ゾック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 04:09 UTC 版)
ゾック (ZOCK) は、「ガンダムシリーズ」に登場する兵器。有人操縦式の人型ロボット兵器「モビルスーツ(MS)」の一つ。初出は、1979年に放映されたテレビアニメ『機動戦士ガンダム』。
作中の軍事勢力の一つであるジオン公国軍の試作機で、水中と地上の両方で活動可能な水陸両用MSの一つ。前後対称形状の胴体や、3本指の腕部クロー、ホバー推進装置を内蔵した極端に短い脚部など、異形が多い水陸両用機のなかでも特徴的な外観をしている。大型ゆえに地上での機動性は低く、内装火器による砲撃を主戦術としている。
デザイン
ラフスケッチは『機動戦士ガンダム』の総監督である富野喜幸によって描かれ、決定稿はこれをほぼトレースしてクリンナップしたものとなっている。ラフの時点で脚部に「ホバークラフト状ノズル」との但し書きがある[1]。
設定解説
ゾック ZOCK | |
---|---|
型式番号 | MSM-10 |
所属 | ジオン公国軍 |
製造 | ジオン公国軍キャリフォルニア基地 |
頭頂高 | 23.9m[2]/23.2m[3] |
本体重量 | 167.6t[2] |
全備重量 | 229.0t[2]/119t[3] |
装甲材質 | 超硬スチール合金[4] チタン・セラミック複合材[4] |
出力 | 3,849kW[2](180,000馬力[5]) |
推力 | 253,000kg[2] |
最高速度 | 地上:40km/h[6] 水中:63kt[2]/29kt[5] |
武装 | メガ粒子砲×8 フォノンメーザー砲(超音波砲)×1 アイアン・ネイル |
搭乗者 | ボラスキニフ |
超大型熱核反応炉を有する重MS[7]。生産はキャリフォルニアベースで行われた[8]。一年戦争当時のMSとしては破格のジェネレーター出力と9門ものメガ粒子砲を有するが、その代償として機体は肥大化した[9]。敵の包囲攻撃に対処するために前後対称構造を採用したとされるが、この措置は重量から機動性が損なわれたことに対するものともされる[7]。
MSMシリーズの中でも特異な機体であるゾックは手足こそ有するものの、脚部は大型ロケットエンジンとなっており、二足歩行はできない[10][注 1]。そのため、機体の移動はジャンプ飛行によって行われる[10]。一方、ジオン公国軍の将兵からは「クチバシ」と呼称される整流殻を有し、速度や軌道に応じて展開角を変更可能。その水中航行時の整流効果は、水陸両用MSでも随一である[8]。この特性から局地専用メガ粒子移動砲座とも俗称されるゾックは、モビルアーマー (MA) 構想確立以前の過渡期に設計された機体であり、小型MAとして位置づけられるため、生産設備はグラブロと同様、艦艇用設備に設けられた[10]。主な任務はミノフスキー粒子の散布下で浮き砲台として機能し、友軍の上陸作戦を支援することにある[4]。
量産化も決定していたが[11]、3機の試作機が作られ、実戦に参加したのはそのうち2号機のみとされている[7]。残る1号機と3号機は、北大西洋艦隊の潜水艦「マンタレイ」に配備された[10]。1号機は輸送中に連邦軍の対潜攻撃機の襲撃を受け、潜水艦ごと失われたとされる。また、3号機は回収されたとする説もあるとされる[8]。
武装
- メガ粒子砲
- 8門装備とした資料と[2]、機体前後と頭頂部の計9門装備とした資料が存在する[10]。通常はMS2機分から3機分という反応炉の出力を生かしてビームライフル並みの連射が可能であり、その弾幕はMS1個中隊に匹敵する[10]。また、ジェネレーター直結式の兵装でもある[8]。
- フォノンメーザー砲(超音波砲) / メガ粒子砲
- 頭頂部にメガ粒子砲を装備するとした資料[10]、フォノンメーザー砲(超音波砲)を装備しているとした資料がみられる[2]。
- また、ジオン公国軍ではフォノンメーザー砲と呼称されるものの、実装された装備はメガ粒子砲であった、そのうえで実際にフォノンメーザー砲を装備した機体の存在が噂され、詳細不明とした資料もみられる[8]。
- アイアン・ネイル
- 両腕に装備する斬撃・打突用装備。簡易マニピュレーターとしても機能するほか、砲を発射する際のアンカーとしての運用が推察されている[8]。
ゾック(サンダーボルト版)
漫画『機動戦士ガンダム サンダーボルト』に登場。
後述のPS2版機動戦士ガンダム寄りのデザインに改められ、モビルフォートレス (MF) という設定になっており、伸びた四本の脚にMSM-04「アッガイ」を1機ずつ4機収容している。
劇中での活躍
テレビ版第29話で、ボラスキニフが搭乗。機体を観たシャア・アズナブルに酷評を受けるが、ジャブロー基地の入り口を発見する功績を挙げ、本格的なジャブロー侵攻作戦の発端となっている。最後はシャアの撤退を援護してガンダムに前後と頭頂部のメガ粒子砲を浴びせるが、回避されて撃破される。
