被告人Bおよび同Cについてとは? わかりやすく解説

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被告人Bおよび同Cについて

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 09:16 UTC 版)

千日デパートビル火災事件」の記事における「被告人Bおよび同Cについて」の解説

(1)被告人らの各注意義務履行可能性ないし結果回避可能性要旨被告人Bおよび同Cの各注意義務履行可能性結果回避可能性について大阪高裁は「被告人Cが事務所前の換気ダクトから噴き出す煙に気付いて階下での火災覚知し、その後クローク前に様子を見に来た時点では南側(A南)エレベーターから噴き出す煙の量は少なくその時点で従業員指揮して客らをB階段避難誘導し同時に救助袋投下を行うなどの避難準備進めることは可能だった。また平素からの避難訓練が行届いていて、被告人Cから指揮受けた従業員が客らをB階段避難誘導し救助袋投下一連の作業手順どおり冷静に行えたと認められる」とした。 煙が7階に蔓延したあとの状況での結果回避について大阪高裁は「ホールに煙が充満したあとでもホステスが1名、B階段使って脱出成功しているのであり、煙の中を突っ切ってでもB階段から避難することは可能だった被告人Cが防火管理者講習身に付け知識以ってすれば、2250分ころまでは避難者に煙から身を守る姿勢などを取らせたあとにB階段避難誘導することは可能で、同階段からの避難可能だった実際に適切な避難誘導によって煙の中を突っ切って建物滞在全員避難成功した火災事例があることからも、それは実証されている」とした。 救助袋による結果回避について大阪高裁は「煙が充満する前に救助袋投下されていれば降下実験結果などを参考にすれば多少混乱不手際があっても数分間に相当数の客らを避難させられたと認められる(1分間20程度混乱した状況下では10程度)」とした。 被告人Cが22時39分事務所前の換気ダクトから噴き出す煙に気付きそのとき階下での火災覚知し、そのあとクローク付近様子確認行った2240分の時点では、南側(A南)エレベーターから流入して来る煙は少量であったこの段階で従業員らに火災発生通報し直ち従業員指揮してB階段への避難誘導開始するとともに救助袋による避難準備進めることが可能であった認められる。しかも平素からの避難訓練が行届いていれば、22時39分から40分ごろのプレイタウンに流入した煙の量はさほど多くなかったのだから、同被告人からの指揮受けた従業員らは比較的冷静かつ沈着行動することが可能で、B階段への誘導および救助袋投下に至る一連の作業は、手順どおり迅速におこなえた。遅くともB階段への誘導2240分ごろまでに、救助袋降下準備完了2245分までには為し得た認められる。 煙がクローク付近多量に充満してきた段階においても、B階段使って自力脱出したホステス状況照らしてみれば、煙の中を突っ切てもB階段からの避難は可能で、被告人Cが冊子防火管理知識」の内容十分に把握していたのであれば姿勢低くし、ハンカチなどで口や鼻を覆い呼吸少なくしてクローク通り抜けB階段へ行くように客らに指示して避難誘導をおこなっていれば少なくとも停電のころ(2249分)までにはクロークからB階段への避難誘導可能だった。またクロークカウンターの65センチメートル幅の出入口についても、自動改札機通り抜け実験で幅が55センチメートル改札口において、毎分60名から70名の人数通過できたと認められのであるから、本件火災の状況では30名から35程度通り抜け可能だというべきであり、被告人Cの適切な避難誘導があればB階段からの避難は可能であった認められる。 このことは「大阪科学技術センタービル火災」において、適切な避難誘導実施されたことにより、ビル内に滞在する679名全員が無事脱出し得た事例によっても裏付けられる。この火災では、防火管理者放送設備用いて3階火災です。中央階段利用せず、東階段から避難してください」と避難放送おこない、その情報得てから煙によって全く前が見えない状況下で避難した者が在館者の48パーセントいた。適切な放送避難誘導おこなわれたことにより、パニックによる重大な結果起きなかったと認められる。