X68000 X68000の概要

X68000

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/30 14:06 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
X68000 ACE-HD(1988年)
X68000 ACEセット(1988年)
X68000 EXPERT IIセット(1990年)

概要

パソコンテレビX1」のシャープテレビ事業部による後継機である(互換性などは基本的には無い)。1987年昭和62年)発売。略称はX68kペケロクロクハチロッパーペケロッパなど。X68030シリーズと併せ、X680x0と表記されることもあった。メーカーのシャープは「パーソナルワークステーション」と称した。

1980年代後半から1990年代前半にかけて、NECPC-9800シリーズ、後発の富士通FM TOWNSシリーズと共にホビーパソコンの一角を担った。日本のホビーパソコンCPUモトローラMC68000を採用した機種は、他に発売されなかった。販売台数は1991年9月の時点で13万台[1]

標準のオペレーティングシステム(以下OS)だったCUIHuman68k、およびGUISX-Windowは、後にユーザーコミュニティに対してフリーで公開された。

2015年には、内部構造や回路図などを収録した「サービスマニュアル」が公開された[2]ほか、「マンハッタンシェイプ」と称されたX68000の筐体を復刻したPCケースの開発が進行していることが発表された[3]

X68000の歴史

開発~発表

初代機のX68000は、発売前年の昭和61年(1986年)に発表された。開発は、パソコンテレビX1シリーズを開発した、シャープ栃木のテレビ事業部。ソフトウェアハードウェア共にX1シリーズとの互換性は一部の周辺機器を除いてないが、実質上の後継機種である。MZシリーズをリリースし、後のMebiusブランドパソコンの元となった大和郡山市の産業機器事業部は関わっていない。

初めて発表されたのは、昭和61年(1986年)10月2日 - 7日に開催されたエレクトロニクスショー'86(後のCEATEC JAPAN)。シャープブースの一角に展示され、デジタイズされた女性歌手荻野目洋子[注 1]の65,536色画像と「グラデュース自走」と銘打たれた『グラディウス』の実動画面、そして画面切替によるチェス盤の上をあらかじめレイトレーシングされた玉が跳ねるといったデモンストレーションが行われた。展示画面には「新開発 16ビット パーソナルワークステーション X68000」と書かれた絵文字と南国をイメージした背景が表示されていた。

コンパニオンによるデモンストレーションは、「このパソコン、何と喋るんです」のナレーションに答えてX68000が「早く紹介して下さいよ」とADPCMで発声するもので、その後ハードウェアの特徴と構成が紹介されるというものだった。後述の「マンハッタンシェイプ」はこの時点で名称が確定しており、デモンストレーションでも紹介された。

当時、日本で68000系を採用したパーソナルコンピューターはほとんど前例がなく、業務用のEWSと誤解した人も多かったため、会場ではそれほど大きな注目は集めなかった。MC68000採用の理由は、メモリ空間が16MBと大きいことと、「OSがのっかりやすい」ことだった[4]。当時、日本電機メーカーの間で68000系MPUを採用する独自のEWSを開発・発売するのが一つの流行になっていた[注 2]背景もあった。

その後、『Oh!MZ』誌を始め、各パソコン雑誌にて取り上げられた事により認知が高まり、次いでシャープ市ヶ谷のエルムホールにて九十九電機と協賛したお披露目が行われた(全国各地で行われたという説もあるが、詳細は不明)。内容はラヴェルのボレロFM音源で再生しつつ、デジタイズされた画面を次々とX1シリーズ用のHDDユニットより読み込んで表示させるというものだった。また、『グラディウス』のデモについてはビックバイパーだけがカーソルキーの操作に合わせて可動し画面内を飛んでいるというものに変わった。

発売

発表から発売まで約5カ月あいたため、発売前から一部の店舗にデモ機が置かれた。この時点で『グラディウス』、アセンブラ、X68000のテーマ等の同梱ソフトウェアは揃っていたが、本当に発売できるのか、あるいは発表された価格を実現できるのかについて懐疑的に見る向きも多かった。実際に発売されたのは、1987年3月下旬である。出荷数は少なく、実際に購入者の元に初期ロットが届けられたのを見て、突発的に注文する顧客もいた。

その結果、シャープはバックオーダーを抱えることとなり、好調な滑り出しとなった。

当初はインテル系プロセッサを始め、様々なプロセッサの搭載が検討されていたとされるが、最終的にはMacintoshと同じMC68000が採用され、日本のメーカーによる最初にして最後の68000系個人向けパソコンとなった。

