新たな進路
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「女子柔道強化選手への暴力問題」の記事における「新たな進路」の解説
9月12日には改革委員会の第2回会合が開かれて、30名以上60名以内と定められている評議員を30名程度に削減する案をまとめて、10月の理事会と評議員会に諮ることになった。それによれば、各都道府県からの代表者などが53名存在している現行制度を全国10ブロックからの地区代表に改めて、そこからの選出を20名程度とする。従来の会長による指名枠を撤廃して、残りの約10名は外部有識者から選出する。さらにそのいずれにも女性枠を加えるなどの方針を固めた。 9月25日には内閣府が会見を開いて、現時点における全柔連による一連の問題への対応は内閣府の勧告の趣旨に沿ったものであるとして、一定の評価を与えた。しかし、「競技者レベルを含む暴力問題への対策の徹底や評議員会の改革」に関しては「道半ばの措置」であるとして、「組織運営でさらに看過できないことが判明すれば、別の処分を検討する必要もある」とも指摘した。そのため、内閣府は全柔連に対して来年8月までに計3度に及ぶ勧告へのさらなる報告書の提出を求めることになった。 9月26日にはアスリート委員会の第1回会合が開かれて、当初の予定通り理事の田辺陽子が委員長に選出された。田辺は「それぞれの立場から意見をすることで、活発に活動していきたいと。これまでのように上から言って終わりではなくて、選手の声を吸い上げていきたいです。」と決意を語った。委員である鈴木桂治は「連盟に対し指導者として声を届けていきたい」、同じく委員である福見友子は「選ばれたことを光栄に思います。選手の思いを伝えたいです」とそれぞれコメントした。 10月7日に全柔連は新体制に移行したことに伴い、女子柔道の暴力指導問題を受けて戒告処分を受けていた強化委員長であった吉村和郎、監督であった園田隆二及び強化コーチであった徳野和彦に新たな処分を下すための懲罰委員会を開いた。当事者である吉村と園田はその場で弁明する機会が与えられた。園田は暴力指導を反省しつつも、「決していじめやしごきではない。何としても勝たせたい、強くなってほしいとの思いだった」との弁明を行った。なお、徳野は出席しなかった。 10月8日に全柔連は前日の懲罰委員会を受けて、園田を1年6ヶ月、吉村を1年、徳野を6ヶ月の会員登録停止処分にしたことを公表した。園田は選手を度々殴ったり蹴ったりした他、何度も暴言を浴びせたことから最も悪質性が高いと見なされ、吉村は一部の暴力行為を知りながら看過していた点、徳野は2度ほど暴力行為に加担した点がそれぞれ考慮されて、各々の停止期間に差が設けられた。3名はそれぞれの期間に全柔連が主催する大会でコーチなどを務めることが禁じられるものの、実業団や大学など所属先での指導や試合会場への出入りは認められることになった。専務理事の近石康宏は改めて処分を行ったことに関して「(前回の処分は)理事会で決定しておらず、手続き上の問題があった。さらに国際柔道連盟(IJF)から処分の軽さを指摘され、このままだとIJFが処分するとの通達があった。」と語り、当時の処分は正式なものとしては無効であるとの認識を示した。また、この問題はIOCからも対処の甘さが指摘されていた。なお、IJFには10月15日までに一連の経緯を含めた報告をすることになった。一方、副会長の山下は園田の監督としての手腕を評価して、「熱血漢で成果を挙げていた。やり方を間違っていたことを大いに反省し、処分が解けたら、ぜひとももう一度現場に復帰して指導してもらいたい。まだまだこれからの人材だ。」と語った。 10月10日には全柔連改革委員会の第3回会合が開かれて、30日に開催される理事会で理事と評議員に定年制を設けることを提案することが決まった。従来、強化や審判などの各専門委員会には65歳の定年制を設けていたが、理事や評議員には設けていなかった。 10月22日には全柔連のアスリート委員会が第2回会合を開き、11月に開催されるグランドスラム・東京2013|グランドスラム・東京において同委員会主催による柔道普及イベントの実施を決めた。