気体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/01 02:34 UTC 版)
その他
圧縮率
熱力学ではこの因子 (Z ) を使って理想気体の方程式を圧縮率を考慮した実在気体のそれに変換する。この因子は現実の比体積と理想気体の比体積の比で表される。「ファッジ係数」の一種ともされ、理想気体の法則を実際の設計などに応用できる範囲を広げる役目を持つ。通常(常温、常圧)、Z の値はほぼ1である。Z 線図は、極低温の範囲でのZ の変化を示したグラフである。
レイノルズ数
流体力学では、レイノルズ数は慣性力 (vsρ) と粘性力 (μ/L ) の比である。流体力学における重要な無次元数の1つであり、他の無次元数と組み合わせて使い、力学的類似性を決定する基準を提供する。そのため、設計の際の模型での結果と実物大の実際の条件との関係をレイノルズ数だけで表すことができる。また、流れの特性値としても使うことができる。
粘度
粘度は流れにくさを示す流体の物性の一つであり、せん断変形速度に依存する。液体はせん断力を加えられたとき常に流動するが、その速度に応じて抗力が生じる。気体は液体に比べて粘性が低く、粘性なしとして扱われることも少なくない。気体が全く粘度も持たないとすると翼の表面に固着することはなく、境界層は形成されない。デルタ翼の研究においてシュリーレン写真を使い、気体粒子が互いにくっつきあう現象があることが確認された。
乱流
流体力学において乱流とは、無秩序かつ確率的に変化する特性を持つ流れの状態である。乱流は運動量の拡散が小さく伝達量が大きく、流れの圧力や速度が時間や空間と共に急激に変化する。
境界層
気体粒子は気体中を移動する物体の表面にくっつく性質を持つ。そのような粒子の層を境界層と呼ぶ。物体表面に粒子がくっつくのは基本的には摩擦が原因である。すると、物体と境界層を合わせた部分が一緒に気体内を移動する形状を形成する。境界層を物体表面からはがすには、形状を変化させ流れの経路を完全に変えればよい。古典的例として、航空機の失速は境界層の剥離が原因である。右上のデルタ翼の写真では、右から左に気体が流れるのに伴って境界層が翼の先端に沿って厚くなっていく様子が見られる。
最大エントロピー原理
自由度が無限大に近づくにつれて、系は極めて多様性が高い「巨視的状態 (macrostate)」となる。例えば、冷凍した金属棒の表面の温度を観測し、サーモグラフィ映像で表面の温度分布を見てみればよい。ある時点の温度分布観測によって「微視的状態 (microstate)」が得られ、時間をおいて何度も温度分布を観測することで一連の微視的状態が得られる。この微視的状態の履歴から、それらを全て1つの分類に属する巨視的状態を選ぶことが可能である。
熱力学的平衡
ある系でエネルギー伝達がなくなるとき、その状態を熱力学的平衡と呼ぶ。通常、この状態では系とその周辺は同じ温度となっていることを前提としており、熱の移動が起きない。さらに外部からの力も釣り合いがとれており(体積が変化しない)、系内の全ての化学反応も完了している。温度、外力、化学反応というこれらの条件がどういう順番で成立するかは系によって様々である。氷を入れた容器を室温の中に置くと氷が融けきるのに数時間かかるが、半導体においてデバイスにかかる電源をON/OFFすることで発生する熱伝達は数ナノ秒のオーダーで変化するかもしれない。
注釈
- ^ このような物理特性の例外として、マイケル・ファラデーは1833年、氷に電気伝導性がないことを発見した。詳しくは、John Tyndall's Faraday as a Discoverer (1868), p.45
- ^ このときの温度の上限は 1500 K とされている。詳しくは(John 1984, p. 256)
出典
- ^ a b c 岩波書店『広辞苑』 第6版 「気体」
- ^ a b ブリタニカ百科事典 【気体】
- ^ McPherson & Henderson 1917, pp. 104–10
- ^ American Chemical Society, Faraday Society, Chemical Society (Great Britain)'s The Journal of physical chemistry, Volume 11 (Cornell – 1907), page 137.
- ^ Tanya Zelevinsky (2009). “84Sr—just right for forming a Bose-Einstein condensate”. Physics 2: 94 .
- ^ Quantum Gas Microscope Offers Glimpse Of Quirky Ultracold Atoms ScienceDaily 4 November 2009 - ボース=アインシュタイン凝縮についてのリンクを提供
- ^ The Journal of physical chemistry, Volume 11 (Cornell – 1907) pp. 164–5.
- ^ John S. Hutchinson (2008). Concept Development Studies in Chemistry. p. 67
- ^ Anderson 1984, p. 501
- ^ J. Clerk Maxwell (1904). Theory of Heat. Mineola: Dover Publications. pp. 319–20. ISBN 0486417352
- ^ See pages 137–8 of Society (Cornell – 1907).
- ^ Kenneth Wark (1977). Thermodynamics (3 ed.). McGraw-Hill. p. 12. ISBN 0-07-068280-1
- ^ (McPherson & Henderson 1917, pp. 60–61)
- ^ Anderson 1984, pp. 289–291
- ^ Anderson 1984, p. 291
- ^ John 1984, p. 205
- ^ John 1984, pp. 247–56
- ^ McPherson & Henderson 1917, pp. 52–55
- ^ McPherson & Henderson 1917, pp. 55–60
- ^ John P. Millington (1906). John Dalton. pp. 72, 77–78
- ^ Online Etymology Dictionary
- ^ (英語) The Chemical History of a Candle/Lecture II, ウィキソースより閲覧。
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