比速度とは? わかりやすく解説

比速度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/27 00:00 UTC 版)

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比速度とは、ポンプ発電用水車などのターボ機械の形式を表すために用いられる物理量であり、機械を相似形で拡大縮小したとき、単位揚程、単位流量を発生するために必要な回転速度である。

定義

ポンプに対しては、比速度Ns は次式で定義される:

水車の場合、流量より出力が重視されるため、次式が用いられる:

  • Ns :比速度(min-1, kW, m 基準)[1]
  • N :回転速度 [min-1]
  • P出力 [kW]
  • H :落差 [m]

物理的意味

複数のターボ機械を比較して、以下の条件が成り立つとき、比速度Ns は同じになる:

このことから、形状はほぼ相似だが大きさが異なる機械同士の性能を比較する際に比速度が用いられる。

ターボポンプやターボ送風機に対しては、その種類によって最高効率点での比速度の値は大体決まっており、以下のようになる。

形式 比速度Ns (min-1, m3/min, m 基準)
遠心型 100 - 300
斜流型 800 - 1000
軸流型 1200 -

水車の場合は、流量の代わりに出力を用い、以下のようになる。

形式 比速度Ns (min-1, kW, m 基準)
衝動型ペルトン水車 8 - 25
遠心型フランシス水車 50 - 350
斜流型デリア水車 100 - 350
軸流型カプラン水車 200 - 900
軸流型チューブラ水車 500 -

導出

ターボ機械に関する相似則を用いると、比速度が機械の大きさによらず一定であることを示すことができる。

流体の種類(具体的には密度)を一定にして、回転速度N と機械の大きさD が異なる2つのターボ機械を考える(一方の変数にプライム記号 ' をつけて区別する)。流量Q は回転速度と大きさの3乗に比例し、揚程H は回転速度の2乗と大きさの2乗に比例するから、以下の関係が成り立つ:

これら2式から、大きさに関する項を消去するために、D '/D について解き等置する:

したがって、

を得る。つまり比速度Ns は機械の大きさによらず一定である。

無次元数としての比速度

次の無次元比速度ns というものが定義されている:

  • N : 回転速度 [s-1]
  • Q : 流量 [m3/s]
  • g : 重力加速度 [m/s2]
  • H : 揚程 [m]

またISOでは、比エネルギーΔE (=gH )を用いて次式で示す形式数(type number)K を定めている。

バッキンガムのΠ定理に基づく次元解析を考える。ターボ機械に関係する物理量を流量Q 、揚程H 、回転速度N 、羽根径(機械の大きさ)d 、流体密度ρ、流体粘度ηの6つとすると、これらに含まれる次元長さ(L)、質量(M)、時間(T)の3つなので、6-3=3つの無次元数で運転状態を表せることが分かる。ターボ機械の場合、この3つの無次元数とはレイノルズ数Re流量係数φおよび揚程係数ψであり、無次元比速度ns はこれらと次の関係がある:

定義の項で述べた有次元の比速度Ns は、無次元比速度ns や形式数K をポンプや水車など各用途に応じて使いやすく(しかし本質は変えずに)変形したものに過ぎない。

脚注

  1. ^ a b 比速度は有次元数であり、その単位は定義通りに計算すると
    • 1/60 m3/4 s-3/2 (ポンプの場合)
    • √10/6 kg1/2 m-1/4 s-5/2 (水車の場合)
    となる(60や√10などの因子は min や kW を換算したことによるもの)。この単位は複雑であるため、実用上は表記が省略されることが多い。用いる単位については、送風機や圧縮機の場合は流量に [m3/s] を用いたり、アメリカなどではフィート・ポンド系が用いられることもある。そのため、比速度を議論するときには単位系に注意が必要である。

参考文献


比速度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/10 14:49 UTC 版)

