ろうそく ろうそくの概要

ろうそく

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/22 03:13 UTC 版)

火を点したロウソク
中華風ロウソク(ギアアンホイクアン寺売店)

原理

ロウソクの先端にある芯に火をともすと、炎の熱で周囲の蝋が融解して溜まり、液体の蝋が芯を伝わって吸い上げられる[1][2]。芯に吸い上げられた蝋が炎の周りで空気を取り込み、高温ガスとなって燃焼する一連のサイクルが継続することで燃え続けることができる[1]

ろうそくの原理に関する代表的な著作にマイケル・ファラデー著の『ロウソクの科学』がある[2]。なお、光源の明るさの単位のカンデラ(燭光)は、元々、特定の規格のろうそくの明るさを基準として決められた単位である。また、ロウソクの炎には内炎・外炎・炎心の構造がある。

歴史

ドイツ南西部、オーバーフラハト墓地遺跡ドイツ語版(6世紀ごろ)から発掘された蜜蝋のろうそく

原料の変遷

最も原始的な形のろうそくは蜜蝋ミツバチが巣を作るために腹部から分泌する)を使った「蜜ろうそく」で、紀元前3世紀頃には西洋や中国で製造されていたといわれている[1]

古代エジプトではミイラ作成などで古くから蜜蝋が使われており、2300年前のツタンカーメンの王墓からは燭台が発見されていることから、ろうそくが古くより使われていたと見られている。紀元前3世紀エトルリア(現在のイタリアの一部)の遺跡から燭台の絵が出土し、この時代にろうそくがあったことは確かだとされる。この時代の中国の遺跡でも燭台が出土している。

ヨーロッパにおいては、ガス灯の登場する19世紀まで、室内の主な照明として用いられた。キリスト教の典礼で必ず使われるため、修道院などでミツバチを飼い、巣板から蜜ろうそくを生産することが行われた。釣燭台(シャンデリア)は本来ろうそくを光源とするものであり、従僕が長い棒の先に灯りをつけ、ろうそくにそれぞれ点火した。蜜ろうそくの他には獣脂を原料とするろうそくが生産された。マッコウクジラの脳油を原料とするものが高級品とされ、19世紀にはアメリカ合衆国を中心に盛んに捕鯨が行われた。

和蝋燭の製造元
江戸時代に蝋を採集したハゼノキ山口県指定天然記念物

日本でろうそくが最初に登場したのは奈良時代で、仏教とともに伝来した中国からの輸入品の蜜ろうそくと考えられている[1][3]平安時代になり遣唐使が廃止されたため蜜ろうそくに代わって松脂ろうそくの製造が始まったともいわれている[3]10世紀中頃の『和名類聚抄』巻十二の記述には、「唐式云少府監毎年供蝋燭七十挺」と説明・記述されている。その後、室町時代には日本でも本格的なロウソクが作られたが、宮廷や一部の寺院などでしか使うことができない貴重品だった[1][注釈 2]。その後、ハゼノキの実を原料にした「和ろうそく」が作られるようになった[1][3]。江戸時代中期には各地でハゼノキの栽培が奨励され和ろうそくの生産は増えたが、庶民にとっては高価な照明であり日常生活ではあまり使用されなかった[1][3]行灯等も参照)。明治時代になり西洋ろうそくの輸入や国産化が始まり、昭和初期まで数百の和ろうそくの業者があったが次第に専門業者は減っていった[1]

量産化

産業革命石油化学工業の発達により18世紀後半以降、石油パラフィンからろうそくが作られるようになり、工業的大量生産が可能になった。厳密には蝋ではないが、「ろうそく」として最も普及している。

一方、ろうそくに代わる新しい照明として石油ランプやガス灯も用いられるようになった[3]。さらに1840年代には白熱電球の研究が行われており、1870年代には実用的な白熱電球が発明された[2]

分類

糸芯ろうそくの分類

糸芯ろうそくは原料によって次のような種類がある[2]

  • ワックスろうそく(動物、植物、鉱物などの油脂を使用)[2]
  • ステアリンろうそく(動物や植物の脂肪酸を使用)[2]
  • パラフィンろうそく(石油化合物を使用)[2]
  • 鯨油ろうそく(鯨油を使用)[2]
  • 蜜蝋ろうそく(ミツバチの巣の蜜蝋を使用)[2]
  • 和ろうそく(芯は和紙でハゼノキウルシの果実を使用)[2]

洋ろうそくと和ろうそく

原料と成型方法に大きな違いがあることから「洋ろうそく」と「和ろうそく」に大別されることがある[1]

洋ろうそくは古代エジプトなどで使われていた蜜蝋を原料にしたもので、その後、鯨油や魚油などの動物性油脂を原料とし、さらに現代では綿糸を芯にして重油を精製したパラフィンなどの原料を型に流し込んで成形したものをいう[1]

和ろうそくは灯芯(イグサ科の植物からとる灯芯)と和紙を芯にして、ハゼノキからとる木蝋を原料に塗り重ねて作られる植物性のものをいう[1]


注釈

  1. ^ 「蝋燭」は簡易慣用字体で、正字は「蠟燭」
  2. ^ 当時一般的な明かりには「燈明」が使われていた[1]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 坂口香代子「あかりと文化 岡崎の和ろうそく(愛知県) 和ろうそくの魅力を育てる 伝統の技・挑む心・科学の眼」(PDF)『中部圏研究』第174号、中部産業・地域活性化センター、2011年3月、65-75頁、ISSN 18842453NAID 400187561752021年4月1日閲覧 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m 小原政敏「ファラデーの『ロウソクの科学』と理科教育」『論集』第3巻第2号、白鴎大学発達科学部、2007年3月、99-131頁、ISSN 18800289NAID 1100064612082021年4月1日閲覧 
  3. ^ a b c d e 04.松脂蝋燭(まつやにろうそく)”. ハリマ化成グループ. 2020年12月23日閲覧。
  4. ^ 【老舗の研究 持続の秘訣】小池ろうそく店、民衆発の伝統文化 再興に奮闘日本経済新聞』朝刊2019年10月4日(2020年7月21日閲覧)
  5. ^ 日本香堂「お線香・ろうそく豆知識」
  6. ^ 『神社有職故実』(昭和26年7月26日、神社本庁発行)全129頁44頁
  7. ^ ロウソクの取扱いにご注意を!


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