ジム改 ジム改の概要

ジム改

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/05 22:10 UTC 版)

本記事では、外伝作品などに登場するバリエーション機についても解説する。

デザイン

メカニックデザインはカトキハジメであるが、ベースとなったのは1990年に模型誌『モデルグラフィックス』で掲載された企画「ガンダム・センチネル0079」でカトキがデザインしたジム(後期生産型)である。

ジム(後期生産型)は、カトキが同じく「センチネル0079」でリファインしたガンダム(RX-78-2, のちに「ガンダム (Ver.ka)」と呼ばれる)をもとに、ジムがガンダムの量産型であることから逆算的にデザインしたものである[1]。そのため、本デザインは通常のジムのリファイン版でもある[2]。ジムとしての相違点は前年に発売されたOVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場したジム系(デザインは出渕裕)のデザインを踏襲しており[2]、ランドセルはジム・コマンド宇宙戦仕様、頭部は寒冷地用ジムとの共通点がうかがえる。

OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』で「ジム改」として流用するに当たっては、デザインに若干の変更が加えられている。ランドセルは「センチネル0079」版ガンダムと同型のもの(ビーム・サーベル・ラックは左側のみ)に交換され、肩口のインテークがなくなり形状もやや異なっている。臀部ビーム・サーベル・ラッチや両肩を除くサブ・スラスターも廃されている。また、同作品ではバリエーション機のパワード・ジムも登場。さまざまな追加装備の中には、「センチネル0079」版ガンダムと同様のデザインの腰部ヘリウム・コアもある。

1996年から発売されたOVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』では、ジム改のデザインを流用した初期型ジムが登場。特徴的な各部の台形の凹みやランドセル中央のディテールが廃され、後頭部のアンテナやビーム・サーベルのラックもなくなり、シンプルなデザインとなっている。

2006年に発売されたOVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079-』では、ジム改のデザインをそのまま流用した後期型ジムが登場(劇中では3DCGで作画されている)。外観をはじめ型式番号やスペックの数値もジム改と同じである。当初、公式ウェブサイトでは「後期型ジム(ジム改)」と表記されていたが[3]のちに修正された。ただし、同サイトのサラミス級巡洋艦の解説では「RGM-79C ジム改」の表記が残っている[4](のちに発行された、同様の記述がある資料では「RGM-79C 後期型ジム」と表記[5])。それぞれ名称が異なるため、本記事では別項にて扱う。

設定解説

諸元
ジム改
GM TYPE C
型式番号 RGM-79C
所属 地球連邦軍
生産形態 量産機
全高 18.0m[6]
本体重量 41.2t[6]
全備重量 58.8t[6]
装甲材質 チタン・セラミック複合材
出力 1,250kW[6]
推力 12,500kg×4[6]
1,870kg×4[6]
総推力:57,480kg
武装 60mmバルカン砲×2
90mmマシンガン
ビーム・サーベル
360mmハイパー・バズーカ
シールド
搭乗者 サウス・バニング
ホーク・ロイザー

ジム系MSの規格が乱立していたことから開発された機体[7]。ジム改という名称が「後期型ジム」の通称と記載した資料も存在し[8]、下記の後期型ジムと同一機とも言われる[9]

C型の開発元はジャブロー工廠だが設計のベースはルナツー工廠製のE型とされ、オーガスタ工廠製のD型G型の設計も反映されている[10][11][注 1]。ただしG型の設計資産はほぼ活用されておらず、頭部の機構やアンテナの機能に留まっている。一年戦争後にさらなる再統合を進め、消耗部材の共有化・規格化、操作系統の均一化、固定アタッチメントの変更などいくつかの仕様変更を設けた「戦後仕様」に刷新され、残存機もこの仕様にアップデートされたとも言われている[15]

一年戦争末期のU.C.0079年11月下旬に初号機が完成、同年12月に実戦配備が行われた[10][注 2]。その後、U.C.0083年には地球連邦軍の主力MSとして運用され、ジムIIの登場まで主力機を務めた。

