ろうそく
『赤いろうそくと人魚』(小川未明) 漁師たちが住む海岸の町の、ろうそく店の年寄り夫婦が、人魚の娘を育てる。娘は赤い絵の具で、ろうそくに魚や貝の絵を描く。そのろうそくを山上のお宮にあげ、燃えさしを身につければ、海難に遭わない。後に娘は香具師(やし)に売られることになり、悲しんでろうそくを真っ赤に塗る。以後、誰があげるのか、お宮に赤いろうそくがたびたびともり、それを見た者は必ず海で死ぬ。
『死神の谷』(ラング) 女が、「死んでしまった恋人を、生き返らせてほしい」と死神に請う。死神は、多くのろうそくが燃えている所へ女を連れて行き、短い3本のろうそくを示して、悲恋と死の3つの物語を語る。1つの物語が終わるごとに、1本のろうそくが燃え尽きる。3つの物語が終わった時、3本のろうそくはすべて燃え尽きていた。死神は、「愛をもってしても、死には打ち勝てないのだ」と、女に教える。
『死神の名づけ親』(グリム)KHM44 死神の指図にそむいて病人を治した医者が、地下の洞窟へ連れて行かれる。そこには人間の余命を示す火が無数に燃えており、子供の火は大きく、老人の火は小さかった。医者の火は、今にも消えそうな小さなろうそくだったので、死神が「新しいろうそくに替えてやろう」と言いつつ、わざとしくじって火を消す。医者は死ぬ〔*『死神』(落語)の原話〕。
『ペンゲリー氏と悪魔』(イギリス昔話) 悪魔が、重病のペンゲリー氏を冥府へ連れにやって来て、部屋の中の短いろうそくが燃え尽きるまでの間だけ生かしておいてやる、と言う。ペンゲリー氏は悪魔の隙を見てろうそくを消し、箱の中へ隠して、悪魔を追い返す。以後長年月を経てペンゲリー氏は健在であり、女房が何度もろうそくを捜して燃やそうとするが、ペンゲリー氏はろうそくを隠し通す〔*→〔魂〕1aの『変身物語』(オヴィディウス)巻8の、メレアグロスの物語の変型〕。
*→〔ともし火〕1の『三国志演義』第103回・『性に眼覚める頃』(室生犀星)。
*麦を刈ると、人が死ぬ→〔鎌〕5。
★3.ろうそくがともっているうちに出頭すれば恩赦、消えた後は死刑。
『ゲスタ・ロマノルム』96 アレキサンダー大王は、火をともしたロウソクを宮廷に立て、次のように布告した。「王の掟にそむいた者は、ロウソクのともっているうちに出頭すれば、罪を許す。ロウソクの消えるまでに出頭しなければ、死刑に処す」。大勢の国民が出頭して恩赦を願い、王はそれを受け入れた。出頭しなかった者は、捕らえられ処刑された。
『少年』(谷崎潤一郎) 尋常小学校4年の「私(萩原の栄ちゃん)」は、大金持ちの塙(はなわ)家の子供たち(同級の信一、その姉光子、使用人の子仙吉)と一緒に、加虐的な、あるいは被虐的な、種々の遊びにふけった。ある時光子は、「私」と仙吉の手足を縛って坐らせ、額にろうそくを載せて火をつける。熱い蝋の流れが眉間を伝ってだらだら垂れ、眼も口も塞がれてしまう。光子は「私」たちをそのままにして、ピアノを弾く。翌日から光子は女王となり、「私」たち3人は嬉々として彼女の命令に従った。
『遠野物語拾遺』147 ろうそくの火の芯に青い焔がない時には、火災・変事などが起こる。先年、遠野町の大火の折も、火元に近い某家の婦人が、その朝にかぎって神棚の御燈明に青い焔が見えないのを、不思議に思った。すると、まもなく近所から出火して、大火事になったのである。
★6.初めて見るろうそく。
『赤いろうそく』(新美南吉) 猿が赤いろうそくを拾い、「花火だ」と思って山へ持ち帰る。鹿も猪も兎も亀も鼬も狸も狐も、花火を見たことがないので喜びつつ怖がる。猪が勇気を出して点火すると、動物たちは耳をふさぎ、さらに眼までふさいでしまう。しかし、ろうそくは静かに燃えているだけだった。
『現代民話考』(松谷みよ子)12「写真の怪 文明開化」第2章の4 明治の初め。村人が西洋ローソクをもらい、「これは西洋の魚だが、どちらが頭か尾かわからない」と首をひねる。火であぶってみると、溶けてなくなり、細い芯だけが残る。溶けた蝋(ろう)が下に落ち、燃え出す。村人は「西洋の魚は脂が多い。糸みたいな骨だけが残った」と言って、感心する(山形県)。
『ろうそく騒動』(昔話) 村の住職が本山へ行き、みやげに赤いろうそくを買って来て村人に配る。村人たちは「かまぼこのようなものだろう」と思って食べるが、うまくない。町から来た薬屋が「これはろうそくで、先っぽから火が出るのだ」と教えたので、村人たちは「腹の中で火が燃えたら大変だ」と恐れ、池に飛び込んで水をたらふく飲んだ(富山県氷見市)。
ろうそくと同じ種類の言葉
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