臨界レイノルズ数とは? わかりやすく解説

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レイノルズ数

(臨界レイノルズ数 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/22 04:16 UTC 版)

円柱周りのカルマン渦列。この現象は円柱周りで起こり、すべての流体について、円柱サイズと流体速度との積を動粘性係数で割ったものが、つまりはレイノルズ数が40から103のときに見られる[1]

レイノルズ数(レイノルズすう、: Reynolds numberRe)は流体力学において慣性力粘性力との比で定義される無次元量である。流れの中でのこれら2つの力の相対的な重要性を定量している。

概念は1851年にジョージ・ガブリエル・ストークスにより紹介されたが[2]、レイノルズ数はオズボーン・レイノルズ (1842年 - 1912年) の名にちなんで名づけられており、1883年にその利用法について普及させた[3][4]

流体力学上の問題について次元解析を行う場合にはレイノルズ数は便利であり、異なる実験ケース間での力学的相似性を評価するのに利用される。

また、レイノルズ数は層流乱流のように異なる流れ領域を特徴づけるためにも利用される。層流については、低いレイノルズ数において発生し、そこでは粘性力が支配的であり、滑らかで安定した流れが特徴である。乱流については、高いレイノルズ数において発生し、そこでは慣性力が支配的であり、無秩序なや不安定な流れが特徴である。 実際には、レイノルズ数の一致のみで流れの相似性を保証するには十分ではない。流体流れは一般的には無秩序であり、形や表面の粗さの非常に小さな変化が異なる流れをもたらすことがある。しかしながら、レイノルズ数は非常に重要な指標であり、世界中で広く使われている。

定義

レイノルズ数Re は表面に向かう相対運動の中の流れを有する様々な状況として定義される[n 1]。これらの定義は一般的に密度や粘性、及び速度や特性長さ、もしくは特性寸法等の流体特性を含む。この特性長さは慣習によって決められており、例えば、半径直径に対して等しく有効であるが、どちらか1つが慣習的に選ばれている。航空機船舶については、縦の長さもしくは幅が特性長さとして利用される。配管内の流れや流れの中の球の運動については、内径が今日一般的に利用されている。長方形配管や球体以外の丸みを帯びた物体のような他の形状については定義されている等価直径を用いる。圧縮性気体や非ニュートン流体のような、粘性や密度が一定ではない流体については、特別な規則が適用される。速度についてもある環境、特に攪拌槽では慣習により定義される。

流体流れの定性的ふるまいはレイノルズ数に大きく依存する;類似した流れのパターンは障害物の形やレイノルズ数が一致するときに現れ、他のパラメータとして障害物の表面の粗度も大きな影響を与える。

流れの中の障害物に関したレイノルズ数は、粒子レイノルズ数と呼ばれしばしばRepと表記され、粒子周りの流れの性質、渦の剥離英語版の発生の有無、及び粒子の沈降速度を考慮するときに重要となる。

流れの中の球

球付近のクリープ流れ: 矢印線は流線,力は抗力 Fd と重力 Fg

流れの中のに関し、特性長さは球の直径であり、特性速度は、球からすこし離れた場所の球の運動が流体の検査体を乱さないような場所にある流体と球との相対速度である。密度速度は流体の属性とする[13]。この定義では、レイノルズ数が0.1までは純粋な層流のみが存在することに注目すべきである。

レイノルズ数が低い状態では、と速度の関係はストークスの式により与えられる[14]

流れの中の楕円体

楕円形の物体の式は球の式と同様であり、物体が楕円体に近似されるとき軸の長さが特性長さとして用いられる。ただし、粒子の軸長さの測定は非現実的なので、ふるい径が特性粒子長さとして代わりに用いられる。二つの概算値を用いることで限界レイノルズ数の値が変動する。

沈降速度

粒子レイノルズ数は粒子の沈降速度を決定するのに重要である。粒子レイノルズ数が層流を示す場合、ストークスの式を沈降速度の計算式として使用することができる。粒子レイノルズ数が層流を示す場合、適切な沈降速度をモデル化するために乱流抗力法(turbulent drag law)が構築される必要がある。 高分子溶液重合体溶融物のような粘性が元々高い流れは普通は層流となる。レイノルズ数が非常に小さければ、ストークスの法則により流体の粘性を計ることができる。球が流体の中で沈降するとき、球はすぐに終末速度に達し、そこから粘性が求まる。

充填層

直径がD のほぼ球状の粒子からなる充填層に接触する流体流れについて、充填率がε及び空塔速度V であるとき、レイノルズ数は次のように定義される。

ムーディー線図。レイノルズ数と配管の相対粗度を関数としたダルシー・ワイスバッハの式に使われる摩擦損失係数を記述している。

十分に発達した流体流れに見られる圧力低下は、ムーディー線図を用いて予測可能であり、この線図ではレイノルズ数Re と相対粗度ε/D に対して摩擦損失係数 f をプロットしている。この線図においては層流領域、遷移領域、及び乱流領域がレイノルズ数の増加とともにはっきりと示されている。配管流れの性質は流れが層流か乱流かにより強く依存する。管網解析では圧力損失を求めるために、摩擦損失係数が必要であり、摩擦損失数を求めるため、レイノルズ数が使われる場合があるので非常に重要な無次元数である。

生理学

人体における血液循環についてのポアズイユの法則は層流に依存する。

レイノルズ数の定義を用いると、流れ速く、直径大きく、そして血液の密度が高いと乱流となりやすいことがわかる。血管の直径の急激な変化は乱流につながりやすく、例えば狭いところが広くなるときがそうである。さらに、可聴乱流が聴診器で検出されるところでは乱流の原因の可能性としてアテロームの膨らみが挙げられる。

航空力学

レイノルズ数は詳細な数字でなく、「10 の何乗」という桁数(オーダー)に注目することも多い。たとえば、空気中を飛行する飛行機の主翼でのレイノルズ数は 106 - 108 程度である。また、模型飛行機などのレイノルズ数は105以下で低レイノルズ数領域と言われている。

船舶工学

高分子溶液の層流は魚やイルカにより利用され、それらが皮膚から高分子溶液をにじみ出し泳ぎの間、体の上の流れを助ける役割をしている。これはヨットレースにおいて利用され、ヨットオーナーはスピードをあげるために低分子量のポリエチレングリコールのような高分子溶液を船体の接水面にポンプ注入することがある。

式の導出

バッキンガムのΠ定理

レイノルズ数はバッキンガムのΠ定理に基づく次元解析から導かれたものであり、同様のものにマッハ数がある。

バッキンガムのΠ定理とは、

「物理現象を表すパラメータがn個、そこに現れる単位(次元)がm種類のとき、n-m個の無次元量π1,...,πn-mと関係式fが存在して

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ナビエ-ストークス方程式

レイノルズ数はナビエ-ストークス方程式(非圧縮性で外力なし)を無次元形に変形することで、方程式を支配する唯一のパラメータとして得ることができる。




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