各注意義務の懈怠(過失)と因果関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 09:16 UTC 版)
「千日デパートビル火災事件」の記事における「各注意義務の懈怠(過失)と因果関係」の解説
(要旨)大阪高裁は被告人3名の各注意義務の懈怠(過失)と因果関係について「被告人3名が各注意義務を尽くしていれば、本件被害者全員の死傷の結果を回避できたのは明らかだ」として、過失と結果の間に因果関係があることを認め、3被告人の過失責任を認定した。ただし被告人Bと同Cについては「ホステス更衣室に居た11名の死傷結果に対する過失責任は無く、過失と結果の間に因果関係はない」とした。大阪高裁は本件火災被害者のうちホステス更衣室に居た11名を除く149名の死傷結果は「被告人3名の過失が競合して相乗作用した結果によるものである」と認定した。以上により、大阪高裁は「被告人3名の業務上過失致死傷罪が成立するのは明らかであり、原審が被告人3名に対し過失責任を否定し無罪を言い渡したのは事実を誤認したものであって、その誤りが原審判決に影響を及ぼしたことは明らかである」と結論付けた。 被告人Aについて 前記の各注意義務を尽くしていたなら、被告人Cらの適切な避難誘導と相俟って、プレイタウンに在店していた客や従業員ら181名全員が安全に避難し得たと認められるので、同被告人の過失と本件被害者全員(死者118名、受傷者42名の計160名)の死傷の結果との間に因果関係が存するのは明らかである。 —大阪高等裁判所第7刑事部、判例時報1988(1262) 被告人Bおよび同Cについて 前記の各注意義務を尽くしていたなら、ホステス更衣室にいた11名を除くその他のプレイタウンに在店していた客や従業員全員が安全に避難し得たと認められる。死亡者118名のうちホステス更衣室で死亡した9名を除く109名の死亡の結果は、右被告人両名の過失と因果関係があるのは明らかである。また受傷者42名のうちホステス更衣室にいて消防隊のはしご車に救出された2名を除くその他40名については、その受傷の結果は右被告人両名の過失と因果関係があることは明らかである。 —大阪高等裁判所第7刑事部、判例時報1988(1262) 被告人Aと被告人Bおよび同Cの各過失の競合 以上の認定説示から明らかなように本件被害者160名(死亡者118名、受傷者42名)のうち、ホステス更衣室にいた11名(死亡者9名、受傷者2名)を除く149名の死傷の結果について、被告人Aの過失と被告人Bおよび被告人Cの過失とが相乗的に作用したことによるものであるから、右被告人3名の過失の競合によるものと認めるのが相当であり、ホステス更衣室にいた11名の死傷の結果については、被告人Bおよび被告人Cには過失はなく、被告人Aのみの過失によるものと認められるから、過失の競合は否定される。 —大阪高等裁判所第7刑事部、判例時報1988(1262) 結論 被告人Aについては本件被害者全員に対し、また被告人BおよびCについてはホステス更衣室にいた11名を除くその他の全被害者に対し、それぞれ業務上過失致死傷罪が成立するのは明らかである。原判決が各被告人らの業務上の各注意義務を肯認しながら、これを怠った被告人らに対し、本件結果の回避可能性が無いとして、あるいは因果関係が証明できないとして、被告人らの過失責任を否定して無罪を言い渡したのは事実を誤認したものであって、その誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。 — 大阪高等裁判所第7刑事部、判例時報1988(1262)
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