Unix_System_Vとは? わかりやすく解説

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System V

読み方システムファイブ
別名:UNIX System V

System Vとは、AT&TオリジナルUNIXを基に商用OSとして開発したUNIXである。

System Vをベースとして、SolarisUnixWareHP-UXといった、UNIXベース商用製品が、多く企業によって開発されている。ちなみにオープンソースソフトウェアとして開発されているUNIX系OS多くBSDベースとしている。


UNIX System V

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/04 15:03 UTC 版)

UNIX System V
開発者 AT&T
OSの系統 UNIX
開発状況 歴史的
ソースモデル クローズド
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UNIX系統図

System V(システムファイブ、SysV)は、初期の商用UNIXオペレーティングシステム (OS) の一種である。

概要

AT&Tが開発し1983年に最初にリリースした。4つの主要バージョンがリリースされている (Release 1, 2, 3, 4)。その中でもSystem V Release 4、通称SVR4は最も成功したバージョンであり、いくつかの一般的なUNIXの機能の起源でもある。例えばシステムの立ち上がりとシャットダウンを制御する「SysV init スクリプト」(/etc/init.d)などである。また、このシステムはSystem V Interface Definition (SVID) の元になっている。System Vがどのように動作するかを定義したものである。

AT&TもSystem Vが動作するハードウェアを販売していたが、ほとんどの顧客は、再販業者がAT&Tのリファレンス実装に基づいて実装したものを使っていた。有名なSystem Vの派生品としては、System V Release 3をベースとしているIBMAIXOpenServer、System V Release 4をベースにしているサン・マイクロシステムズSolarisヒューレット・パッカードHP-UXがある。他にもNECEWS-UXUP-UXとその後継OSのUX/4800がSystem V Release 4をベースにしていた。

1980年代からは、System Vは、BSDと並ぶUNIXの大きな系統だった。しかし、1990年代初めごろからは、System V以外のLinuxQNXの系統のほうが大きく発展した。UNIX戦争と言われた時期、BSDはデスクトップワークステーション等で使われたのに対し、System V は大規模マルチユーザシステム向けのシステムを作ろうとしていた企業にとっては最善の選択だった。POSIXのような標準化作業はこれらの実装の違いを減らすために行われた経緯がある。

SVR1

最初のSystem Vであり、1983年にリリースされた[1]。AT&TのUnix Support Groupが、System III(System IVは外部に公開されなかった[2])とベル研究所内で使われていたUSG UNIX 5.0をベースとして開発した。カリフォルニア大学バークレー校 (UCB) で開発された BSD 4.1 からviエディタやcursesが導入されている。また、バッファやinodeキャッシュを追加することで性能を向上させている。ディジタル・イクイップメント・コーポレーション (DEC) のVAXPDP-11で動作した。プロセス間通信機能としてメッセージセマフォ共有メモリが導入されている。

SVR2

System V Release 2は1984年4月にリリースされた[1]シェル機能とSVIDが導入されている。新たなカーネル機能として、ファイルロックデマンドページングコピーオンライトが導入された[3]。「ポーティングベース; porting base」の概念が定式化され、このリリースでは DEC VAX 11/780 が選択された。「ポーティングベース」とはいわゆるリファレンス実装であり、他のプラットフォームへの移植はそれに基づいて行われる。SVR2 カーネルの詳しい説明は Maurice J. Bach の著書 The Design of the UNIX Operating System にある[4]Apple ComputerA/UXはこのリリースに基づき(後にSVR3、SVR4、BSDから各種拡張を取り入れている)、そこにMacintoshのツールボックスを導入している。初期のHP-UXもSVR2からの派生だった[5]

SVR3

System V Release 3は1986年にリリースされた[1][6]STREAMS、リモートファイル共有 (RFS)、File System Switch(FSS)と呼ばれる一種の仮想ファイルシステム機構、機能の制限された共有ライブラリTransport Layer Interface (TLI) ネットワークAPIがサポートされている。最終版は1988年の Release 3.2 であり、XENIXとの互換性が追加されている。OpenServer などが、この3.2をベースとしていた。「ポーティングベース」にはAT&Tの3B2コンピュータが選ばれた。IBMAIXは SVR3 から派生したOSである。

SVR4

System V Release 4.0は1988年10月18日に発表され[7]、1989年以降に各社の商用UNIXとしてリリースされた[1]UNIX Systems Laboratories(USL)とサン・マイクロシステムズの共同開発であり、Release 3と4.3BSDXENIXSunOSの技術を統合したものである。以下のような新機能がある。

主なプラットフォームはx86とSPARCだった(ポーティングベースとしては3B2もあった)。SPARC版はSolaris 2としてサンがリリースしている(内部的にはSunOS 5.x)。AT&Tとサンの関係はSVR4のリリースまでであり、その後のSolarisはSVR4.xでの更新に追随していない。サンは2005年にSolaris 10のソースコードをオープンソースOpenSolarisとしてリリースしたが、System V由来の実装をオープンソース化するために大幅に修正している。

