せん‐れい【先例】
先例
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先例(せんれい)とは過去に存在した同様の事例。また、その中で特に規範としての重みを持ち、諸々の判断基準として位置づけられるもの。前例。また、特に繰り返し行われてきたものについては「慣例」「通例」などともいわれる。
概要
先例は特に公務の執行や公的行事などにおいて、明文化されていない事柄についての重要な判断基準となってきた。日本の国会では議院規則に次いで国会組織運営の法源とされており、衆議院では「先例集」参議院では「先例録」が各議院事務局によって編まれており、議事関係法規に規定のない事柄について有力な法的根拠となっている。
先例が法源となりうる意義は、先人の事例に倣うことで不測の事態を防止しようという考えに基づくと考えられる。その歴史は古く普遍的であり、ローマ法にはすでに「先例拘束の原則」 (stare decisis) が現れ後世の法制度にも影響を残している。先例の拘束力は政務や相続などの分野に強い影響を持ち、特に役所では先例のない仕事を忌み嫌い、新しいことをやりたがらないという風潮があるため、たびたび「前例主義」として批判されることがある。先例を重んじる理由として他に、連綿と続いている作法はそれ自体尊重するべきものであるという思想があり、日本では公家、武家などの支配階級はあらゆる行事において有職故実を重宝してきた。故実とは過去の実例のことであり、有職とはそういった知識が豊富な人を意味する。平安時代以後、公家社会では儀式と呼ばれる儀式書が編纂され、先人が残した日記も資料として尊重された。中世以前の共同体によっては、特に神事などの公的行事で先例を破ること(「違例」という)は、公的な制裁、懲罰を受ける正当な理由になるとも考えられ、累積して行われてきた行為がそれ自体、神聖性を帯びることがあった。
先例は蓄積されると慣習法を形成することがある。先人によって繰り返されてきた行動類型は社会構成員に当然守るべき規範としての意識付けがなされ、成文法としての明文化如何にかかわらず法的拘束力を持つものとされる。英米法におけるコモン・ローはそうした慣習法の蓄積であり、また日本の公家法は律令法を母体としつつもその多くが国例・庁例などの先例や明法勘文などの法解釈などを取り込んであり、武家法は公家法を一部取り入れつつも基本的には武家社会の慣例、特に「右大将家(源頼朝)の先例」を機軸として発展してきたのである。ただし、その先例を採用するか否かは後世の為政者による権威付けに依拠するところが大きく、しかもそれが実際に存在した先例であるかは別問題である。
先例は今日でも国際法や商法の分野で重要視されることが多く、成文法の補助的効力を有するとされる。日本では法の適用に関する通則法第3条において「公の秩序又は善良の風俗に反しない慣習は、法令の規定により認められたもの又は法令に規定されていない事項に関するものに限り、法律と同一の効力を有する」とされている。
先例は裁判所の判断にも一定の拘束力を持つ。判例は過去の裁判における判決例であるが、法の公平性維持の観点から上級裁判所における判決、繰り返し出された同類同種の判決はそれ自体先例として未来の判決にも影響を及ぼす。
関連項目
先例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/20 16:47 UTC 版)
日本国憲法の下、参議院が発足して以降に問責決議が可決された例は、現在のところ11例あり、うち4例は首相に対する問責である。いずれにおいても参議院では野党が過半数を占めていた。 1998年10月16日、額賀福志郎防衛庁長官に対するもの。防衛庁調達実施本部背任事件に関連し、自身が大臣を務める省庁での汚職発覚を理由に、額賀の責任を問う決議であった。額賀は35日後の11月20日に引責辞任した。 2008年6月11日、福田康夫首相に対するもの。野党の求める後期高齢者医療制度廃止に福田政権が応じないこと、参議院が否決した法案を与党が衆議院で再可決したことが理由に挙げられた。これを受け、与党は翌日に衆議院で内閣信任決議を行い対抗した。問責を直接の理由とするものではないが、結果的に問責決議から105日後の9月24日に内閣総辞職。 2009年7月14日、麻生太郎首相に対するもの。野党が再三衆議院の解散を求めたにもかかわらず引き延ばし続けてきたことや、「発言のぶれ」が理由に挙げられた。このときは同日に衆議院で内閣不信任決議案が否決されている。7日後の7月21日に衆議院解散。衆議院議員の任期満了が迫る中で行われた解散総選挙での与党敗退により、麻生内閣は2ヶ月後に退陣(問責決議から64日後の9月16日に内閣総辞職)し、民主党に第一党を奪われ、政権交代。自由民主党は野党へと陥落した。 2010年11月26日から27日にかけて、仙谷由人内閣官房長官、馬淵澄夫国土交通大臣に対するもの。尖閣諸島中国漁船衝突事件への対応の批判などが決議理由となっている。