したがって防火管理者において避難階段明示し避難誘導適切に行われたならば、煙が充満した経路突っ切ってでも避難し得ることを実証したものと言えるのである救助袋による避難についても、救助袋使用して降下実験では、1分間20程度降下が可能であると認められ緊急事態直面した本件火災においては従業員指示介添えがあったとしても、そのとおり降下できたかは疑問があるが、1分間あたり10程度降下可能であった認められ数分間あれば客らの相当数避難させられたと認められる。 —大阪高等裁判所第7刑事部判例時報1988(1262) 以上の検討により、被告人Bおよび同Cの各注意義務履行可能性結果回避可能性について、大阪高裁以下のとおり判断した。 まとめ 被告人Bおよび同Cが各注意義務尽くして千日デパートビルの6階以下の階で火災発生した場合には、通常唯一安全な避難路であるB階段へ客らを速やかに避難誘導させるとともに適正に維持管理された救助袋使用するなどの方法により、プレイタウン店内に在店する客らの安全を確保するための消防避難計画策定し、これによる避難訓練実施していたならば、本件火災発生して煙がプレイタウン店内侵入した際に、同店内にいた被告人Cにおいて、平素の訓練成果発揮して速やかにB階段への避難誘導救助袋使用して避難等、危急に際して適切な措置を取ることができ、ホステス更衣室にいた11名を除くその他の本件プレイタウン在店者全員は、B階段からの避難誘導加え救助袋による避難方法併用されることによって、安全に避難し得たことが認められるから、右更衣室にいた11名を除くその他の本件被害者死亡109名、受傷40名)の死傷結果回避し得たものと認められるのである。 — 大阪高等裁判所第7刑事部判例時報1988(1262) (2)原判決説示及び弁護人らの所論対す判断 B階段への避難誘導に関して要旨)B階段への避難誘導に関して原判決説示および被告弁護人所論対す判断について大阪高裁は「原判決がB階段2250ころまでは避難が可能で、被告人Cが平素からB階段状況把握したうえで避難誘導訓練をしておけば、右同時刻ころまでは救助袋による避難併用することで避難者地上へ無事に避難させられた」として、その結果回避可能性認めておきながら、その一方で原審が「被告人Cが避難訓練十分に行っていたとしても、南側(A南)エレベーターシャフトから噴き出す猛煙によってクローク付近急速に汚染される状況下でB階段への避難誘導が行えたかは大い疑問で、仮に避難誘導ができたとしても死傷結果回避できたかは疑問だ」などと説示し判断したのは「原判決事実誤認し判断誤ったものであり、失当である」とした。 大阪高裁被告人CがB階段からの避難計画立て可能性について、原審が「階下火災発生した場合、プレイタウンが機密構造になっていない限り速やかに客らを避難させる必要があり、階下火災1階発生している可能性もあるのでF階段による避難は危険である。階下火災があればB階段こそが唯一安全な避難階段であり、他の階段避難路とするのは危険である。したがって被告人CがB階段こそが地上避難できる唯一の階段であるとの結論に至る可能性十分にあった」などと説示したことは、「結論として判断した内容矛盾する」とした。さらに原審の「如何なる方向から煙が来てもB階段から避難する計画立てることはできない」という説示についても大阪高裁は「予想外事態であっても構造上においてB階段こそは唯一安全な避難路である事実変わらないのであるから、B階段への避難誘導断念する理由見出し難い。プレイタウンにおける唯一安全な避難路はB階段であって、これは2方向避難原則前提を欠くことになるが、たとえB階段方向に煙が流れていたとしても同階段から煙が流れているわけでも煙が充満しているわけでもないのであるから、B階段避難誘導すべきである本件火災場合事務所ダクト南側(A南)エレベーターから猛煙噴き出し火災規模大きいと予測できたのであり、避難計画立てていれば救助袋による避難考えられ『F階段避難するのが最適方法である』などという無謀な発想が起こるはずもない。原審避難計画についての判断は、右のような検討加えておらず、実際に被告人Cは避難計画など何も立てていなかったのであるから、仮定論を前提とするものである以上、その判断矛盾誤りがあると言わなければならない」とした。 B階段への避難誘導可能性について大阪高裁は「被告人Cは、B階段安全性認識しておらず、避難誘導方法および行動誤り、その着手にも著しい遅れがあった。原判決では『被告人Cがエレベーターホール様子を見に来たのは、南側(A南)エレベーターから激しく煙が噴き出した直後だった』としているが、実際にはそのころの煙はそれほど多く無く被告人Cの避難誘導には支障がない状態であり、この時点での対処怠った被告人には落ち度がある。