また委員会の活動方針として、(1)アスリートの環境整備(2)普及広報(3)社会貢献を挙げるとともに、2020年の東京オリンピックに向けて他の競技団体と連携していく意向があることを明らかにした。なお、今回より委員会に塚田真希も加わったことで規定の14名に達することになった。 10月23日に全柔連は11月に千葉ポートアリーナで開催される講道館杯に子供を持つ女性指導者や審判員のための定員10名ほどの託児所を、コマツの協賛で設置することに決めた。今後、主要な国内大会でも設置予定だという。また、コンプライアンス委員会を新設して外部から委員長を招くことになった。事務局長の宇野博昌によれば、「社会規範を守る重要性を周知徹底させることが目的だ」という。 10月29日に講道館は臨時評議員会を開き、日本レスリング協会会長の福田富昭や元警視総監で弁護士の石川重明ら4名を新理事に迎え入れることになった。この人選に関して関係者は「組織改革の一環。外の声を聞き、業務運営の見直しが目的だ」と説明した。 10月30日に全柔連は宗岡が新会長に就任して以来初の理事会を開いて、一連の不祥事を受けた組織改革の一環として、理事と評議員は選任時に70歳未満であることを規定した定年制を導入することに決めた。また、評議員会の意思決定を迅速化させるために、定員を53名から30名前後に削減するとともに、都道府県代表を集めて意見交換を交わす全国代表者会議を新設して年に1回以上開催することになった。来月15日の臨時評議員会にそれらを諮り、定款を改定する。そこでは8月に新設された常務理事会も明記する。さらに会長指名により、日本からの理事が不在になったIJFとの交渉を図るために、元外交官で東京大学柔道部出身でもある小川郷太郎を国際渉外担当特別顧問として選任することになった。なお、小川は理事には就任しない。 また、この日の理事会で強化委員長である斉藤の提案により、TwitterやFacebookなどのSNSを代表選手が使用する際に「SNSはフェアに使う。宗教、人種、性差別に関することや審判に対する文句は書かない。」という一文を盛り込むことに決めた。ロンドンオリンピックにおいて代表選手はこのように記された誓約書にすでにサインをしていたが、新たに世界選手権、グランドスラムなどの国際大会に出場する選手にも誓約書にサインを求めることとなった。このような制限が持ち込まれたのは、下級生に暴力を振るって停学処分になりながらTWITTERに不適切とみなされる書き込みを行っていた大野将平の行為が全柔連幹部の逆鱗に触れたためだとも言われている。 11月8日に全柔連はオリンピックや世界選手権の代表選手選考の透明化を求められていたことを受けて、日本代表を選出する際の指標となる国内ポイント制度に関する説明会を、選手の所属先監督などを対象に行った。来年の世界選手権代表選考から、過去2年間にさかのぼってポイントを集計して実施される。それによれば、国内外の各大会の優勝ポイントをオリンピック200ポイント、世界選手権180ポイント、ワールド・マスターズ140ポイント、全日本選手権と選抜体重別100ポイントなどと配点する。国際大会に出場した選手は出場基礎点が与えられる。また、有力外国選手との対戦成績も考慮に入れるため、過去4年間にオリンピックや世界選手権で優勝した外国選手に勝利した場合は、85点の強豪選手勝利加点も付与される。ポイントは2年で半減されて、4年経過すると無効になる。ただし、全柔連強化委員長の斉藤仁によれば、このポイント制度は「あくまで参考とする一つの指標」であって、最終的には強化委員会の判断によって代表選手が選考されるとしている。 またこの日に斉藤は、ツイッターなどSNSの適切な使用を選手に徹底させるため12月に講習会を開くことを明らかにした。ガイドライン作成のために選手から利用実態などのアンケート調査も合わせて実施する。