発電用水車とは? わかりやすく解説

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発電用水車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/04 21:41 UTC 版)

大容量水力発電所のフランシス水車

発電用水車(はつでんようすいしゃ、英語: water turbine)は、主に位置エネルギーによって生じた水圧(および、それに由来する運動エネルギー)の効果を利用してタービンを回転させ、その力学的な仕事によって電力を得る水力発電のための機構である。

水は非圧縮性流体であることに基づき、単一の羽根車によって、圧力差のエネルギーの大部分を力学的な仕事に変換することができる。このことは、圧縮可能な流体(気体)用のタービンが複数の羽車で構成されるのと対照的である。ただし、ランナを複数装備して、使用するランナ数を動的に変更することで効率を高めた水車発電機もある。

理論

比速度

比速度(ひそくど)は、実物水車を相似形で縮小したとき、単位落差で単位出力を発生するために必要な回転速度である。比速度は次式で示される。

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水車の特性の比較
水車の種類 流水方向 適用 効率の変化 定格回転速度に対する最大無拘束速度(%) 比速度 (m-kW基準)
流入 流出 落差(m) 水量 落差変化 水量変化 範囲 限界値式[2]
衝動水車 ペルトン 半径方向 垂直方向 250以上 150~200 12~23
ペルトン水車(琵琶湖疏水蹴上発電所で使われた日本で最初のもの)

衝動水車

衝動水車(しょうどうすいしゃ)は、圧力水頭を速度水頭に変えて水車に作用させるものである。衝動水車には以下のようなものがある。

ペルトン水車
ノズルからのジェット水流をランナ周囲のバケットに当てて回転させる水車。大型のものはノズル数を多くして、効率を上げている。使用ノズルの数を変えることにより部分負荷でも効率が良い。デフレクタ(そらせ板)により水流の向きを変えて負荷遮断時急停止できるので、水圧管の圧力上昇を抑えることができる。高落差に向く。
クロスフロー水車
ガイドベーンにより調節された流水が、横軸の円筒型のランナの上部から中心へ流れ込み、下部で中心から外部へ流れ落ちる構造である。流水が羽根に二回作用するため比較的効率が良い。最高効率点での効率は他に比して劣るものの、水量変化による効率の変化は少なく、小規模の変流量地点に適する。
ターゴインパルス水車
ペルトン水車同様、ノズルからのジェット水流が持つ運動エネルギーを全て速度エネルギーの形で利用するが、ランナーの片面からあてて回転させるところが違う。比速度はペルトン水車の2倍なので、等しい出力を得るために必要とされるランナ直径はペルトン水車の半分で済む。ペルトン水車よりも使用水量を多く取れ、フランシス水車に必要な密閉構造が不要である。有効落差は、ペルトン水車とフランシス水車の両方が重なったところである。
開放周流形水車
所謂“普通の水車”である。水車も参照。水力発電では従来、ケーシングを持ち、高速回転する水車が使用されてきた。しかし、低速回転でも有効な電圧を確保できる発電機の登場や、ギアボックスの併用により、10rpm未満の開放形水車をミニ水力、マイクロ水力用の水車として見直す動きが出てきた。エネルギーの変換効率という点ではケーシング式の水車に劣る反面、流水中の異物が溜まりにくく、また整備・清掃の際に大規模な分解を必要としないためメンテナンスコストが安い。下掛け式であれば有効落差はほぼ0mでも流量が期待できれば使用可能である。また、ある程度落差がある場合は上掛け式とすることで効率が向上する。海外では早いうちから注目され、大型上掛け式水車による小水力級の水力発電も試みられてきたが、日本では開放形水車を産業革命以前の技術と捉える向きがあり、再評価が遅れた。2005年都留市が、河川そのものの流れを利用する下掛け式水車を使用したマイクロ水力の実用試験と、同市の光熱費の低減を目的として、家中川小水力市民発電所「元気くん1号」(20kW)を同市庁舎前を流れる家中川[3]に設置した。
水車のデザインを工夫すれば、農村的景観を損なわずに発電が可能である。世界文化遺産に登録されているインドネシア・バリ島の棚田地帯では、日本の富山市と市内の水機工業が支援して設置した水車による発電が2017年秋に始まった[4]

反動水車

反動水車(はんどうすいしゃ)は、圧力水頭を水車に作用させる水車である。反動水車には以下のようなものがある。

フランシス水車
ケーシングからガイドベーンを通った流水が、渦巻き型ランナの外周部に半径方向から流入し軸方向に流出する水車。構造が簡単で保守が容易である。流量変化による効率の低下が大きい。
斜流水車
渦巻きケーシングからガイドベーンを通った流水が、渦巻き型ランナの外周部に軸に対し斜め方向から流入し軸方向に流出する。落差や水量の変化によってランナ羽根の角度を変え、効率の良い運転が可能なデリア水車が一般に用いられている。
プロペラ水車
軸方向から流入した流水が、軸方向に流出する。落差や水量の変化によってランナ羽根の角度を変えるものをカプラン水車という。円筒水車(チューブラ水車)は、水中の円筒ケーシング内に発電機などを収め、その後部にガイドベーンやランナを設置したもので、水流の曲がりによる抵抗が少なく効率が良い。

脚注

  1. ^ 日本産業標準調査会:データベース-JISリスト
  2. ^ 加藤洋治『キャビテーション』槇書店、1990年、229頁。ISBN 4-8375-0590-2 
  3. ^ かつて家中川には谷村町営の水力発電所(50kw)があった
  4. ^ 富山の水車 異国の村に灯 バリ島・世界遺産棚田で稼働 小型発電、景観にも配慮『日本経済新聞』夕刊2017年11月16日

関連項目





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