また階下火災があった場合安全な避難路はB階段しかないのであるから、B階段が煙で汚染されているという特異な状況でもない限りは、たとえエレベーターから煙が噴出して通路遮断されていたとしても、B階段避難誘導すべきであり、それができなかったということは避難計画避難訓練怠っていたことによるのであるから、原判決が『B階段からの避難誘導決断するのは困難だ』とした判断肯定できない原判決が『客や従業員にB階段への避難指示して混乱した状況下では不可能だった』とした点についても、適切な避難誘導多く避難者無事に脱出できた火災事例があることから、被告人Cや従業員の適切かつ明確な避難指示があれば、大きな混乱もなくB階段への避難誘導可能だった認められる。以上のことから、被告人Cが適切な避難誘導為し得なかったことで大混乱起きたのである。同被告人避難誘導が適切であったなら、客らがクローク前に殺到して大混乱来し避難誘導不可能にする事態至ったとは考えにくい」とした。 従業員によるB階段への避難誘導可能性について大阪高裁は「原判決では『エレベーターホールにやってきた従業員は、その時点ではエレベーター換気ダクトからの煙の状況知り得なかったのであるから、たとえ避難訓練受けていて、直ち避難誘導取り掛かっても客らをホールへ戻るよう指示し、F階段避難誘導した思慮される』としたが、従業員避難訓練受けていれば、B階段へ客らを誘導していたと認められ、最も危険なF階段誘導したり、エレベーターホール向かおうとする客らをホール押し止める行動に出るはずもない。クローク前の混乱した状況を招くこともなく原判決説示失当だ」とした。 B階段安全性について被告弁護人は「B階段は必ずしも安全ではなく火災により煙が充満する可能性はあり、唯一安全な避難階段ではない」と主張しいくつかの可能性示したが、それに対して大阪高裁は「B階段各階二重の鉄扉常時閉鎖されデパート売り場から遮断されており、同階段に火や煙が入る可能性は低い。煙が同階段充満する可能性があるとすれば、それは1階プレイタウン入口地下1階エレベーターホール火災起こった場合であるが、右入口エレベーターホール、B階段内部可燃物の量はそれほど多くなく、B階段使用不能にするほどの煙が充満する可能性は低い。以上のことからB階段唯一安全な避難階段である事実には変わりなく、被告弁護人所論採用できない」とした。 (2ーア)原判決事実誤認し判断誤った部分 原判決では「本件火災当時死傷者を出すことなくプレイタウン店内から避難することが可能だったか否かについてみるに、4つ階段のうち、避難使えるのはB階段のみであり、2250分ころにホステス1名がクローク通り抜け、B階段使って避難出来ているので、クロークさえ通り抜けられればB階段通行可能だった認められる被告人Cが平素からB階段状況把握し6階以下の階で出火した場合安全な避難路としてはB階段しかないことを十分に認識して従業員そのこと教え、たとえクロークに煙が充満していてもそこを突っ切ってB階段から避難誘導するように指導訓練しておけば、2250分ころまでならB階段救助袋使って店内滞在していた全員地上まで無事に避難させられたのではないかと、一応考えられないではないのである。」として幾つか理由挙げ、「被告人Cが6階以下の階で火災発生した場合想定して避難経路等について十分に調査検討のうえ、避難訓練をおこなっていたとしても、エレベーターシャフトからの猛煙クローク付近急速に汚染されるという予想外状況直面して、B階段への避難誘導果たし可能だったのか大い疑問であり、仮に避難誘導可能だったとしても全員死傷結果回避きたかどうかは甚だ疑問であると言わざるを得ない」としたのは事実誤認し、その判断誤ったものであり失当である。 —大阪高等裁判所第7刑事部判例時報1988(1262) (2ーイ)被告人CがB階段からの避難計画立てることの可能性 原判決が、被告人Bおよび同Cの以下に掲げる各注意義務について・・・ 「6階以下の階で火災発生した場合でも、プレイタウンが他の階から完全に遮断され気密構造になっていない以上、同店内に煙がどこからか流入して来る恐れがあるから、煙の具体的な流入経路速度については分からないでも、とにかく速やかに客や従業員避難させる必要がある」 「6階以下の売場出火した場合1階売場火災となっていることは十分考えられるから、F階段利用して避難することは危険である」 および「6階以下の売場出火した場合には、その時刻の如何を問わず各階段A、E、Fを避難路とするのは危険であり、B階段こそが安全確実に地上避難できる唯一の階段であるとの結論被告人C自身到達することは十分可能であった」 ・・・との各認定前記(2-ア)の原判決説示矛盾する。 