ホウレンソウ 食用

ホウレンソウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/12 14:00 UTC 版)

食用

茎葉を食用とする緑黄色野菜の代表的存在で知られる[6]。一年中流通しているが、食材としての本来のは冬の11月 - 2月とされ、葉が大きくて緑色が濃く、葉脈がはっきりしているもの、軸は太くしっかりしているものが市場価値の高い良品とされる[32][2]。特に露地栽培ものは、冬の畑で霜に当たって葉に糖分を貯めるため甘味が強くなり、味もよくなる[2]

生食用品種など例外はあるが、灰汁が多いので基本的に下茹でなどをしてから調理に使われる[12]。沸騰させた塩を少量入れた湯に、根に近い茎のほうから湯に入れて茹で上げたら、水にさらして灰汁を取るようにするが、栄養分の流失を抑えるため長時間水にさらさないようにする[14]。湯に塩を入れることによって、塩のナトリウムイオンが酸化を抑えて、葉の変色を防ぐ作用がある[16]。短時間で茹で上げるために、よく沸騰したたっぷりの熱湯で、少量ずつ手早く茹でたら、冷水にとって急激に冷ますことで、緑色鮮やかに茹であげられる[16]。塩分を控えたい場合には、塩を使わないで茹でてもよい[16]

元々素材の味が濃く、強い青味を含むため、おひたし、胡麻和え、バター炒め、オムレツなど様々な形で調理される。調理するとかさが3/4程度に減る。和食ではおひたし胡麻和え・白和えといった和え物常夜鍋などの鍋物、汁の実、炒め物に利用されるほか、すり潰したのち茹でて緑の色素を取り出したものを青寄せといい、木の芽和えの和え衣の色付けに用いる。洋食ではソテーオムレツの具、キッシュグラタン、裏ごししたものを使ったポタージュパスタパンなどに用いるほか[12]、灰汁の少ない生食用のものはルッコラオランダガラシなどと共にサラダに使われる。

保存

基本的に、時間の経過とともにビタミンなどの栄養素が失われていくため、2 - 3日内に早めに食べきるようにするが[16]、生葉は湿らせたペーパーで包んで、ポリ袋などに入れて冷蔵すると、4 - 5日持つ[2][12]。また長期保存する場合は、下茹でしてからラップに包んで、冷凍する方法もある[2]

アメリカでは、かつて生ホウレンソウはすぐに鮮度が落ちるため流通困難だった時代もあったことから、水煮缶詰にも加工されている[33]。ただし、輸送方法の進歩により生ホウレンソウの流通が可能になったことや、そもそも水煮缶の食味が良くないことなどの理由により、生ホウレンソウのほうが需要があるため、その出荷数を減らしている[33]

栄養

ほうれんそう 葉 通年平均 生[34]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 84 kJ (20 kcal)
3.1 g
食物繊維 2.8 g
0.4 g
飽和脂肪酸 0.04 g
一価不飽和 0.02 g
多価不飽和 0.17 g
2.2 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(44%)
350 µg
(39%)
4200 µg
チアミン (B1)
(10%)
0.11 mg
リボフラビン (B2)
(17%)
0.20 mg
ナイアシン (B3)
(4%)
0.6 mg
パントテン酸 (B5)
(4%)
0.20 mg
ビタミンB6
(11%)
0.14 mg
葉酸 (B9)
(53%)
210 µg
ビタミンC
(42%)
35 mg
ビタミンE
(14%)
2.1 mg
ビタミンK
(257%)
270 µg
ミネラル
ナトリウム
(1%)
16 mg
カリウム
(15%)
690 mg
カルシウム
(5%)
49 mg
マグネシウム
(19%)
69 mg
リン
(7%)
47 mg
鉄分
(15%)
2.0 mg
亜鉛
(7%)
0.7 mg
(6%)
0.11 mg
セレン
(4%)
3 µg
他の成分
水分 92.4 g
水溶性食物繊維 0.7 g
不溶性食物繊維 2.1 g
ビオチン(B7 2.9 µg
硝酸イオン 0.2 g

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[35]。廃棄部位: 株元
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

生葉の可食部100グラム (g) 中の熱量は20キロカロリー (lcal)、水分量は約92%で、炭水化物は3.1g、タンパク質2.2g、灰分1.7g、脂質0.4gが含まれる[6]β-カロテンビタミンB群ビタミンCビタミンE鉄分葉酸が豊富なことで知られる[32][2]緑黄色野菜であるホウレンソウの濃い緑色は、黄色色素のカロテンと青色色素のクロロフィル(葉緑素)が合わさったものである[6]ルテインというカロテノイドを多く含む。株の根元の赤色の部分には、糖質が多めで甘味があり[16]、鉄分やマンガンが豊富に含まれる[2]

ホウレンソウに含まれるビタミン類の中でも、ビタミンC量は可食部100グラム (g) 中、60ミリグラム (mg) と極めて多く含まれているが、夏場のホウレンソウでは、約20 mgと3分の1の量に落ちる[6]。またホウレンソウを茹でることで、ビタミンC量は約2分の1に失われる[6]

ミネラル類も豊富で、カリウムカルシウム、鉄などが多く含まれる[6]。ホウレンソウは緑黄色野菜の中では鉄分が多い方であるが、コマツナよりは少ない。ホウレンソウに含まれる鉄分や葉酸が比較的豊富であることから、造血作用から貧血予防に効果的とされる[32][2]。もともと鉄は吸収率が悪いほうだが、ホウレンソウに含まれるビタミンCと合わせて摂取することで、その吸収率が上がると言われている[6]

