ナミテントウ

ナミテントウ
- ナミテントウ Harmonia axyridis Pallas
- ナナホシテントウ Coccinella septempunctata Linne
- オオニジュウヤホシテントウ Epilachna vigintioctomaculata Motschulsky
ナミテントウは体長5~8mm、色彩はいろいろなタイプがあり、全体黄褐色、黄色に黒紋、橙色に黒紋、黒色に赤の2紋や4紋などがある。
カメノコテントウは体長8~13mm、黒色で背面には赤色の亀甲紋がある。
晩秋になると越冬のために家屋へ多数飛来し屋内に侵入してくることがある。戸袋の中や窓サッシの隙間、壁の羽目板の間等に多数が入り込み、その数の多さに不快感や恐怖感を与える。脚の関節から特有の臭いのある黄色い体液を分泌するため、個体数が多くなると臭いやシミ汚染が問題となる。
野外では問題にならないが、時に虫の体液が衣類をシミ汚染する場合があり、特にカメノコテントウは真赤な液を多く出すので要注意。
ナミテントウは成虫・幼虫ともに植物につくアブラムシを食べる。幼虫は黒くトゲが表面に多数生えており、植物の枝や葉の表面を動き回りながらアブラムシを捕食する。卵から成虫になるまで約3週間程度で、3~11月まで活動し、成虫で越冬する。
カメノコテントウはクルミハムシやハンノキハムシの幼虫を捕食する。ナミテントウに混ざって集団で越冬する。
ナミテントウ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/28 14:54 UTC 版)
ナミテントウ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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Harmonia axyridis
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Harmonia axyridis (Pallas, 1773)[1] |
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シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Coccinella axyridis |
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和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ナミテントウ(並天道虫)、テントウムシ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Asian ladybird beetle |
ナミテントウ(並天道、学名: Harmonia axyridis)は、コウチュウ目テントウムシ科の昆虫。単にテントウムシという和名もある。和名の通り日本やアジアでは多くの地域で普通に見られる代表的種で、天敵製剤としての研究も盛んだが、もともと分布しなかった多くの国でも外来種として拡大しており、問題とする表示もあるが、益虫。
特徴
年二化。成虫は集団で越冬する。気温が高くなると夏眠を行う[2]。
多くの種類のアブラムシを捕食するジェネラリストで[3]、幼虫も成虫もアブラムシを食べる[4]。アブラムシ類が寄生するさまざまな植物に見られる[5]。色や斑紋に変化が多く、紋のないものから19個のものまでいる。2 - 4紋型は九州方面に多く、19紋型は北海道・東北・日光地方に多い。紋の少ないものは黒地に赤もしくはオレンジ色の紋、紋の多いものはオレンジ色の地に黒い紋、紋のないものはオレンジ色である[4]。
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ナミテントウの生活環
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多彩な模様のナミテントウ
ナミテントウの前翅には、同種でありながら200以上もの異なる斑紋が存在する。この斑紋の多様性は、一つの遺伝子によってもたらされることが古くから知られていたが、具体的な遺伝子の実体および斑紋形成メカニズムは不明であった。2018年、基礎生物学研究所の研究チームは、ナミテントウのゲノム解読などを行い、斑紋のパターンを決定する遺伝子がパニア(pannier)と呼ばれる遺伝子であることを特定した。テントウムシの斑紋は、主に黒色と赤色のパターンとして作られるが、この遺伝子は、前翅がつくられる過程の、蛹の中期のステージにおいて黒色色素形成領域で働き、黒色色素(メラニン)の合成を促すと同時に赤色色素(カロテノイド)の沈着を抑制する機能をもつことが明らかになった[6]。
天敵利用と外来種としての拡大
生物農薬として、品種改良等による飛ばないナミテントウの開発が行われており、国内でも実用化されている(テントウムシの記事参照)。