休憩を挟んではいるが、2件連続して可決された例としては初。翌年1月14日に内閣改造で退任(それぞれ問責決議から49日後・48日後)。 2011年12月9日、一川保夫防衛大臣、山岡賢次国家公安委員長兼消費者担当大臣に対するもの。一川は就任以来の数次にわたる防衛閣僚としての不適切な言行(詳細は当該記事を参照)、山岡はマルチ商法業者からの政治献金受けに対するもの。自民、公明ほか野党7党の賛成多数で可決された。当初野田佳彦内閣総理大臣は更迭しない方針を明言し、問責決議が可決された閣僚自身も辞任はしなかったが、35日後の2012年1月13日の内閣改造(野田改造内閣発足)に伴い、両閣僚ともに退任した。 2012年4月20日、田中直紀防衛大臣(防衛閣僚としての資質)、前田武志国土交通大臣(公職選挙法違反容疑)に対するもの。自民、みんなの党、新党改革など野党の賛成多数で可決。問責決議可決後、両者ともに辞任はしなかったが44日後の6月4日、野田第2次改造内閣の発足に伴い退任。 2012年8月29日、野田佳彦内閣総理大臣に対してのもの。野党の賛成多数により可決(公明党は棄権)。参議院では野党が野田首相の所信表明演説を拒否するも、緊急質問を議決するなど異例状態となった。問責決議可決前における野田首相の「近いうちの衆議院解散」に関する言質を追及され、11月16日に衆議院解散となった(問責決議から79日後)。解散総選挙での与党敗退により、野田内閣は12月26日に内閣総辞職(問責決議から119日後)。 2013年6月26日、安倍晋三内閣総理大臣に対してのもの。野党の賛成多数により可決。本事案は、憲法第63条に違反して、内閣総理大臣その他の国務大臣が、前日25日に開催された参議院予算委集中審議を欠席したことに起因した。この可決の影響により、4つの重要法案の採決が阻止され、廃案となった。翌7月に行われた参院選の結果、与党議員数が総議員数の過半数に達し比較第一党も与党の自民党となり議事運営権が与党側に移行したため、野党が審議を止めるための手続き上の権限が失われた。10月から本格的に開かれた国会では野党が審議に出席し、倒閣は頓挫した。 参議院本会議での国務大臣等への問責決議等議決例本会議採決日問責対象者役職採決可否票差備考 1956年(昭和31年)3月5日 はとやま いちろう/鳩山一郎 内閣総理大臣 否決 041 100 59 戒告決議案。 1956年(昭和31年)5月30日 こうの いちろう/河野一郎 農林大臣 否決 067 123 56 戒告決議案。 1964年(昭和39年)6月20日 かや おきのり/賀屋興宣 法務大臣 否決 048 122 74 参議院初の問責決議案採決例。 1965年(昭和40年)10月28日 ふくた たけお/福田赳夫 外務大臣 否決 106 132 26 1971年(昭和46年)11月9日 たなか かくえい/田中角榮 通商産業大臣 否決 110 133 23 1972年(昭和47年)6月16日 さとう えいさく/佐藤栄作 内閣総理大臣 否決 108 131 23 参議院初の首相問責決議案採決例。 1973年(昭和48年)9月22日 やまなか さたのり/山中貞則 防衛庁長官 否決 083 129 46 1973年(昭和48年)9月24日 おくの せいすけ/奥野誠亮 文部大臣 否決 085 127 42 1974年(昭和49年)5月27日 おくの せいすけ/奥野誠亮 文部大臣 否決 062 095 33 1974年(昭和49年)7月31日 たなか かくえい/田中角榮 内閣総理大臣 否決 121 128 07 否決例における最小の票差。 1975年(昭和50年)12月12日 おおひら まさよし/大平正芳 大蔵大臣 否決 114 125 11 1975年(昭和50年)12月24日 みき たけお/三木武夫 内閣総理大臣 否決 117 127 10 1983年(昭和58年)5月25日 なかそね やすひろ/中曽根康弘 内閣総理大臣 否決 063 109 46 1988年(昭和63年)12月24日 たけした のほる/竹下登 内閣総理大臣兼大蔵大臣 否決 098 136 38 1988年(昭和63年)12月24日 かしやま せいろく/梶山静六 自治大臣・国家公安委員長 否決 083 136 53 1988年(昭和63年)12月24日 はやした ゆきお/林田悠紀夫 法務大臣 否決 077 134 57 1992年(平成4年)6月7日 みやさわ きいち/宮澤喜一 内閣総理大臣 否決 100 135 35 1994年(平成6年)1月26日 はた えいしろう/畑英次郎 農林水産大臣 否決 106 130 24 1995年(平成7年)6月14日 むらやま とみいち/村山富市 内閣総理大臣 否決 062 158 96 1998年(平成10年)06月17日 はしもと りゆうたろう/橋本龍太郎 内閣総理大臣 否決 097 128 31 1998年(平成10年)10月16日 ぬかか ふくしろう/額賀福志郎 防衛庁長官 可決 140 103 -37 初の問責決議可決例。 