発電用水車」の記事における「比速度」の解説

「比速度」も参照 比速度(ひそくど)は、実物水車相似形縮小したとき、単位落差単位出力発生するために必要な回転速度である。比速度は次式で示されるN s = N P H 5 4 {\displaystyle N_{\mathrm {s} }=N{\frac {\sqrt {P}}{H^{\frac {5}{4}}}}} Ns :比速度(単位表示しない) (m-kW)または(m-kW基準) 注. (m-kW)は単位記号ではなく落差単位が[m]、出力の単位が[kW]であるときの値であることを示す(JIS B0119:2009 p.21参照)。(m-kW)は、H 、P の単位を示すとともに、(ft-HP)などとも区別するためにこのように表記されることがある。 N :実物水車回転速度 [min-1] H :実物水車有効落差 [m] P :実物水車ランナもしくはペルトン水車ノズル1個当たりの出力 [kW] 比速度公式の導出 V :実物水車流速[m/s] Q :実物水車ランナもしくはペルトン水車ノズル1個当たりの流量 [m3/s] とする。 ここで、相似形長さの比としてk を仮定するNk実物のk倍の相似水車回転速度 [min-1] Hk実物のk倍の相似水車有効落差 [m] Pk実物のk倍の相似水車ランナもしくはペルトン水車ノズル1個当たりの出力 [kW] Vk実物のk倍の相似水車流速[m/s] Qk実物水車のk倍の相似水車ランナもしくはペルトン水車ノズル1個当たりの流量 [m3/s] 流速落差の平方根比例し回転部分周辺速度比例するから、 V k V = H k H = k N k N {\displaystyle {\frac {V_{k}}{V}}={\frac {\sqrt {H_{k}}}{\sqrt {H}}}=k{\frac {N_{k}}{N}}} これから k = N V k N k V = N H k N k H {\displaystyle k={\frac {NV_{k}}{N_{k}V}}={\frac {N{\sqrt {H_{k}}}}{N_{k}{\sqrt {H}}}}} 流量水流断面積流速の積に比例するから、 Q k Q = k 2 V k V = N 2 H k 3 2 N k 2 H 3 2 {\displaystyle {\frac {Q_{k}}{Q}}={k^{2}}{\frac {V_{k}}{V}}={\frac {N^{2}H_{k}^{\frac {3}{2}}}{N_{k}^{2}H^{\frac {3}{2}}}}} 出力流量落差の積に比例するから、 P k P = Q k H k Q H = N 2 H k 5 2 N k 2 H 5 2 {\displaystyle {\frac {P_{k}}{P}}={\frac {Q_{k}H_{k}}{QH}}={\frac {N^{2}H_{k}^{\frac {5}{2}}}{N_{k}^{2}H^{\frac {5}{2}}}}} これから N k 2 = N 2 P / H 5 2 P k / H k 5 2 {\displaystyle N_{k}^{2}={N^{2}}{\frac {P/H^{\frac {5}{2}}}{P_{k}/H_{k}^{\frac {5}{2}}}}} 両辺の平方根をとってNk求めると、 N k = N P / H 5 4 P k / H k 5 4 {\displaystyle N_{k}=N{\frac {{\sqrt {P}}/H^{\frac {5}{4}}}{{\sqrt {P_{k}}}/H_{k}^{\frac {5}{4}}}}} Hk = 1 m、Pk = 1 kWのときNk = Ns [min-1]と書けば、 N s ′ = N P / H 5 4 1 / 1 5 4 = N P H 5 4 {\displaystyle N'_{\mathrm {s} }=N{\frac {{\sqrt {P}}/H^{\frac {5}{4}}}{{\sqrt {1}}/1^{\frac {5}{4}}}}=N{\frac {\sqrt {P}}{H^{\frac {5}{4}}}}} これらの式から明らかなように、NkN 's はN に無次元数 P / H 5 4 P k / H k 5 4 {\displaystyle {\frac {{\sqrt {P}}/H^{\frac {5}{4}}}{{\sqrt {P_{k}}}/H_{k}^{\frac {5}{4}}}}} または P / H 5 4 1 / 1 5 4 {\displaystyle {\frac {{\sqrt {P}}/H^{\frac {5}{4}}}{{\sqrt {1}}/1^{\frac {5}{4}}}}} を乗じたになっているため、N と同次元([T-1])であり、ともに回転速度であって単位も当然同じ[min-1] (= [rpm]) である。このことは、Nk の定義からも明らかである。 なお、比速度の単位表記に関しては、 N k P k H k 5 4 = N P H 5 4 = N s1 1 5 4 = N s {\displaystyle N_{k}{\frac {\sqrt {P_{k}}}{H_{k}^{\frac {5}{4}}}}=N{\frac {\sqrt {P}}{H^{\frac {5}{4}}}}=N'_{\mathrm {s} }{\frac {\sqrt {1}}{1^{\frac {5}{4}}}}=N_{\mathrm {s} }} から、 このNs は、相似水車単位落差単位出力のときの回転速度N 's数値等しいが単位異なり、この相似水車群に共通な任意のk について一定となる数値で、水車の形を表す指標とみなせる。 その次元が、定数(ρ、g )だけで決まる準無次元数(quasi non-dimensional number)である(次元実際に無次元ではなくρ0.5g1.25 から、M1/2L-1/4T-5/2であるが)。 という性質がある。そこで、これを無単位無次元指標みなして「比速度」とし、単位表示なしで、計算使用する落差出力の単位を示す(m-kW)あるいは(m-kW基準)だけを表示する方式利用されている(JIS B0119 2009, JEC4001 2006)。

※この「比速度」の解説は、「発電用水車」の解説の一部です。
「比速度」を含む「発電用水車」の記事については、「発電用水車」の概要を参照ください。

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