乱流とは? わかりやすく解説

らん‐りゅう〔‐リウ〕【乱流】

読み方:らんりゅう

流体各部分が不規則に混合しながら流れ流れ大気河川流れ障害物当たって生じ流れ多くはこれである。→層流


乱流(流体・空力)

※「大車林」の内容は、発行日である2004年時点の情報となっております。

乱流

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/30 13:56 UTC 版)

物理学の未解決問題
乱流(特にその内部構造)の振る舞いを記述する理論上のモデルを構築することは可能か?

乱流(らんりゅう、: turbulence)は、流体の流れの状態の一種。乱流でない流れ場は層流と呼ばれる。

乱流の確立した定義は現時点においても存在しないが、数学的にはナヴィエ・ストークス方程式の非定常解の集合であるということができる。層流と乱流のおおよその区別はレイノルズ数によって判断され、レイノルズ数の値が大きいと乱流と判断される。また、層流が乱流に遷移するときのレイノルズ数を臨界レイノルズ数という。

生活の中でのわかりやすい例としては水道の蛇口から流れるがある。水道の水は流れが少ないときはまっすぐに落ちるが、少し多くひねると急に乱れ出す。このとき前者が層流、後者が乱流である。生活の中で見られる空気や水の流れはほぼ全てが乱流であるだけでなく、物質を輸送して拡散する効果が非常に強いので、工学的にも非常に重要である。

乱流の数値シミュレーションは、気象予報自動車等の空力設計からノートパソコン冷却まで工学的には非常に幅広く利用されている。ゴルフボール表面につけたディンプルによる飛距離延伸(マグヌス効果も参照)、新幹線500系電車パンタグラフの突起による騒音低減などにも乱流の効果が応用されている[1]

しかし高レイノルズ数の乱流を再現するには高い計算機性能を要求するため、スーパーコンピュータなどHPC(高性能計算)の重要な用途の一つになっている。

乱流の例を以下に挙げる[2]自然界で見られる流れや、工業製品に応用される流れはほとんど乱流であり、層流のほうがむしろ例外である。

気象・大気力学

天文学

工学・その他

性質

乱流には以下のような性質がある[2]

不規則性
乱流の解析は決定論ではなく、統計的手法による。
拡散
乱流では乱流粘性によって、運動量、熱、質量等の輸送量(流束)が層流に比べ増える。
レイノルズ数が大きいこと
レイノルズ数が十分大きくなると、運動方程式の粘性項と慣性項の相互干渉に関連した不安定性がもとで乱流が起こる。
3次元の渦運動
乱流の特徴の一つとして強い渦度変動が挙げられる。また3次元的であることも重要な性質で、2次元の乱流にはを維持するメカニズムがはたらかず、ランダムな渦度変動を維持することができず消えてしまう。
散逸性
粘性によるせん断応力仕事によって乱流の運動エネルギーは消費され内部エネルギーに変わる。そのため乱流を維持するためにはこの損失を補填する継続的なエネルギー供給が必要である。
連続性
特殊な場合を除いて、乱流で生じる最小の長さスケール(コルモゴロフのスケール)でも分子運動の長さスケールよりは十分に大きい。
乱流は「流れ」という現象である
乱流は流体の性質ではなく、流れの一つの現象である。流体の種類(気体液体分子構造)が何であっても乱流の主な動力学的性質は同じである。
多重スケール、エネルギーカスケード[3]
2つの波数モードが結合して別のモードの運動が誘起される。このため、流れに注入されるエネルギーが大きなスケールから、粘性による散逸が支配的になる小さなスケールに伝達され、広いスケール範囲にエネルギーが分布する。これは、大きな渦が壊れて少し小さな渦になり、さらにその渦が壊れより小さな渦になるというイメージで説明される。
粘弾性流体との類似性[4]
層流状態の粘弾性流体と、乱流状態のニュートン流体(を粗視化してみた流れ)とが示す振る舞いが似ていることが指摘されている。

乱流モデル

物理学の未解決問題
乱流(特にその内部構造)の振る舞いを記述する理論上のモデルを構築することは可能か?

乱流は様々な場面で存在するため、数値流体力学においてもその解析は必須である。しかし上記の性質のために、解析には困難が多く、特に直接数値シミュレーション計算資源の要求が高いので、代わりに乱流をモデル化する必要がある。

参考文献

  • 横井喜充、下村裕、半場藤弘、岡本正芳 編『乱れと流れ』培風館、2008年、85頁。ISBN 978-4-563-02289-1 

脚注

  1. ^ 【科学の扉】乱流を使いこなせ ゴルフ、iPS…「流れ」に渦生む謎多い現象朝日新聞』朝刊2019年12月23日(扉面)同日閲覧
  2. ^ a b H. Tennekes、J. L. Lumley、藤原仁志、荒川忠一訳『乱流入門』東海大学出版会、1998年。 ISBN 978-4-486-01440-9 
  3. ^ 横井ら 編、8頁。 
  4. ^ 横井ら 編、85頁。 

関連項目


乱流

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/14 02:06 UTC 版)

定常状態」の記事における「乱流」の解説

厳密に言えば冒頭小川の例は定常状態ではない。なぜなら、小川表面に波が立つのを見れば分かるように、小川流れ周囲影響を受け時間とともに変化しているからである。実際自然界において厳密な定常状態存在確認することは難しいだろう。たとえば大気にしても低気圧高気圧どのように定常状態からの乱れが常に存在するこのような定常状態からの乱れ擾乱といい、擾乱のある流れを乱流という。 ただし乱流の理論解析では、このような擾乱確率過程としてとらえることがあり、このとき、擾乱統計量時間変化しないことを定常な乱流という。

※この「乱流」の解説は、「定常状態」の解説の一部です。
「乱流」を含む「定常状態」の記事については、「定常状態」の概要を参照ください。

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