アーケードゲーム 筐体

アーケードゲーム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 10:36 UTC 版)

筐体

筐体とはゲーム機の外殻のことや、ゲームの機械や付帯設備を収める箱をいう。

汎用筐体

単体で発売されるゲーム基板を入れ替えて、コントロールパネルやボタンを換装することにより、汎用的に様々なゲームに使用することができる。1990年代以降、汎用筐体といえば後述のミディタイプ筐体を指すことが普通である。ゲーム業界内部での流行に合わせ、年代毎に特徴的な付加機能(例として、ヘッドフォン端子、プリペイドカード用スロット、家庭用ゲーム機のメモリーカードやコントローラー用の端子、ICカードスロットなど)が装備されているので、それを元に世代を推測することもできる。

アップライト筐体

アップライト筐体の一例(ゲーム基板ドンキーコング』)

プレイヤーが立ってゲームを行う筐体で、モニター画面は床に対してほぼ垂直か、やや仰角をつけて取り付けられている場合が多い。多くは冷蔵庫やタンスの様な直方体に近い形をしているが、新しいタイプではAVラックのような洗練されたデザインのものもある。

ミニアップライト筐体

小型のアップライト筐体。使用するモニターが小さく、マーキー(看板)も簡素化するか、または完全に除去して、小型化が図られている。シングルロケやSCロケなど、小さな子供客が多いロケーションで多く用いられる。

日本では駄菓子屋の軒先など屋外に設置する筐体がオレンジ色だったことから『オレンジ筐体』や『駄菓子屋筐体』と俗称される。

米国においては、キャバレータイプあるいはキャバレー筐体(cabaret type/cabinet)と称する。

ミディタイプ筐体(汎用筐体)

ミディタイプ筐体の一例(セガ『アストロシティ』)

アップライトに似て、モニター画面は床に対してほぼ垂直か、やや仰角をつけて取り付けられているが、筐体全体の背が低く、プレイヤーは椅子に座ってゲームを行う点がアップライトとは異なる。そのため家庭用のモニターとアスペクト比が違う。解像度は当時のブラウン管のテレビより高い。テーブル筐体に代わるビデオゲーム用汎用筐体として、1985年頃より普及し始め、2007年現在では日本国内のメーカーが製造するビデオゲーム用汎用筐体の殆どがこのタイプになっている。筐体上部にゲームの目的や基本的な操作方法を説明するインストラクションカードを入れて掲示できる。

「ミディタイプ筐体」との呼称は、アミューズメント産業出版社が刊行する遊戯機械総合年鑑においては、1987年版のエイブルコーポレーション及びエス・エヌ・ケイ社製汎用筐体の説明文に初めて登場し、更に同年鑑の1990年版では、エイブルコーポレーション、カシオゲーム社、カプコン、ジャレコ、タイトー製汎用筐体の説明文に使用されるまでに至っている。しかし、この呼称はテーブル筐体の減少と並行して使用頻度が下がり、2007年現在では単に「汎用筐体」と呼ばれるか、または商品名で呼ばれるのが普通となっている。

カクテル筐体

モニター画面が床に対して水平に設置されており、ガラスの天板の上にはカクテルグラスを置くことが出来ることからその名が付いた。主に米国で使用される名称で、後述するテーブル筐体もこの一種とされる。

テーブル筐体(『スペースインベーダー』)

テーブル筐体

テーブル筐体は1976年にタイトーが「ブロックくずし」のゲームを製造した際、喫茶店に納入するために開発したものである。1978年に同社からリリースされた『スペースインベーダー』の大ヒットで爆発的に全国に普及した。1980年代前半までは業務用ビデオゲームと言えば、殆どがこれであった。1990年代中盤までは、ゲームセンターの総店舗数の中でもゲーム機を導入した喫茶店は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の認可店舗19406店舗のうち8768店で、それ以外の風適法適用が必要ない店舗にも置かれていた[14]。風適法の施行後は、喫茶店側もゲームが置ける面積(敷地面積の10%以下)や営業時間を抑えなければゲームセンターとしての申請を行わなければならず、1981年秋以降に摘発が多数発生したことなどが影響して、テーブル筐体などをサービスとする喫茶店は減少した[14]インストラクションカードは画面の両脇に天板の下に挟み込んで掲示する。

カウンタートップ筐体

飲食店のカウンター上に設置することを目的とした筐体。ソリティアに類するパズルゲームが入っていることが多いが、ビデオスロットやビデオポーカーなど、しばしばギャンブルをテーマとするゲームが入っている場合もある。

