不可視の9番(インヴィジブル・ナイン)
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「パンプキン・シザーズ」の記事における「不可視の9番(インヴィジブル・ナイン)」の解説
戦時中に設立された900番台の部隊群の通称名。表向きは存在しないが、戦時中に前線ではこれらの部隊の情報が飛び交い、その結果「不可視の9番」と名付けられた。ゆえに正式名称ではない。また、この名称すら知る者はごく僅かである。 その実態は、およそ公には出来ない非人道的な兵器・装備をもって戦術を行う部隊であり、残酷な人体実験や兵器実験も行なわれていた。帝国に打診された帝立科学研究所が主導したが、そこには自身の永続化を望むカウプランの思惑もあった。停戦後も非公式部隊ゆえにこの部隊群の所属者は「存在しない」ため軍への復帰が認められず、社会外に放逐され、それがランデルのように各地を放浪したり、903CTTのように野盗団へ身を落とさざるを得ない者たちを生んだ。 なお、帝国では9と言う数字は初代皇帝が戦死した日として忌数とされており、その数字が部隊番号の頭に使われていること自体がこの部隊群の性質を表している。 901ATT (Anti Tank Trooper) 対戦車猟兵部隊。通称「命を無視された兵隊(ゲシュペンスト・イェーガー)」。戦時中、ランデルが所属していた。素体への施術、装備の選択、運用の傾向のすべてを「カウプラン本人が自身の目的前段階としてプロデュースした」実験部隊。 鬼火のような青い火を灯すランタンと、「ドア・ノッカー」「三式装甲剥離鋏」の特殊装備や、手榴弾などで武装した軽歩兵部隊で構成される。敵味方問わず戦車乗りの間では「例えその瞳を灼かれても、例えその腕をもがれても、奴等は決して歩みを止めない。死沼へ誘う鬼火(ウィル・オー・ウィスプ)に導かれるまま、保身無き零距離射撃を敢行する」「焼硬鋼(ブルースチール)のランタンを持った歩兵と会ったら、味方と思うな。だが決して敵に回すな。そのランタンは持ち主の魂をくべる炉。奴らは蒼い鬼火と共にやって来る」という噂として有名で、その噂通りに敵戦車に接近し「ドア・ノッカー」で乗員を銃撃するか、三式装甲剥離鋏でハッチをこじ開け、直接殺害するという接近戦法をとる。 隊員は全員、殺人を行うためだけの思考回路を持つように脳改造を施されており、腰に下げたランタンに火を灯すとそのスイッチが入る。一度スイッチが入るとランデルの様な温厚な人間でも即座に殺戮兵器と化し、無言のままに任務を行う。また射線から外れるなど最低限の回避行動は取るが、基本的には目標へ直進するため、戦闘後は満身創痍となっているが、敵から受けた物ばかりではなく、運用法も満足に決められず試作・配備された装備による「自傷」も多かった。 装備 以下はランデル・オーランドが戦時中に使用した物。および戦後も所持していた物。13ミリ対戦車拳銃「ドア・ノッカー (Door Knocker)」 901ATTの隊員が装備する単発の対戦車用超大型拳銃。オーソドックスな中折れ式のリボルバーを拡大したような外観で、銃身の下に木製の部品が取り付けられており、発射時にはそこに手を添える。装薬量が多く一発撃つだけでも銃身が過熱し素手では触れない程熱くなるため、901ATTの隊員は分厚い手袋を装備している。反動も相当の衝撃であるようだが、ランデルは片手撃ちしたこともある。 作中では人間の扱える限界とされる口径で、さらに実包をボトルネックにしているが、それでも装甲を貫くには絶対零距離射撃が必要となるため、装甲をノックする=「ドア・ノッカー(扉叩き)」という名が付けられた。劇中では零距離なら確実に装甲を貫いているが、ライフリングが刻まれていない 滑腔銃であるため、有効射程は通常の拳銃よりも短く照星も付いていないなど、最初から901ATTの運用にあわせた特攻兵器として設計されている。