しかしナミテントウは実は攻撃的な種であり、他のテントウムシまで捕食するうえ、拡散力も高く、各国の在来のテントウムシをおびやかしている。害虫防除の目的で各国で移入された結果、アメリカでは北米の大部分から南米にまで広がり、ヨーロッパでも26か国で記録、アフリカにも移入され、オーストラリア以外のすべての大陸で見られるようになった。ベルギーでは具体的に在来のナナホシテントウ、フタホシテントウの生態系に影響しているという研究も紹介されている[7]。
クリサキテントウとの関係
ナミテントウと斑紋の似たテントウムシは他にもいるが、特にクリサキテントウ(Harmonia yedoensis (Takizawa, 1917))は長年ナミテントウのシノニムとされていた種で、複数の比較研究がされている。斑紋がナミテントウと似通っており[8]、外見での識別は困難だが、幼虫の外見が異なる[9]。またナミテントウは鞘翅に「ひだ」が現れる個体と現れない個体がいるが、クリサキテントウでは見られないため、ひだのあるものは全てナミテントウである(ひだのないものがクリサキテントウとは限らない)[10]。 ナミテントウが広範に生息するのに対し、クリサキテントウは松の葉にしか見られない(ナミテントウも松に見られる)[11]。生殖的にも完全な別種であり、実験環境ではナミテントウとクリサキテントウは交尾し産卵するが、その卵が孵化することはない[12]。
1971年に佐々治寛之によりナミテントウの集団の中から発見され、1917年に記載されていた「ヅボシテントウ Ptychanatis yedoensis Takizawa」であることがわかり、原記載者の栗崎眞澄(記載当時は瀧澤眞澄)にちなんで新たに和名がつけられた[13]。発見経緯は佐々治の著書『テントウムシの自然史』に詳しい。
本種は松につくマツオオアブラムシの捕食に特化しているが、飼育下では普通のアブラムシで問題なく飼育できるため、なぜ松に特化しているのかは佐々治も結論が得られていなかった。これについては鈴木紀之がナミテントウと複数の比較研究を行い、著書でも紹介している[14]。鈴木によると、盛口満の著書でも触れているようにナミテントウが分布しない南西諸島では松以外にも見られる[15][16](後述するが、これらより後の文献で南西諸島でのナミテントウの記録が書かれている)。
分布
シベリア、樺太、中国、朝鮮半島、日本(北海道、本州、四国、九州、対馬、壱岐、五島列島)[1]。
南西諸島には分布しないと言われていたが、最近の情報(2018年の文献)によると沖縄本島と石垣島で記録された[17]。
脚注
- ^ a b “日本産昆虫学名和名辞書(DJI)”. 昆虫学データベース KONCHU. 九州大学大学院農学研究院昆虫学教室. 2012年1月21日閲覧。
- ^ 阪本優介『テントウムシハンドブック』(文一総合出版)p5
- ^ 鈴木紀之『すごい進化』(中公新書)p84-85
- ^ a b 古川春男・長谷川仁・奥谷禎一 編『原色 昆虫百科図鑑』集英社、1965年
- ^ 佐々治寛之『テントウムシの自然史』(東京大学出版会)p113-114
- ^ 自然科学研究機構 基礎生物学研究所、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所. “テントウムシの多様な斑紋を決定する遺伝子の特定に成功”. 国立遺伝学研究所. 2025年6月28日閲覧。
- ^ 盛口満『テントウムシの島めぐり』(地人書館)p171-173。元となる論文はBrown P.M.J et al. 2011 The global spread of Harmonia axyridis (Coleoptera: Coccinellidae): distribution, dispersal and routes of invasion及びAdriaens T. et al. 2008 Invasion history, habitat preferences and phenology of the invasive ladybird Harmonia axyridis in Belgium
- ^ 『テントウムシの島めぐり』p68によると、沖縄の個体はナミテントウに存在しないタイプのものが多い。
- ^ 『テントウムシの自然史』p111
- ^ 『テントウムシの自然史』p122
- ^ 『テントウムシの自然史』p114
- ^ 『テントウムシの自然史』p112
- ^ 『テントウムシの自然史』p113
- ^ 『すごい進化』p84-153(第3章全体)
- ^ 『すごい進化』p137-138
- ^ 『テントウムシの島めぐり』p86
- ^ 『テントウムシハンドブック』p39
参考文献
- 今森光彦『野山の昆虫』山と溪谷社〈ヤマケイポケットガイド〉、1999年、89-91頁。ISBN 4-635-06220-1。
- 田仲義弘、鈴木信夫『校庭の昆虫』全国農村教育協会〈野外観察ハンドブック〉、1999年、80頁。 ISBN 4-88137-073-1。
- 木野田君公『札幌の昆虫』北海道大学出版会、2006年、134頁。 ISBN 4-8329-1391-3。
関連項目
外部リンク
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