強姦 歴史

強姦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/31 10:23 UTC 版)

歴史

『ブルガリアの致命女達』 - オスマン帝国の兵士による、ブルガリア人女性に対する強姦を描いた絵画(1877年作)。背景に描かれたイコノスタス・床に転がった振り香炉・破壊された燭台から、ここがブルガリア正教会聖堂の中であり、聖堂に逃げていた女性がレイプされるシーンであることが分かる。敵国に攻め込まれた市民が最後に聖堂に立て篭もることは大陸ではよく行われたが、侵略軍が規律の薄いものだった場合、現地の宗教心も踏みにじり、宗教施設でまでこのような残虐行為を行うことも珍しく無かった。なおこの絵画の作者コンスタンチン・マコフスキーはロシアの移動派の一人である。

性的暴力は、少数民族奴隷先住民難民貧困層また大規模災害などによって生まれた社会的弱者に対して行われたり、刑務所収容所内、そして戦時下において行われたりしてきた。内乱や戦時下では大規模な集団レイプが発生した事案がある。

古来、征服された民族の女性の運命は過酷であった。最も有名なのはモンゴル帝国の創始者チンギス・ハーンとその係累・後裔であろう。モンゴル帝国による降伏勧告を受け入れず抵抗の後征服された都市はことごとく破壊・略奪・殺戮され、女性も戦利品として王侯・軍隊などの権力者以下にあてがわれた。また、これに先立つ遊牧騎馬民族王朝のは、北宋を滅ぼした際、北宋の皇族女性全てと多くの貴族女性を捕え、これを金皇族・貴族のまたは彼らを客とする官設妓楼娼婦にした。世界各地の男性のY染色体を調べた結果、かつてのモンゴル帝国の版図に高率で共通の染色体が検出されたという話さえある。もっとも、歴史上このような事は金やモンゴル帝国に限った事ではない。

近代から現代も、戦時下において各国軍隊に属する複数の兵士による敵国女性へのレイプが少なからず発生した。第一次世界大戦以降では米軍ソ連軍ドイツ軍の男性兵士による女性民間人・一般市民への大規模な強姦事件が起こった。

南アフリカ共和国では「男性の27.6%が女性をレイプした経験がある」とする調査結果を、2009年に同国の医学研究評議会が明らかにしている[15][16]。調査は全国9州のうちクワズールー・ナタール、東ケープの2州で行われたものである[15]

20世紀以降は、アメリカ[17]や日本[18]、韓国[19]等において大学生による性的暴行事件、いわゆる「キャンパスレイプ」が多発し社会問題になっている。日本では2003年に発生した早稲田大学インカレサークルによる集団強姦事件「スーパーフリー事件」から集団強姦罪・集団強姦致死傷罪が創設されるなどしたが、2010年代後半に再び事件が多発し、その実態が明るみになっている[18]。アメリカでは、女子大学生のおよそ4人に1人が性的暴行を受けていることが2019年に行われたワシントンポストのアンケートによって判明しており、その大多数の被害にアルコールが絡んでいたという[20]


