UNIX 歴史

UNIX

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 01:55 UTC 版)

歴史

PDP-11で作業しているケン・トンプソン (座っている人物)とデニス・リッチー

Unixの歴史は、1960年代中ごろに、マサチューセッツ工科大学 (MIT)、ベル研究所General Electric (GE) がGEのメインフレームコンピュータGE-645用にMulticsと呼ばれるタイムシェアリングオペレーティングシステムを共同開発していたことにさかのぼる[9]。Multicsは多くの革新的技術を導入したが、同時に、多くの問題を抱えてもいた。Multics の目指すものに賛同しても、巨大で複雑なものになっていくことに嫌気がさしたベル研究所は、プロジェクトから徐々に距離をおくようになった。

最後までMulticsに関与していたケン・トンプソン等はファイルシステムを担当していたが、設計が行われただけで実装されていない段階であった。トンプソン等は、実際にファイルシステムを実装してみたいと考えた。この作業は、当時ベル研究所内に使われない状態でおいてあったPDP-7を借りて行われた。ファイルシステムが完成すると、それを活用するためのユーティリティを作成していった。こうして、おおむねOSの機能を有するものができあがった[8]。この時点では、OSの開発はベル研究所に認知されたものではなく、彼らの私的な活動であった。研究所からの資金提供はなく、OSには名前も付けられていなかった。

できあがったOSは、MulticsのようなマルチタスクOSではなく、後のMS-DOSのような、一度に一つのプログラムしか動かせないシングルタスクのOSであった[8]。この特徴から、新しいOSは、ブライアン・カーニハンによって、MulticsのMulti(多数の)をUni(単一の)に変えてUnicsと名付けられた[8][10][11][12]。後につづりがUnixと変更された。このつづりの変更の経緯について、カーニハンは「思い出せない」と言っているが、当時の開発グループ内では比較的年長者であったピーター・ノイマンは「法務上の理由であろう」と語っている[12]

PDP-7は古いマシンであり問題が多かった。このため、開発グループでは、当時の最新機種であったPDP-11を購入し、その上でUnixが動作するようになった。1971年のUnixバージョン1はPDP-11/20上で動作した。バージョン3までのUnixはアセンブリ言語で開発された。1973年に公開されたバージョン4において、UnixはC言語で書き直された[8]。この時点でのUnixはPDP-11に依存したコードが多く含まれており、移植性は低かった。UnixがPDP-11以外のコンピュータに移植されるまでには5年間を要し、1978年に、Interdata 8/32上で動作するようになった[13]

ベル研究所ではその後もUnixの改良が続けられ、パイプやマルチタスクなどの機能が追加されていった。これらの、ベル研究所で開発された初期のUnixは、現在ではResearch Unixと呼ばれている。

1970年代末から1980年代初頭にかけて、Unixは学術分野だけではなく産業分野でも使われるようになっていき、HP-UX, SunOS/Solaris, AIX, Xenix等のOSが作られた。 1980年代の末には、AT&T Unixシステムズ・ラボラトリーズサン・マイクロシステムズが共同でUNIX System V Release 4 (SVR4) を開発した。これは、後の多くの商用Unixの母体となった。

1990年代には、BSDLinuxといったUnixあるいはUnix系OSが、コンピュータ・ネットワークを通じて世界中の開発者の協力を得て開発され、人気を得ることになった。2000年には、AppleがUnixに基づいてDarwinというコアに基づくMac OS Xを開発した[14]

今日、Unixはサーバワークステーションモバイル機器などで広く使われている[15]