プロジェクタ筐体

ゲームセンター、屋内型大型施設等のゲームコーナー等に置かれる50インチ以上の後投影型プロジェクタを使用した汎用筐体。プロジェクタ部とプレイヤー部を分離し、ゲーム基板はプレイヤーコンパネ部下の一体化されたBOX内に内包される。

専用筐体

いわゆる大型筐体ゲーム

コクピット筐体

アウトラン』固定筐体

コクピット筐体は自動車や宇宙船のコクピットを模した筐体に座ってプレイするもので、例えばレースゲームならば、レースカーのコクピットを模した大型の筐体でプレイするようなゲームであり、よりリアルな臨場感を味わうことができる。

体感筐体

コクピット筐体の変形バリエーションで、プレイヤーが乗り物型の筐体に乗ったり、操作する事で筐体が動いたりするもの。『モナコGP』以降のセガが得意とする。近年はスケートボードや自転車から、犬の散歩にいたるまで、あらゆるジャンルが体感筐体として作られている。中にはプレイヤーが筐体に乗り込み、筐体そのものがゲーム内容に合わせて動くことで臨場感を出すもの(R-360など)も存在した。

カードゲーム筐体

専用筐体の一つであるが、ゲームの過程でカードを使用するもの。筐体の形状は様々ではあるが、特徴的なのはカードを読み取る機構(バーコードを読み取るだけの単純なものから、位置や上下方向を認識するものなどもある)と、新規カードを排出する機構を備えていること。カードの情報を読み取ることで画面内のキャラクタの属性を変化させたり、カードを筐体上で移動させることでキャラクタを移動できるなど、トレーディングカードとビデオゲームを組み合わせたゲーム性になっている。また、ゲームを行うごとに新規カードが払い出されるようになっている。一般に、トレーディングカードゲーム(TCG)ではプレイヤーがカードを多く所有するほど、使用できるキャラクタや技などが増え、ゲームを有利に進められることが多い。この筐体の場合、プレイ毎に新たなカードを入手できるため、プレイ回数を重ねれば重ねるほどゲームを有利に進めやすくなり、結果として繰り返しプレイされることが期待できる。

アーケードを家庭用に移植する場合、専用筐体で遊べない事は百歩譲ったとしても、カードの排出機能自体は家庭用で再現出来ない(もっとも、TCGとコンピュータゲームの融合はカードe任天堂)など家庭用ゲームの方が先である)。故に現在はアーケードでしか実現できない家庭用に対するアドバンテージとなっており、『オシャレ魔女♥ラブandベリー』の様な児童向けゲームまで多数登場している。

ジャンルの名称としては、「トレーディングカードアーケードゲーム」と呼ばれている。

なお、前述の通り法律上は自動販売機(ベンダー)という位置付けになる。


注釈

  1. ^ 1973年の映画『ソイレント・グリーン』には、未来的なガジェットとして『コンピュータースペース』をプレイしている場面がある[4][5]
  2. ^ バンダイロジパル、セガ・ロジスティクスサービス共運送業も兼業している。