また「煙が如何なる方向から来ようともB階段から避難するとの避難計画立てることはできない」との説示についても、「被告人Cとしては、むしろ6階以下の階で火災発生した場合、プレイタウンが他の階から完全に遮断され気密構造になっていない以上、その煙があらゆる経路経てプレイタウン内に流入する恐れのあることを予測し通常唯一安全な避難路であるB階段への避難誘導計画策定しておけば足り、またこれ以外にはないのであって、煙が如何なる方向から来ようともB階段から避難するとの避難計画立てることはできない」とする原判示は相当でない。 仮にそれが予想外事態であったとしても、B階段こそはビル構造上、各売場とも完全に遮断されていて、通常唯一安全な避難路であることには何ら変わりはないのであるから、B階段への避難誘導断念すべき理由は全く見出し難いのであるまた、消防署指導上で言われる「2方向避難」というのは、あくまでも基本的に安全性の高い避難経路を常に2方向以上確保したうえで、火災発生した場合、その状況によって安全確実な方向避難するような体制を整える必要があることを言うのであって、プレイタウンのように、6階以下の階で火災発生した場合、「B階段こそが唯一安全な避難階段」であるときには、2方向避難前提を欠くのであって、たとえB階段方向に煙が流れていたとしても、同階段から煙が流入し、あるいは同階段自体に煙が充満していたわけではないから、当然B階段避難誘導すべきであり、この点の原判決には誤りがあると言うべきである。 本件火災場合のように、北側事務所換気ダクト開口部からの煙のほか、クローク前やエレベーター前にも煙が流入していたとすれば、むしろ6階以下の階での火災ある程度規模大きなのであることが十分予想されるので、仮に的確な避難計画立てていたとすれば、B階段への避難誘導とともに当然救助袋による避難にも全力を注ぐことになるはずで、最も危険度の高い「F階段」に誘導するのが最適方法である、などというような無謀な発想起こり得ないものと言わなければならない原判決避難計画に関する判断は、被告人Cらにおいて現実には消防避難計画について右のような検討を全く加えておらず、何ら避難計画立てていなかったのであるから、仮定論を前提とするものである上、その内容自体にも矛盾誤りがあると言わなければならない。 —大阪高等裁判所第7刑事部判例時報1988(1262) (2ーウ)本件火災における被告人CのB階段への避難誘導可能性 原判決説示は、この点についても、被告人Cが消防計画の策定避難誘導訓練を全くおこなっていなかったのであるから、原審判示仮定論を前提とするものであるうえ、原審説示内容そのものも以下に述べるとおり、誤りがあると言わなければならない。 同被告人は、B階段安全性を全く認識していなかったために、的確な避難誘導行動開始し得ないまま、漫然クローク付近に赴き、同所でしばらく様子見ているうちに、エレベーター昇降路から流入している煙が次第増量し付近徐々に暗くなってきたことから、ようやく客や従業員避難考えるに至り近くにいた従業員電気室から懐中電灯取って来るよう指示し、右従業員電気室行って戻り懐中電灯見付けることができなかった旨報告するのを待ってレジ付近まで戻りボーイらに指示してA階段出入口の扉を開けさせようとしたのであり、同被告人避難誘導行動は、方法において誤りがあったのみならず、その着手著しく遅延したものと言うべきである。 被告人Cがクローク付近まで行ったのは、「エレベーター昇降路から多量の煙が噴き出し始めた直後であった」との誤った事実認定前提に、B階段への避難誘導決断することは困難であったとする原判決判断明らかに失当であって、右のとおり、被告人Cがクローク付近に至ったときは、B階段への避難誘導何ら支障のない状態であり、この時点明確な対処怠ったことは同被告人落度であると言うべきである。 