マルト神群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 14:31 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動マルト神群(マルトしんぐん、梵: मरुत, Marutaḥ, 英: Marutas)は、インド神話に登場する暴風雨を神格化した神々の1群である[1]。別名ルドラ神群(あるいはルドリヤ神群)。インドラ神の従者とされ、みな兄弟であり[2]、一様に美しく若々しい好戦的な青年神の集団とされる。
マルト神群の親については諸説あるが、『リグ・ヴェーダ』はルドラ神[3]と牝牛プリシュニーの子供たちとし[4][5]、プラーナ文献ではカシュヤパ仙とディティの子供たちとしている。彼らの数についても7、11、27、33、あるいは49ともいわれる[6]。
『リグ・ヴェーダ』では独立の讃歌、他の神と共有する讃歌を合わせると約40篇に及ぶ[7]。
それによると彼らは双生児のようにそっくりで、まるで女のように[8]黄金製の武具や装身具で美しく着飾る[9]。また腕力に優れ、高山に住み、武器を携え、良馬を保有している。彼らが乗る黄金の車はカモシカが牽き[10]、神群共通の愛人ローダシーがそれに同乗する[11]。そして車が走り出すと轍に沿って雨が降る[12]。
しかし彼らは恐るべき戦士、殺戮者であり、その怒りは蛇にたとえられる[11][13]。その強大な力は木々をなぎ倒し[14]、山々を引き裂く[15]。そのため彼らの疾走によって万物は震撼し、木々は身をかがめ、大地は動揺するという[16]。インドラがヴリトラと戦う際にも同行している[2]。
その反面、友好的な一面も持ち、強力な援助者で、雨を降らせるだけでなく[17][18]、子孫[19]、医薬、財宝[16][20]、詩的霊感の与え手とされる[21]。音楽家、舞踏家としても知られている[2]。
なお、マルト神群はアーリヤ人最古層に属するある宗教的、政治的儀礼(男性結社)の痕跡を残しているという指摘がある[22]。
脚注
- ^ 『インド神話伝説辞典』, p. 314.
- ^ a b c 『神の文化史事典』, p. 518.
- ^ 『リグ・ヴェーダ』1巻64・12。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』1巻85・2。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』5巻57・2-3。
- ^ 『インド神話伝説辞典』, pp. 314-315.
- ^ 『リグ・ヴェーダ讃歌』p.58。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』1巻85・1。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』1巻64・4。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』1巻85・4-5。
- ^ a b 『リグ・ヴェーダ』1巻64・9。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』1巻85・3。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』1巻64・8。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』1巻64・7。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』1巻64・11。
- ^ a b 『リグ・ヴェーダ』5巻57・3。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』1巻64・2。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』1巻64・5-6。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』1巻64・14。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』5巻57・7。
- ^ 『リグ・ヴェーダ』1巻85・11。
- ^ スティグ・ヴィカンデル 『アーリヤの男性結社』。
参考文献
- 『リグ・ヴェーダ讃歌』、辻直四郎訳岩波書店〈岩波文庫〉、1978年。ISBN 978-4-00-320601-0。
- 菅沼晃 編 『インド神話伝説辞典』東京堂出版、1985年3月。 ISBN 978-4-490-10191-1。
- 沖田瑞穂 著「マルト神群」、松村一男他 編 『神の文化史事典』白水社、2013年2月、518-519頁。 ISBN 978-4-560-08265-2。
- スティグ・ヴィカンデル 『アーリヤの男性結社 - スティグ・ヴィカンデル論文集』、前田耕作編・監修、桧枝陽一郎ほか共訳言叢社、1997年11月。 ISBN 978-4-905913-60-3。
関連項目
マルト神群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 00:33 UTC 版)
詳細は「マルト神群」を参照 暴風雨を司るのはマルト神群で、彼らもアーリア人最古層に属する極めて古い神々である。独立した神群であるが、バラモン教の聖典『リグ・ヴェーダ』において最も多くの讃歌を捧げられている英雄神インドラ(※武勇などを司る雷霆神)と共に謳われる際は、インドラ神に付き従う神々という位置付けになり、それゆえに彼らにも多くの讃歌が捧げられている。
※この「マルト神群」の解説は、「風神」の解説の一部です。
「マルト神群」を含む「風神」の記事については、「風神」の概要を参照ください。
「マルト神群」の例文・使い方・用例・文例
- 嵐の神々マルト神群の父
固有名詞の分類
- マルト神群のページへのリンク