追撃
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/07 15:37 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動追撃(ついげき、英: pursuit)は、戦場から離脱する敵部隊に対して行う攻撃の一段階である。
概要
敵部隊が離脱する場合、敵の戦闘力は一般的に低下している。特に戦闘で敗北した後の後退行動は士気・体力・火力に大きな減衰を引き起こす。追撃の意義はこの弱体化した敵戦力に対して速やかに捕捉して攻撃を行うことにより、敵の組織的な反撃を封じ、完全に撃滅することで、戦況をより有利にすることである。しばしば戦果拡張に引き続き行われる。しかし後退行動は基本的に迅速に行われるものであるため、追撃を行う側もそれを超える迅速さで行う必要がある。
なお、追撃には「追」の文字が使われているため、特にスポーツの報道などでは「追い上げ」つまり劣勢なものが優勢なものに追い付こうとする状態を表わす言葉として使われることもあるが、軍事的な意味では誤用である。
要領
敵の後退行動の兆候を察知した場合、速やかに追撃を準備し、敵部隊を戦場に捕捉することが求められる。敵の後退行動を許さないように包囲の態勢を整え、それと同時に追撃部隊を編成して準備しておく。さらに予想されうる敵の退却路を遮断するように部隊を派遣する。さらに追撃を組織的に行うために必要な武器弾薬食料などの物資を後方に整えておく。敵の行動についての情報を捕虜・スパイ・偵察員などから収集し、敵の後退行動が開始された機において実行に移す。
分類
追尾追撃
追尾追撃とは敵の後方に追尾して行う追撃である。敵の後退行動が突発的である場合、また退却路についての情報がなく、追跡を行いながらの追撃である場合に行われる。
並行追撃
並行追撃とは敵の退却路と並行した別路を利用して行う追撃である。追尾追撃よりも敵の側面を狙うことができる効果的な追撃方式であるが、その実施に当たっては、敵の退却路についての正確な情報、速やかな部隊展開、別路の存在などの条件が満たされなければならず、困難性を伴う。
関連項目
追撃
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 08:23 UTC 版)
「ツァボの人食いライオン」の記事における「追撃」の解説
1頭が死んでも、人食いライオンはもう1頭残っていた。1頭目が死んでほんの2、3日後に、ライオンは鉄道監督官を狙った。ライオンは監督官のいるバンガローの階段を上り、ベランダを徘徊していたが監督官はその物音を酔っぱらった労働者の立てるものと思い込んで、「あっちへ行け!」と怒鳴りつけた。監督官を襲うのに失敗したライオンは、その代わりにヤギ2頭を襲ってその場で空腹を満たした。 この話を聞いたパターソンは、次の日の夜に監督官の住まいのそばで見張りをすることに決めた。近くには無人の鉄製の小屋があり、銃を発砲するのに適したのぞき穴も備わっていた。小屋の外には3頭のヤギをおとりとしておき、重量が110キログラムほどもある鉄製のレールにつないだ。夜明けの直前までは、平穏に過ぎていった。ライオンはそのときに現れて、ヤギのうち1頭にとびかかり、他の2頭もろともレールごと引きずっていった。パターソンはライオンのいる方向に向けて数回発砲したが、真っ暗だったためライオンではなくヤギのうち1頭に当たったのみであった。 朝になって、パターソンはキャンプから来た数名の者とともにライオンの追跡を敢行した。ヤギとレールが残した跡はすぐにわかり、400メートルほど先でライオンがヤギをむさぼっている場面に遭遇した。パターソンたちが近づく音に気づいたライオンは茂みに身を隠し、腹立たしげな唸り声を上げた。さらに近づいたところ、ライオンは茂みを突き抜けて攻勢に転じたため、ほとんどの者が手近な木に急いで登り難を逃れた。パターソンと助手のウインクラーのみがその場に残った。ライオンは結局襲ってこず、ひそかにその場を逃れていた。茂みの中には、ほとんど手をつけられていないヤギの死骸のみが残されていた。 パターソンはライオンがいつもどおり、もう1度獲物を食べに来ることは間違いないと踏んで近くに頑丈な足場を組み立てて、日暮れ前にその上に登った。パターソンは連日の追跡や夜の不寝番などで疲労が蓄積していたため、鉄砲持ちのマヒナを交代要員として伴っていた。パターソンが寝入っているときに突然マヒナが腕をつかんで、「シャー(ヒンズー語でライオンを意味する)」とただ一言伝えてきた。早速パターソンは自分の2連銃を装備し、ライオンの出現を待ち受けた。 ライオンはやがて姿を現し、忍び足でパターソンたちがいる地点のすぐ下を通った。パターソンはすかさず、両方の銃身からライオンの両肩を狙って発砲した。ライオンはこの攻撃を受けてよろめいたため、パターソンは別の連発銃を装備した。しかし発砲の前にライオンはやぶの中に逃れ、その方向をめがけて撃ちまくるしかなかった。 