  1. ^ 英語の発音は「U」にアクセントを置くので、「ユーニクス」に近い発音となる。『ジャーゴンファイル』でも「U」にアクセントを置いて発音するとしている(→Eric S. Raymond (ed.) (2004年10月4日). “Unix”. The Jargon File, version 4.4.7. 2010年12月15日閲覧)。しかし日本人のアクセントは異なることがある(「ニ」にアクセント)。
  2. ^ 村井 純、井上 尚司、砂原 秀樹『プロフェッショナルUNIX』アスキー出版局、1986年1月15日、14-15頁。ISBN 4-87148-184-0
  3. ^ 実際にはMulticsを書くのにPL/I(のサブセット)が使われた、といったような先行例はある。
  4. ^ What is a "Unix-like" operating system? Unix.org FAQ
  5. ^ Operating system market share”. Marketshare.hitslink.com. 2012年8月22日閲覧。
  6. ^ 8:30 AM (2010年9月29日). “Unix's Revenge”. asymco. 2010年11月9日閲覧。
  7. ^ Powers, Shelley; Peek, Jerry; O'Reilly, Tim; Loukides, Mike (2002). Unix Power Tools. ISBN 0-596-00330-7 
  8. ^ a b c d e Ritchie, Dennis M. (1984). “The Evolution of the Unix Time-sharing System”. AT&T Bell Laboratories Technical Journal 63 (6 Part 2): 1577–93. http://www.bell-labs.com/usr/dmr/www/hist.html 2018年9月2日閲覧。. 
  9. ^ Stuart, Brian L. (2009). Principles of operating systems: design & applications. Boston, Massachusetts: Thompson Learning. p. 23. ISBN 1-4188-3769-5 
  10. ^ Dolya, Aleksey (2003年7月29日). “Interview with Brian Kernighan”. Linux Journal. 2017年10月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月2日閲覧。
  11. ^ McIlroy, M. D. (1987). A Research Unix reader: annotated excerpts from the Programmer's Manual, 1971–1986 (PDF) (Technical report). CSTR. Bell Labs. 139. 2017年11月11日時点のオリジナルよりアーカイブ (PDF)
  12. ^ a b Rik Farrow. “An Interview with Peter G. Neumann”. ;login: 42 (4): 38. https://www.usenix.org/system/files/login/issues/login_winter17_issue.pdf. "That then led to Unics (the castrated one-user Multics, so- called due to Brian Kernighan) later becoming UNIX (probably as a result of AT&T lawyers)." 
  13. ^ Portability of C Programs and the UNIX System”. Bell-labs.com. 2018年8月24日閲覧。
  14. ^ Loading”. Developer.apple.com. 2012年6月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年8月22日閲覧。
  15. ^ Unix’s Revenge”. asymco (2010年9月29日). 2010年11月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年11月9日閲覧。
  16. ^ 自由なGNU/Linuxディストリビューション”. 2020年7月22日閲覧。
  17. ^ Chuck Karish   View profile    More options. “The name UNIX is now the property of X/Open – comp.std.unix | Google Groups”. Groups.google.com. 2010年11月9日閲覧。
  18. ^ HP, Novell and SCO To Deliver High-Volume UNIX OS With Advanced Network And Enterprise Services”. Novell.com (1995年9月20日). 2010年11月9日閲覧。
  19. ^ Jones, Pamela. “SCO Files Docketing Statement and We Find Out What Its Appeal Will Be About”. Groklaw. Groklaw.net. 2011年4月12日閲覧。
  20. ^ Autres Unix, autres moeurs (OtherUnix)”. Cm.bell-labs.com (2000年4月1日). 2010年11月9日閲覧。
  21. ^ The Open Group. “The Open Brand Fee Schedule”. 2011年12月26日閲覧。 “The right to use the UNIX Trademark requires the Licensee to pay to The Open Group an additional annual fee, calculated in accordance with the fee table set out below.”
  22. ^ The Open Group. “Mac OS X v10.5 Leopard on Intel-based Macintosh computers certification”. 2007年6月12日閲覧。
  23. ^ The Open Group. “Mac OS X v10.6 Snow Leopard certification”. 2012年10月16日閲覧。
  24. ^ Unix”. Catb.org. 2010年11月9日閲覧。
  25. ^ MOODY 2002, p. 56.
  26. ^ The Open GroupのOS XへのUNIX 03製品認証
  27. ^ ズバッと解決! Windows 10探偵団 ― 第97回 ネイティブで動作するWindows上でLinuxが使えるようになった!(ASCII.jp)”. KADOKAWA (2016年4月13日). 2016年4月25日閲覧。






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