加えて、かねてから大会会場においてごみの撒き散らしなどの苦情を受けていたことから、9日から開催される講道館杯では東海大学や日体大学など5大学の学生が清掃活動を行うことにもなった。 11月9日から2日間に渡って開催された講道館杯では、女性へのサポートを充実させる目的で託児所が設けられて、女性の指導者や審判員ら6名が利用することになった。子供2人を預けた女子の強化部長・増地千代里は「今までは試合中も子どものことが気になっていたんですが、きょうは安心して仕事ができた」と謝意を表した。今後もこのようなサポートを継続させるという。 11月14日には全柔連アスリート委員会委員長の田辺陽子や委員の小野卓志ら10名が、柔道界のイメージ回復の一環として、今月末に開催されるグランドスラム・東京2013をPRするために、街頭において柔道衣姿でチラシ配りを行った。 11月15日には評議員会が開催されて、53名存在する評議員の定数を意思決定の迅速化を目的として、25名から35名以内に削減する定款の改定が出席した評議員50名のうち48名の賛成により承認された。変更後はこれまでのように各都道府県からの選出ではなく、関東や近畿などの全国10ブロックから選出されることになる。評議員選出にあたっては女性3名以上を含めることも条件に付加された。理事及び評議員が就任する際は70歳未満とする定年制も導入された。各都道府県連盟の意見を聞くための全国代表者会議を新設することも決まった。一方で、今回出席した評議員全員が「(不祥事の)責任の一端がある」として辞任を表明した。来年2月までに新しい定数で新評議員が選定される前に、辞任の手続きを取るとしている。加えて評議員会において、8月に新会長に就任した宗岡正二の任期は2015年6月までになるとの認識が示された。当初は来年6月の役員改選までとの解釈だったが、規定を精査した結果このような確認がなされたという。しかし、宗岡自身は「しっかり改革の道筋がつけば(役職を)後進に譲ることもありえる」と任期前の退任もありえることを示唆した。 12月2日に全柔連は、ヨーロッパから講師を招いて暴力根絶に関する講演会を開催した。国際柔道指導者研究協会会長のマイケル・カレン(イギリス)は、「指導者資格認定制度を他の競技団体に先駆けて整備してほしい。今こそチャンスだ」と全柔連へ要望するとともに、講演会を聴講していた全日本男子監督の井上康生に対して「全国の指導者の模範となってほしい」と語りかけた。また、フランス柔道の連盟副会長ミッシェル・ブルースは「柔道を教育的なものにするか、暴力的なものにするかは教え方次第だ」と述べた。 12月6日に全柔連は、選手に対して暴力を振るったとして3名の指導者に登録停止処分を課した。1年間の登録停止処分を受けた千葉県の道場の60歳になる指導者は、柔道だけでなく英会話教育も施していたが、とある男子中学生が家庭学習を怠っていたことに立腹してこの中学生を路上に土下座させて顔を蹴り、鼻骨を骨折させるなど全治2週間の怪我を負わせた。この中学生は柔道をやめて、警察に被害届けを提出した。一方、6ヶ月と3ヶ月の登録停止処分を受けた神奈川県の道場のともに37歳となる指導者2名は、素行に問題があるとみなした3名の中学生に数度の平手打ちを加えた。処分を受けた指導者3名は「指導力が足りなかった」と反省の色を見せているという。3名とも登録停止期間は全柔連主催の大会に関われないものの、道場での指導は制限されない。一連の処分に関して「暴力の根絶プロジェクト」責任者の副会長山下は、「極めて残念。加盟団体には(同様の事案が)起きないよう徹底させる。」と語った。 12月9日に全柔連の「暴力の根絶プロジェクト」が今年最後の会合を開いて、来年3月以降はプロジェクト名から暴力の称号を取り外して、より幅広い活動に転換することを明らかにした。責任者の山下副会長は「人間教育のできる指導者を育成し、柔道界が本来あるべき姿に向かっていきたい」と述べるとともに、「暴力やセクハラ行為は劇的に減り、目指してきたものは浸透しつつある」との現状認識を示した。
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