もともとプレイタウンにおいては6階以下の階で出火した場合安全な避難路は、通常はB階段しかないのであるから、エレベーター昇降路から煙が流入したとしても、B階段自体からも煙が流入するというような異常な状況にない限りクローク進入する経路が煙により遮断されるまでの間は、万難を排してB階段避難誘導すべきであり、もし的確な避難計画立て避難訓練をしていたならば、寸刻の間にそのような判断為し得たはずであり、それができないということは、すなわち右のような避難計画立て訓練を行う事を怠っていたことによるものであって、B階段からの避難誘導決断することが困難であったとする原判決判断は到底肯認できない原判決は「客や従業員対し、B階段避難するよう指示したとしても、当時の状況では、大きな混乱起きて避難出来たか否か疑問である」とする。しかし、この点については、「大阪科学技術センタービル火災」の事例において説示したとおり、本件のような危急事態遭遇した場合群衆は、避難誘導指揮者の適切かつ明確な指示があれば、これに従って安全な所を求めて危険をも省みず行動することは群衆心理常識とも言うべきであり、このことは、証人Sの当審公判廷における供述からも伺われるところであるから被告人Cや従業員明確な指示さえあれば、大きな混乱起きことなくB階段への避難誘導は可能であった認められる本件場合には、実際にホールからの出入口であるアーチ付近では、ホールへ向かう者とクロークへ向かう者とが衝突し混乱した状況にあったことが認められるが、しかし、これは被告人Cらが適切な避難誘導迅速かつ的確に行わず専用エレベーター前のホール出て来る客をA階段から避難させようとし、クローク誘導しようとする者と、逆にこれを押し止める者とがあって、避難誘導に当たるべき従業員指示混乱したことによる当然の結果である。 結局被告人Cらは、適切な避難誘導為し得なかったため、同店が大混乱状態に陥ったものであり、同被告人らによる適切、かつ、明確な避難誘導を受け、すべての客らがB階段に向け1つ流れとなって避難してたとするならば、火災という非常事態のため、多少混乱生じたとしても、クローク出入口付近に殺到して大混乱来たし避難誘導不可能にするという事態に立ち至ったとは考えにくい。 —大阪高等裁判所第7刑事部判例時報1988(1262) (2ーエ)従業員らによるB階段への避難誘導可能性 原判決では「従業員Mらは、被告人Cがエレベーターホールやって来るまでに換気ダクト開口部からの煙の吹き出しについて知り得ないのだから、仮に「Mら」が6階以下の階で火災発生した場合避難訓練受けていて、直ち避難誘導取り掛かったとしても、B階段ではなく、F階段から客らを避難させよう考えたであろうから、本件のようにエレベーターホール押し寄せる客らを押し止めホールへ戻るよう指示した思料される。」・・・とするが、日頃から避難訓練徹底していれば、従業員唯一安全な避難路であるB階段に客らを誘導していたもの認められ、最も危険な「F階段」を避難路考えたり、ホールからエレベーターホールへ向かう人達を押し留めたりするという行動に出るはずもなく、クローク前の異常な混乱した状態を招くこともなかったことは明らかで、原判決説示失当である。 —大阪高等裁判所第7刑事部判例時報1988(1262) (2ーオ)B階段安全性 被告弁護人らの所論では「B階段は必ずしも安全ではない」と主張する。それは・・・ 1階のB階段入口木製扉であること。 地下1階エレベーターホール地下飲食店街とは鉄扉1枚繋がっているので、仮に地階飲食店火災発生した場合にB階段へ火や煙が入り、同階段使用不能になることが十分想定されること。 以前地下1階「プレイタウン」エレベーターホール小火発生したことがあること。 ・・・以上の点で「B階段唯一安全な避難階段ではあり得ない」というのであるしかしながら地下1階から6階までのB階段千日デパート売り場間の鉄扉は、常時閉鎖されているのであり、B階段に火や煙が入る可能性は低い。B階段に火や煙が入るとすれば1階プレイタウン専用出入口(B出入口)で出火し、その火や煙がB階段通じて7階へ上昇する場合しか考えられない。B階段には、地下1階エレベーターホール可燃性装飾があり、1階専用出入口には木戸絨毯、ビロードカーテンが、またB階段階段室には木材段ボール置かれいたものの、それらの量はそれほど多くなく、1階専用出入口は、プレイタウン営業中はその扉が大きく開けられ道路面していることが認められているところ、可燃物燃えたとしてもB階段安全性左右するほど火や煙が同階段入り充満する可能性は低いと言わざるをえない。以上のことから、B階段唯一安全な避難階段であるというべきであるから被告弁護人らの所論採用できない。 —大阪高等裁判所第7刑事部判例時報1988(1262) 救助袋による避難行動に関して要旨救助袋による避難行動に関して大阪高裁は「被告人Bおよび同Cについて、原審が右被告らが救助袋整備怠り、同避難器具使用した避難訓練を行わなかった注意義務違反認めながら、同器具による避難可能性否定して被告人過失をも否定したことは事実誤認よるもので、各判断失当である」とした。さらに原審では「救助袋避難階段使用不能な時の補助的な避難器具であり、B階段への通路が煙の汚染によって通れなくなれば多数避難者救助袋もしくははしご車殺到するそのような予期しない状況前提とした訓練被告人Cが行えたとは言えない」と説示したが、それに対して大阪高裁は「避難階段がすべて使えなくなる状況など防火対象物ではあってはならず、そのような前提による消防署指導避難訓練などありえず、そのこと前提として指導訓練有無論じ原審判決誤りである」とした。 原審では「被告人Bおよび同Cが各注意義務尽くし救助袋補修取替え行い避難訓練行っていたとしても、救助袋使用した避難可能性認められない」「救助袋による避難は、避難階段が煙で汚染され救助袋唯一の脱出手段となったときに投下される」と説示したが、それに対し大阪高裁は「被告人Cが避難計画立て注意義務履行し避難誘導適切に行えば、まだ煙がプレイタウンに充満する前の段階2240分ころ)で、従業員指揮して避難階段への誘導同時に救助袋投下することも十分に可能だった。煙が充満して店内混乱した状況になった後(2243以降)を前提とする救助袋による脱出可能性否定する原審判断には重大な過ちがある。避難誘導可能性にしても煙が店内充満して混乱した状態になったあとの状況避難誘導可否論じることは検討加えるまでもなく失当である」とした。 原審では「2248分の時点救助袋使用可能になったとしても150名の避難者が同器具使用して全員無事に地上へ脱出できたとは考えられない」と説示したが、それに対して大阪高裁は「救助袋補助的な避難器具であるが、避難階段(B階段)への避難誘導2249分までは可能だった避難階段への誘導救助袋補完することでホステス更衣室にいた11名を除く避難者全員安全に地上へ避難させることは可能だった。従って救助袋による避難のみを論じること自体根本的に誤り原審判断失当だ」とした。 被告弁護人は、救助袋による避難補完性について「消防署指導では救助袋補助的な避難器具とされ、避難階段からの避難者が残るときに使用考えられる避難階段からの避難優先される状況では、訓練重ねていたとしても直ち救助袋投下する判断下せない」と主張したが、それに対して大阪高裁は「被告人Cは、クローク前へ来た時までには空調ダクト南側(A南)エレベーターから煙が噴き出している状況確認して階下火災発生したことを認識しており、店内には勝手を知らない客などが滞在していたことから避難手間取ることは予測できたわけで、2240分の時点従業員らを指揮してB階段へ客らを避難誘導し同時に救助袋投下させるべきであった考えられるので所論採用できない」とした。 大阪高裁は、原審ホステス更衣室居た11名に結果回避可能性無かった判断した点について「プレイタウン店内に煙が流入し始めた初期段階から事務所前の空調ダクトから噴き出す猛煙により同更衣室に繋がる廊下汚染され更衣室直結のE階段出入口からも猛煙が同更衣室流れ込み、2か所ある避難路が煙で完全に塞がれたことにより、被告人Cが各注意義務尽くしたとしても11名の死傷結果回避することはできなかった」として原審判断肯定したそのことについて検察は「結果回避可能だった」と反論したが、それに対して大阪高裁は「検察主張2245分ころに従業員がE階段から避難しようと客やホステスらをホステス更衣室方面避難誘導しようとした事実前提にしている。その時点では空調ダクトからの猛煙で同更衣室に繋がる廊下避難路として使えなかった。22時39分ころには既に廊下猛煙汚染されており、その時点で同更衣室からの避難はできなかったのであるから、検察官所論採用できない」とした。 