駒城家
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新城直衛(しんじょう なおえ) 本作の主人公。〈帝国〉来寇時点で陸軍中尉。第一一大隊第二中隊所属、兵站幕僚。 〈帝国〉来寇以前の来歴は、生まれを東洲としているが、東洲の乱で戦災孤児となり物心つく頃には浮浪児となっていた。そのため両親の記憶がなく、出自もわずかに自らの名前を「なおえ」と覚えているのみで定かではなく、同じ戦災孤児の蓮乃と剣牙虎の二人と一頭で東洲を彷徨っていた。その後、行軍中であった駒城親子に拾われて駒城家の育預(はぐくみ。相続権を持たない養子のようなもの)として育てられる。15歳で新しく一家を立て新城の姓を与えられると同時に、特志幼年学校へ入学した。卒業後は銃兵に野戦将校として配属され、国内で反乱や匪賊の討伐で軍歴を重ねる。しかし性格が災いして隊から浮き、義兄の計らいにより新設の剣虎兵学校へ愛猫を伴い教官として赴任する。剣虎兵学校からの転任後、〈陸軍独立捜索剣虎兵第一一大隊〉第二中隊に中隊本部付幕僚の中隊兵站将校として配属される。 〈帝国〉来寇後、北領を転戦したのち中隊長の戦死により中隊を預かり、また大隊長の戦死により生き残った最先任将校として11大隊を掌握した。のちに野戦昇進で大尉に昇進し正式に大隊長に就任する。北領鎮台主力の脱出まで後衛戦闘に勤め最後は捕虜となる。内地帰還後、北領での戦功により少佐まで昇進し、同時に水軍名誉少佐も任官する。その後、陸軍から近衛総軍に転属、新編の〈近衛衆兵独立鉄虎第五〇一大隊〉を任され大隊の編成と錬成をする。龍口湾戦が勃発すると命を受け錬成途上ながら部隊を率い参戦する。龍洲戦では、近衛第五旅団の美倉准将を説得して夜間浸透奇襲を敢行するも敵本営を目の前にして敗退する。龍州戦線崩壊後、各地の落伍兵や遺棄兵器を収容しながら遅滞戦闘を行い、〈帝国〉の追撃部隊を撃退しながら後退する。後退中に六芒郭での遅滞命令を受け、「六芒郭臨時防備部隊司令」を拝命する。指揮下の部隊を〈新城支隊〉とする。六芒郭戦では帝国軍の行動を2か月以上遅滞させ、これにより龍口湾戦で敗走した皇国軍は追撃を躱し防衛線の引き直しに成功した。さらに六芒郭から脱出した際には帝国軍本営を強襲して敵総司令官・東方辺境領姫ユーリアを拉致する。虎城防衛戦では病に倒れた保胤に代わって駒洲軍の司令官代理となり、統制の混乱から危機に陥りかけた戦線を立て直した。保胤が軍務に復帰してからは指揮権を返上する。保胤から駒洲軍の予備隊を集成した臨時部隊〈別動新城戦隊〉を預かり、最終的に虎城防衛戦を勝利に導く。本来、直衛は虎城を公用で訪れただけであり、虎城防衛戦での活躍が政治問題へ発展することを憂慮した結果、公式には"なにもしていない"とされた。皇都帰還後、中佐へ昇進する。新編された〈近衛嚮導聯隊〉を任される。 背丈はさほど高くもなく、正直なところ凶相に近い容貌の持ち主である。〈帝国〉軍からは「猛獣使い」と恐れられ、〈皇国〉衆民からは英雄視され、一部将家からは既得権益を脅かす存在として警戒される。性格はかなりの難物で、鷹揚にして小人物、偽善者であり同時に偽悪者、傲慢でありながら小心で卑屈…等と、非常に屈折した面を持つ。また、性行為の際に相手の首を絞めたがるという極端な性癖あり、その複雑怪奇極まりない人間性ゆえに身近な人間や部下上官でも好悪が別れ、他人、特に女性から嫌われる事も多い。また、独特の理念により、上官に嫌われやすいが、部下となる下士官兵からは慕われやすい。 「猛獣使い」と恐れられるとおり剣牙虎の扱いに長けていて、剣虎兵学校の教官を務めていた経験もある。東洲を彷徨っていた頃、彼の前に現れた野良剣牙虎を一瞬のうちに手懐けているなど、生来の猛獣使いである。