各派の主な論者とその特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/29 16:31 UTC 版)
「南京事件論争」の記事における「各派の主な論者とその特徴」の解説
「南京事件」、「南京大虐殺」について論じる諸氏は、自他を様々に分類する諸説を提示している。 秦郁彦は、「大虐殺派」(本多勝一、洞富雄、南京事件調査研究会)、「中間派」(秦、板倉)、「マボロシ派」(鈴木明、田中正明)と分類。マボロシ派は中国では「虚構派」と呼ばれる。秦は2007年時点では、マボロシ派と中間派の影響力が伸びて、大虐殺派は低落しつつある、と述べている。軍事史家原剛も大虐殺派、中間派、まぼろし派(虐殺否定説)に分類。 笠原十九司は「南京事件七〇年の日本と世界」および『南京事件論争史』の中で「史実派」と称し、中間派を「虐殺少数派」した。原剛は、「いわゆる『南京事件の不法殺害』」の中で「史実派というのが適切な呼称であるかどうか極めて疑問がある。本論で論じるように、実証性と合理性に欠けた論を、史実派などと言えるだろうか。」と述べた。 野村耕一は、「虐殺派」(笠原十九司、吉田裕)、「中間派」(櫻井よしこ、 原剛)、「まぼろし派」(鈴木明、田中正明)に分類。 星山隆は、「虐殺肯定派」(笠原十九司)、「中間派」(北村稔)、「虐殺否定派」(東中野修道)に分類。 以下の区分や「派の名称」や人名は、あくまで研究者ごとに異なる呼び方であり、ひとつの目安である。 大虐殺派・虐殺肯定派 戦後、極東国際軍事裁判、南京軍事法廷で証言や報告史料を積み重ねる形で、20万人以上、30万人という殺害数が判決で示された。現在、30万人-20万人以上という数字を示すのは以下のような主に中国およびアメリカ合衆国の研究者とされる。 中華人民共和国政府・南京大虐殺紀念館 国軍歴史文物館(中華民国) 孫宅巍 アイリス・チャン オーナ・ハサウェイ(イェール・ロー・スクール教授、 アメリカ国防総省特別顧問) スコット・シャピーロ(イェール・ロー・スクール教授) 以下の日本の研究者の場合、例えば笠原十九司の様に11万9千人以上の犠牲者を主張するが、南京城内民間人犠牲は1万2千人程度と主張、主たる違法殺人は中国兵への殺人であるとする。 家永三郎 井上久士 小野賢二 江口圭一 笠原十九司 - 笠原は本人を含めて史実派と自称。 高崎隆治 姫田光義 藤原彰 洞富雄 本多勝一 吉田裕 渡辺春巳 南京事件調査研究会 まぼろし派・虐殺否定派 阿羅健一 勝岡寛次 黄文雄 鈴木明 石平 田中正明 - 田中本人は虐殺否定派と自称。 冨澤繁信(日本「南京」学会理事) 東中野修道(日本「南京」学会会長) 藤岡信勝 水間政憲 - PHP研究所より南京事件否定[要出典]などの書籍を多数発行。 山本七平 渡部昇一 百田尚樹 - 『日本国紀』等で否定論を資料根拠を示さず展開した。 ケント・ギルバート ヘンリー・スコット・ストークス - 「いわゆる『南京大虐殺』はなかった」とし、事件は中華民国政府のプロパガンダだったとする。 南京事件の真実を検証する会 - 民進党・自由民主党から構成される議員連盟。 日本の前途と歴史教育を考える議員の会 - 自由民主党内の議員連盟。 中間派 板倉由明 北村稔 - 日本軍による組織的大虐殺そのものについては否定しつつ、個別の殺害事案については、彼が資料的根拠の確認できたものについては認定する。 北村は、南京裁判にて検察側が提示した「20万人の虐殺」について、「中華民国による戦時宣伝の虚構」とし、「曾虚白自伝](1988年出版)に基づいてその宣伝を担ったのがティンパーリだとし、その根拠付けを図ったり、「10数万人の遺体を埋葬処理した」と称する崇善堂の実務能力につき、この団体の人数・装備では自称通りの日程で自称する数の遺体を処理することは不可能と主張する。一方で、幕府山捕虜殺害事件(被害者数約1万8千)については新資料(親日政権が発行した中国語新聞[要追加記述])を発掘するとともに、当時の日本軍による非行と位置付けている。2007年北村は便衣兵や捕虜の殺害は認定した上で、一般市民を対象とした「虐殺」はなかったと述べた。虐殺派の笠原十九司は北村を否定派とする。 櫻井よしこ - ただし「まぼろし派・虐殺否定派」が主賛同者である映画『南京の真実』(南京事件を歴史的事実に基づかない政治的創作とした)の賛同者に名を連ねている。 中村粲 秦郁彦 原剛 - 中国政府の「大虐殺説」は人口や当時の兵力、また崇善堂記録や魯甦証言の信憑性から成り立たないとするが、虐殺否定説の戦時プロパガンダ論では事件がなかったことを立証したことにはならないとする。また日本側の捕虜や中国人への蔑視だけでなく、中国側の民衆保護対策の欠如も事件の要因とする。 偕行社『南京戦史』 山本昌弘 D.アスキュー ボブ・T.ワカバヤシ ジョシュア・フォーゲル T.ブルック
※この「各派の主な論者とその特徴」の解説は、「南京事件論争」の解説の一部です。
「各派の主な論者とその特徴」を含む「南京事件論争」の記事については、「南京事件論争」の概要を参照ください。
- 各派の主な論者とその特徴のページへのリンク