんぱく質のお湯加減―いろいろな温度で働くたんぱく質たち―
  24. ^ a b c d 武村(2011)、p.134-145、第三章 たんぱく質のはたらき、第四節 たんぱく質の装飾品と、その利用
  25. ^ ガラクトースN-アセチルグルコサミンN-アセチルガラクトサミンマンノース、L- フコースグルコースキシロースグルクロン酸シアル酸(武村(2011)、p.139)
  26. ^ a b 武村(2011)、p.145-153、第三章 たんぱく質のはたらき、第五節 たんぱく質の「死」


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