装甲を貫いた弾丸はひしゃげており、内部の人間の肉体に当たると良くて大穴、部位(頭部など)によっては原形を留めないほどに粉砕される。 公式には戦車に近接するなど「常識的」には不可能であるうえ、帝国陸軍の理念にそぐわない対戦車兵器であることから、正式採用は見送られ「製造されなかった」ことになっている。劇中ではランデルの所持する物と、コルトゥ博士が壁に飾っていたレプリカの二丁のみが確認されている。3課に所属後も弾が不足する描写はないため、製造は続いているようだが詳細は不明。 現実に13mm弾を使用する対戦車ライフルのマウザー M1918があり、対戦車砲の3.7 cm PaK 36の蔑称が「ドア・ノッカー」である。また拳銃としては、ワルサーカンプピストルが太い銃身、シングルアクション、単発、中折れ式など、外見上及び機能上の共通点を多く持っている。 三式装甲剥離鋏 巨大なボルトカッタに類似した工具。長い柄は折りたたみ式になっており使用する際に展開する。本来は戦車の装甲を剥いだり搭乗口をこじ開けたりする工具だが、ランデルは人間に対しても使用したことがあり、本人の怪力により人体を容易く切断するだけでなく、振り回した鋏に当たっただけでも死傷するなど格闘武器としても有効に機能している。 ランデルが常にコートの中に携帯している物は「Marman-ccheda(マルマン・チェダ)」と彫り込まれている。 センティピード ワイヤー付きの太い針を7本を車体に撃ちこむことで振り落とされても距離を離されないようにする装備。鎌にも例えられる形状の本体を左手首に固定する。 901は歩兵であり車両の速度に追従するのは不可能なうえ、取り付いても急激な動作で振り払われるなどドア・ノッカーの射程を維持するのが難しかったことから、一度車体に取り付いたら離されないようにする装備として開発された。 針一本を打ち出すのにドア・ノッカー用の実包(弾頭は抜いて空砲にしたもの)を2発使うため、肉薄状態ならば装甲に針を食い込ませる事が可能だが、発射時にワイヤーが切れたり針が刺さらないことも多く、一度に弾を14発も消費するなど効率は悪い。またワイヤーを巻き取る機構が無いため、引き離されることはないが取り付くには自力で行く必要があるなど、作中でも多数の欠陥が指摘されている。弾の装填はマガジン方式となっている。 導入当初から効果が疑問視されており使用期間の短い装備であったが、ワイヤーで繋がった901を痛めつけるために戦車を旋回させた事でワイヤーが履帯に絡み巻き上げられ、結果として素早く車体に取り付くことが出来たなど、一定の戦果を上げていた。 センティピードは正式な名称ではなく、履帯にワイヤーが絡み巻き上げられた際、使用者の装備や千切れた肉片、肉体そのものが大量に巻き付いた戦車の姿が「大百足(センティピード)」に似ていることからついた。 打ち出す衝撃で左手首が大きく損傷し、高速で走る戦車に地面を引き摺り廻されるなど、肉体へのダメージは非常に大きい。このためランデルは停戦時点で所持していたものの袋に入れたまま封印していた。 対戦車ライフル 開発名・口径漸減試験銃。正式名称はなく「アインシュス・ゲヴェーア(一発しか撃てない銃)」「50 OVER(フィフティ・オーバー)」という渾名で呼ばれている。 銃身が薬室から銃口にかけて口径を絞っていく構造になっているので火薬の威力が超高効率で発揮でき、発射された弾丸は絶大な初速と貫徹力を得る。その威力の代償として、射手の肩を破壊するほどの強烈な反動がある。 銃を使用した試験射手が二度と銃試験に関わらなくなったこと、絞られて尚銃口が50口径を超えていることから前述の渾名が付いていた。しかし、901に配備された物はカウプラン機関排斥による技術力低下で発射時の負荷に比しあまりにも銃身の強度が不足しており、常に暴発の危険性を孕んでいる。結果渾名は「運良く一発撃てても二発目には必ず暴発する」「暴発確率50%オーバー」と別の意味で取られるようになった。 