特に愛猫の千早には自身も全幅の信頼をよせている。幼い頃から乱読家で、年相応の子が読む絵本から篤胤の書斎の古い治水の教書、卑猥小説まで読む(これは保胤が貸したもの)。女遊び以外の遊びは全て篤胤に仕込まれる。その女遊びも保胤があてがった女によって覚える。馬術は苦手で、騎兵の名門の駒城家の育ちながら最後まで不格好なままだった。野戦指揮官としてはもちろんのこと、保胤に代わって司令官代理を勤めた際は指揮官として崩れかけた戦略を正し、駒洲軍を勝利に導くなどと戦術・作戦・戦略のすべての面で確かな能力を持つ。戦闘指揮のみならず、個人としての戦闘能力も高く、乱戦の中で、射撃、銃剣術(銃床での打突も多用)、さらに鋭剣での剣術を振るい、自ら多数の敵を倒している。また、自身を狙った複数の暗殺者を鋭剣と拳銃を使用して返り討ちにもしている。 凶相と言われる事が多いが、立ち居振る舞いは駒城家に育てられただけあって作法に適うものであり、〈帝国〉軍の給仕役に「帝国の貴族どもより偉そう」だと感じさせた程。また、経済観念が発達している面がある一方で吝嗇に通じる態度をひどく嫌い、誰かに何かを買い与える必要がある時には一般的な限度を超える態度を示し、使える限りの金子を投じても平然としている。実際六芒郭で大隊に何千着もの夏服を調達したり、冴香が新城の下にやってきた際には嫁入り道具を3組買い揃えられるだけの支度金を与えており、これは個人副官に対して異例或いは異常とも言える額であった。 千早(ちはや) 直衛の愛猫たる雌の剣牙虎。千早の母猫は東洲で孤児となった幼い直衛が手懐けたもので、直衛と共に駒城親子に拾われたもので、千早は直衛の特志幼年学校入学の少し前に生まれた様子である。剣牙虎としてはかなりの美形(美声?)らしいが、気難しく獰猛な一面もあり、つがいとして宛てがわれた雄の剣牙虎と血みどろの喧嘩をしたことがある。戦場では直衛に同行し、特に白兵戦では猛獣として本領発揮の戦いをしながらも彼の背中を守るように戦う。かつては直衛と寝起きを共にしていたが、冴香が個人副官としてやって来た際、「たとえ猫でも自分の情事を見られたくない」ということで直衛の隣の部屋を与えられたが、夜な夜な施錠された部屋の扉を破壊して直衛の部屋の扉を引っ掻き怒られる。その後、部屋の扉を毎夜毎夜破壊されては外聞が悪いからと、特大の猫扉を設置される。直衛と廊下で対峙していた定康の刺客をその扉から出て奇襲、瞬殺している。血に飢えた野獣な一面があり、皇都内乱の皇宮突入の際、血に酔い過ぎ直衛を見失う。母猫と同じで息が臭い。 千早の母猫(ちはやのははねこ) 東洲内乱で東洲を彷徨っていた直衛と蓮乃の前に現れた剣牙虎。鼻梁に一文字の傷がある。首輪をつけていたことや躾けられた様子から、野生ではなくどこかの屋敷から逃げ出したものと考えられる。千早出産後の登場が一切ないことから、その際に死亡したと思われる。 蓮乃(はすの) 直衛の義姉であり幼馴染。直衛にとって、生涯唯一の崇拝・畏敬・愛情の対象。東洲内乱で孤児となり、その際同じく孤児となった直衛と出会う。直衛よりも年嵩であり、彼と違ってある程度は両親の記憶がある。幼い直衛と共に生活していたところを駒城親子に拾われ駒城家の育預として育てられる。駒城家での生活の中で直衛の異常性に気が付き、一時期距離を取るようになり彼のことで保胤と相談していくうちに仲を深め、のちに保胤の愛妾(事実上の正妻)となる。一方で直衛から離れ、目を放したことに後悔もしている。ある時、保胤が数日間にわたって家を空けていた際に直衛の部屋へ忍び込み驚かせようという悪戯をしたが、結果として、軍役明けで禁欲状態だった直衛にレイプされる。