武装

60mmバルカン砲
頭部に2門内装されている機関砲。連邦系MSの標準装備。
90mmマシンガン(ブルパップ・マシンガン)
型式番号:HWF GMG・MG79-90mm
ホリフィールド・ファクトリー・ウェポンズ社製[17]で、バレルや弾種の変更が可能なガン・システムと呼ばれる兵装の一つ[18]。ユニットを共用として互換性を高めたドッカブルタイプのブルパップ式マシンガンで、ユニットはロングライフルやジム・ライフルとの共用となっている[18]ジム・コマンドなども使用。戦後は高い信頼性から主力兵装のひとつとなり、バリエーションも含めて広く普及している[17]
ロング・ライフル(ロング・バレル・ライフル[19]
型式番号:HWF GR・MLR79-90mm[17]
HFW社製ガン・システムの一仕様。宇宙空間での弾道を安定させるためにバレルが延長され、月面や小惑星でのアンブッシュのためのバイポッドを装備しており、より精密な射撃が可能となっている[18]。マガジンも大型化され、装弾数は120発[18]。数少ない運用記録によれば、ジム・スナイパーIIの使用により、7000メートル以上の対MS戦闘において初弾命中率95パーセントを記録したといわれる[17]
ジム・ライフル
型式番号:HWF-GR・MR82-90mm
HFW社製。ジム・カスタムの標準兵装。
ビーム・スプレーガン
型式番号:BR-M-79C-3[17]
デザインはジム(後期生産型)のものと同一。
ボウワ社製で、BR-M-79C-1(通常型のジムの標準兵装)の改良型[17]。出力1.5メガワット、装弾数は1チャージ当たり16発[17]。ジムが頭部センサーにダメージを受けると射撃管制がおこなえなくなることから、センサー・ユニットが追加されている[17]。これにより、命中率が20パーセント向上したといわれる[17]。本機の標準兵装として、宇宙世紀0080年代中頃まで製造が続けられている[19]
360ミリハイパー・バズーカ
型式番号:HB-L-07/N-STD[17]
ブラッシュ社製で、HB-L-03/N-STD(ガンダムや通常型のジムが装備)をベースに[17]ボウワ社製の射撃センサーを搭載したモデル[19]。各種弾頭を装填可能で、中にはビーム・ライフルに匹敵する破壊力をもつものもある[20]。本体からのエネルギー供給が不要であることから、戦術によってはビーム・ライフルより有効なことも多い[20]。弾倉は完全な密封式カートリッジに改められ[17]、交換が容易になっている[19]
ハイパー・バズーカ
型式番号:HB-L-X08A/N-STD[21]
小説『機動戦士ガンダム ブレイジングシャドウ』が初出。ブラッシュ社がYHIと共同開発したハイパー・バズーカの改造モデル[21]。弾倉はHB-L-07/N-STDと同規格で、分解してウェポンラックで運搬できるように改良されている[21]
ビーム・カービン
型式番号:XBC-M-83D-2C[21]
小説『機動戦士ガンダム ブレイジングシャドウ』が初出。ボウワ社によって一年戦争末期に開発され、戦後は連邦軍特殊部隊「シャドウズ」でも試験運用が行われている試作ビーム兵器[21]。威力、連射性能ともにビーム・ライフルとビーム・マシンガンのほぼ中間の性能を持つ[22]
ビーム・サーベル
連邦軍MSが装備する標準的なもの[23]。ルナツー系のエネルギー供給システムの規格品で、対応機種ならば通常の20パーセント増の出力のビーム刃を形成できる[18]。既存の連邦系MSにも対応可能な高効率大容量のコンデンサー・デバイスを採用している[23]
シールド
型式番号:RGM-M-Sh-007[17]
ファーダゲール社製で、RGM-M-Sh-003(通常型のジムが装備)の改良モデル[17]。地球連邦軍をあらわす十字の紋章[17]が外されているのが特徴。マウント・ラッチ部に可動機構が採用され、上下にスライドさせることが可能となり運用性が向上している[17]。ただし、装甲材質はルナ・チタニウム合金からチタン・セラミック複合材に変更されている[17]。耐ビーム・コーティングはほどこされているが、直撃を受けるのは困難である[20]。ビーム・サーベルやオプション兵装を装備・携行可能なように改修されたものもある[23]

劇中での活躍

『0083』序盤では、オーストラリアのトリントン基地所属機が登場。カラーリングはデザート・ピンクと濃紺を基調とする。ジオン残党軍の基地襲撃の際に複数機が出撃するが、その大半は撃破される。サウス・バニング大尉搭乗機は奪取されたガンダム試作2号機の追撃の指揮を執り、ザメルとの交戦で相討ちの形になりながらもビーム・サーベルでコックピットを貫いて勝利し、自身は脚を負傷したものの一命を取り留める。なお、別働隊であるカレント小隊の4機はジオン残党軍によって全滅している。中盤以降は宇宙で連邦軍の主力MSとして多数が登場しており、カラーリングは通常型のジムに準じた朱と白を基調とするが、塗り分けは一部異なる。

