磁器 磁器の概要

磁器

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/23 01:30 UTC 版)

青花辺菱猴鹿芯盤・19世紀中国の清王朝製
磁器の花造形の彫刻・18世紀 スペイン

定義

磁器の定義は国によって大きく分かれている:

中国
磁器では無く、「瓷器」と書いていて、中国の焼き物を陶器と瓷器に二大別され、日本語のように「土器」などの分類呼称は用いられない。中国では無釉すなわち釉薬うわぐすりを掛けないやきものは焼成温度の高低にかかわらず「陶器」と呼び、釉の掛かったものでも、低火度焼成のもの(漢時代緑釉陶など)は「陶器」に分類している。中国では、胎土のガラス化の程度にかかわらず、高火度焼成された施釉のやきものを全部「瓷器」と称する。
日本・ドイツ
日本語の「磁器」は、胎土ケイ酸を多く含み、施釉して高温で焼成し、ガラス化が進んだやきもののことを指す。一般的には陶磁器のうち素地が多孔性で透光性がなく吸水性があるものを陶器、素地が緻密質で透光性があり吸水性がないものを磁器という[2]
英語圈
ドイツや日本では磁器の概念が比較的明確であるが、アメリカやイギリスでは素地の特性だけでなく用途を含めた分類と呼称になっているため磁器の概念が不明瞭といわれている[3]。磁器は英語の porcelain の訳に当てられている。ただし、英語のポースレン (porcelain) は白いやきもののことであり、中国や日本では磁器とみなされる青磁は、英語ではストーンウェア (stoneware) とみなされる[4]。なお、ポースレンの語源は『東方見聞録』にあるとされる。すなわち、マルコ・ポーロが磁器を見た際に、白地で硬い殻をもつポルセーラ貝に似ていることからポルセーラと表記したことにはじまるといわれている[5]。アメリカでは製品としての磁器 (technical porcelain) はホワイトウエア (Whiteware) に分類されるが、ホワイトウエアは緻密な組織をもつ(一般的には白色の)焼成品の総称で無釉素地のものも含み陶器や炻器も含まれる。また、英語の Chinaware(またはChina)は狭義には磁器 (porcelain) であるが、アメリカではディナーウエア (dinnerware) のことをいう。イギリスでも vitreous dinner ware(磁器化〈熔化〉されたディナーウエア)を porcelain と呼ぶことがある[3]

特徴

やきもの(窯器)の種類:土器・陶器・炻器・磁器[6]
種別 焼成 釉薬 特徴
土器 低火度(1000℃以下) 無釉 軟質、土色、吸水性大
陶器 低中火度(1200℃以上) 施釉 軟硬質、灰白色、吸水性あり
炻器 高火度(1100 - 1250℃) 無釉 硬質、灰色、吸水性小
磁器 高火度(1350℃以上) 施釉 硬質白色吸水性無

磁器は半透光性で、吸水性がない[1]。また、陶磁器の中では最も硬く、軽く弾くと金属音がする。焼成温度や原料によって硬質磁器(hard porcelain SK13 - 16焼成)と軟質磁器(soft porcelain SK8 - 12焼成)に分けられる[1]。日本の主な磁器として佐賀県有田などで焼かれる肥前磁器(伊万里焼)や九谷焼などがある[1]

ガラスは磁器よりはるかに古くから知られており、単に磁質化(ガラス化)するのが磁器製作の目的ではない。

焼成温度の高い硬質磁器と、比較的低温で焼成される軟質磁器に分けられる[1]

原料

焼結して多結晶となる粘土質物、除粘剤となり可塑性を向上させ、かつフラックス(融剤)として融点を下げる石英(SiO2)、ガラス相を形成し強度を向上させ、石英と同種の効果も示す長石の3種類が主原料である。粘土質物SiO2(45 - 70%)、Al2O3(10 - 38%)とFe2O3(1 - 25%)、長石は正長石(K2O・Al2O3・6SiO2)とソーダ長石(Na2O・Al2O3・6SiO2)から構成される[1]。粘土質物にはカオリンが使用され、この他、軟質磁器には石灰ボーンチャイナには骨灰(リン酸カルシウム)が添加される。硬質磁器はカオリンが70%以上であり、軟質磁器は長石と石灰が約60%を占め、ボーンチャイナは骨灰が時に半分以上となるなど、磁器の種類によって組成は大きく異なる。

原料処理では、まず透水性向上のために長石・石英を細かく粉砕する。続いて不純物を水篩などで除去した後に原料を全て混合し、荒練りと菊練りと呼ばれる作業で練り上げる。これにより土中の水分を均一にして乾燥による歪みを防止するとともに、空気を抜くことで成形性を向上させる効果がある。練った土はしばらく放置し、水を細部まで浸透させると同時に、繁殖したバクテリアの排泄物により可塑性を向上させる。




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