二十八部衆
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二十八部衆(にじゅうはちぶしゅう)は、千手観音の眷属。 東西南北と上下に各四部、北東・東南・北西・西南に各一部ずつが配されており、合計で二十八部衆となる。
注釈
- ^ 定深は四十九部としたが、満善車鉢と八部力士賞迦羅、梵摩三鉢羅はそれぞれニ尊を合わせた名称と考えられ、後述のルドラも含めれば最大で合計53部となる(薩遮摩和羅を一尊と見做すかどうかでも総数が変化する)。
- ^ ただし、満善車鉢、大弁功徳天、薩遮摩和羅は二尊を分離しないまま入れてしまっているため30尊以上になっている。
- ^ 満善(プールナバドラ)及び車鉢羅婆(Chagalapāda、チャガラパーダ、「山羊の足を持つ者」の意)の二尊の夜叉神を合わせた尊格であり、下記の満賢薬叉と重複している[5](プールナバドラは「満善」とも訳せる)。また、山田明爾は満善を同じく夜叉神のPūrṇaka(プールナカ、分那柯)のこととしている[6]。
- ^ 『千手陀羅尼経』や『儀軌』には「梵摩三鉢羅」と書かれており、定深は梵天一尊と見做したが、田中公明が参照したチベット語訳経典3本ではいずれも梵摩(梵天)と三鉢羅が別尊となっており、三鉢羅は『金光明経』の「鬼神品」に登場する阿修羅王のサンヴァラ(Saṃvara)と考えられる[8]。
- ^ 『千手経二十八部衆釈』では薩遮摩(大神将軍女)と摩和羅[9](mahābalasenapati、大力将軍)を合わせた尊格とされており、山田明爾は薩遮摩は八大羅刹女の一尊である蘇試麽(sucimā)のことではないかと述べている[10]。田中公明は薩遮の部分の正体について、ジャイナ教の修行者サティヤカが薩遮と音写されることから、初期密教経典に登場する精霊サティヤの名を挙げているが確信には至っていない[11]。また、田中はチベット語訳の経典で摩和羅がmahāraと表記されているため十二神将の摩虎羅大将(mahāla)と同一かもしれないとも考察している(法成による訳だが当時の漢語にはraとlaの区別が無いため)[12]。さらに、田中は『孔雀経』において下級神格の男性頭目をmahallakaと呼ぶことから薩遮摩和羅を「サティヤの頭目」と解釈することも可能と指摘している[12]。
- ^ 孔雀明王本人ではなく孔雀明王が騎乗する孔雀を独立した尊格としたものである[13]。元々「金色孔雀王」の名は陀羅尼経典『孔雀経』の古訳である『金色孔雀王呪経』を初出としており、敦煌の仏画では千手観音を挟んで対称的な位置に孔雀に騎乗した孔雀王とガルダに騎乗した金翅鳥王が描かれている[14](孔雀明王と那羅延天の乗騎がそれぞれ独立した尊格となったことを表している)。
- ^ 『千手陀羅尼経』には「金剛羅陀(『千手経二十八部衆釈』では「金毘羅陀羅」[10]。『儀軌』では「金毘羅陀」。)」と書かれており、田中公明が参照したチベット語訳経典3本の内の一つではクンビラ(金毘羅)とルドラ(この場合シヴァ神の別名で、金剛羅陀の羅陀の部分がルドラないしその形容詞形ラウドラ〔「凶暴な」の意〕であり、金剛羅羅陀を略して金剛羅陀としたと解釈している)を合わせた尊名となっている(他二つでは金毘羅のみとなっている)[15]。
- ^ 梵名をエーラパトラ(またはエーラーパトラ[13])といい、仏教遺跡バールフトの「エーラパトラ龍王の帰仏」で有名なナーガラージャである[16]。
- ^ 烏枢沙摩明王と軍荼利明王は千手観音の脇侍となる場合がある(烏枢沙摩明王が向かって左で軍荼利明王は右)[18]。また、軍荼利明王の代わりに青面金剛や馬頭明王を配置する場合もある[18]。
- ^ おうくし、梵名アンクシー(ヴァジュラーンクシー[19])、金剛鉤女[20]。
- ^ 上記の那羅延堅固を指しており重複している[21]。
- ^ しょうから、梵名シュリンカラー(ヴァジュラシュリンカラ[22])、金剛鏁[23]。
- ^ かびら、梵名カピラ(Kapila)、劫比羅薬叉[15]。
- ^ ばそうばるな(『千手陀羅尼経』では婆馺婆楼羅)、ヴァス神群のヴァルナの意[24]。
- ^ くらんたんた、梵名クータダンティー(Kūṭadantī)、曲歯[25]。
- ^ はんぎら、梵名はパーンチカであるが[25]、サンジュニェーヤとパーンチカは別尊格ともされるため上記の散支大将と必ずしも重複している訳ではない。
- ^ 吉祥天女のこととされており上記の大弁功徳天の功徳の部分と重複している[8]。
- ^ ヴェーターラを指すという説もある[8]。
- ^ さわら。田中公明はこの名は意味不明であると述べている[26]。『千手経二十八部衆釈』には「初神」と書かれている[10]。
- ^ 田中公明は、梵名はSatanaと考えられるが意味不明であると述べている[27]。『千手経二十八部衆釈』には天女摩利支と書かれている[10]。
出典
- ^ 『千手観音二十八部衆の系譜』pp.48-65
- ^ 『蓮華』pp.38-39
- ^ 『日本の美術』第379号、pp.39
- ^ 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.167
- ^ 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.164,167
- ^ 『千手観音二十八部衆の系譜』pp.64
