ヘルメット スポーツ用ヘルメット

ヘルメット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/22 16:33 UTC 版)

スポーツ用ヘルメット

転落や衝突といった危険を伴うスポーツでは、それぞれの用途に適したヘルメットが使用される。

アメリカンフットボール用ヘルメット

アメリカンフットボールの試合。
クォーターバック(背番号18の選手)と、襲いかかろうとしている72番の選手とでフェイスガードの形状が違うことがわかる。

アメリカンフットボールは非常に激しいボディコンタクトを伴うスポーツであり、頭部を保護するためにヘルメットの着用が義務付けられている。帽体表面がプラスチック製で、衝撃吸収用のパッドが内蔵されている点ではモータースポーツ用のヘルメットと類似しているが、顔面部分は金属の棒を格子状に組み合わせたフェイスガード(フェイスマスクとも)となっている。フェイスガードの形はポジションにより異なり、クォーターバック等のパスに関わるポジションでは視野を重視して目の部分が広く開いたフェイスガードが使われることが多く、逆に基本的にボールを扱うことの無い攻守ラインメンでは安全性を重視して格子の目が細かく頑丈で、顔面に加えて喉も保護できるよう大型のフェイスガードが使われることが多い。またフェイスガードには、ヘルメットと同じく頭部を保護するために用いられるマウスピースがストラップで吊られていることが多い。
ヘルメットはストラップで頭部に固定されるが、純粋な顎紐状のストラップでは激しいコンタクトには耐えられず、ヘルメットがずれた場合に首を絞めてしまう恐れもあるため、より固く固定できる顎当て(チンカップ)付きのストラップとなっている。

ヘルメットに関する反則

プレー中の勢いのある動きの中でフェイスガードを掴まれると首に大きな力がかかって脊髄損傷に結びつく可能性が高く、フェイスガードを掴むことはグラスピング・ザ・フェイスマスクという反則となっている。特にフェイスガードを掴んで力任せに引っ張るような悪質な場合には退場が宣告されることがある。
またタックル・ブロックの際に、手や肩を使わず、頭突きのようにヘルメットだけで相手にコンタクトすることはスピアリングという反則となっている。タックル・ブロックをする側の選手はすべての衝撃が首にかかるために脊髄損傷に結びつく可能性が高く、タックル・ブロックを受ける側の選手も堅いヘルメットをスピアリングの名の通り槍のように突き込まれて負傷する可能性が高く、これらを予防するための措置である。

競馬用ヘルメット

競馬用ヘルメット

落馬の際の頭部負傷防止のため、騎手、または調教等において競走馬に騎乗する者が着用する。日本中央競馬会(以下JRAとする)では、施行規程第39条第1項および第2項、同規定第95条第3項により帽色、種類等が定められている。帽色は枠番号によって8色に区分され、さらに同一枠番号に同一服色の馬が複数いた場合に第2色、第3色の染分け色が指定される。レースではJRAが備え付けた数種類のうち、騎手が希望した物が貸与される[10]。海外競馬においては勝負服のデザインに合わせた色のヘルメットを着用していることが多い。(JRA所属馬が海外でレースに出走する場合も同様)また美浦トレーニングセンターなどの調教場では、騎手や調教助手などの職種により決められた帽色のヘルメットを着用する[11]

JRAで使用されるヘルメットは、脳神経外科の医師、メーカー、JRA等が共同開発したもので、骨折や損傷防止を第一とした堅牢なものではなく、柔らかい芝やダートといった路面での衝撃緩和による脳挫傷の防止に重点が置かれているため、発泡スチロールウレタン皮革といった衝撃吸収材が素材に用いられている[12]

馬産地として知られるアメリカ合衆国ケンタッキー州では、2004年2月4日のマイケル・ローランド騎手の落馬死亡事故に端を発し、安全性を求める声が大きくなった。事故以前にも州競馬機関規定のヘルメットは、フィット感に乏しく、レース中にずれて視界を遮断するなど、騎手の間から疑問の声が多く挙がっていたという[13]。事故から2週間後の16日にはヘルメット規制が撤廃され、2006年9月にはASTM規格の基準を満たしたヘルメットの着用を義務付ける新規定が施行された[14]