救助袋による避難行動に関しての各検討 原判決は、被告人B、同C両名について、救助袋整備怠り救助袋使用して避難訓練をおこなっていなかった注意義務違反認めながら、救助袋による避難可能性否定し被告人両名過失責任をも否定したが、大阪高裁検討では「原判決は、以下の各事実誤認し、その判断誤ったのであるから、いずれも失当である」と判断した(1)救助袋避難方法としての位置づけ 原判決では避難訓練および訓練指導内容について消防当局火災場合避難方法としては、あくまでも避難階段利用して避難優先すべきであって救助袋は本来の避難路から逃げ遅れた極少数の者を対象とした補充的な避難方法であるにすぎないとの考え方立っていたことが窺えるので、消防署係官指導なされたとしても、その線に沿った内容指導止まったであろう考えられることなどから、本件のようにB階段通ず通路及びその余の避難階段が、いずれも煙のために現実には避難路となり得ず、在店者のほとんどが、1個の救助袋若しくは消防署はしご車頼って避難せざるを得ないような場合想定した避難訓練まで為し得たとは到底言えない」旨説示する。原判決指摘するように、火災場合避難手段としては、避難階段使用して避難優先されるべきであって救助袋による避難補完的なのであるのは、そのとおりである。したがって避難階段使用不能になった場合指導」などというものは本来はあり得ない防火対象物が、そのような状態であるならば、欠陥対象物なので消防署安全な避難路確保について指導するはずであり、避難路確保されていないことを前提救助袋による避難訓練指導することなどなく、全階段使用不能になった場合想定して訓練指導有無論じ原判決は、その前提において誤りがある。要する救助袋使用方法について指導訓練おこない有事場合にこれを使用できるようにしておきさえすれば足りのである。 —大阪高等裁判所第7刑事部判例時報1988(1262) (2)本件火災時における救助袋による避難行動可能性 原判決では「被告人Bおよび同Cが、各注意義務尽くし救助袋補修取替えをして、これを使用して避難訓練をしていたとしても、本件では救助袋による避難可能性認めることは困難である」として、その可能性否定したしかしながら前記説示のとおり、右注意義務尽くしていれば、B階段からの誘導加え、右救助袋による避難方法併用されることによって、ホステス更衣室にいた11名を除く、その余の在店者全員安全に避難し得たというべきであり、これを困難ならしめる特段事情否定する根拠として挙げられる諸事情は、次に述べ通り失当である。原判決救助袋による避難判断為し得る時間を「2242分」としたのは誤りで、しかも救助袋投下決意することについて、「救助袋による避難しあり得ない判断した場合にのみ行われる」との前提自体誤りである。被告人Cが6階以下での火災覚知してクローク付近に様子を見に来た時点では、エレベーターから噴き出す煙はさほど多くなく、在店者混乱した状況には陥っていないのであるから、直ち従業員指揮して避難階段への誘導とともに救助袋投下して避難路確保すべき注意義務忠実に履行していたならば、従業員らを救助袋設置部署につけ、救助袋投下実行することは十分に可能だった避難するための時期失して混乱状態に陥ったあとの状況前提として、その可能性否定する原判決の右判断には重大な誤りがある。従業員にしても平素から避難訓練受けていれば、被告人Cの指示を待つまでもなく、煙の流入気付いた時点自発的に救助袋投下作業取り掛かるはずである。従業員が「たまたま窓際救助袋発見した」と供述したのは、まさに被告人Cが消防計画の策定避難誘導訓練を全く怠っていて、適切な指示為されなかった事実裏付けるのである原判決は「救助袋使用して降下可能な状態になったのは、本件場合よりもせいぜい1分程度早い2248分ごろであった」旨説示するが、これは、たまたま救助袋設置されている窓際行った従業員らが救助袋気付いて投下した時刻2246分ごろであったことを前提にしている。もし被告人Cの指示徹底し従業員対す避難訓練ができていればそれよりももっと早い時間降下可能な状態にできたことは前述のとおりであるから、その前提間違っているばかりか救助袋投下遅れたとしても、被告人Cがクローク前からホール引き返して来た時点直ち救助袋投下指示し救助袋使用可能な状態に整備され従業員取扱い方を知っていれば、遅くとも2245分から46分ころまでには避難可能であった認められるので、こうした前提無視した原判決判断誤りである。 原判決では、被告人Cが救助袋による避難決意し従業員対し客らを救助袋設置してある窓際誘導するように指示した場合想定しその後起こり得る結果説示して救助袋設置され窓際への誘導可能性否定している。しかしながら原判決判断は、被告人Cが2244分から45分ころに救助袋による避難誘導決意した場合想定している時点重大な誤りがある。