劇場版では、頭部の一部を水面に出して偵察するシーン、および戦闘中にメガ粒子砲を放つ。その後、61式戦車の砲撃で撃破される。撤退するシャアをアムロ・レイが追う場面が大幅にカットされたため、ガンダムとの直接の戦闘場面も採用されていない。
漫画版(冒険王版)では、宇宙用高速高機動MAとして登場。キシリア・ザビの命令を受けたマ・クベが搭乗するが、ガンダムに撃墜される。その際、爆散する機体にドズル・ザビの旗艦が巻き添えにされて爆沈している。
漫画『機動戦士ガンダム0079』では、原作同様ジャブロー攻略戦に参加する。最低でも2機が投入されていることが確認できる。
漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、ボラスキニフが搭乗してベルファストで出撃するが、すぐに後退する。この際、シャアはもしガンダムの出撃が確認されたら、自らがゾックに搭乗する意向だった。その後、大西洋上のホワイトベースと交戦してウォン・チャン伍長のコア・ファイターを撃墜するが、スレッガー・ロウ中尉のコア・ファイターのミサイル攻撃によって破壊される。
『サイバーコミックス』022に掲載の安永航一郎の短編漫画「ロボゾック」では、戦闘シーンは原作に準ずるが、シャアによって葬り去られたガルマ・ザビの脳が紆余曲折を経てゾックに移植されている。それが覚醒した結果、ゾックはボラスキニフの操縦を無視してシャアへの復讐に走るが、殺気立ったガンダムに撃破される。
漫画『機動戦士ガンダム オレら連邦愚連隊』では、ジャブロー攻略戦後に、敗走を続ける友軍の逃走時間を稼ぐため、連邦軍北米トロント補給基地を襲撃する。2度の防衛作戦を打ち破り、トロント市街にまで到達するものの、教導団ネメシスに撃破される。
漫画『アッガイ博士』では、全MSメーカーの水陸両用MSによる競技会に参加し、ボラスキニフがパイロットを務める。ただし、開催時期は地球侵攻作戦直前とされている。
漫画『ザ・ブルー・ディスティニー』では、一年戦争末期のキャリフォルニア・ベース防衛戦に登場。後述のゲームのアレンジ版のデザインであるほか、ジャブロー攻略戦に参加した機体のデータは通常のデザインである。ブルーディスティニー1号機との戦闘で撃破される。
漫画『機動戦士ガンダム 赤い三巨星』では、ゴッグ1機とともにジャブロー攻略戦から敗走中の機体が登場。パイロットはトマス軍曹。連邦軍第17独立機械化混成部隊(自称「赤い三巨星」)のジムRR(レッズ)2機と交戦、損傷するも救難信号を受信したクライシンガ・アス少尉率いるMS隊に助けられる。システムがダウンしたため、トマスは機体に謝りつつセラフィマ・シーン伍長のザクIIの手に乗り移る。
漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』では、宇宙世紀0168年に宇宙で運用されている。
ゲーム作品への登場
- 『機動戦士ガンダム(PS2)』『機動戦士ガンダム戦記 Lost War Chronicles』
- デザインがアレンジされた機体が登場する。4本脚化された脚部や、大型化された両腹部のフェアリングシェルが特徴である。
- 『機動戦士ガンダム バトルオペレーション Code Fairy』
- 「アナザーミッション:バリー編」で、北米戦線で多数の水陸両用MSを従えた指揮官機として登場。連邦軍特殊部隊「ウィッチハント」と交戦する。
- 『機動戦士ガンダム 連邦vs.ジオンDX』『機動戦士ガンダム ガンダムvs.Ζガンダム』
- 連邦軍が鹵獲して白を基調に再塗装した、地球連邦軍仕様機が登場する。
- 『機動戦士ガンダムオンライン』
- ジオン軍の重撃機体として登場する。武装は正面へ攻撃するメガ粒子砲とクローしか存在しない。設定とは違いジャンプ力も一般的なMS以下しかない。攻撃力、アーマーは高いものも、その巨体ゆえの当たり判定の大きさや機動力の低さはゲーム内屈指であり、実質趣味的な機体となっている。カラーリングは赤、青、深緑、白、黒、黄など。
- 『リアルロボット戦線』
- 戦略SLGであるこの作品では背面から攻撃されると反撃できないというシステムだが、「両面表」という特別な機体能力がゾックにのみ設定された。
備考
ゾックのプラモデルはガンプラブーム時の1981年に、1/144スケールで発売されている。また、2007年7月にハイグレード・ユニバーサルセンチュリー (HGUC) シリーズでも発売された。これで、ファーストガンダム(テレビ版および映画版アニメ『機動戦士ガンダム』)に登場した全MSが、HGUCでリニューアルキット化された。なお、現在に至るまでマスターグレード (MG) 化はされておらず、ファーストガンダム登場MSで1/100スケールの商品化がされていないのは、ゾックのみである。
脚注
注釈
出典
- ^ 『機動戦士ガンダム記録全集4』日本サンライズ、1980年8月16日、181-184頁。
- ^ a b c d e f g h 『ENTERTAINMENT BIBLE .1 機動戦士ガンダム MS大図鑑【PART.1 一年戦争編】』バンダイ、1989年2月20日、56-57頁。(ISBN 4-89189-006-1)
