タンパク質で裏打ちされた融合細孔
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/02 05:53 UTC 版)
「小胞融合」の記事における「タンパク質で裏打ちされた融合細孔」の解説
融合細孔の形成機構として可能な他のモデルは、タンパク質で裏打ちされた融合細孔の形成である。このモデルでは、カルシウムによるシナプトタグミンの活性化の後、いくつかのSNARE複合体が集合してリング構造を形成し、シナプトブレビン(英語版)が小胞膜に、シンタキシンが細胞膜にそれぞれ細孔を形成する。初期細孔が拡大するにつれて双方の脂質二重層から脂質が取り込まれ、最終的に2つの膜は完全に融合する。このモデルではSNARE複合体はより活発な役割を果たす。初期細孔は完全にSNARE複合体によって構成されているため、細孔を細胞間で調節することは容易であり、"kiss-and-run"機構をより容易に達成することができる。 タンパク質で裏打ちされた細孔の形成は初期細孔形成で観察されている条件をすべて満たすが、一部のデータはこの仮説を支持しておらず、これが主要な方法であることを示すだけの十分なデータは存在しない。タンパク質で裏打ちされた細孔の形成には少なくとも5コピーのSNARE複合体が必要であるが、融合はわずか2コピーでも観察されている。 どちらの仮説ではSNARE複合体の機能には大きな差異はなく、融合の開始にはSNARE複合体全体が必要である。しかしながらin vitroでは、v-SNARE(小胞側に存在するSNAREタンパク質)を含むシナプス小胞とのCa2+非依存的な自発的な融合を駆動するには、シンタキシンだけで十分であることが示されている。このことは、神経細胞でのCa2+依存的なエキソサイトーシスにおいてシナプトタグミンは、Ca2+イオンの非存在下ではSNAREのダイナミクスを阻害し、Ca2+イオンの存在下では膜融合過程のアゴニストとして作用する、二重の調節因子であることを示唆している。
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