当時のパソコン市場で主流だったNECのPC-9800シリーズの最高級機種と比べ、CPUの処理能力では優位に立てなかった。本シリーズ初代機発売開始時点でのPC-9800シリーズに搭載されていた最速CPUはPC-98XL(1986年12月発売。FDD2基搭載モデルの本体価格575,000円)の80286 10MHzで、演算性能そのものはCPUの開発時期や集積トランジスタ数の差を反映して、同クロックでの68000比で約2倍程度の差があった。しかし、当時としては競合機種に対して特別な大容量を誇るVRAMと強力なグラフィックコントローラ群によって実現された65,536色の多色グラフィックとスプライト機能、FM音源8チャンネル+ADPCM1チャンネル、1MBのメインメモリ(最大12MB)等の周辺回路により、総合的に競合製品を凌駕するホビーマシンとしての性能を備えていた。その象徴となるのが標準添付アプリケーションの一つでもある、当時はゲームコンソールでも多くの要素が割愛されて移植されていた『グラディウス』の存在である。

価格面でも当時の各部品の卸値相場から想定して本体価格50万円程度、専用モニターと合わせて70万円はするのではないかと噂されたが、同時期のNECのPC-9801VX2(本体価格433,000円 FDD2基搭載モデル)より64,000円安い本体価格369,000円に落ち着き、専用モニターと合わせても実売価格40万円程度で発売された。

また、「5年間はハードの基本仕様を変えない」という方針が当初から決められていた。

Cynthia CZ-600Cに搭載されたスプライトコントローラ。
VSOP CZ-600Cに搭載されたビデオコントローラ。

これらの機能を実現するための膨大な回路の実装には積極的にカスタムLSIが採用された。初代機ではそれぞれビーナス1・ビーナス2(CRTコントロール)、VSOP(ビデオコントローラー)、シシリアン(I/Oコントローラー)、ET(メモリーコントローラー)、シンシア・シンシアJr.(スプライトコントロール)のコードネームが付けられていたものが使われた。試作機段階ではこれらの機能を全て標準ロジックICで実装したとされ、その容積は19インチラック1本分に上ったとされている。

こうした設計から、ホビー向けマシンとしてその機能を生かしたソフトウェアやハードウェアなどを自作するマニア層を中心に、当時としては安価なCG制作機として映像作品を創作する者もいた。同様に、ゲームソフトウェアも多く作成され、アーケードゲームの移植も多数リリースされたことから、コアなゲームユーザーなどにも支持されていた。

この様に、ビジュアル的なパフォーマンスでは強烈なインパクトを示した機体だったが、実務面では既にPC-9800シリーズがビジネス向けパソコンの主流として納まっていた背景もあり、オフィス系(実務・応用)アプリケーションへの対応状況などは比例して芳しくなかった。その一方で教育・組み込み向けなどへの営業展開もなされていた。一部のアーケード(業務)用ゲーム機の筐体に組み込まれたり、PROシリーズなどが業務用組込みシステムの開発用途に着目され、Forks社などからX68000での動作を前提にしたOS-9環境で動作するLANボードなどの周辺機器が発売されたこともある。通勤電車の行き先電光板の制御用として使われた実例もあった。教育分野では、ゲームクリエイターを育成するために、専門学校の実習機としても採用されていた。

プログラミング環境の整備に力が入れられており、専用のC言語コンパイラが安価な価格で提供された。標準で付属しているBASICであるX-BASICが、BASICとしては非常に独特の、C言語風味の言語仕様であり、X-BASICからC言語への変換ツールや、プログラミング上問題になりやすい差異について検出する構文検査ツールなどが提供されるなど、BASICからCへのユーザーの移行が考えられていた。また、システムコール及びハードウェア構成、それぞれのハードウェアへの機械語レベルでの直接アクセスの方法とそれぞれのペリフェラルが持つレジスタの意味と動作の全てが公開された。

X68030の発売

やがて、動作クロック16MHzの高速化機種であるX68000 XVI(エクシヴィ)発売を経て、X68030が発売された。実質的な最終機種である同機が発売された1993年頃には、DOS/VMS-Windows 3.1などのオペレーティングシステムが搭載されたPC/AT互換機CD-ROMドライブユニットがそれぞれ普及し始めていた。しかし、本シリーズはソフトウェアのメディア供給が依然としてフロッピーディスクのみで、その大半が5.25インチの2HDだった。それを打開するため、SCSIのCD-ROMドライバがサードパーティーフリーソフトで開発された。ただし、一部のCD-ROMドライブでは正常動作しないなど制約も多かった。X68000シリーズ対応のCD-ROM媒体としたソフトウェアもわずかながら発売された。またこの頃には、国産機としては初めてMPEG (MPEG-1) による動画再生(MPEGエンコーダボードを拡張スロットに装着し、OSはOS-9/X68030にてVideo CDの視聴)を実現している。

キャッチコピーは「夢を超えた」(初代)、「アートの領域へ」(ACE)、「夢の続きを語ろう」(EXPERT / PRO)、「父のパソコンを越えろ」(XVI)、「夢の、頂きへ」(X68030) など。イメージキャラクターはツタンカーメン (X68000)、火の鳥 (X68030) など。

なお、当時のシャープ顧問だった宮永好道によると、シャープが本機を出す際に一番気にしていたのは、「他のやらない事をする」社風のソニーの出方だったという。これは杞憂に終わったが、後にソニーはVAIOシリーズでその持ち味を出して来た、と自著で語っている[5]