ホウレンソウのアミノ酸スコア[36]
ホウレンソウ(100g中)の主な脂肪酸の種類[37]
項目 分量(g)
脂肪 0.39
飽和脂肪酸 0.063
16:0(パルミチン酸 0.049
一価不飽和脂肪酸 0.01
多価不飽和脂肪酸 0.165
18:2(リノール酸 0.026
18:3(α-リノレン酸 0.138

その他成分

ホウレンソウの灰汁の主成分はシュウ酸であり、度を越えて多量に摂取し続けた場合、鉄分やカルシウムの吸収を阻害したり[2]、シュウ酸が体内でカルシウムと結合し腎臓や尿路にシュウ酸カルシウムの結石を引き起こすことがある[32][6]。シュウ酸はカルシウムとの結合性を有するので、削り節牛乳などカルシウムを多く含む食品と同時に摂取することで、シュウ酸を難溶解性のシュウ酸カルシウムとしてカルシウムと結合させ、シュウ酸が体内に吸収されにくくすることができる。またシュウ酸は水溶性であるため、多量の水で茹でこぼすことでシュウ酸を茹で汁中に溶出させて相当に減らすことができるので、調理法を工夫するとよいと言われている[32][2][6]

なお、ホウレンソウはイヌネコなどの動物のシュウ酸カルシウム尿石症の原因にもなる[38]


注釈

  1. ^ 最新のAPG体系はヒユ科であるが、古いクロンキスト体系新エングラー体系ではアカザ科に分類された[1]
  2. ^ 俳句では、春の季語に分類される。
  3. ^ カビを起因とし、地際が褐色になって腐ってくびれ、立ち枯れる病気で、温度や湿度が高いと多発する[25]
  4. ^ 土中カビが原因で、根から侵入して茎の導管を侵し、下葉から枯れていく病気[26]

出典

  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Spinacia oleracea L. ホウレンソウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年12月12日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 50.
  3. ^ a b c 金子美登 2012, p. 142.
  4. ^ a b c d e f g h i j 藤田智監修 NHK出版編 2019, p. 180.
  5. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 1027. https://www.biodiversitylibrary.org/page/359048 
  6. ^ a b c d e f g h i j k 講談社編 2013, p. 125.
  7. ^ デジタル大辞泉「菠薐草:ホウレンソウ」 コトバンク 2015年5月30日閲覧。
  8. ^ ほうれんそう (菠薐草)」跡見群芳譜 2015年5月30日閲覧。
  9. ^ a b c d 講談社編 2013, p. 123.
  10. ^ a b c 丸山亮平編 2017, p. 54.
  11. ^ a b 金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編 2011, p. 130.
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 講談社編 2013, p. 124.
  13. ^ 講談社編『旬の食材:秋・冬の野菜』、講談社、2004年、p.20.
  14. ^ a b c d e f 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 51.
  15. ^ 講談社編 2013, p. 122.
  16. ^ a b c d e f g h i j k 主婦の友社編 2011, p. 51.
  17. ^ 金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編 2011, p. 131.
  18. ^ 板木利隆 1996, p. 80.
  19. ^ a b c d 主婦の友社編 2011, p. 54.
  20. ^ 【家庭菜園のプロ監修】美味しい「ホウレンソウ」の育て方!失敗しない栽培のコツとは? | AGRI PICK”. 農業・ガーデニング・園芸・家庭菜園マガジン[AGRI PICK]. 2021年2月27日閲覧。
  21. ^ a b c d e f 藤田智監修 NHK出版編 2019, p. 181.
  22. ^ a b c d e 金子美登 2012, p. 143.
  23. ^ a b 今が旬の「ほうれんそう」のお話”. 農研機構. 2008年12月24日閲覧。
  24. ^ 真冬の寒さを活用した寒じめ菜っぱの栽培マニュアル (PDF)
  25. ^ 藤田智監修 NHK出版編 2019, p. 240.
  26. ^ 金子美登 2012, p. 242.
  27. ^ FAOSTAT>DOWNLOAD DATA” (英語). FAOSTAT. FAO. 2014年11月8日閲覧。
  28. ^ 農林水産省/ほうれんそう生産量上位について”. 農林水産省. 2015年7月1日閲覧。
  29. ^ 高山市農政部農務課・高山市農業経営改善支援センター連絡会. “平成25年版 高山市の農業”. 高山市農政部農務課. 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月1日閲覧。
  30. ^ 作物統計調査>作況調査(野菜)>確報>平成25年産野菜生産出荷統計>年次>2013年”. e-Stat. 総務省統計局 (2014年12月15日). 2015年7月1日閲覧。
  31. ^ a b 作物統計調査>作況調査(野菜)>確報>平成25年産野菜生産出荷統計>年次>2013年”. e-Stat. 総務省統計局 (2014年12月15日). 2015年7月1日閲覧。
  32. ^ a b c d e 主婦の友社編 2011, p. 50.
  33. ^ a b ポパイにでてくるようなほうれん草の缶詰って売っているの?”. Column Navi. 2022年5月28日閲覧。
  34. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  35. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)
  36. ^ 『タンパク質・アミノ酸の必要量 WHO/FAO/UNU合同専門協議会報告』日本アミノ酸学会監訳、医歯薬出版、2009年5月。ISBN 978-4263705681 邦訳元 Protein and amino acid requirements in human nutrition, Report of a Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation, 2007
  37. ^ USDA National Nutrient Database
  38. ^ 飼い主のためのペットフード・ガイドライン 環境省、2020年4月29日閲覧。





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