- ^ 『千手観音二十八部衆の系譜』pp.51,52
- ^ a b c 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.157
- ^ 摩和羅(大力将軍)と堅牢地神の同一視は「二十四諸天と二十八部衆(東アジアの思想と構造)」pp.235より(『金光明経』に「地神大力」の語があり、二十八部衆と構成員の重複が多い二十四諸天や二十八天に堅牢地神が含まれている)。
- ^ a b c d 『千手観音二十八部衆の系譜』pp.54
- ^ 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.165
- ^ a b 『密教図像』第38号、pp.45
- ^ a b 三十三間堂内の解説看板より。
- ^ 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.158,159
- ^ a b 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.155,156
- ^ 『密教図像』第38号、pp.46
- ^ 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.161
- ^ a b 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.147
- ^ 『曼荼羅図典』pp.82
- ^ 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.147,148
- ^ 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.149
- ^ 『曼荼羅図典』pp.75
- ^ 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.148
- ^ 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.162,163
- ^ a b 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.165,166
- ^ 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.156,157
- ^ 『千手観音と二十八部衆の謎』pp.158
- ^ 『千手観音二十八部衆の系譜』pp.54,55
- ^ 島田市観光協会HPより。慶長15(1610)年二十八部衆像再建
- ^ 東愛知新聞[2017年5月4日閲覧]より。
- ^ 東日新聞[2023年1月28日閲覧]より。
- 1 二十八部衆とは
- 2 二十八部衆の概要
- 3 脚注
二十八部衆
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「なむあみだ仏っ!-蓮台 UTENA-」の記事における「二十八部衆」の解説
迦楼羅天(かるらてん) 声 - 山下大輝 人々の煩悩を喰らう最強の霊鳥。梵納寺のマスコット的存在。人間の姿に擬態もできる。食いしん坊でお調子者。笛が得意。 旧ゲーム版にも登場しているが、人間の姿は蓮台 UTENA版が初登場。 阿修羅王(あしゅらおう) 声 - 鈴木達央 正義を司る神。 ただひたすら自分が正しいと思う道を突き進む。帝釈天とはゲーム版では信念の違いから、アニメ版ではアーシャの村で起きた事件を切っ掛けに仲違いをしてしまうが、のちに和解する。 散脂大将(さんしたいしょう) 声 - 野津山幸宏 夜叉族出身で武術の才能に秀でる。多聞天に対して一途すぎる忠誠心を抱いているが故に戦闘などでは単独行動をすることがある。 難陀龍王(なんだりゅうおう) 声 - 斉藤壮馬 己を「釈迦如来の守護者」と称し、影から熱心に監視を行っている。釈迦如来の危機には、どこからともなく出現し身を挺して守る。 摩醯首羅王(まけいしゅらおう) 声 - 坂泰斗 穏やかで落ち着いた佇まいをしているダンディな神仏。破壊神である為か衆生の物を勢い余って壊してしまうなどのハプニング遭遇体質であり、羅刹天もよく巻き込まれている。 乾闥婆王(けんだつばおう) 声 - 千葉翔也 どんな音からもビートを感じ、 感じるままにシタールを弾き表現する音楽家。 演奏は殆どの仏を本人の意思と関係なく躍らせてしまうことが可能。常に沈香葉を口にくわえており、無くなると元気がなくなる。
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二十八部衆(にじゅうはちぶしゅう)
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「鬼神伝」の記事における「二十八部衆(にじゅうはちぶしゅう)」の解説
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二十八部衆と同じ種類の言葉
教義(数)に関連する言葉 | 二十五有(にじゅうごう) 二十五菩薩(にじゅうごぼさつ) 二十八部衆(にじゅうはちぶしゅう) 二十四輩(にじゅうよはい) 二尊(にそん) |
固有名詞の分類
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