ルドラとは? わかりやすく解説

ルドラ 【Rudra】

インドの『リグ-ベーダ』に出てくる暴風神。名は〈咆哮者〉の意。人々殺害もするが、豊穣安寧与えるという両面性をもつ。後代にはシバ神同一視された。

ルドラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/04 17:27 UTC 版)

ルドラ

ルドラ (रुढ्र [rudra]) は、インド神話に登場する暴風である[1][2]。その名は「泣く、吠える」を意味する語根 rud に由来し、「咆哮を上げる者」[2]「叫ぶ者」を意味する[1]。仏典における漢訳名は嚕捺羅嚕拏羅[3]魯捺羅(ろだら)[4]

リグ・ヴェーダ』では3篇の独立讃歌、一部がソーマに割かれている讃歌1篇、またソーマと共有する讃歌1篇がある[2]

解説

ルドラの姿は、赤褐色の肉体に黄金の装身具を着け、弓矢を持つという。また、「ヴァジュラを持つ者」といわれることもある[1][2]

風水害をもたらす反面慈雨をもたらし、大地に豊穣を呼び込むモンスーンの神格化と考えられている[2]。人々がその怒りを恐れる、強力で荒ぶる神であるが、聡明さと優しさを兼ね備え、人々の健康・安寧を保障する存在でもあり[5]、医薬を司るともされた[1]

牝牛プリシュニーとの間に[6]マルト神群と呼ばれる息子たちがいて、彼らも暴風雨の神である[1]

『リグ・ヴェーダ』の中ではアスラとも呼ばれ、アスラ神族が悪魔とされる時代以前の名残りをとどめている。

シヴァ神との関係

『リグ・ヴェーダ』ではルドラに対する形容詞「シヴァ」(「吉祥な」の意味)は一度だけみられるものの、古ウパニシャッドではルドラは形容詞のシヴァを添えられるようになる。このように、時代が下るにつれてルドラはシヴァ神とたびたび関連づけられた。プラーナ文献の一書『シヴァ・プラーナ英語版』では、シヴァが語る言葉の中に「私の化身であるルドラ」という表現すら現れた[7]。そして、ヒンドゥー教では完全にシヴァと同一視された。つまり、ルドラはシヴァの前身である[7]

ルドラは「弓の射手」(サンスクリットŚarva[8]と呼ばれ、矢はルドラに不可欠なアトリビュートである[注釈 1]。この呼び名はシヴァ・サハスラナーマ英語版(シヴァの千の名前)の中にも現れ、R. K. Sharmaは、後世の言語ではシヴァの名前の1つとしてしばしば用いられていると指摘している[9]

後期ヴェーダ文献には、ルドラが悪魔の城塞3つを一矢のみで破壊する説話が残っている。この説話も、ヒンドゥー教神話の時代になるとシヴァのものとなる(「トリプラースラ」を参照)。

ゾロアスター教でのルドラ

ルドラはゾロアスター教ではダエーワ(悪魔)とされた。ダエーワのサルワ (Saurva) はルドラの別名Śarvaに対応している[10]

脚注

注釈

  1. ^ 弓の射手と矢の関連性については、Kramrisch、第2章を参照。ルドラの「不可欠なアトリビュート」としての矢については、Kramrisch、p. 32を参照。

出典

  1. ^ a b c d e 神の文化史事典』576頁。
  2. ^ a b c d e インド神話伝説辞典』352頁。(ルドラ)
  3. ^ 天部の仏像事典』180,212頁。
  4. ^ 印と真言の本』135頁。
  5. ^ インド神話伝説辞典』352頁。(ルドラ)
  6. ^ インド神話伝説辞典』314頁。(マルト神群)
  7. ^ a b インド神話伝説辞典』354頁。(ルドラ)
  8. ^ Apte, p. 910.
  9. ^ Sharma, p. 306.
  10. ^ 伊藤義教 訳「アヴェスター」『ヴェーダ アヴェスター』訳者代表 辻直四郎、筑摩書房世界古典文学全集 第3巻〉、1967年1月、379頁。全国書誌番号:55004966NCID BN01895536。"「大魔の誘惑ほか(ウィーデーウダート第19章)」第43節の注釈6"。 

参考文献

※以下は翻訳元の英語版記事での参考文献であるが、翻訳にあたり直接参照していない。

  • Apte, Vaman Shivram (1965). The Practical Sanskrit Dictionary (fourth revised & enlarged ed.). Delhi: Motilal Banarsidass Publishers. ISBN 81-208-0567-4 
  • Kramrisch, Stella (1981). The Presence of Śiva. Princeton, New Jersey: Princeton University Press. ISBN 0-691-01930-4 
  • Sharma, Ram Karan (1996). Śivasahasranāmāṣṭakam: Eight Collections of Hymns Containing One Thousand and Eight Names of Śiva. With Introduction and Śivasahasranāmākoṣa(A Dictionary of Names).. Delhi: Nag Publishers. ISBN 81-7081-350-6 

関連項目


ルドラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 22:32 UTC 版)

終末のワルキューレ」の記事における「ルドラ」の解説

インド神話暴風神でありシヴァ幼少の頃からの幼なじみ唯一無二の友で相棒存在かつてはシヴァと共にインド神界片田舎暮らしいた。

※この「ルドラ」の解説は、「終末のワルキューレ」の解説の一部です。
「ルドラ」を含む「終末のワルキューレ」の記事については、「終末のワルキューレ」の概要を参照ください。

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