プラモデル『MGジム改(スタンダードカラー)』の説明書及び作例では、一年戦争時に「不死身の第4小隊」に先行投入機が配備されたことになっている(ただし媒体によって搭乗機が異なる)。また、『マスターアーカイブ』『オレら連邦愚連隊』での解釈と併せてOVA『MS IGLOO』に登場する「後期型ジム」と同一モデルと解釈されることもある(後期型の項を参照)。

漫画『機動戦士ガンダム オレら連邦愚連隊』では、教導隊「ネメシス」隊長のホーク・ロイザー大尉の専用機が登場。部隊カラーの青とライト・グレーを基調とする。「プレジデント」のコードネームで呼ばれ、「ネメシス四十八手」を駆使して多数の敵を撃破するが、キャリフォリニアでのガンダム・ピクシーとの交戦でスレイプニール隊ともども切り刻まれる(ホークは生還)。また、エルズワース基地の教導隊「コカトリス」隊長のジョンソン大尉機はガンキャノン用のビーム・ライフルを携行するが、アッグにコックピットを貫かれる。

雑誌企画『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに』では、「30バンチ事件」においてティターンズに徴用された部隊の機体が、ジムIIの制式採用色への再塗装を経て運用されている。


注釈

  1. ^ このほか、資料によってジム・コマンドをベースにしたというものと[12]、後期生産型ジムをベースとした[13][14]とするものも存在し、一定しない。
  2. ^ 資料によっては、一年戦争末期から量産化が行われていたとするもの[13]と一年戦争終結後に量産化をスタート[16]したとするものと、一年戦争後の開発とするもの[12]が存在し、一定しない。
  3. ^ ジム後期型とも表記される[30]
  4. ^ システム起動時のコンソール表示は「妖刀 SYSTEM ver8/93 E36-7754X MURASAME INSTITUTE」もしくは「超妖刀 SYSTEM ver8/93 E36-7754X MURASAME INSTITUTE」。
  5. ^ その時のコンソール表示は「刀SYSTEM ver8/93 E36-7754X MURASAME INSTITUTE」もしくは「KATANA SYSTEM MURASAME INSTITUTE」。
  6. ^ 「KATANAモード」時は超振動を抑制する重装甲がすべて排除されている関係上、マニピュレーターに限定されない。