  1. ^ E, -GY:オフィスグレー、B,-BK:ブラック、-H:グレー、-TN,-B:チタンブラック
  2. ^ PROシリーズにはパイオニアOEMも存在している(本体のSHARPロゴがPIONEERになっている)。主に伝言ダイヤルなどの制御用として使用されていた。

注釈

  1. ^ 当時、シャープのAV機器のイメージキャラクターでもあった。
  2. ^ ソニーNEWSオムロンLunaなど。
  3. ^ グッドデザイン賞は、メーカーから審査依頼のあった商品とその組み合わせで審査が行われるため、実際に受賞しているものは一部バリエーションや一部の組み合わせに限定される。
  4. ^ PCM8.Xやその系譜、市販アプリケーションでは、SPSのサウンドドライバが68030で実行したときに4声分の合成を行うように実装されている。
  5. ^ X68000版の『コットン』ではBGMに合わせて明滅するようになっている。
  6. ^ SxSI、TwoSCSIにも互換性改善を試みるプログラムが含まれる。これらドライバのドキュメントに含まれるパリティービットの生成回路の追加により、SCSI2の機器もより多く動作させることが可能である。
  7. ^ これはX68000の時点でハードウェアやプログラミングを工夫する事により回避できるものであったが、この対策をとらなかった事が後に禍根を残す事となった。 ちなみに同種の問題は当時のMacintoshにもあったが、ハードウェア面では対策がとられていた為、OSやアプリケーションのバージョンアップにより解決した。
  8. ^ 一部、既存のアプリケーションとの互換性には問題が生じるものもあった。
  9. ^ 同年夏にはモニタ一体型のLC 520が、同年秋にはMC68LC040 25MHz搭載のLC 475が発売されている。
  10. ^ 。 MC68EC030の採用でコストを下げた一方、高コストなスタティックカラムDRAMを採用する、周辺回路について従来のままであったなどのアンバランスなシステム構成も問題だった。
  11. ^ 尚、この表現は安価に使用できるというポジティヴな表現である。

出典

  1. ^ アスキー(後のKADOKAWA/アスキー・メディアワークス)刊行パソコン雑誌『LOGiN』 1991/10/4号より。
  2. ^ “シャープ「X68000」の回路図など記載の“裏マニュアル”電子化、「GALAPAGOS STORE」で無料配信”. INTERNET Watch. (2015年1月13日). http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20150113_683361.html 2015年2月2日閲覧。 
  3. ^ “ProjectMによる「X68000」ケースの試作が公開される”. PC Watch. (2015年1月29日). http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/yajiuma/20150129_686062.html 2015年2月2日閲覧。 
  4. ^ 『パソコンヒット商品物語』(1991) p.88 電子機器事業本部液晶営業システム事業部(1988年当時)・小林冬記の証言より引用。
  5. ^ 宮永好道「誰も書けなかったパソコンの裏事情」(並木書房)。
  6. ^ a b 受賞番号:62K0709 (受賞対象:X68000 CZ-600CE、CZ-600DE、CZ-6STIEのセット)
  7. ^ X680x0の内蔵音源を駆使した高品位ステレオPCM再生
  8. ^ Oh!X 1999年夏号「内蔵音源を駆使した高品位ステレオ PCM 再生」
  9. ^ S44PLAY.DOC
  10. ^ a b Oh!X 1995年6月号 p.66 「大容量ハードディスク導入手引き」
  11. ^ Oh!X 1995年8月号52p 「満開謹製SCSI2ボード」
  12. ^ 受賞番号:89K0773(受賞対象:CZ-662C(GY)(BK)、CZ-603D(GY)(BK))
  13. ^ 受賞番号:90K0799(受賞対象:CZ-613C、CZ-605D)
  14. ^ 受賞番号:90K0798(受賞対象:CZ-623C、CZ-613D)
  15. ^ 受賞番号:91K0882(受賞対象:CZ-644C-TN)
  16. ^ 受賞番号:92K0688(受賞対象:CZ-674CH)
  17. ^ 受賞番号:92K0690(受賞対象:CZ-674CH+CZ-608DH)
  18. ^ Oh!X 1994年12月号 p.70「倍クロックアクセラレータH.A.R.P」
  19. ^ Oh!X 1995年1月号p116
  20. ^ Oh!X 1995年6月号74p
  21. ^ Oh!X 1995年11月号p54
  22. ^ Z-MUSIC Home Page
  23. ^ DoGA(PROJECT TEAM DoGA、株式会社ドーガ)
  24. ^ X68000をACアダプタ駆動にする電源キットが販売中 (取材中に見つけた○○なもの) - AKIBA PC Hotline!




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「X68000」の関連用語

X68000のお隣キーワード

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   
検索ランキング



X68000のページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのX68000 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2019 Weblio RSS