ボートレース用ヘルメット

ボートレーサーも、レース時に転覆等のアクシデントに備えてヘルメットを装着する。かつてはアメリカンフットボール用のものに似た形状のものが使われていたが、現在は自動車用のフルフェイス型に似たタイプのものが使用されている。ただ、視界確保のため開口部が広く取られているほか、モーター音を聞き取りやすくするため側面に穴が開けられているという違いがある。なお2021年現在、ボートレース用ヘルメットはアライヘルメットワンメイクである[15]

スキー・スノーボード用ヘルメット

ウィンタースポーツ用に設計、製造されたヘルメット。2010年頃までに欧米のスキーヤースノーボーダーの大多数がヘルメットを着用するようになっている。

スケートヘルメット

スケートボーダー

主にローラースケートスケートボード向けに製造された、軽量なプラスチック製ヘルメット。BMXでもレース以外では、このヘルメットが多く使われている。アグレッシブ以外のインラインスケートでは、これよりも通気性の良い自転車用ヘルメットを使う事が多い。

野球用ヘルメット

打者走者捕手などに着用が義務付けられている。また近年では投手用ヘルメット(ヘッドギア)を着用する選手もいる[16]

コンタクト、格闘技用ヘルメット

ラグビー、格闘技等のコンタクトスポーツではヘルメットは使用されず柔らかいヘッドギアが使用される。詳細はリンク先を参照。


注釈

  1. ^ 小説家のフランツ・カフカは、労働保険関係の職場にいた際、工場視察などでは安全のため軍用のヘルメットを着用した。これが作業用ヘルメット普及のきっかけになったとする説がある。フランツ・カフカ#保険局での仕事
  2. ^ “フリッツ”とはドイツ人一般への呼び方にちなむ。アメリカ人を“ジャック”、ロシア人を“イワン”と呼ぶのと同様。
  3. ^ 近年各国の消防吏員用のヘルメットもつばがやや広く突き出し耳を覆うデザインが主流となり、旧ドイツ軍様式のヘルメットとデザインが酷似する傾向が強い。
  4. ^ 傘兵は中国語空挺兵のこと。

出典

  1. ^ 日本法令外国語訳データベースシステム  労働安全衛生法Industrial Safety and Health Act 別表第二参照。
  2. ^ PC-5 | 安全を創造し 未来を守る タニザワ - タニザワ
  3. ^ 道路交通法第63条の11
  4. ^ 京都府自転車の安全な利用の促進に関する条例-京都府ホームページ
  5. ^ Depreitere B, Van Lierde C, Vander Sloten J, Van der Perre G, Van Audekercke R, Plets C, Goffin J. "Lateral head impacts and protection of the temporal area by bicycle safety helmets." J Trauma. 2007 Jun;62 (6):1440-5. PMID 17563663
  6. ^ SHOEI HELMET SIZING, HANDLING, AND CARE(英語)
  7. ^ Shoei F.A.Q.(英語)HELMET WARRANTY(英語)
  8. ^ SGマーク Q&Aコーナー
  9. ^ ヘルメットのご使用にあたって (SHOEI) FAQ (ARAI)
  10. ^ 本会所定の服色及び帽について”. JRA. 2010年10月19日閲覧。
  11. ^ 美浦トレセンでの調教”. JRA. 2010年10月19日閲覧。
  12. ^ 安全な騎手用のヘルメットとは?”. JRA競走馬総合研究所. 2010年10月19日閲覧。
  13. ^ ケンタッキー州、騎手のヘルメット規制を撤廃”. 競馬国際交流協会. 2010年10月19日閲覧。
  14. ^ ケンタッキー州、騎手のヘルメットをルール化”. 競馬国際交流協会. 2010年10月19日閲覧。
  15. ^ 植木通彦のボートレースの秘密 ヘルメット - ボートレース公式YouTube・2019年12月6日
  16. ^ 衝撃的シーンで再び高まる“投手用ヘルメット”着用機運 2年前はダサくて広まらず
  17. ^ アーカイブされたコピー”. 2013年5月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年8月23日閲覧。
  18. ^ アーカイブされたコピー”. 2014年1月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年3月27日閲覧。
  19. ^ File:ROK_marines_with_K2_rifles_DM-SD-03-14422.jpg
  20. ^ マルチメディア共産趣味者連合






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