出典

  1. ^ モデルグラフィックス9007 1990, p. 29.
  2. ^ a b c モデルグラフィックス9005 1990, p. 52.
  3. ^ IGLOO公式News 2006.
  4. ^ a b IGLOO公式サラミス 2006.
  5. ^ a b c d e f IGLOO MC 2009, p. 77.
  6. ^ a b c d e f 0083略奪編 1991, p. 54.
  7. ^ a b c 「マスターグレード RGM-79C ジム改(スタンダードカラー)」バンダイ 2002年11月 組立説明書参照
  8. ^ a b c 愚連隊 2008, p. 206-207.
  9. ^ a b GMBジム 2019, p. 16-21.
  10. ^ a b c d e f g マスターアーカイブジム 2010, p. 20-23.
  11. ^ MGジム改スタンダードカラー 2002.
  12. ^ a b 「データコレクション 機動戦士ガンダム 一年戦争外伝」メディアワークス 2000年6月 32-33頁。(ISBN 978-4840205849)
  13. ^ a b 「ハイグレードユニバーサルセンチュリー RGM-79C ジム改」バンダイ 2010年8月 組立説明書参照
  14. ^ 『ENTERTAINMENT BIBLE.42 機動戦士ガンダム MS大図鑑 PART.6 デラーズ紛争編〈上〉』バンダイ、1992年2月、34頁。 (ISBN 978-4891892159)
  15. ^ a b c d e f g マスターアーカイブジム 2010, p. 56-59.
  16. ^ 「マスターグレード RGM-79C ジム改」バンダイ 2002年6月 組立説明書参照
  17. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q マスターアーカイブジム 2010, p. 90-99.
  18. ^ a b c d e MGジム改スタンダードカラー 2002, p. 11.
  19. ^ a b c d マスターアーカイブジム2 2015, p. 122-127.
  20. ^ a b c HGUCジム改 2010.
  21. ^ a b c d e ガンダムエース1308 2013, p. 89.
  22. ^ 板倉俊之『機動戦士ガンダム戦記 ブレイジングシャドウ』第1巻、KADOKAWA、2013年11月26日、17頁。ISBN 978-4-04-120916-5
  23. ^ a b c MGジム改 2002, p. 11.
  24. ^ a b 「電撃データコレクション 機動戦士ガンダム 一年戦争外伝2」角川書店 56-57頁。(ISBN 978-4840212205)
  25. ^ MS-ジオン軍- MS-06RD-4 - 『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』WEB
  26. ^ 「電撃データコレクション 機動戦士ガンダム 一年戦争外伝2」8頁。本書の時点ではまだ陸戦型ジムの表記が統一されておらず、「RGM-79(G)先行量産型ジム(地上戦装備)」という名で掲載している。
  27. ^ 「機動戦士ガンダム エピソードガイド vol.1 一年戦争編(前編)」129頁。
  28. ^ 機動戦士ガンダム0079カードビルダーの2005年のカードで「RGM-79[E] 初期型ジム」の名義が確認されている。
  29. ^ a b c IGLOO公式後期型ジム 2006.
  30. ^ a b c d 昼MSジム後期型 2021.
  31. ^ HJ付録MS大図鑑1 2019, p. 45.
  32. ^ a b c d e f IGLOO完全設定資料集 2007, p. 135.
  33. ^ a b モデルグラフィックス9005 1990, p. 40-43.
  34. ^ HGUCジム・ストライカー 2006.
  35. ^ 電撃ホビー01 2007, p. 109.
  36. ^ ブレイジングシャドウ3 2016, p. 103.
  37. ^ a b c ブレイジングシャドウ3 2016, p. 177.
  38. ^ a b c d e 「レポート オブ ブレイジング シャドウ」『月刊ガンダムエース』2016年2月号、角川書店、2015年12月26日、658頁。
  39. ^ a b c 「レポート オブ ブレイジング シャドウ」『月刊ガンダムエース』2016年3月号、角川書店、2015年1月26日、544頁。
  40. ^ ブレイジングシャドウ3 2016, p. 111.
  41. ^ 新訳MS大全集UC0081-0090 2022, p. 61.
  42. ^ a b ブレイジングシャドウ3 2016, p. 178.
  43. ^ a b c ブレイジングシャドウ3 2016, p. 105.
  44. ^ a b c d e f g h i j k l m n 「レポート オブ ブレイジング シャドウ」『月刊ガンダムエース』2015年3月号、角川書店、2015年1月26日、434頁。
  45. ^ a b c d e f 「レポート オブ ブレイジング シャドウ」『月刊ガンダムエース』2015年4月号、角川書店、2015年2月26日、438頁。
  46. ^ a b 板倉俊之,瀧川虚至,財前智広 (2015年2月27日). 「機動戦士ガンダム ブレイジングシャドウ」第2巻発売記念トーク番組. YouTube. KADOKAWA. 該当時間: 22:54-25:25. 2023年7月28日閲覧
  47. ^ 板倉俊之『機動戦士ガンダム ブレイジングシャドウ』第3巻、KADOKAWA、2016年2月26日、175頁。ISBN 978-4-04-103928-1
  48. ^ 新訳MS大全集UC0081-0090 2022, p. 160.
  49. ^ a b c d 『HGUC 1/144 RGM-79 パワード・ジム』バンダイ、2006年8月。
  50. ^ a b c d 『ENTERTAINMENT BIBLE.42 機動戦士ガンダム MS大図鑑 PART.6 デラーズ紛争編〈上〉』バンダイ、1992年2月、46-47頁。 (ISBN 978-4891892159)
  51. ^ 『ADVANCE OF Ζ 刻に抗いし者 1』、アスキー・メディアワークス、2011年、154ページより。
  52. ^ 「刻に抗いし者4巻 219頁。(ISBN 978-4048861236)
  53. ^ 「刻に抗いし者4巻 228頁。(ISBN 978-4048861236)
  54. ^ 「刻に抗いし者 エゥーゴの蒼翼2巻 198-199頁。(ISBN 978-4048866729)
  55. ^ 【機動戦士Zガンダム外伝 審判のメイス】キリマンジャロ攻防戦でヨーンが駆ったモビルスーツ「ワグテイルⅡex」を紹介!”. 2018年6月1日閲覧。


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