直衛を弟としてではなく女として愛してしまう自分を嫌悪し、特に戦乱が始まってからは直衛に辛く当たり後悔することも多い。皇都内乱終結の直前、俊兼に、駒城屋敷の人間共々殺害されてしまう。プロローグの麗子の手紙によれば、「歴史上の人物になった」とのこと。 駒城麗子(くしろれいこ) 保胤と蓮乃の娘。敬称は“初姫”。なぜか直衛や千早に非常に懐き、生来剣牙虎の扱いに長ける面を見せる。ただし彼女の乳母はそれに反比例して大の剣牙虎嫌いである。「皇都政戦」の折に羽鳥守人と駒城篤胤の発案によって直衛の許婚となる(これを聞いた蓮乃は激しく怒り、実仁の従兵は「幼女まで手を出すのか」と嘲りその場で厳罰される)。本人はしっかりこれを理解して受け止めている。プロローグ(第1巻)は本編の60年後、新城の未亡人となった彼女が娘婿・牧嶋光信に宛てた書状の形を取っている。 駒城保胤(くしろ やすたね) 直衛の義兄にして蓮乃の主人。駒城家次期当主にして陸軍中将。東洲内乱当時は少尉候補生だったが、行軍時に蓮乃と直衛を見つけて連れ帰ることとなる。義に厚く仁に深い性格をしており、蓮乃を直衛から結果的に奪ってしまった事を気に病みながらも、直衛を厚く信頼し、また政争に利用している。数少ない直衛の理解者の一人であり彼の人事ではたびたび介入している。 実仁親王とは兵学校時代からの友人である。 駒城篤胤(くしろ あつたね) 直衛と蓮乃の義父にして保胤の実父であり、駒城家現当主。表に出ることは少なく半隠居状態。東洲内乱当時は陸軍大将。老齢ながら政治に強く、直衛を政変から守ろうと画策する。直衛が軍に嫌われながらも軍から放逐されなかったのはこの老人のお陰であると言っても過言ではないが、直衛が駒城の者でなかったら真っ先に排除していたらしい。直衛が篤胤の政敵を排除するため自らを犠牲にした案を相談された際は一考もせずに却下している。 彼に楽しんで読む本の読み方を伝授(?)したのは直衛である。 天霧冴香(あまぎり さえか) 直衛の個人副官。直衛が近衛少佐になった時に、実仁親王の配慮により配属された。ちなみに実仁親王の副官・清香の弟(いもうと)に当たる。男性の凛々しさと女性の美しさを完璧に兼ね備えた両性具有者、彼女(彼)は、その中でも格別美しい。鋭剣(おそらくは眞柴流剣芸)の達人で、撃剣の達人である後述のユーリアと対等に渡り合う。直衛を心より愛する者の一人だが、愛情の深さに比例した嫉妬深い一面も見せる。着任時は中尉相当官であったが、直衛の中佐昇進に合わせて大尉相当官へ昇進している。プロローグの麗子の手紙によれば、「歴史上の人物になった」とのこと。 人物評価にかなりの才能があり、直衛に「君には軍を任せたいくらいだ」と言われる。女性にかなり人気がある。 瀬川権之助(せがわけんのすけ) 新城家家令。駒城篤胤の元従兵で直衛とは元服以来の付き合い。直衛が駒城家から渡される賄金全てを預かりその運用を任されており、運用して設けた金の3割を好きに使って良いとされている。直衛とは主従関係でしかないが、その実際面にはどこか親子のようなところがあった。 皇都内乱時に駒城家下屋敷になだれ込んだ背洲兵に対して、毅然と立ち向かった。その後現われた佐脇俊兼から蓮乃と麗子を守るため、真正面から向かい合い、全身に無数の深手を負い亡くなった。 牧嶋光信(まきしまみつのぶ) 真美子の婿。麗子と初めて会った時は、千早にすり寄られて冷や汗を流す少尉候補生だった。直衛の戦いに貢献し、後に皇国龍軍龍兵中将に昇進する。 牧嶋真美子(まきしままみこ) 直衛と駒城麗子の娘。 牧嶋保和(まきしまやすかず) 真美子と牧嶋光信の子。直衛の孫に当たる。
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