粉彩とは? わかりやすく解説

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粉彩

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/14 06:09 UTC 版)

粉彩技法を用いた陶板画

粉彩(ふんさい)とは中国・清代康熙年間(1662〜1722)に始められた陶磁器上絵彩色技法の一つ。別名で琺瑯彩(ほうろうさい)、洋彩(ようさい)とも呼ばれる。

概要

ヨーロッパ七宝(銅胎七宝)の技術を陶磁器に応用したもの。琺瑯質の白粉に顔料を重ねて描いていくもので、それまでの五彩の技法では困難だったグラデーションや絵画的な表現が可能になった。洋絵具を用いたので洋彩中国語版、または軟彩とも呼ばれる(これに対し、五彩は、硬彩とよばれる)。この技法を用いたもののなかに古月軒と呼ばれるものがあり、これは宮廷画家などが絵付けをしたものといわれる。

技法

粉彩技法は、西洋の伝統的上絵付技法と、東洋の伝統的上絵付技法とが、混ざった上絵付技法である。

「水解」した上絵具を低火度焼成した状態
「油解」した上絵具を低火度焼成した状態

清朝期、キリスト教宣教師達により西洋の技術が中国に入る訳だが、同時に陶芸技法の一部として西洋式の釉上彩飾技術が中国に入る。技法の詳細を書くと、東洋式釉上彩飾技法というのは、水解(ミズトキ)といわれるもので、ニカワフノリを少量とかした液に彩料を混ぜて使う。西洋式釉上彩飾技法というのは、油解(アブラトキ)といわれるもので、乾性油不乾性油を適量混合した液に彩料を混ぜて使う。

粉彩技法というものは、水解(ミズトキ)、油解(アブラトキ)を併用しながら、彩飾していく特異な技法だ。この技法の特殊な面は、一つの器物に水溶性の絵具と油性の絵具を併用しながら、彩色作業を進める点にある。併用といっても水と油は混ざらないので同時に二種の絵具は使えない、よって焼成を織り込みながら作業を進める事になる。例えば、水溶性の絵具で彩色して一度焼成する。次に油性の絵具で彩色して更に焼成する。あるいは、これを幾度も繰り返す。精緻に仕上げ用と思えば思うほど、幾度も焼成を繰り返す必要性が出てくる。粉彩技法というのは、描画の技巧も、さることながら、焼成技術、製造作業工程が複雑な技法であると云える。なお、日本の江戸期に於いては、鎖国キリスト教の弾圧により、この技法が西洋から伝播する事は無かった。現存する江戸期の陶芸品を見回しても、この技法が使われた痕跡は無い。

参考文献

  • 陶磁器 宮川愛太郎著 共立出版株式会社 1980/02
  • 中国美術史 マイケル・サリバン著 新藤武弘訳 株式会社新潮社 1973/09
  • 中国科学技術史論集 吉田光邦著 日本放送出版協会 1972/10
  • 現代陶磁の彩飾技法 素木洋一著 株式会社明現社 1988/02
  • 図解工芸用陶磁器-伝統から科学へ- 素木洋一著 株式会社技報堂 1970/04
  • 清の官窯 陶磁大系第46巻 杉村勇造著 株式会社平凡社 1973/03
  • 陶芸の装飾 M・ピラール・ナバロ著 朝岡あかね訳 株式会社グラフィック社 1996/12

関連項目


粉彩

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/29 14:05 UTC 版)

中国の陶磁器」の記事における「粉彩」の解説

康熙年間末期には粉彩という新技法開発された。これは西洋七宝技法磁器応用したもので、石英粉末と鉛を混ぜたものを基礎に、さまざまな色料を用いて絵画的図様を器面に描くことができるようになった白色についても、従来の白の素地透明釉掛ける方法ではなく白色顔料による不透明な白色を得ることができるようになった。粉彩と同様の技法用いたものに琺瑯彩呼ばれるものがある。粉彩と琺瑯彩基本的には同じ技法であるが、粉彩が整形焼成から上絵付けまで一貫して景徳鎮行ったのであるのに対し琺瑯彩景徳鎮作った磁胎に、内務府造弁処という役所属す琺瑯作という官営工房絵付け施したのである琺瑯作での絵付けには宮廷画家動員され中国絵画磁器の器面に再現されることとなった琺瑯作では、初期の作品には素焼き(無釉)の磁胎の上直接絵付けをしていた。これは、透明釉の釉上に琺瑯彩絵付けをする技術がまだ開発されていなかったためである。雍正年間作品では技術の進歩により、透明釉の上絵付け施されている。琺瑯作の作品小品の碗、皿を主とするのに対し景徳鎮窯作られた粉彩では大型の瓶なども作られている。また、景徳鎮の粉彩では、一つの器に従来五彩顔料と粉彩の顔料がともに使われるが、琺瑯作の作品はそうしたことはほとんどない五彩を「硬彩」と呼ぶのに対し、粉彩は「軟彩」あるいは「洋彩」と呼ばれた

※この「粉彩」の解説は、「中国の陶磁器」の解説の一部です。
「粉彩」を含む「中国の陶磁器」の記事については、「中国の陶磁器」の概要を参照ください。

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