出典

  1. ^ a b c d e “100年前の「アーケード」ってどんなところ? 「アーケードゲーム」の語源を調べていたら、見世物小屋みたいな妙な自動機械がたくさん出てきた”. 電ファミニコゲーマー (マレ): p. 1. (2021年8月26日). https://news.denfaminicogamer.jp/kikakuthetower/210826b 2021年10月7日閲覧。 
  2. ^ a b c d e f g “100年前の「アーケード」ってどんなところ? 「アーケードゲーム」の語源を調べていたら、見世物小屋みたいな妙な自動機械がたくさん出てきた”. 電ファミニコゲーマー (マレ): p. 2. (2021年8月26日). https://news.denfaminicogamer.jp/kikakuthetower/210826b/2 2021年10月7日閲覧。 
  3. ^ a b c d e 大越愛子、堀田美保『現代文化スタディーズ』晃洋書房、2001年、126頁。 
  4. ^ Computer Space and the Dawn of the Arcade Video Game”. Technologizer (2011年12月11日). 2021年11月17日閲覧。
  5. ^ Marty Goldberg; Curt Vendel (2012-11-25), Atari Inc.: Business is Fun, Syzygy Press, pp. pp=40-46, ISBN 978-0985597405 
  6. ^ ゲーセンの数は5分の1に減少、歴史に残る作品が続々誕生:数字で振返る「平成アーケードゲーム30年史」Yahoo!ニュース 2019年4月23日
  7. ^ “ゲーセン哀歌 時代の変化にコロナ、存続危機”. 毎日新聞 (株式会社毎日新聞社). (2021年2月27日). https://mainichi.jp/articles/20210227/ddf/001/040/001000c 2021年3月12日閲覧。 
  8. ^ “有名店も続々閉店、コロナだけじゃない「ゲーセン離れ」の本音”. マネーポストWEB (株式会社小学館). (2021年3月11日). https://www.moneypost.jp/765909 2021年3月12日閲覧。 
  9. ^ Kurosawa, Yuki (2021年8月31日). “スクウェア・エニックス『星と翼のパラドクス』、10月31日にネットワークサービスを終了へ。アーケードゲームに訪れる苦境”. AUTOMATON. 2021年9月4日閲覧。
  10. ^ カプコン業務用のメンテナンスは、セガロジが引き受ける。 ゲームマシン 2019年4月1日号
  11. ^ 業務用アミューズメント機器のサービス業務移管スケジュールに関するお知らせ カプコン 2019年3月4日
  12. ^ ご利用方法バナサポ - バンダイナムコテクニカ
  13. ^ よくある質問「個人でも登録できますか?」タイトーテック
  14. ^ a b 川﨑寧生「ビデオゲーム機が導入された喫茶店の役割の見直し : ゲーム機が作り出した都市型娯楽の新しい形」『デジタルゲーム学研究』第7巻第2号、日本デジタルゲーム学会、2015年、1-12頁、CRID 1390282752340981504doi:10.9762/digraj.7.2_1ISSN 18820913 
  15. ^ 「殺人ゲーム機」ついに断 電気用品取締法を適用 製造業者ら四人逮捕『朝日新聞』1978年6月21日朝刊、13版、23面
  16. ^ シューティングゲームサイドvol.10 収録インタビュー - マイクロマガジン社 2014年9月26日発行
  17. ^ 就活大百科 キーワード1000 > 業界研究 > その他メーカー・製造関連 - 就職活動(就活)準備 - マイナビ2016
  18. ^ “基本プレイ無料”のアーケードゲーム「ぷよぷよ!!クエスト アーケード」。ロケテスト会場で,プロデューサー渡邉氏にその狙いを聞いてみた”. www.4gamer.net. Aetas (2013年4月5日). 2021年9月4日閲覧。
  19. ^ 【重要】業務用アミューズメント機器のサービス業務移管に関するお知らせ』(プレスリリース)カプコン、2020年4月1日https://www.capcom.co.jp/arcade/news/operator/20200401.html2021年9月4日閲覧 
  20. ^ 横山達也; HARDCORE TANO*C『新作リズムゲーム「WACCA」ロケテスト初日の模様とインタビューをお届け。マーベラスとHARDCORE TANO*Cの新たな挑戦について話を聞いた』(インタビュアー:丸谷健太)、Aetas、2018年10月19日https://www.4gamer.net/games/436/G043627/20181022022/2020年5月8日閲覧 
  21. ^ 佐藤和也 (2019年7月13日). “360度タッチパネルが生むアケゲーならでは体験--マーベラスのリズムゲーム「WACCA」”. CNET Japan. 2021年9月4日閲覧。
  22. ^ アーケード向け新作STG「アカとブルー Type-R」の稼働開始日が11月27日に決定&告知プロモーションムービーが公開”. www.4gamer.net. Aetas (2019年10月9日). 2021年9月4日閲覧。
  23. ^ a b セガ・インタラクティブとタイトーがネットワーク回線の共同利用を合意”. 電撃オンライン (2020年2月7日). 2021年9月4日閲覧。
  24. ^ 古屋陽一 (2020年12月2日). ““デジちゃいむ”の狙いをキーパーソンに聞く。ゲームセンターをサポートするために企画した、新時代に向けての新たな接客サービス”. ファミ通.com. KADOKAWA Game Linkage. 2023年9月12日閲覧。
  25. ^ ワスド(株)/破産手続き開始決定 <東京>”. JCNET (2023年4月7日). 2023年9月12日閲覧。
  26. ^ GENDAグループの店舗DXが更に加速 ~「デジちゃいむ」取得によりオペレーションの効率化と顧客満足度の向上を図る ~”. GENDA (2023年9月1日). 2023年9月12日閲覧。






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