夜が明けると、パターソンはライオンの後を追った。2キロメートルくらいの距離は、ライオンの血痕をたどるのは容易だった上に何回も休んだ痕跡が見受けられたので、相当な負傷をしていることは明らかだった。結局ライオンは見つからず、岩だらけの場所で後を追うのが難しくなったためパターソンはそれ以上の追跡を断念した。 この時期に、元国営鉄道でインド政府付き顧問技師を務めていたリチャード・モールワースが、視察旅行の途上でツァボを訪問した。モールワースは鉄橋などの工事を調査してその成果に満足したことを伝え、写真をたくさん撮影した。モールワースは、ライオンの襲撃などの試練についてパターソンに大いに同情した。2頭目のライオンをそのうちやっつけるつもりかと質問を受けたパターソンは「近日中にやっつけます」と自信をもって答えたが、モールワースは半信半疑の様子であったという。 ライオンはその後10日ほど姿を見せなかったので、パターソンたちはあのときの傷がもとになって死んだものと思い始めた。ただし、夜の警戒は怠らずに続けたため、結果的にそれ以上の犠牲者を増やさずに済んだ。12月27日の夜、パターソンはトロッコ係の作業員たちの怯えた叫び声で目を覚ました。作業員たちはボマのすぐ外側にある木の上で睡眠をとっていたが、ライオンがそこを狙っていた。雲に隠されて月の見えない暗夜だったため外へ出ることはできず、パターソンは2、3発発砲してライオンを追い払った。翌朝、ライオンがそれぞれのテントまで入り込んだり、木の周りを輪になって巡ったりした痕跡が発見された。 翌日パターソンは、作業員たちがいた木の上に陣取ってライオンを待つことにした。幸先の悪いことに、パターソンが木に登るときに手をかけようとした枝には毒蛇が巻き付いていた。パターソンが慌てて木から降りると、その事態に気づいた部下の1人が長い棒を使って毒蛇を木から引きはがすことに成功した。 その晩は明るい月夜で、見通しもよかった。パターソンはマヒナと一緒に待機し、午前2時まで見張りをした後でマヒナと交代した。1時間ほど睡眠をとった後、パターソンは異様なものを感じて突然目を覚ました。見張りを続けていたマヒナの方では特段気がついたことはなく、パターソンも周囲を見回したものの異変は発見できなかった。パターソンが再び休息をとろうとしたとき、少し離れたところで何かが動く気配がした。その場所に注意を払ってよく見ると、まぎれもなくあのライオンがいた。 木の周囲には、ところどころに小さな草むらがあるのみで見通しはかなり良かったが、ライオンはその草むらを巧妙に利用しながらじわじわと距離を詰めてきていた。パターソンは逃げられることを防ぐために、ライオンがさらに近づくのを待ち受けた。ライオンが20メートル以内に距離を縮めたのを見計らって、パターソンはその胸部を狙い撃ちした。弾はライオンに命中したものの、撃ち倒すまでには至らなかった。ライオンは唸り声を上げて方向転換し、大きく跳び上がって逃れようとしたが、パターソンはすかさず連発銃で3発撃ちこんだ。ライオンがまた唸り声を上げたため、この射撃も命中したことがわかった。 夜が明け始めてから間もなく、パターソンとマヒナは現地人の追跡者を伴ってライオン追跡に出発した。ライオンは多量に出血したまま逃げていたため、追跡は容易なことであった。一行が林の中を400メートル足らず進んだところで、突然ライオンの唸り声がすぐ前方で聞こえた。やぶの向こうに、ライオンが牙をむいて一行をにらみつけ、唸りながら威嚇しているのが見えた。パターソンが狙いを定めて発砲したところ、ライオンは跳び上がって逆襲を仕掛けてきた。パターソンはもう1発発砲して1度ライオンは倒れたが、すぐさま立ち上がって片足をひきずりながらも再度立ち向かおうとした。 パターソンは3発目を発砲したが、目覚ましい効果はなかった。今度こそとどめをさそうとして、パターソンはマヒナが持っているはずの銃を手渡してもらうべく手を出したが、そこにマヒナはいなかった。マヒナは突然のライオン襲撃に恐れおののいて、銃を持ったままで木に登っている最中であった。パターソンもやむなく、木に登ってライオンの攻撃を逃れることにした。ライオンが足に負傷していたため、パターソンはやっとのことで攻撃されないところの枝にぶら下がることができた。 一行を取り逃がしたことを悟ったライオンは、やぶへ引き返してその場を立ち去ろうとした。パターソンはマヒナの手から銃を奪い、すかさず撃った。1発目が命中し、ライオンは前のめりに倒れて動こうとしなかった。パターソンがすぐさま木から降りてライオンに近寄ると、ライオンの体がいきなり跳び上がって彼を驚かせた。だが、ライオンの抵抗もそこまでで、胸と頭に受けた銃弾のダメージで絶命することになった。ライオンはパターソンから5メートルも離れていない場所にくずおれ、その口に折れ枝をしっかりとくわえた状態で死を遂げた。
※この「追撃」の解説は、「ツァボの人食いライオン」の解説の一部です。
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