SVR4は多くのハードウェアベンダーに採用された(HP-UXIRIXなど)。また移植業者(SCO、マイクロソフト、ESIX、UHC)[8]がx86版の拡張版を販売した。変わったところでは、AmigaのAmiga Unix、アタリのASV SVR4 Unix などがある。他にもDell SVR4[9]Bull SVR4などがある。

SVR4.0MP

インテル製チップを使っているベンダー(ユニシス、ICL、NCRオリベッティなど)がコンソーシアムを結成して開発した。マルチプロセッサを限定的にサポートしている。各プロセッサはシステムコールを実行できるが、割り込みはマスタープロセッサと呼ばれる1つのプロセッサだけが処理するという方式であり、カーネルの大部分はそのマスタープロセッサ上で動作する[10]

SVR4.1 ES

Release 4.1 ES (Enhanced Security) は、オレンジブック B2に準拠すべくセキュリティを強化した版で、アクセス制御リスト (ACL) やダイナミック・ローダブル(カーネル)モジュール (DLM) をサポートしている[11][12]。DLMとはドライバなどを実行時に動的にメモリにロードする機能のことである。

SVR4.2

1992年、AT&T USLとノベルのジョイントベンチャーUnivelが創業。同年、System V 4.2がUnivel UnixWareとしてリリースされた。VERITASファイルシステムを新たにサポートしている。

SVR4.2MP

1993年末ごろ完成。Release 4.2 MPでは、対称型マルチプロセッサシステムサポートと、POSIXスレッドを含むマルチスレッド機能が追加された。1995年にUnixWare 2としてリリースされた[13]

SVR5

XENIXの開発元であるSCOは、UnixWareの商標権と System V Release 4.2のコードベースの販売権をノベルから取得した。このころ主要ベンダー(サン、IBM、HP)は既存のSystem V Release 4のコードベースを独自に改造・拡張して使っていた。また、UNIXの商標権はノベルからThe Open Groupに移管されている。System V Interface Definitionを発展させた Single UNIX Specification (SUS) に準拠したOSはUNIXを名乗れるようになった。アップルのmacOSはBSDからの派生だが、SUSに準拠している。BSDやSystem Vの系統ではないOSが他にもSUS準拠となっている。

System V Release 5は1997年、SCOが開発した。SVR3から派生したOpenServerとUnixWareを統合したもので、大規模サーバ向けを意図していた[5]。SCO UnixWare 7としてリリース。またOpenServer 6もSVR5ベースだが、このバージョンは他社では全く使われていない。

SVR6

System V Release 6は、SCOが2004年末にリリースすると発表したが、結局キャンセルされた[14]64ビットシステムをサポートする予定だった[15]

脚注

  1. ^ a b c d Lévénez, Éric. “Unix History (Unix Timeline)”. 2010年12月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年12月29日閲覧。
  2. ^ Tanenbaum, Andrew S. (2001), Modern Operating Systems (2nd ed.), Upper Saddle River, NJ: Prentice Hall, pp. 675, ISBN 0130313580, "Whatever happened to System IV is one of the great unsolved mysteries of computer science." 
  3. ^ Goodheart, Berny; James Cox (1994年). The Magic Garden Explained. Prentice Hall. pp. 11. ISBN 0-13-098138-9 
  4. ^ Bach (1986年). The Design of the UNIX Operating System. Prentice Hall. ISBN 0-13-201799-7 
  5. ^ a b Kenneth H. Rosen (1999). UNIX: The Complete Reference. McGraw-Hill Professional, pp. 23, 32, 33.
  6. ^ Rargo, Stephan A. (April 10, 1993), UNIX System V Network Programming, Addison-Wesley Professional, ISBN 978-0201563184 
  7. ^ SEVERAL MAJOR COMPUTER AND SOFTWARE COMPANIES ANNOUNCE STRATEGIC COMMITMENT TO AT&T'S UNIX SYSTEM V, RELEASE 4.0 Amdahl, Control Data Corporation, et al、1988年10月18日
  8. ^ Eric S. Raymond, A buyer's guide to UNIX versions for PC-clone hardware, posted to Usenet November 16, 1994.
  9. ^ Technologists notes - A brief history of Dell UNIX, (10 January 2008), http://technologists.com/notes/2008/01/10/a-brief-history-of-dell-unix/ 2009年2月18日閲覧。 
  10. ^ Unix Internatl. and USL release early version of SVR4 multiprocessing software, (17 June 1991), オリジナルの2016年9月10日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20160910051035/https://www.highbeam.com/doc/1G1-10909223.html 2009年4月22日閲覧。 
  11. ^ UNIX INTERNATIONAL REVIEWS THE UNIX SYSTEM V.4 STORY SO FAR, (13 August 1992), http://www.cbronline.com/news/unix_international_reviews_the_unix_system_v4_story_so_far 2008年10月31日閲覧。 
  12. ^ Bishop, Matt (December 2, 2002), Computer Security, Addison Wesley, p. 505, ISBN 0201440997 
  13. ^ UnixWare 2 Product Announcement Questions& Answers, (1995), http://www.novell.com/news/press/archive/1995/03/pr00026.html 
  14. ^ SCO updates Unix, OpenServer product plans InfoWorld, August 19 2003
  15. ^ SCO UNIX Roadmap”. 2016年8月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月19日閲覧。

外部リンク


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