  1. ^ 小学館『デジタル大辞泉』、三省堂大辞林』第3版. “強姦”. コトバンク. 2019年10月23日閲覧。
  2. ^ 平凡社世界大百科事典』第2版、. “強姦”. コトバンク. 2019年10月23日閲覧。
  3. ^ 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “強姦”. コトバンク. 2019年10月23日閲覧。
  4. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』、平凡社『百科事典マイペディア』、ほか. “性暴力”. コトバンク. 2019年10月23日閲覧。
  5. ^ 小学館『デジタル大辞泉』. “性的暴力”. コトバンク. 2019年10月23日閲覧。
  6. ^ 今日のKEIBEN用語集一覧 ツッコミ”. 刑事弁護OASIS. 2021年5月10日閲覧。
  7. ^ 犯罪統計”. 警察庁. 2022年10月20日閲覧。
  8. ^ a b 平成30年1~12月犯罪統計【確定値】 訂正版”. e-Stat 統計で見る日本(公式ウェブサイト). e-Stat(cf. 政府統計共同利用システム) (2019年3月8日). 2019年10月23日閲覧。
  9. ^ 大塲 2006, pp. 28–34.
  10. ^ 安藤 2010.
  11. ^ 2 強制性交等・強制わいせつ - 平成30年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/2”. 犯罪白書(公式ウェブサイト). 法務省 (2018年). 2019年1月31日閲覧。
  12. ^ 総務省 統計局統計調査部 国勢統計課 (2019年3月20日). “人口推計 各月1日現在人口 「全国:年齢(5歳階級),男女別人口」及び「(参考表)全国人口の推移」平成30年10月確定値、平成31年3月概算値”. e-Stat 統計で見る日本(公式ウェブサイト). e-Stat. 2019年3月22日閲覧。
  13. ^ FBI. “Uniform Crime Reports>2018 Crime in The United States>Violent Crime>Table1”. 2019年10月3日閲覧。
  14. ^ 法務省:犯罪被害実態(暗数)調査
  15. ^ a b 南ア男性の4人に1人がレイプ経験者!? 研究機関調査」『産経新聞産業経済新聞社、2009年6月19日。2019年10月23日閲覧。[リンク切れ]
  16. ^ Zieminski, Anna「南ア男性の4人に1人がレイプ経験者!? 研究機関調査」『AFPBB News』フランス通信社 (AFP)、2009年6月19日。2019年10月23日閲覧。
  17. ^ 性犯罪が米大学内で横行「キャンパスレイプ」の実態」『』DIAMOND Online、2016年6月24日。2022年10月21日閲覧。
  18. ^ a b なぜ大学生は性犯罪に走るのか」『東スポweb』Tokyo Sports Press、2016年11月23日。2022年10月21日閲覧。
  19. ^ 韓国20代男性の53% 「キスは性関係に同意したこと」…大学の性暴力が危険レベル(1)」『中央日報』韓国経済新聞社、2022年7月23日。2022年10月21日閲覧。
  20. ^ アメリカの女子大生4人に1人が性的暴行被害に─調査結果により判明」『』COURRiER、2019年10月22日。2022年10月21日閲覧。
  21. ^ ダイヤグラムグループ 1992, p. 288 (M. Amir, "Patterns of Forcible Rape")
  22. ^ 「性的暴行、8割は知り合い・親族による犯行」『Record China』2008年9月9日付配信
  23. ^ [1]
  24. ^ 子どもへの性犯罪、死刑と「去勢刑」認める インドネシア”. CNN.co.jp. 2020年3月21日閲覧。
  25. ^ 小児性犯罪者を化学的に去勢 米アラバマで州法成立」『BBCニュース』、2019年6月12日。2020年3月21日閲覧。
  26. ^ 姜暻來「韓国における性犯罪者に対する化学的去勢 : 性暴力犯罪者の性衝動薬物治療に関する法律の概観」『比較法雑誌』第46巻第2号、日本比較法研究所、2012年、75-102頁、ISSN 0010-4116NAID 120006638529 
  27. ^ 性犯罪者への「化学的去勢」には賛成できません”. 香山リカ 公式ブログ. 2020年3月21日閲覧。
  28. ^ a b 関 2017, pp. 38–41.
  29. ^ 井田良『講義刑法学・各論』第2版、有斐閣、2020年、126頁
  30. ^ 松宮孝明『刑法各論講義』第5版、成文堂、2018年、121頁
  31. ^ About USA. “アメリカ合衆国におけるレイプ 婦女暴行”. 2012年12月16日閲覧。
  32. ^ アメリカ:FBI「レイプ」定義を拡大”. 公式ウェブサイト. アジア女性資料センター (2012年1月12日). 2019年10月23日閲覧。
  33. ^ “レイプ被害、アメリカ人女性の5人に1人(調査結果)”. The Huffington Post. (2014年9月14日). https://www.huffingtonpost.jp/2014/09/13/rape-in-america-study_n_5816762.html 
  34. ^ “「まともなレイプ」発言にパニクる共和党”. ニューズウィーク. (2012年8月22日). http://www.newsweekjapan.jp/stories/us/2012/08/post-2655.php 






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