被告人Cは22時39分ころには階下火災発生したことを覚知しているのであり、同被告人クローク付近に来た2240分過ぎころに、直ち避難誘導指示などの適切な行動開始し得たはずであって、これを怠り避難誘導時機逸して混乱状態に陥ったあとの状況下における避難誘導可否論じることは、右原判決内容について検討加えるまでもなく失当である。 原判決は「以下のような状況下において、仮に救助袋入口開き2248分ころ、これを使用して降下可能な状態になっていたとしても、降下所要推定時間およびホール内における致死限界推定時間等を総合して考察すると、ホール内にいた150名と楽団室及びボーイ室にいた者ら全員もとよりホール内にいた150名くらいの者全員が右救助袋利用して無事地上脱出したとは考えられない」旨説示し、その根拠として、具体個別事情挙げて種々検討加えているが、原判決救助袋使用開始可能時刻2248分としている点で誤っている。そもそも救助袋による避難あくまでも補完的なものであり、本来はB階段利用して適切な避難誘導為されるべきで、それは2249分ころまでは可能であった。B階段への誘導のほか、これを補完するものとして救助袋による避難方法併用することにより、ホステス更衣室滞在していた11名を除く在店者全員安全に避難し得たことは前述のとおりである。したがって救助袋のみによる全員避難救助可能性論じる右原判決根本的に誤りであり、原判決挙げる具体個別事情検討するまでもなく、原判決の右判断失当である。 —大阪高等裁判所第7刑事部判例時報1988(1262) (3)救助袋による避難方法補完性に関して 被告弁護人らの所論は「消防署指導においては救助袋補助的用具とされ、可能な限り階段から脱出しそれでもなお避難者が残るときに救助袋使用考えられいるから火事覚知すれば、まず階段による避難考え、それも無理となって次に救助袋使用することになるのであって、いくら訓練重ねても、状況判断せずに直ち救助袋投下するなどということにはならない」旨主張する被告人Cは、事務所換気ダクト開口部から煙が噴き出しているのを現認し、階下火災発生したことを覚知した時点で、同被告人は煙のためにホステス更衣室行けずその後ホール出入口向かった。そしてクローク付近行った際には、通常の唯一安全な避難階段であるB階段近くエレベーターホールにも煙が流入する状況遭遇したのであり、店内の煙の状況のほか、店内の勝手を知らない客、または酔客もいたことから、避難手間取り避難階段から逃げ遅れる者もあることが予測できた。したがって遅くとも被告人クローク付近に赴いた2240分過ぎ以降には、B階段からの避難誘導開始するとともに救助袋使用して避難にも配慮し従業員らを指導して、その投下作業にも取り掛からせるべきであった考えられるので、所論採用できない。 —大阪高等裁判所第7刑事部判例時報1988(1262) ホステス更衣室にいたホステス11名について結果回避否定した理由 本件火災当時ホステス更衣室にいた11名については、被告人Bおよび同Cが注意義務尽くしていたとしても、11名の死傷結果回避する可能性無かったというべきである。22時39分から40分ころには、事務所換気ダクト開口部からの煙のために同更衣室通じ通路遮断され、同通路避難路としては使うことができず、それ以外方法考えてみても、事務所西側宿直室通って更衣室に行くことも、被告人Cが事務所ドア開けた際に事務所内へ勢いよく煙が流れ込んで充満し、その通路遮断したであろう推認されるところであり、被告人Cが22時39分ころに階下での火災覚知して以降前記更衣室滞在11名がB階段救助袋のあるホール窓際避難誘導させることは不可であった認められ、右在室者の死傷結果回避できなかったというべきである。なお検察官所論では「被告人Cは、2244分から45分ころまではB階段に、あるいは救助袋のあるホール窓際11名を避難誘導することは可能であった」と主張するしかしながら、右所論原判決の「ボーイらがE階段から避難しようと考えてホステス更衣室向かった2244分から45分ころの時点における右通路の煙の状況」を根拠にして、ホステス更衣室在室する11名の避難誘導可能性論じているのみであって、右時刻以前は同更衣室からの避難誘導が可能であったとの判断をしているものではないうえ、前述のとおり、22時39分から40分ころには同更衣室に至る通路避難路としては使えない状態であることは明らかであるから検察官所論採用できない。 —大阪高等裁判所第7刑事部判例時報1988(1262)

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