- ^ a b 『テレビマガジン』1981年3月号付録『機動戦士ガンダム大事典』下巻(講談社)
- ^ a b c d 「115 ゾック」『機動戦士ガンダム MSV コレクションファイル[地球編]』講談社、2000年6月。ISBN 978-4063465518
- ^ a b 『講談社ポケット百科シリーズ15 ロボット大全集1 機動戦士ガンダム』(1981年)
- ^ 『講談社のポケットカード8 機動戦士ガンダム モビルスーツコレクション』(1982年)
- ^ a b c 『ガンダムセンチュリー』みのり書房、1981年9月、銀河出版、2000年3月(復刻版)、39頁。ISBN 4-87777-028-3
- ^ a b c d e f 『HGUC 1/144 ゾック』バンダイ、2007年7月、組立説明書。
- ^ 皆河有伽『総解説ガンダム辞典Ver1.5』講談社、2009年8月、187頁、ISBN 978-4063757958。
- ^ a b c d e f g 『機動戦士ガンダム モビルスーツバリエーション(2) ジオン軍MS・MA編』講談社、1984年4月30日、2006年7月(復刻版)、116-118頁。ISBN 978-4063721768
- ^ 『模型情報・別冊 MSバリエーション・ハンドブック2』バンダイ、1983年5月、11頁。
ゾック
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「SDガンダムフルカラー劇場」の記事における「ゾック」の解説
水陸両用モビルスーツ。体は大きいが存在感がなく、誰にも気付いてもらえないことが多い(スターゲイザーには内蔵レーダーで気付いてもらえた)。作者にさえ忘れられ、商品ラインナップに入っていながら出番がなかったこともある。しかし、そのおかげでギャンが暴走させてしまった風邪菌の感染を免れた(菌にも忘れられていたため)。
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ゾック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 22:10 UTC 版)
「ファイナルファンタジーV」の記事における「ゾック」の解説
トゥールの村に住む老人で、レナの知人。トルナ運河を通行するのに必要な鍵を所有している。当初はレナの身を案じて鍵を無くしたと嘘をついていたが、後にバッツとの会話で心中を明かし彼に鍵を託した。
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ゾック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 09:02 UTC 版)
「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」の記事における「ゾック」の解説
水陸両用MSとして試作されたMS。ゴッグよりも火力に重点が置かれた機体でMS本来の長所である高機動性能を犠牲にした作りであった。その設計の歪さはあからさまであり、シャアは一目見るなり「見かけ倒しでなければ良いのだが」と不安をもらし、ガンダムの出撃が確認されたら自ら運用するという意向を示していたが、結果的に確認出来なかったため、本来のパイロットが搭乗することとなる。
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ゾック
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「勇者カタストロフ!!」の記事における「ゾック」の解説
初号素体(ダイ・バザール)が収集したデータをもとに人工的に生み出された「弐号復体」。バザールの兄弟ともいうべき存在で、彼の思考データをもとに作られたため、ズックに近い姿をしている。プラズマや電磁力を操る能力を持ち、バザールを処分しようとするが、力の源であるツノのような装置をリプリィに破壊された後、バザールの銃撃を受けて敗北。その直後、自身が「パパ」と慕う会長からの命令で、機密保護のために自爆するという壮絶な最期を遂げる。なお彼の収集したデータは後の「参号復体」に使われる予定だったが、目覚める前に死亡することになる。
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ゾック(サンダーボルト版)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 01:47 UTC 版)
「ゾック」の記事における「ゾック(サンダーボルト版)」の解説
漫画『機動戦士ガンダム サンダーボルト』に登場。 後述のPS2版機動戦士ガンダム寄りのデザインに改られ、モビルフォートレス (MF) という設定になっており、伸びた四本の脚にMSM-04「アッガイ」を1機ずつ4機収容している。
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