1999年(平成11年)8月12日 おふち けいそう/小渕恵三 内閣総理大臣 否決 077 140 63 1999年(平成11年)8月12日 しんのうち たかお/陣内孝雄 法務大臣 否決 091 137 46 2000年(平成12年)5月31日 もり よしろう/森喜朗 内閣総理大臣 否決 108 134 26 2001年(平成13年)3月14日 もり よしろう/森喜朗 内閣総理大臣 否決 105 138 33 2001年(平成13年)4月5日 たけへ つとむ/武部勤 農林水産大臣 否決 102 114 12 2001年(平成13年)7月31日 こいすみ しゆんいちろう/小泉純一郎 内閣総理大臣 否決 097 135 38 2002年(平成14年)7月16日 たけなか へいそう/竹中平蔵 経済財政政策担当大臣 否決 100 137 37 2003年(平成15年)7月24日 かわくち よりこ/川口順子 外務大臣 否決 103 136 33 2003年(平成15年)7月24日 いしは しける/石破茂 防衛庁長官 否決 104 135 31 2003年(平成15年)7月25日 ふくた やすお/福田康夫 内閣官房長官 否決 103 138 35 内閣府特命担当大臣(男女共同参画担当)兼務。 2004年(平成16年)6月5日 さかくち つとむ/坂口力 厚生労働大臣 否決 000少数 999多数 999不明 閣僚問責決議では唯一の起立採決。 2006年(平成18年)12月15日 いふき ふんめい/伊吹文明 文部科学大臣 否決 098 132 34 2007年(平成19年)6月29日 やなきさわ はくお/柳澤伯夫 厚生労働大臣 否決 097 115 18 2007年(平成19年)6月29日 あへ しんそう/安倍晋三 内閣総理大臣 否決 094 112 18 2008年(平成20年)6月11日 ふくた やすお/福田康夫 内閣総理大臣 可決 131 105 -26 内閣総理大臣に対する初の可決例。 2009年(平成21年)7月14日 あそう たろう/麻生太郎 内閣総理大臣 可決 132 106 -26 2010年(平成22年)11月26日 せんこく よしと/仙谷由人 内閣官房長官・法務大臣 可決 127 111 -16 2010年(平成22年)11月27日 まふち すみお/馬淵澄夫 国土交通大臣 可決 126 111 -15 2011年(平成23年)12月9日 いちかわ やすお/一川保夫 防衛大臣 可決 130 109 -21 2011年(平成23年)12月9日 やまおか けんじ/山岡賢次 国家公安委員長・消費者及び食品安全担当大臣 可決 125 109 -16 2012年(平成24年)4月20日 まえた たけし/前田武志 国土交通大臣 可決 131 107 -24 2012年(平成24年)4月20日 たなか なおき/田中直紀 防衛大臣 可決 132 107 -25 2012年(平成24年)8月29日 のだ よしひこ/野田佳彦 内閣総理大臣 可決 129 91 -38 2013年(平成25年)06月26日 あべ しんぞう/安倍晋三 内閣総理大臣 可決 125 105 -20 2013年(平成25年)12月6日 もり まさこ/森雅子 消費者及び食品安全担当大臣 否決 094 130 36 2014年(平成26年)6月20日 いしはら のぶてる/石原伸晃 環境大臣 否決 0104 133 29 2015年(平成27年)9月18日 なかたに げん/中谷元 防衛大臣 否決 089 143 54 2015年(平成27年)9月18日 あべ しんぞう/安倍晋三 内閣総理大臣 否決 089 144 55 2017年(平成29年)6月14日 やまもと こうぞう/山本幸三 地方創生担当大臣 否決 073 165 92 2017年(平成29年)6月14日 かねだ かつとし/金田勝年 法務大臣 否決 073 164 91 2018年(平成30年)6月27日 かとう かつのぶ/加藤勝信 厚生労働大臣 否決 069 165 96 2018年(平成30年)7月18日 いしい けいいち/石井啓一 国土交通大臣 否決 069 168 99 記名投票における最大の票差。 2018年(平成30年)12月7日 やました たかし/山下貴司 法務大臣 否決 072 163 91 2018年(平成30年)12月7日 あべ しんぞう/安倍晋三 内閣総理大臣 否決 072 163 91 2019年(令和元年)6月21日 あそう たろう/麻生太郎 財務大臣・金融担当大臣 否決 071 160 89 2019年(令和元年)6月24日 あべ しんぞう/安倍晋三 内閣総理大臣 否決 072 163 91 デフォルトでは時代順に配列。対象者の列は50音順ソート。 太字は問責決議可決例。 これらのほかにも、決議案提出後(撤回、会期終了等により)採決に至らなかったものが多数ある。
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