「ツヴァイシュス・ゲヴェーア」と呼ばれるマウザー M1918と、口径漸減方式を使ったゲルリッヒ砲がモデル[要出典]。 戦闘服 901ATTの隊員は制服は基本的には陸軍の一般的な歩兵と変わらない。左腕に部隊章の付いたロングコートと額部分が補強された帽子、銃の熱から手を保護する分厚い手袋という軽装備のため、戦闘があると確実に負傷している。ランデルが初登場した第一話のコマでは全て身につけていたが、3課に合流する直前には帽子はかぶっていなかった。 焼硬鋼(ブルースチール)のランタン 901ATTの隊員がベルトの左腰部分に下げているランタンで、「蒼い鬼火の噂」通り901ATTを象徴するような存在。これに蒼い火を灯すと、一切の恐怖を感じなくなり、正気を失ったかのように敵に向かって突き進み、たとえ相手が命乞いをしようと、自らの足が折れようと無言のままに任務を行う。 内部には自動巻充電装置と無線式信号発信機が仕込まれており、隊員の脳内に仕込んだ受信機に信号を送る事で施術した脳神経経路を励起する。上部に【901ATT】と刻印されたプレートがあるが、これは部隊内で提起されて付けられた物で、使用目的以上に仲間同士の繋がりを示す品である。 903CTT (Chemical Tactics Trooper) 化学戦術部隊。通称「死灰を撒く病兵(クランクハイト・イェーガー)」。ヴォルマルフ中尉が所属。 空中散布式戦術毒「K-3(キルヒ3号)」など、化学兵器を封入した弾頭を使用する。扱う薬品の影響で倒れる兵士も少なくなかった模様。所属していた「灰色の狼」は他にも硫酸弾などを用いた。登場していた戦車が制式なのかは不明。 装備 キルヒ3号(K-3) 空中散布式の戦術化学兵器。砲弾の形状で使用される。抵抗力の強い者には効果がないものの、そうでない者は20時間以内に抗体を打たないと死に至る。このような兵器は国際条約違反であるという。 数年前、カウプラン機関によって試作品の耐性検査薬「キルヒ1号」の散布実験が帝都内の0番地区において実行された。 906FTT 通称「翼無き降下兵(ファルシルム・イェーガー)」。名称以外は登場しておらず、実在していたのか噂なのかも不明。 908HTT 通称「単眼の火葬兵(アルト・シュミート・イェーガー)」。ハンスが所属。 耐熱防護服を身に纏い、火炎放射器を使用する部隊。 防護服の断熱は完全でないため自身の肉体をも損傷してしまうが、服の中に満たされた「保護液」に含まれる麻酔薬により熱を感じることなく戦うことができる。このことは隊員たちに知らされてはおらず、完璧な断熱効果があると騙されていた。そのため、蓄積されていたダメージが限界に達した状態で防護服を脱ぐと皮膚がただれ落ち、死に至る。ハンス以外の部隊員は停戦時に何も知らぬまま装備を解いたため、「保護液」と防護服の助けを失い死亡している。それを目撃したハンスは停戦後から一度も防護服を脱がず、食事や排泄を行う際も器具の助けを得て生活を続けていた。 装備 火焔放射兵装(フレイム・スロウワー) 通称通り円形の窓が付いたヘルメットと分厚い防護服に加え、燃料タンクを背負っていため潜水服のような外観である。また燃料を放射する銃の部分は、作中の他兵器と比べて現代的な外観である。本来は障害物の除去など工兵向け装備だったが、水でも消せない火焔を生み出すことができる所から、マーチス曰く「やっちゃいけない殺し方ができる」ため、人道に悖る戦いを禁忌とする帝国では公式上、廃止された。 防護服は拳銃弾程度なら耐えられるが、至近距離からのライフル弾には耐えられなかった。 保護液(ほごえき) 908HTTの装備する防護服内に充填された薬品。特殊な麻酔薬で、使っている間は痛覚が鈍磨し、熱を感じなくなる。研究を進めれば広面積の火傷治療に役立つ可能性があったが、「カウプランの研究目的にそわない」為研究は中止となった。
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